【※ 「世界から支持されてきた憲法9条」 東京新聞(2018年5月3日)↑】
マガジン9のコラム【こちら編集部 「積極的平和主義」というのなら(西村リユ)】(https://maga9.jp/200819-4/)
《75回目の「敗戦の日」でした。新聞に掲載されていた、「全国戦没者追悼式 安倍首相の式辞全文」を読んで、強い怒りと失望を感じました。その理由はいくつかあります。…そしてもう一つ、この式典での挨拶では今年初めて使われたという「積極的平和主義」。》
『●デモクラシータイムス《「僕の雇い主は国民です」と胸をはり…生きて
いた夫が壊れたのはなぜか、「私は真実を知りたい」から》…に応えよ』
『●《住民の命を守るのが、自治体の責務である》…世田谷モデル《…周辺
自治体、もちろん東京から日本全体に広がっていかなければならない》』
『●《「私たちの権利はこれほどまで簡単に踏みにじられる」。沖国大の
事故の1カ月後…学生が事故を目の当たりにした恐怖感や屈辱感を…》』
『●「憲法くん」…《「変なうわさを耳にしました。本当でしょうか。
私がリストラされるかもしれないという話」。…無関心ではいられない》』
『●適菜収さん【それでもバカとは戦え】…《われわれ日本人が目指すべき
なのは「核兵器のない世界」の前に「安倍のいない世界」である》』
アベ様がコピー(?)した「積極的平和主義」は、ある平和学者の原義(「積極的平和」〝Positive Peace〟)を跡形も無く破壊したもの。
《ガルトゥング博士は1969年の論文で、戦争のない状態を「消極的平和」としたのに対して、貧困や差別といった構造的な暴力のない状態を「積極的平和主義」と定義》した。さらに、《博士は来日する目的をビデオメッセージに込めて、こう続けた。「私は、日本がこう主張するのを夢見てやまない。『欠点もあるが憲法9条を守っていく』『憲法9条が当たり前の世の中にしよう』『軍隊は持たず、外国の攻撃に備えることもない』『そして核兵器は持たない』と」》。
それに比べて、アベ様の口にする「積極的平和主義」とはなんと薄っぺらいものなのだろうか。アベ様の御「趣味」で壊憲され、「国民主権の縮小、戦争放棄の放棄、基本的人権の制限」され、さらには、緊急事態条項の創設をされたのでは、タマッタものではない。どうやら、アベ様は、平和憲法を壊憲して、「我が軍」を復活し、大日本帝国憲法への回帰を志向しているらしい。さらには、「核兵器なき世界」さへ目指さないアベ様の言う「核なき世界」が如何にいい加減か…「憲法上は原子爆弾だって問題ではないですからね、憲法上は。小型であればですね」というアベ様の思想は何も変わっていない。「積極的平和主義」が聞いて呆れるよ。《不戦の誓い》《恒久平和の希求》どころか、敵基地攻撃能力の保持を求める狂った独裁者ブリ。敵基地攻撃論の先には、何が待っていることやら。こんな腐敗した政権や政党を支持し、子や孫を戦場で人殺しさせたいという親や祖父母たちの気が知れない。適菜収さんの主張は、《われわれ日本人が目指すべきなのは「核兵器のない世界」の前に「安倍のいない世界」である》、至言だ。
西村リユさんの本コラムの〆の言葉《現政権に「積極的平和」を目指す意志がわずかでもあるとは、私にはどうしても思えないのです》、全く同感。
『●アベ様がコピー(?)した「積極的平和主義」は、
ある平和学者の原義を跡形も無く破壊』
《この言葉を提唱したノルウェーの平和学者、ヨハン・ガルトゥング博士
(84)が定義する意味とは異なる。博士は19日に来日し、
「本当の平和とは何か」を語りかける。ガルトゥング博士は1969年の
論文で、戦争のない状態を「消極的平和」としたのに対して、
貧困や差別といった構造的な暴力のない状態を「積極的平和主義」と
定義した……「私は、日本がこう主張するのを夢見てやまない。
『欠点もあるが憲法9条を守っていく』『憲法9条が当たり前の世の中に
しよう』『軍隊は持たず、外国の攻撃に備えることもない』
『そして核兵器は持たない』と」》
『●ガルトゥングさん「両国政府は恥を知るべきである」…
沖縄に対して「恥ずかしくない対応」などする気なし』
『●「差別意識に基づく、官憲による歴史的暴言」…
ガルトゥング氏「非常に深刻な状況となる兆候…」と警鐘』
《土人とは、土着の人を指す言葉で、軽蔑や侮辱の意味を含んで使われる。
かつてアイヌの人々に対しても使われたことがある。官憲が沖縄に
住む人を土人と呼んだことは先例に従えば、琉球民族が日本人とは違う
歴史を持つ先住民族であると公に認めたことになる》
『●(政界地獄耳)《一方、日本では一体何が起きているか。
官製嫌韓ヘイトをメディアがあおっているお粗末さだ》』
「日本の唯一の看板だった「平和主義」も、アベ様のおかげで、
風前の灯火だ。平和憲法を捨て去ろうとしている愚かさ。
ガルトゥングさんの唱える「積極的平和主義」を理解できない
アベ様…というよりも、その言葉を悪用」
『●「武力によって平和を創造することはできない」…
「真の平和をつくっていく…「憲法宣言」を採択」』
『●アベ様の「積極的平和主義」とガルトゥング博士の
「積極的平和主義」と中村哲さんが実践してきた「平和主義」と』
=====================================================
【https://maga9.jp/200819-4/】
こちら編集部
「積極的平和主義」というのなら(西村リユ)
By マガジン9編集部 2020年8月19日
先週の土曜日は、75回目の「敗戦の日」でした。新聞に掲載されていた、「全国戦没者追悼式 安倍首相の式辞全文」を読んで、強い怒りと失望を感じました。その理由はいくつかあります。
一つは、今年に始まったことではありませんが、各地で爆撃や地上戦のために犠牲になった人々への哀悼の言葉はあっても、日本の加害責任に触れる言葉がなかったこと(報道によれば8年連続だそうです)。今年はさらに、去年までは使われていた「歴史の教訓」「歴史と向き合う」といった、「歴史」という文言もありませんでした。
また、以前にコラムでも書きましたが、決まり文句のように使われた「敬意と感謝」という言葉にも強い違和感があります。敬意はともかくとして、国が始めた戦争のために命を落とした人たちに対して、政治家が言うべきは「感謝」ではないはずだと思うからです。
そしてもう一つ、この式典での挨拶では今年初めて使われたという「積極的平和主義」。2013年の「国家安全保障戦略」で基本方針として掲げられて以来、安倍政権が安全保障戦略を語るときにしばしば登場するようになった言葉です。「国際社会の平和のために積極的に行動する」として、自衛隊の海外派遣拡大などにつながるロジックとして用いられてきました。
しかし、安倍首相と現政権がこの言葉を使い始めるはるか前から、平和学の分野でよく知られていた「積極的平和」という言葉がありました。ノルウェーの平和学者、ヨハン・ガルトゥングが1969年の論文で提唱した概念で、戦争という「直接的暴力」がないだけではなく、飢餓や人権抑圧、差別などの「構造的暴力」も存在しない状態を指します。戦争はないけれど、飢えていたり、人権を抑圧されていたり、差別されていたりする人がいる状態は「消極的平和」に過ぎず、本当の意味での平和ではないという考え方です。
政権が「積極的平和主義」を掲げたときに、この「積極的平和」について知っていたのかどうかは分かりません(国際政治や安全保障の専門家なら当然知っていたはずの言葉だと思いますが)。でも、2015年9月の国会で福島みずほ参院議員が「積極的平和」の認識におけるガルトゥング博士の定義との違いを質問したとき、安倍首相は以下のように答弁しています。
--- --- --- --- --- --- --- --- --- --- ---
政府としては、御指摘のような「積極的平和」という概念を使用しているものではないが、「積極的平和主義」の下での具体的な取組としては、国際社会における人権擁護の潮流の拡大への貢献や、貧困削減、国際保健、教育、水等の分野における取組の強化などが含まれており、御指摘の「積極的平和」の考え方と重なる部分も多いと考えている。
