Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

夢酔独言

2021-12-23 21:40:08 | 読書
勝部真長 訳編「夢酔独言 - 勝小吉自伝 -」角川書店 (文庫 1974/1).
「おれほどの馬鹿な者は世の中にもあんまりあるめえとおもふ.だから,孫やひこのために、はなしてきかせるが、よくよく「不法者」「馬鹿者」の戒めにするがいゝぜ」という出だし.ただしこれは口語訳.原文は東洋文庫にあるらしい.

読むものがないので書棚から引っ張り出した.奥付は50年くらい前.当時なぜこれを読んだのだろう.
どうやら同じ口語訳がそのまま 2015 年に講談社学術文庫入りしたらしい.講談社版の惹句を転載すると*****

勝海舟 (1823-1899) の父、勝小吉 (1802-1850) の自伝。江戸有数の剣客にして、放蕩の不良旗本。浅草・吉原の顔役、刀剣ブローカーでもあった。身持ちの悪さに父親により三年余り座敷牢に入れられ、その間に生まれたのが麟太郎(海舟)。四二歳、天保の改革のときに不行跡から隠居謹慎となり、夢酔と称し、自己の来し方を子孫への戒めとして著したのが本書。幕末頽唐期の江戸裏社会を知る夢酔老の面目躍如たる、率直端的な独特の文体が、妖気を放ち心に迫る。*****

巻末に訳編者・勝部真長(かつべ みたけ) による「夢酔と海舟 - 父と子 -」と題する文章があって,少々脱線が多いきらいはあるが,これを読めば本文は読まなくてもいいくらいの出来.Wikipedia によれば勝部は和辻哲郎に師事した哲学者で,お茶大教授であった.日本を守る国民会議(現:日本会議)代表委員を務めたとあるが,要出典ともある.

子母沢寛の小吉と海舟をモデルとした小説「父子鷹」1956 は新聞に連載された,高校時代 ? に読んだ覚えがある.勝部は,子母沢の小吉像はかっこいいが,どこか江戸っ子の軽薄さがつきまとうと言う.夢酔独言の「おれ」はつねに苦渋を含んで,訳のわからないモヤモヤを抱えて悩んでいるとも良う.そこが,坂口安吾「安吾史譚」に評価されたポイントだろう.

小吉 40 台前半の著だが,著者が死んだとき海舟はまだ 27 歳だった.本人はもちろん,海舟の生前にも刊行されなかったという.
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「音と音楽の科学」

2021-12-23 09:28:00 | 科学
岩宮 眞一郎 ,技術評論社(2020/3).

日本物理学会の教育誌「大学の物理教育」から執筆依頼.「周辺分野と物理学」という連載があり,これまで「数学と物理学」「化学と物理学」「天文学と物理学」「生物学と物理学」「情報と物理学」「歴史と物理学」が掲載された,「xx学と物理学」と似ているので「音楽と物理学」で行くことにした.

しかし,物理学って何だろう.音はたしかに物理現象だが,聴覚となると生理学で,楽典は無理やり数学っぽく解釈できるが,芸術としての音楽は心理学といったら怒られそうで,楽器となると工学的,音響は建築的要素もある.
しかし4ページという微妙な長さ !
まぁ書いたもの勝ちだろう.

音と音楽について,なんでも書いてありそうな本を読んでから,何を書くか考えようと,図書館で借りてきたのがこの本.本来なら日本音響学会 - コロナ社のシリーズ本を勉強すべきなんだろうが,それでは思考が発散して,原稿なんか書けそうもない.
本書の全10章のタイトルは表紙に書いてあるように,シリーズを網羅しているようだ.
文章はです・ます調でやさしいが,対象とする読者層のレベルの想定ははっきりしない.そこへ行くと,学術誌は対象がはっきりしていて楽だ.

友人のクラリネット氏が岩宮研究室の出と聞いたと思うが,違ったかもしれない.
コメント (1)
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