(第189回国会・「積極的平和主義」の認識に関する質問に対する答弁書(2015年9月10日)より)
--- --- --- --- --- --- --- --- --- --- ---
〈御指摘の「積極的平和」の考え方と重なる部分も多いと考えている〉。
本当にそう考えているのなら、そして「積極的平和」を実現したいと少しでも思うのであれば、式典で空虚な言葉を並べ立てるだけではなく、やるべきことがあるのではないでしょうか。
新型コロナウイルスの問題への対応ももちろんですが、たとえば先月26日、インド洋・モーリシャスの沖合で、日本企業が所有する貨物船が座礁、大量の燃料油が流出するという事故がありました。これによって汚染された生態系の回復には20年以上かかるのではともいわれており、深刻な環境危機として各国メディアが連日報道。モーリシャスでは「環境緊急事態宣言」が出され、住民ボランティアらが必死に清掃作業に取り組んでいるといいます。
そんな中で、日本は8月15日になってもまだ、小泉進次郎環境相が「近く専門家と環境省の職員を現地に派遣する意向」を示した、という対応の遅さ。安倍首相に至っては、公の場でこの事故について言及すら一切していないようです。
この一件だけを取っても、現政権に「積極的平和」を目指す意志がわずかでもあるとは、私にはどうしても思えないのです。
(西村リユ)
=====================================================
[※ 「こんな人たち」 報道特集(2017年7月8日)↑]
琉球新報の【<社説>首相辞任表明 民意尊ぶ政治の復権を】(https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1181527.html)と、
コラム【<金口木舌>この国は「美しい」のか】(https://ryukyushimpo.jp/column/entry-1181523.html)。
リテラの記事【「密室談合」による菅官房長官の次期総理就任を許していいのか! GoTo、沖縄いじめ、公文書改ざん、メディア圧力の最大の戦犯】(https://lite-ra.com/2020/09/post-5611.html)。
《沖縄についてこれまで「県民に寄り添う」と繰り返した。しかし、基地問題を巡り歴代内閣の中で最も民意に寄り添わなかった。「この道しかない」と、数の力で押し切る政治を終わらせ、民意を尊ぶ政治の復権を望みたい》。
《戦後生まれ初の首相となった政治家が掲げた「美しい国」とはいったい何だったのか。国中が新型コロナウイルスの猛威にさらされている中での安倍晋三首相の辞意表明に接し、湧いてきた疑問である》。
《菅官房長官は新型コロナの感染拡大の局面で「GoToトラベル」を前倒しして決行させた張本人であるというのに、そうした検証もすっ飛ばして“ポスト安倍”として露骨なヨイショ報道をする……。…その正体は安倍首相とまったく同じだ》。
『●【金子勝の「天下の逆襲」/野党は「消費減税で戦う」ではなく
ニューディール議論を】…最悪な税制なんかを導入したが故に…』
『●さようならアベ総理、そして、こんにちはアベ様…数々のアベ様案件
について真相を解明し、真の「責任」を果たしていただきましょう』
「2020年8月28日(金)午後、漸くこの日を迎えました。
アベ様が首相辞任を表明しました」
『●斎藤貴男さん【二極化・格差社会の真相】《法令を順守しなければ
ならないのは、誰よりも貴君ら自身、警察権力なのだと自覚したまえ》』
『●前川喜平さん《数々の政策の失敗…行政の私物化について、納得できる
説明をし、ちゃんと謝罪し、その責任をとってから、辞めてほしい》』
『●《官邸職員による“腕つかみ質問阻止”》事件…南彰さん《ついに
質問妨害が、実力行使に発展…安倍晋三首相の記者会見での出来事だ》』
『●浜矩子さん《日本をこの狂った道から正しい道に戻さなくては
ならない。安倍政権はそれほど激しい歪みを日本経済に遺したのです》』
『●アベ様や財務相は、赤木さんが《残したファイルとか、いま黒塗りに
なっている夫がうつ病になった経緯であるとか、出すのは簡単なことだ》』
日刊ゲンダイのコラム【適菜収 それでもバカとは戦え/安倍政権が7年8カ月で「成し遂げた」のは国家と社会の破壊】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/277950)によると、《安倍は「政治においては、何日間在職したかでなく、何を成し遂げたかが問われるんだろうと思うが…」とコメント。え? どこのパラレルワールドの住人か知らないが、成し遂げたのは社会の破壊くらいだし、国民との約束を守らなかったことが現在問題になっているのにね。…乱暴なことは言ってはいけない。…一連の「安倍晋三事件」の追及がうやむやになる可能性もある。安倍が7年8カ月で日本に与えたダメージは凄まじい》。
「安倍のいない世界」で、今からやるべきことが山積。そんなアベ様政治を次期首相は《継承》するつもりらしい。正気とは思えない。
『●麻生太郎財務相兼副首相の狙いはどうやら《首相臨時代理》? アベ様や
麻生氏が<辞めていただくことが、日本の為、復興の為になる>』
サイゾーの記事【安倍晋三首相の“華麗なる生い立ち” テレビ朝日が大河ドラマ仕立てで総括する異常さ】(https://www.cyzo.com/2020/08/post_251364_entry.html)によると、《「華麗なる一族からひも解く 安倍晋三 政界の頂点目指した原点と夢」と題して、その生い立ちからドキュメンタリー仕立てにして見せた。コーナーは2015年に米・議会で安倍首相が行ったスピーチから華々しく始まり、祖父・岸信介、父・安倍晋太郎の紹介。「華麗なる一族で育った安倍晋三総理は何を学び、何を成し遂げたのでしょうか」と、ドラマチックな音楽に乗せて始める。音楽効果ってすごいね。何やらもう、大スターの大河ドラマ的な、もしくは追悼番組かのようだが、あのぉ、辞任発表しただけで、まだ在任してるんですが。》
《メディアコントロール》下でのマスコミのはしゃぎようときたら。青木理さんの『安倍三代』をドラマ化すれば良かったのにね。
『●青木理さん《そこまで政治家に期待するほどウブではない。ただ、
子どもでもわかる嘘をこれほど連発して恥じない首相がかつていたか》?』
《現首相のルーツや生い立ちを取材して「安倍三代」(朝日文庫)を
書いた際、成蹊大で現首相を教えた碩学が発した言葉は強烈だった。
かつての教え子を評して「二つのムチ」に蝕まれていると。それは
「ignorant」の「無知」と「shameless」の「無恥」だと》
日刊スポーツ【政界地獄耳/首相辞任会見で労わなかった記者は冷酷か】(https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202008310000117.html)によると、《でも彼らは自民党の同僚議員ではない。政権の最高責任者に対して、「権力の監視」をする記者が、会見という「公式の場」で、「お疲れさまでした」「ご苦労さまでした」とねぎらいの言葉を発するのは、立ち位置が損なわれるし違和感がある。次の内閣に手渡すまで、職責を全うするという首相には、最後の会見として渡り合う、互いに“公式”の場でなければならなかったはずだ。 ★感想を言うのも意見を言うのも結構だが、新聞記者の中にも、このマナーのないメディア批判に同調する者がいる。それはお門違いも甚だしい。そのなあなあ主義は、記者クラブ制度のあしき慣習から生まれるマナーのない、緊張関係を維持する覚悟のない御用記者の心情だろう》。
記者クラブの皆さんはとってもお優しいですよ、アベ様に。
日刊スポーツのコラム【政界地獄耳/岸田「継承」で狙う麻生派総裁派閥】(https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202008290000103.html)によると、《国民のために立ち上がるのか、党内調整でかごに乗って担がれるのか、国民といばらの道を乗り越えたいと訴える候補者はいるのだろうか》。
《国民といばらの道を…》そんな方が無《責任政党》に居る訳がないでしょ!!
日刊ゲンダイの記事【総裁選“菅圧勝”ムード…安倍首相「3つの誤算」でさらに窮地】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/278034)によると、《キングメーカー君臨構想は破綻寸前…「官邸官僚に取り込まれた安倍さんは、次第に菅長官を遠ざけ、とりわけコロナ禍をめぐる対応では完全に外していた。屈辱的な扱いをされた菅長官は内心、恨み骨髄のはずです。安倍さんが頼みにする盟友の麻生副総裁も叩き上げの菅長官を見下し、反目し合っている。安倍さんにとって不気味なのは、“モリカケ桜”といったスキャンダルの真相を菅長官が熟知していることです。いつ暴露されるか、安倍さんは心が休まらないでしょう。…」…権力をほしいままにし、国家を私物化してきた安倍首相も官邸を出てしまえば“ただの人”。次期政権に“100倍返し”の恥辱を味わわされ、司直の手に落ちることになるのか。》
裸の《キング》と、その後を継ぐ最低の官房長官。世も末だ。《その正体は安倍首相とまったく同じだ》。それどころか、より陰湿に、より悪質に、より強権に。独裁、《メディアコントロール》はより強固に。
特に沖縄にとって。最低の官房長官をはじめ、《悪夢》どころか、沖縄にとって「地獄」のようなアベ様政権でした。そして、最低の官房長官がそれを《継承》するわけです。『報道特集』(2020年8月29日)で金平茂紀さん「…あとは、沖縄ですよね。歴代の政権の中で沖縄に対して最も冷淡な政権だった」と。
《首相の説明責任は消え》るわけがありません。醜悪な国にしてしまったアベ様の罪はあまりに深い。
琉球新報の【<社説>「1強」政治 疑惑の説明責任消えない】(https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1182542.html)によると、《その前に歴代最長政権の「1強政治」をきちんと検証することが不可欠である。首相は第1次政権に続き任期半ばに病気で辞任することになるが、7年8カ月に及んだ第2次政権で噴出した数々の疑惑を幕引きにすることは許されない。首相の説明責任は消えない。…辺野古新基地建設問題で政権は、選挙で何度も示された民意を無視し、技術的にも財政的にも完成が見通せない工事を強行している。地方自治や法治主義にも反するものだ。地域分断を図るような恣意的な予算制度も創設した。1強政治の反省なくして、後継首相を選ぶべきではない。安倍首相が政権発足時に掲げた言葉になぞらえれば、この長期政権で傷ついた日本の民主主義や立憲主義、法の支配などを取り戻すための歩みが今後求められよう》。
=====================================================
【https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1181527.html】
<社説>首相辞任表明 民意尊ぶ政治の復権を
2020年8月29日 06:01
安倍晋三首相が辞任を表明した。2012年12月の第2次内閣発足から約7年8カ月。体調が悪化し、職務を継続するのが困難と判断した。
会見で「政治は結果を出すこと」と強調したが、長期政権にもかかわらず、主要な政策目標は未達成が目立つ。
沖縄についてこれまで「県民に寄り添う」と繰り返した。しかし、基地問題を巡り歴代内閣の中で最も民意に寄り添わなかった。「この道しかない」と、数の力で押し切る政治を終わらせ、民意を尊ぶ政治の復権を望みたい。
第2次内閣発足以降、デフレ脱却の経済政策「アベノミクス」を推進した。名目国内総生産(GDP)600兆円の目標を掲げたが、達成していない。財政健全化のための基礎的財政収支(プライマリーバランス)の20年黒字化は先送り。指導的役割を占める女性の割合が20年に「30%」という「女性活躍」目標も達成せず。北方領土問題や拉致問題は解決できなかった。
国政選挙で連勝し「安倍1強」体制を築く。しかし、17年の衆院選小選挙区で自民党は得票率5割に満たないが7割超の議席を獲得した。現行の小選挙区制のひずみである。
だが、安倍政権が信任されたと強弁して、集団的自衛権の行使を可能とする安全保障関連法、特定秘密保護法、「共謀罪」法を国民の根強い反対を無視して成立させてきた。長期政権のおごりは森友・加計問題、首相主催の「桜を見る会」の私物化疑惑に表れた。
沖縄には国内の米軍専用施設の約7割が集中し、米軍による事件や事故が相次ぐ。今年6月23日の「慰霊の日」に首相はビデオ映像を通じて「基地負担の軽減に向け、確実に結果を出す決意だ」と述べた。「唯一の解決策」として、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を強行する。対米交渉で辺野古以外の解決策を見いだそうとしなかった。
米軍基地問題に対する県政の姿勢によって沖縄関係予算を増減させ、県を通さず国が市町村に直接交付する「沖縄振興特定事業推進費」を創設、地域の分断を図ろうとした。「アメとムチ」の政策である。
辺野古の問題で昨年12月、埋め立て海域の約70メートルより深い軟弱地盤への対処などのため、総工費が当初計画の約2・7倍の約9300億円とする計画見直し案を発表した。しかし、技術的にも財政的にも完成は見通せない。
安倍首相の大叔父に当たる佐藤栄作首相は、琉球政府の屋良朝苗主席に対し「本土の(基地)負担を沖縄に負わすようなことはしない」(1971年)と明言した。だが約束は今も果たされていない。
安倍政権は、国政選挙や知事選挙、県民投票などで辺野古新基地建設反対の民意が示されても無視してきた。民主主義を形骸化させ、少数の国民に基地の負担を押し付けてはばからない政権として、歴史に名が刻まれるだろう。
=====================================================
=====================================================
【https://ryukyushimpo.jp/column/entry-1181523.html】
<金口木舌>この国は「美しい」のか
2020年8月29日 06:00
金口木舌 安倍晋三 戦後レジーム 慰霊の日
戦後生まれ初の首相となった政治家が掲げた 「美しい国」とはいったい何だったのか。国中が新型コロナウイルスの猛威にさらされている中での安倍晋三首相の辞意表明に接し、湧いてきた疑問である
▼憲法改正を信条とし「戦後レジームからの脱却」を唱えた。「国のかたち」を変えたかったのであろう。それは集団的自衛権の行使容認で半ば達成したが、改憲は果たせなかった。安倍政権下の改憲を国民は嫌った
▼今月15日の全国戦没者追悼式で述べた式辞に安倍首相の基本姿勢が表れている。「積極的平和主義」が登場し、「歴史と向き合う」という趣旨の言葉が消えた。過去を顧みることを避ける政治家なのである
▼歴史に翻弄(ほんろう)され、今もなお歴史の重さを県民が感じている沖縄で首相の言葉が響かなかったのは当然のようにも感じる。「慰霊の日」の全戦没者追悼式のあいさつでは、やじが飛ぶこともあった
▼もう一つ、安倍首相が避けてきたことがある。民意を直視することだ。選挙や県民投票を通じて示された辺野古新基地ノーの意思に背を向けてきた。国政への不信感は沖縄で極まっている
▼コロナ禍で国民は疲弊している。沖縄では民意が押しつぶされ続けている。この国は今「美しい」と言えるのか。豊かさで満たされているだろうか。残り少ない任期の中で安倍首相には国民の姿を見つめてほしい。
=====================================================
=====================================================
【https://lite-ra.com/2020/09/post-5611.html】
「密室談合」による菅官房長官の次期総理就任を許していいのか! GoTo、沖縄いじめ、公文書改ざん、メディア圧力の最大の戦犯
2020.09.01 01:33
(首相官邸HPより)
やっぱり菅義偉官房長官が表に出てきた。細田派・麻生派の支持を取り付けた菅官房長官は明日会見を開いて総裁選出馬を発表すると見られているが、もちろんこれらはすべて「密談」で決定済みの茶番劇だ。
本サイトでは、菅官房長官が安倍首相の最大の後見人である“極右の女神”櫻井よしこのネット放送『言論テレビ』に出演したときから、“とにかく石破だけは避けたい”安倍首相が菅官房長官を選んだ結果、と分析していたが、そのとおりだったということだろう。
しかも、安倍首相が菅押しの二階俊博幹事長に「総裁選は一任する」と明言したときから、石破茂氏をつぶすため党員・党友による投票が省略されることも既定路線。党員・党友投票見送り方針には地方組織や若手議員から反対の声があがっていたが、二階幹事長は「両院議員総会」案を主張し、自民党総務会もこれを決定。菅官房長官が次期総裁・首相となることは確実だ。
そして、こうした動きと合わせてすでにワイドショーも「次期総理最有力」として菅官房長官の特集を組み、昨日放送の『ゴゴスマ~GOGO!Smile!~』(CBCテレビ)では「集団就職で秋田から上京してきた苦労人」「段ボール工場で住み込みしていた苦学生」「叩き上げ」「甘いもの好き」「人情家」「意外とお茶目」などと喧伝。コメンテーターが「好きになりそう」などと無邪気なコメントを繰り広げていた。
菅官房長官は新型コロナの感染拡大の局面で「GoToトラベル」を前倒しして決行させた張本人であるというのに、そうした検証もすっ飛ばして“ポスト安倍”として露骨なヨイショ報道をする……。だが、言うまでもなく、菅官房長官は「令和おじさん」「パンケーキおじさん」などで片付けられるようなものではない。その正体は安倍首相とまったく同じだ。
そもそも、菅官房長官といえば「安倍政権のゲッベルス」として安倍首相の強権的な政治運営を支え、質問に答えない「スガ話法」で記者会見をズタズタにしただけではなく、加計学園問題では「総理のご意向」文書を「怪文書」呼ばわりしたり、前川喜平・元文科事務次官のことを「前川氏は当初は責任者として自ら辞める意向をまったく示さず、地位にレンメン(編集部注・おそらく「恋々」の間違い)としがみついていた」などと虚偽の情報で人格攻撃を展開。さらに、東京新聞の望月衣塑子記者の質問に対しては「あなたに答える必要はありません」「ここは質問に答える場所ではない」などと官房長官としてあるまじき暴言を放ってきた。
しかも、忘れてはならないことは、菅官房長官は安倍政権下で噴出したあらゆる疑惑の“当事者”でもある、ということだ。
■森友公文書改ざんは菅官房長官が司令塔、近畿財務局職員・赤木俊夫さんを追い込んだ
その最たる例が、森友公文書改ざん問題だろう。というのも公文書改ざんは、安倍首相の指示を受けた菅官房長官が、佐川宣寿・理財局長(当時)らに命じてはじまった可能性が高いからだ。
公文書改ざんは2017年2月17日の「私や妻が関係していたということになれば、私は間違いなく総理大臣も国会議員も辞める」という安倍首相の国会答弁がすべてのはじまりだったが、安倍首相は「総理を辞める」宣言のあと、菅官房長官に「私の家内の名前も出ましたから、しっかりと徹底的に調べるように」と指示を出していたことを国会でも認めている。
実際、菅官房長官はこれを受けて、同月22日に財務省の佐川理財局長と中村稔・総務課長、太田充・大臣官房総括審議官(いずれも当時)を呼び出している。ここで佐川氏は、昭恵夫人付職員だった谷査恵子氏が森友学園の小学校に賃料引き下げの優遇措置を適用できないかなどと財務省に照会していたことを報告。そして、この面談から4日後の26日から改ざん作業ははじまり、財務省の指示により真っ先に昭恵夫人や安倍首相の名前が入った箇所がことごとく削除されていく。その作業を強要されたのが、自殺した近畿財務局職員・赤木俊夫さんだったのである。
赤木さんの妻・雅子さんは、安倍首相が辞任の意向を固めた際、「次に総理大臣になる方は、夫がなぜ自死に追い込まれたのかについて、有識者によって構成される第三者委員会を立ち上げ、公正中立な調査を実施していただきたいと思います」とコメントを公表したが、“改ざんの当事者”である疑いが濃厚な菅官房長官が総理大臣となれば、この訴えが聞き入れられることはないだろう。
さらに、菅官房長官の強権性を物語るのが、沖縄の辺野古新基地建設問題だ。
安倍政権は辺野古新基地建設に反対する民意を無視し、基地反対運動に参加する市民たちを暴力で排除したり、繰り返される在沖米軍による事故や事件にも政府として何ひとつ向き合わず沖縄をいじめ抜いてきたが、その先頭に立ってきたのが沖縄担当大臣でもある菅官房長官。しかも、そのやり方は陰湿そのもので、沖縄県知事選では潤沢な選挙資金と組織力にものを言わせたすさまじい物量作戦を展開しただけでなく、街頭演説で「携帯電話料金の4割削減」などというデタラメな公約を打ち出した上、玉城デニー氏を誹謗中傷する大量のデマ喧伝にも間接的にかかわっていたという疑惑もある(詳しくは既報参照 → https://lite-ra.com/2018/09/post-4241.html)。
2018年に亡くなった翁長雄志・前沖縄県知事と菅官房長官は法政大学の同窓でもあるのだが、翁長氏が講演で明かしたところによると、2015年9月に沖縄県と政府の集中協議が決裂した際、翁長氏が「私の話は通じませんか」と問いかけると、菅官房長官はこう語ったのだという。
「私は戦後生まれなので沖縄の歴史はなかなか分からないが、19年前の日米合同会議の辺野古が唯一というのが私の全てです」
■『クローズアップ現代』『報道ステーション』に圧力、キャスター、コメンテーターの降板に追い込んだ
また、この集中審議後の会見で菅官房長官は、翁長氏の「戦後の強制接収が普天間問題の原点」という主張に対し、こんなことを言い放っている。
「賛同できない。戦後は日本全国、悲惨ななかでみなさんが大変ご苦労されて今日の豊かで平和で自由な国を築き上げてきた」
みんな苦労したのだから、沖縄だけ文句を言うな──。少しでも沖縄の歴史を知っていれば、とてもじゃないが口にできるはずがない言葉だ。しかし、菅官房長官は「戦後生まれだから」という理由で沖縄を知ろうともしなかったくせに、翁長知事の訃報に際しては「2人になると沖縄の発展について話し合いをよくした」などと発言したのである。
これでよく「人情家」などという評価が出てくるのか、さっぱり意味がわからないが、しかし菅官房長官を語る上でもっとも重要なのは、安倍政権によるメディア圧力を担ってきた、という点だ。
というのも、菅官房長官はニュース番組やワイドショーなどの放送をいちいちチェックしており、気にくわない報道やコメントがあれば、すぐさま上層部にクレームを入れることで圧力を高めてきた張本人だからだ。
たとえば、2014年7月にNHKの『クローズアップ現代』に出演した際には、閣議決定されたばかりだった集団的自衛権の行使容認についてキャスターの国谷裕子氏が厳しい質問を繰り出し、菅官房長官は激怒。その後、政権側は『クロ現』のやらせ問題を隠れ蓑にして圧力を強め、最終的に国谷氏のキャスター降板まで追い詰めた。
さらに有名なのが、『報道ステーション』(テレビ朝日)で古賀茂明氏が「I am not ABE」と発言し、レギュラーコメンテーターを降板させられた事件だろう。このとき官邸は古賀発言に大激怒し、本サイトでも当時伝えたように「菅官房長官の秘書官」が放送中から番組編集長に電話をかけまくり、出なかったため、今度はショートメールで猛抗議。その内容は「古賀は万死に値する」というようなもので、恫喝以外の何物でもなかった。
のちに古賀氏は著書『日本中枢の狂謀』(講談社)で、恫喝した菅官房長官の秘書官が警察官僚の中村格氏であったことを明かしている。中村氏といえば、官邸に近いジャーナリスト・山口敬之氏による伊藤詩織さんへの性暴力疑惑をめぐって、直前で山口氏の逮捕取りやめを指示した人物として知られるが、このようにして菅官房長官はマスコミをコントロールしてきたのだ。
■会食でメディア関係者、ジャーナリストを手なづけ、懐柔する作戦も
しかも、菅官房長官は恫喝するだけではなく、マスコミ関係者と会食をしては手懐けるという安倍首相と同じ手法もとっている。そして、その会食相手には、菅官房長官へのヨイショ発言も目立つ『ひるおび!』(TBS)司会の恵俊彰の名が取り沙汰されたこともある。
菅官房長官のこうした懐柔工作は、政権に批判的なキャスターにも向けられている。毎日新聞の主筆や『NEWS23』(TBS)アンカーなどを務めた故・岸井成格氏は、佐高信氏との対談本『偽りの保守・安倍晋三の正体』(講談社)で菅官房長官の手口を証言している。これによれば、岸井氏は企業の幹部に話をするという勉強会を長くつづけていたのだが、その場に菅官房長官が突然、やってきたというのだ。
「(菅官房長官は)黙って来た。誰かから聞いて知ったんだろう。最初から最後までいたよ。終わると『今日はいい話を聞かせていただいて、ありがとうございました』と言って帰っていった。怖いよな」
「『どこで何を話しているか、全部知っていますよ』ということを見せているわけだ。『人脈も把握しています。岸井さんが動いているところにはいつでも入っていけますよ』というメッセージかもしれない」(『偽りの保守・安倍晋三の正体』より)
まさに、菅官房長官が陰に陽に繰り広げてきたメディア工作により忖度が広がり、スキャンダルや疑惑が持ち上がっても批判的な報道が徹底してなされず、安倍政権は約8年もの長期政権となったわけだが、当然、菅官房長官が次期総理となれば、メディア圧力はさらに激しさを増し、安倍政権以上に批判が封じ込められることは必至だ。
現に、菅官房長官は“ポスト安倍”を睨んで、安倍首相が辞意表明をおこなう前から積極的なメディア露出を展開。8月だけでも、1日『ウェークアップ!ぷらす』(読売テレビ)、2日『日曜討論』(NHK)、7日『櫻LIVE 君の一歩が朝を変える!』(言論テレビ)、18日『深層NEWS』(BS日テレ)、21日『報道ステーション』(テレビ朝日)と、テレビやネットの番組に次々と出演したが、どの番組も菅官房長官の言い分を言わせっぱなしで、たとえば『報ステ』では一応「GoToキャンペーン」や国会を開かない問題を質問したものの、菅話法で返されるとほとんど反論できず、そのインチキな主張を垂れ流した。前述したように『報ステ』はかつて菅官房長官から露骨に圧力をかけられたことがあるが、メディアへの圧力問題にはふれることすらできなかった。
圧力をかけられることを恐れ、総裁・総理になる前から及び腰となり、「安倍政権のゲッベルス」と呼ぶべき人物を「パンケーキおじさん」と実態を覆うための糖衣でくるんでヨイショ報道に終始する──。ようするに、菅総理が誕生するということは、安倍政権の悪夢がこれからもつづいてゆくということにすぎないのである。
(編集部)
=====================================================
神奈川新聞のシリーズ記事【時代の正体〈45〉歴史と向き合う 募る戦争の危機感 報道写真家石川文洋さん】(http://www.kanaloco.jp/article/81267/cms_id/114853)。
「政治家が「戦争のできる国」を志向し、その言葉の軽さが目立つ昨今、現実の戦争を知るベテランジャーナリストの言葉の重みは、ますます際立つ・・・・・・出発点はベトナム戦争だった・・・・・・「どんな大義を振りかざそうとも、戦争は殺し合いに他ならない。戦場では、殺すか殺されるか。だからこそ、そんな状況をつくってはいけない」・・・・・・では、どうすれば戦争を防ぐことができるか。「戦争の実態を知り、悲劇を想像する力を持つこと」と説く」
沖縄と石川文洋さん。「壊憲」し「戦争できる国」へ、物騒な世の中。アベ様はトップセールスと称して「死の商人」となり、世界中におカネをばら撒き、ケンカを売り、火に油を注ぎ、・・・・・・。国内では、アベ様は辺野古破壊者として「ロコツな“沖縄イジメ”」。
『●沖縄と報道カメラマン・石川文洋さん』
『●「日本を売る秘密交渉 TPP」
『週刊金曜日』(10月18日、964号)についてのつぶやき』
「■⑪『週刊金曜日』(2013年10月18日、964号) / 石川文洋
(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/6825289b60b19442e4ab8d25aab34a58)
さん【オスプレイ強行配備から一年 米軍機が飛ばない沖縄の日へ】、
「米軍機のない光景」「軍隊は住民を守らない」「若い世代への期待」」
『●「袴田事件の次は狭山事件だ」 『週刊金曜日』(2014年5月23日、992号)』
「■⑤『週刊金曜日』(2014年5月23日、992号) / 石川文洋さん
【ベトナム50年を旅する】、「戦争はその〝いい人〟たちが、人を殺すし、
拷問もする・・・それが戦争です。・・・私の仕事は、今、
そこで起きてる事実を記録し、伝えること」。石川さんとベトナムと沖縄と
(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/6825289b60b19442e4ab8d25aab34a58)」
『●「歴史修正主義 日本の政治家に蔓延する病」
『週刊金曜日』(2014年10月31日、1014号)・・』
「■⑭『週刊金曜日』(2014年10月31日、1014号) / 武田砂鉄氏
【新作ドキュメンタリーが公開された綿井健陽監督インタビュー
イラク戦争が突き付ける日本の立ち位置】、「新作
『イラク チグリスに浮かぶ平和』・・僕自身、石川文洋さんや
沢田教一さん等の写真でさまざまな戦争を記憶してきた」」
==============================================================================
【http://www.kanaloco.jp/article/81267/cms_id/114853】
時代の正体〈45〉歴史と向き合う 募る戦争の危機感 報道写真家石川文洋さん
2014.12.05 12:13:00
報道写真家の石川文洋さん(76)=長野県諏訪市=は世界各地の戦場に赴き、ごく普通の民間人が犠牲になる戦争の実態を撮り続けてきた。生まれ故郷の沖縄も取材し、米軍基地に翻弄(ほんろう)される姿を伝える。イデオロギーやナショナリズムではない。半世紀に及ぶキャリアを貫くのは住民目線だ。「戦争とは『殺し合い』。かつてないほどの危険性をひしと感じる」。政治家が「戦争のできる国」を志向し、その言葉の軽さが目立つ昨今、現実の戦争を知るベテランジャーナリストの言葉の重みは、ますます際立つ。
11月16日午後8時すぎ。石川県羽咋市での講演会で、沖縄戦を話題にした直後だった。沖縄県知事選で米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する翁長雄志氏が当選したと、会場に伝えられた。拍手が湧き起こる中、「良かった」と喜びはしたが、ある思いも交錯した。
「辺野古での新基地建設は『国益』。政府は変わらず、突き進めるだろう。これからが正念場だ」
出発点はベトナム戦争だった。1965年から4年間、首都サイゴン(現ホーチミン)を拠点に米軍などに従軍し、最前線を撮影した。
レンズを向ける米兵は「ごく普通の若者たちだった」。多くは片田舎で生まれ育ち、米国が軍事介入の大義として掲げた「共産主義化の阻止」とは無縁。ベトナムがどこにあるかさえ知らない。戦地ではただ、無事に帰国することだけを願っていた。
戦争はしかし、人を変える。「若者たちが、戦場では殺人者に変貌した」
包囲した農村をジェット機で爆撃し、ナパーム弾で焼き払う。武装したヘリコプターが機銃掃射とロケット弾を撃ち込む。お年寄りや子どもがいても、ためらいはない。防空壕(ごう)に手りゅう弾を投げ込み、農民たちの遺体を引きずり出した。「考えることをやめ、上官の命令に従う。命令が絶対な軍隊の本質が表れていた」
集団的自衛権の行使容認が閣議決定され、自衛隊が海外での戦闘に参加する可能性が出てきた。自衛隊員が相手を殺害したり、逆に犠牲になったりする事態が現実味を帯びる。
ベトナムでは、恐怖から逃れるようにシャッターを切った。兵士としてあの場にいれば、自身も引き金を引いただろう。
「どんな大義を振りかざそうとも、戦争は殺し合いに他ならない。戦場では、殺すか殺されるか。だからこそ、そんな状況をつくってはいけない」
■乏しい想像力
60年6月。ニュース映画のカメラマン助手として、新日米安保条約の批准書交換に立ち会った。30万人超ともいわれる人々が国会を取り囲んで安保改定反対の声を上げ、ついには死者も出た。それでも政府は強硬姿勢を崩さない。「政府は国民の声、民意を聞き入れない」との思いが募った。
数年後、ベトナムでの米軍の振る舞いに確信した。「政府の目的は国益を守ること。優先されるのは国家であり、民間人の命ではない。戦争ではむしろ、民間人が犠牲になる」
生きたくても、生きられなかった-。そんな数多(あまた)の死と向き合い、「民間人が平和に暮らせることこそが国益。『命(ぬち)どぅ宝』。何よりも命が大切です」。
では、どうすれば戦争を防ぐことができるか。「戦争の実態を知り、悲劇を想像する力を持つこと」と説く。
例えば米軍のイラク空爆に賛成することは、そこで暮らす子どもたちの殺害を容認することと同じだ。ただ、今の日本では空爆支持が大勢だろう。「戦争の悲惨さを過去に学ぶことなく、何の罪もない子どもたちが殺される姿を想像できない人が、あまりに多い」
ベトナム戦争ではジャーナリストが最前線を取材し、実態を伝えたことが反戦運動のうねりを生み、戦争終結につながった。「政府が何を考え、何をしているのか。情報をオープンにして、その行動に枷(かせ)をはめることが重要」と訴える。
この国はしかし、逆行する道を歩みつつある。10日に施行される特定秘密保護法は、政府が不都合な情報を隠す危険性をはらむ。戦争の実態を何も知らず、想像力も乏しい政治家が「戦争のできる国」にかじを切り、多くの支持を得ているようにみえる。
「戦争を軽く考えている。これほどまでに戦争の危険性を感じたことはない」。危機感は募るばかりだ。
■変わらぬ沖縄
72年5月15日。沖縄の本土復帰の日、本島南部の小学校で1枚のモノクロ写真を撮影した。黒板には、子どもたちが復帰後の沖縄の姿を描写した言葉が並ぶ。
「アメリカ軍はでていかない」
「きちはそのまま残る」
40年後の2012年、担任だった女性に再会した際、彼女はこう漏らした。「今の沖縄。あの時と、何も変わっていませんね」
那覇市生まれ。4歳で本土に移り住み、沖縄戦を経験していない。引け目にも似た思いを持ち、「常に沖縄を意識しながら取材してきた」。
沖縄で写真展を開いた時のことだ。沖縄戦を体験したお年寄りが、異国の戦場の様子にじっと見入っていた。平和教育が盛んな土地柄。保育士に連れられ、保育園児も足を運んでくれた。「戦争の記憶が日常の中にあり、子どもたちに引き継がれている。常に戦争を意識せざるを得なかった歴史の裏返しです」
兵士や兵器を積んだ米軍機が今も戦地に向けて飛び立つ。ベトナム戦争当時と変わらぬ沖縄の風景だ。差別的な基地負担を強いられ、常に事件や事故と隣り合わせの被害者であると同時に、「後方支援基地として、命を奪う加害者側でもある。そんな罪悪感にも似た感情を持つ人は少なくない」。被害者の痛みが理解できる。それもまた、沖縄が歩んできた歴史ゆえだ。
その沖縄で今、新たな米軍基地が建設されようとしている。地元の辺野古では、住民が容認派と反対派に分かれていがみ合い、同じ沖縄県民の警察官が反対派の活動を阻む。「国益の名の下に分断を強いられる沖縄の姿が、米国の国益に翻弄され、南北に分かれて争ったベトナムと重なる」
政府は新基地建設を「沖縄の負担軽減のため」と言う。だが実態は、普天間の危険性を人質にした「機能強化、固定化に他ならない」。知事選で建設反対の民意があらためて明確に示されたが、「政府は国民の関心を衆院選にそらし、争点を経済問題にすり替えようとしている。知事選の結果をなかったことにするのではないか」。安保条約改定時、民意を無視した政府の姿を思い起こす。
「軍隊は抑止力にならない。むしろ、軍隊がいるからこそ標的になる」。沖縄戦を念頭に、自身の戦場体験も踏まえた持論だ。「抑止力」を主張して新基地建設を押し進める政府に反論する一方、日本の「誇り」や「主権」を力説する人々に問う。「また、沖縄を犠牲にするつもりですか」
ベトナムでは目の前の米兵ではなく、自身が命を落としてもおかしくなかった。「生きるか死ぬか。全ては運」。それが戦場だ。
命の尊さを知り、平穏な暮らしと無限大な将来を根こそぎ奪う戦争の愚かさを伝える。そして、一人の「沖縄人」として切望する。
「生きている間に基地のない平和な沖縄を見たい。それが、私の願いです」
石川さんの写真展「ベトナム戦争と沖縄の基地」が21日まで、横浜市中区の日本新聞博物館で開かれている。午前10時~午後5時。月曜休館。入館料は一般510円など。問い合わせは、同館電話045(661)2040。
【神奈川新聞】
==============================================================================
琉球新報の社説【河野談話の継承 歴史と向き合う覚悟持て】(http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-221533-storytopic-11.html)。
東京新聞の記事【「慰安所隠蔽 軍が資金」元日本兵供述の資料 専門家「河野談話裏付け」】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2014032302000122.html)。
最後に、橋下徹元大阪「ト」知事について、魚住昭さんの『魚の目』(http://uonome.jp/)に出ていた記事【わき道をゆく第34回 YESとは言えない交渉術】(http://uonome.jp/article/uozumi-wakimichi/2776)。
一国の首相が歴史修正主義者なんてことになると、国際的な大恥である。「安倍晋三首相が従軍慰安婦問題をめぐり旧日本軍の関与と強制性を認めた1993年の河野談話を継承する方針を示した。だが日本の歴史認識に対する国際社会の不信が消えたわけではない。首相はそれを自覚する必要がある」。
『●一国の首相が歴史修正主義者なんて恥ずかしいし、
羞恥心の無さと自覚の無さという救いの無さ』
ニセ右翼がどんどんと墓穴を掘っている。「旧日本軍の従軍慰安婦問題で、太平洋戦争中にインドネシアのバリ島に海軍兵曹長として駐屯していた男性が、一九六二年の法務省の調査に「終戦後(慰安所を戦争犯罪の対象に問われないよう)軍から資金をもらい、住民の懐柔工作をした」と供述していたことが分かった。元兵曹長は「(慰安婦として)現地人など約七十人を連れてきた」「他にも約二百人を部隊の命で連れ込んだ」などと連行の実態も説明していた」・・・・・・そうだ。証拠が出てきている。さて?
『●「証拠が出てくれば反省しなければならない」のだから、反省してください』
ちなみに、ハシズム氏には「『最後に思わずYESと言わせる最強の交渉術』(日本文芸社刊)という本がある。橋下徹氏が10年前に書いたものだ。「黒を白といわせる」レトリックや”うそ”を駆使して「相手を丸め込」む方法をかなり詳しく記している」そうです。
==============================================================================
【http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-221533-storytopic-11.html】
社説
河野談話の継承 歴史と向き合う覚悟持て
2014年3月18日
安倍晋三首相が従軍慰安婦問題をめぐり旧日本軍の関与と強制性を認めた1993年の河野談話を継承する方針を示した。だが日本の歴史認識に対する国際社会の不信が消えたわけではない。首相はそれを自覚する必要がある。
問題をめぐっては菅義偉官房長官が2月末、談話の作成経緯を調べるチームを政府内に新設する方針を表明。談話の根拠となった元慰安婦の証言内容に関し「もう一度確認することが必要だ」と述べていた。
これに先立ち安倍首相も2月下旬、河野談話に批判的な日本維新の会の山田宏氏に対し「時機を逸せずに、議論を真剣にやる必要がある」と呼び掛け、談話検証への意欲を示していた。
だが韓国は「談話の見直しにつながる」と激しく反発し、米国も不快感を表明した。頼みの米国も韓国寄りの姿勢を示したことで、首相も談話の見直しを慌てて否定せざるを得なかったのだろう。
だが両国は「見直しは考えていない」という首相の言葉を額面通りに受け取ってはいまい。なぜなら首相が過去に、談話の修正に何度も意欲を示しているからだ。
慰安婦問題で第1次安倍内閣は2007年、「軍や官憲による強制連行を直接示す記述は見当たらなかった」との答弁書を閣議決定。安倍氏は12年の自民党総裁選の討論会で「談話により日本は不名誉を背負っている。閣議決定が国内外で共有されていない」と語った。
河野談話の批判論者はその閣議決定などを引用し、強制性の証拠にこだわるが、欧米などは強制性の有無にかかわらず、慰安婦の存在自体を「人道に対する罪」と問題視していることを直視すべきだ。
首相が談話継承を表明した背景には4月下旬のオバマ米大統領の日韓訪問を前に、日韓関係改善を強く求める米側の意向がある。安倍政権は保守層を念頭に、談話の検証作業は続けるとの方針を示す。
談話継承に対する首相の不承不承の態度が透けて見える。日本側が求める今月下旬の日米韓3カ国首脳会談の開催に対し、韓国は「歴史問題などで誠意ある措置を早く取るべきだ」として依然慎重な姿勢だ。
この問題で日本に厳しい視線を送るのは米韓両国だけでなく、今のままでは歴史修正主義の国として孤立しかねない。歴史を直視し、国際社会からの不信の連鎖を直ちに断ち切らなければならない。
==============================================================================
==============================================================================
【http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2014032302000122.html】
「慰安所隠蔽 軍が資金」元日本兵供述の資料 専門家「河野談話裏付け」
2014年3月23日 朝刊
旧日本軍の従軍慰安婦問題で、太平洋戦争中にインドネシアのバリ島に海軍兵曹長として駐屯していた男性が、一九六二年の法務省の調査に「終戦後(慰安所を戦争犯罪の対象に問われないよう)軍から資金をもらい、住民の懐柔工作をした」と供述していたことが分かった。
元兵曹長は「(慰安婦として)現地人など約七十人を連れてきた」「他にも約二百人を部隊の命で連れ込んだ」などと連行の実態も説明していた。
関東学院大の林博史教授(日本近現代史)の研究室が国立公文書館(東京)保管の資料で見つけた。林教授は「河野洋平官房長官談話が認めた軍の関与を裏付けるもので重要だ」と評価している。
安倍政権は、旧日本軍の関与と強制性を認定した河野談話の作成経緯を検証する方針を示している。
法務省の担当者は、男性の供述について「既に公文書館に資料を移管していて確認できず、責任を持って答えられない」と回答した。
法務省の資料によると、元兵曹長は四七年八月、オランダ軍がBC級戦犯を裁いたインドネシア・バタビア(現在のジャカルタ)の軍法会議で、住民への暴行などに問われ、懲役十二年(求刑懲役十五年)の判決を受けた。
元兵曹長は六二年八月の調査に、罪に問われた十件余りは「殴った蹴った程度の事件ばかり」と振り返り「(発覚を)一番恐れたのは慰安所事件だった」と告白した。
強制売春は戦犯行為に問われる。元兵曹長は「軍需部などに強硬談判して約七十万円をもらい、各村長を通じて住民の懐柔工作に使った」と述べ、組織的な隠蔽(いんぺい)を示唆した。「これが完全に功を奏したと見え(慰安婦関連では)一件も訴えが出なかった」と話した。
<河野官房長官談話> 宮沢内閣の河野洋平官房長官が1993年に従軍慰安婦問題の政府認識について発表した談話。「甘言、強圧により本人たちの意思に反して集められた事例が数多くある。官憲などが直接加担したこともあった」と旧日本軍の関与と強制性を認め、慰安婦に謝罪した。歴代内閣は談話を継承してきたが、菅義偉官房長官は談話作成の経緯を検証する方針を表明。安倍晋三首相は3月「安倍内閣で見直すことは考えていない」と述べた。
==============================================================================
==============================================================================
【http://uonome.jp/article/uozumi-wakimichi/2776】
わき道をゆく第34回 YESとは言えない交渉術
2013 年 8 月 30 日
魚住昭
『最後に思わずYESと言わせる最強の交渉術』(日本文芸社刊)という本がある。橋下徹氏が10年前に書いたものだ。「黒を白といわせる」レトリックや”うそ”を駆使して「相手を丸め込」む方法をかなり詳しく記している。
相手を思い通り動かすには〈合法的に脅す〉〈利益を与える〉〈ひたすらお願いする〉の3通りしかない。なかでも有効なのが〈利益を与える〉で、とくに〈仮想の利益〉が重要なのだそうだ。
たとえば「私の主張にのらなければこんな不利益がある」と言って、相手方にデメリット回避による〈仮想の利益〉を与える。あるいは、こちらにとって譲歩にあたらない些細なことでも、大きな譲歩と見せかけ、相手方の得る利益が大きいものだと錯覚させる。
橋下氏は さらに「もつれにもつれた案件」では「これまでの発言や約束ごとを覆す」のが重要といい、そのノウハウをふたつ明かす。①自分の言ったことに無理矢理前提条件をつける②一度オーケーした意味内容を狭める、である。
①は「AをオーケーしたのはBという条件が必要だったんですよ」とあとから無理やり付け足す。そのうえで「確かにオーケーしましたが、Bという条件が整っていないから、約束は果たせません」という論法で逃げるやり方だ。
②は、たとえば交通事故で双方の過失割合が5対5なのに、相手の損害額100万円を”全額払う”との念書を書いた場合、”全額”の意味を狭め「無制限に払 うといったのではなく、法律の範囲(5対5で決められた50万円)で全額を払うということ です」といってひっくり返すのだという。
他にもいろんなテクニックがあるが、いちいち紹介する必要はあるまい。橋下流交渉術の核心は、舌先三寸で相手の目をくらまして、論点をすりかえてしまうことだ。
では、その交渉術は実戦でどれほど威力を発揮するのか。従軍慰安婦発言などの釈明のため、彼が日本外国特派員協会に現れると聞いたので取材しに行った。
冒頭、橋下氏は「私の一つのワードが抜き取られて報じられたのが、今回の騒動のきっかけ。断片のみが伝えられることで、私の真意と正反対の意味の報道が世界中を駆け巡った」と述べた。
自分は「『戦時においては』『世界各国の軍が』(慰安婦の)女性を必要としていたのではないかと発言したところ、『私が』容認してい ると誤報された」のだという。
これが、先に紹介した橋下流交渉術①<これまでの発言を覆すために自分の言ったことに無理やり前提条件をつける>だということはもう言うまでもないだろう。
だが、このテクニックは功を奏さなかったようだ。私が確認した範囲で橋下氏の言葉を真に受けた特派員はひとりもいない。それもそのはず、彼は2週間前の朝 「精神的に高ぶっている猛者集団に休息を与えようとすると慰安婦制度が必要なことは誰だって分かる」と記者団にはっきり述べている。
しかも、その日午後のツイッターには「『歴史認識と慰安婦問題について』批判の急先鋒に立つ朝日新聞も、僕の発言を比較的正確に引用してくれていた」「毎日新聞も僕に対する批判の急先鋒だが、かなりフ ェアに発言要旨を出している」と書きこんでいる。
さらに同じ日の午後の会見で「沖縄の米軍司令官に『もっと風俗業を活用してほしい』と言った。『そうしないと海兵隊の猛者の性的エネルギーをコントロールできない』とも伝えた」と語った。
ところが、国内外から非難が殺到すると、一転「朝日新聞なんか最低だ。『当時』という言葉も全部外して。毎日新聞、あのタブロイド紙も最低だ。今回は大誤報をやられた」と言い出した。品格を疑いたくなる豹変ぶりである。
橋下氏のこうした言動を痛烈に批判したのは琉球新報だ。
社説で「彼に何より足りなかったのは人権感覚だ。人間認識の根本的な誤りに気づいていないのが問題なのだ。(中略)『海兵隊の猛者の性的エネルギーをコン ト ロール』するはけ口として、生身の女性をあてがおうとする発想そのものがおぞましいのだ。『あてがわれる』立場に自分が置かれたら、と想像してみるがい い」と指弾していたが、その通りだと思う。
もうひとつ、特派員協会での発言で私が気になったのは河野談話についての見解だ。彼は「従軍慰安婦に 対する軍の一定の関与はあります。だが国家の意思として組織的に女性を拉致・人身売買したという点を裏付ける証拠はありません。河野談話はそこが曖昧だか ら、今も日韓両国の核心的論点になっている」と繰り返し強調した。
もっともらしく聞こえるが、のせられてはいけない。これは「これまでの発言や約束ごとを覆す」橋下流交渉術②「一度オーケーした意味内容を狭める」やり口だ。
河野談話を出すにあたって政府は元慰安婦の女性らへの聞き取り調査を行い、彼女らの証言を徹底的に分析した。その結果「どう考えても彼女たちが作り話を 言っているとは思えない。本当の体験に基づく証言としか考えられないものがかなりの数あった」(石原信雄元官房副長官の証言。『慰安婦問題という問い』 (大沼保昭・岸俊光編、勁草書房刊)より。以下同じ)ため、軍の組織的関与と強制性を明確に認める河野談話を発表した。
強制連行を直接裏付ける通達などの物的証拠は見つからなかったが、元慰安婦らの証言に証拠としての価値を認めたのである。
橋下氏はそうした経緯を無視した。物証が見つからなかったのを「証拠がなかった」と言い換えることで河野談話の「意味内容を狭め」た 。いや、貶めた。法律家としてあるまじき行為だろう。
河野談話は橋下氏が言うような曖昧なものではない。その重みを端的に物語るのは、アジア女性基金で台湾の元慰安婦への償い事業を担当した岡檀(おか・まゆみ)さんの話だ
岡さんは『償い金』と一緒に総理のお詫びの手紙を女性たちに手渡したとき、総理のメッセージがどこまで伝わるか心配だった。だがそれは杞憂だったと言う。
「手紙が伝えようとしていることを、おばあさんたちは正確に受け止めた
という印象をもちました。『こんな日が来るとは思わなかった』と言って、
手紙を胸に抱きしめて、泣かれて…。
なぜ泣かれたのか。
おばあさんたちは、戦後ずっと罪悪感にさいなまれてきたきたんですね。
(中略)子どもを身 ごもってしまったこととか、夫に嘘をつき通したこととか。
そういう自分に対して、あなたのせいじゃなくて悪かったのはこちらです、
申し訳なかったと言われるのは、思いもよらない出来事だったのです。
部屋に戻って からも、また手紙を取り出して、何回も何回も読まれて。
『わかりますか?』とお尋ねしたら、『わかりますよ。許してくれって
書いてあるでしょう』『うれし くて涙がとまりません』とおっしゃいました」(了)
(編集者注・これは週刊現代連載『わき道をゆく』の再録です)
==============================================================================