Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

SYNC: なぜ自然はシンクロしたがるのか

2015-04-29 07:38:11 | 読書
スティーヴン・ストロガッツ, 蔵本 由紀 監修, 長尾 力 訳.ハヤカワ文庫〈数理を愉しむ〉シリーズ (2014/2).

「BOOK」データベースによれば,
*****完璧にシンクロして光る無数のホタルは、どこかに指揮者がいるわけではない。心臓のペースメーカー細胞と同じで、無数の生物・無生物はひとりでにタイミングを合わせることができるのだ。この、同期という現象は、最新のネットワーク科学とも密接にかかわりをもち、そこでは思いもよらぬ別々の現象が、「非線形科学」という橋で結ばれている。数学のもつ驚くべき力を絶妙の比喩を駆使して紹介する、現代数理科学の最前線。*****

最前線というが,原著は 2003 年,翻訳の単行本は 2005 年の出版.

数式を一切使わず,図も少なく,文章だけというのは,分かりにくい反面,イメージを作りやすいという長所もあると感じた.ウィーナー,ジョセフソン,ローレンツなどのスターが次々に登場するが,学術書にはない,誰それは太った大食漢だとかいう記述も読書にリズムを与えている.訳文はちょっと硬いかも.

ホタルの点滅の集団同期などのおきまりの記述だけでなく,同居している女性間の月経周期の同期,洞窟で外界から遮断された「時間を超越した生活」,さらには相転移,レーザー,超伝導・超流動など,我田引水的でさえある.監修者の業績も敬意をもって紹介されている.

電子書籍版を購入した.
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公開講座「ドレミの数理」

2015-04-27 08:01:46 | 新音律
何ヶ月か先のことだが,ポスターにある公開講座の講師をお引き受けしている.
「ドレミの数理」と言っても中身は物理学と応用数学 (プラス ほんの少し心理学と音楽学) で,純粋数学から見れば汚れた分野だが,主催の理学部数学教室はもちろんそれをご承知なんだろう.

このポスターは大学事務の方の制作になるもので,画像は、メルセンヌ・ツイスタの画像と,3次元リサージュ.猫ちゃんたちのイラストの出典は
小方 厚, 高田 拓人, 中川 響, 山本 勇貴「視て聴くドレミ: フーリエ音楽学への招待」大阪大学出版会 (2013/2)のアニメーション.



この本では,無限音階 (shepard tone) をバックミュージックに,猫たちが無限階段を上る.
描いてくださった門田英子さんは,現在 静岡の専門学校で,イラストと GIF アニメを教えておられるとのこと.

門田さんが漫画を担当された
日比孝之「証明の探究 高校編!」大阪大学出版会 (2014/12)
も好評とか.アマゾンのレビューで見ると,すごく面白そう.
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シンギングボウル

2015-04-25 07:49:54 | 新音律


癒しと浄化を得られるというシンギングボウル singing bowl の,これはいささか無味乾燥な動画,
ASA (Acoustic Society of America アメリカ音響学会) のページ http://acoustics.org/pressroom/httpdocs/163rd/August_2pMU4.html で見ると,振動はグラスハープと同じである.



しかしスペクトルで見ると,倍数波はグラスハープよりはるかに少ない.
図の左上がこの動画から得たスペクトルで,3倍波までである.別なボウルではと,
https://www.youtube.com/watch?v=Xm2mlNL054A
から採ったスペクトルが右上.こちらはより高音だが,整数倍音は贔屓目に見て4次まで.4倍音のすぐ右にはより大きなピークがある.このピークを含め,高周波側には非整数倍音が存在する.
これらに比べると右下のグラスハープでは整数倍音が豊富である.
ウェブではシンギングボウルは倍音ゆえに霊験あらたかと宣伝されているが,ワイングラスをこすったほうが効果が大きいかもしれない.でも,西洋音楽は整数倍音が豊富なほうが良いとされるが,東洋ではそんなことはないという面も有る.ちなみに,シンギングボウルはチベット起源.

グラスハープは叩いたときと擦ったときでスペクトルが異なるが,シンギングボウルでは同じである.

我が家にもシンギングボウルと類似の仏具があった! 仏壇のリン (おりん) である.左下はリンをリン布団の上に置いてリン棒でぐるぐると擦って出した持続音のスペクトル.こちらでノイズの上に顔を出しているのは非整数倍音ばかりである.

グラスハープではグラスは固定されているが,動画のボウルはマレット?とともにぐるぐる回されている.マレットとともに動く座標系で考えなければなるまい.リンの場合は,リン本体は布団のせいかリン棒を回しても動かなかった.

水の波面のパターンはファラディ波の文脈で説明されるようだ.しかし,グラスハープでもシンギングボウルでも枠の水平方向の変形が水面に伝わってパターンができるのだから,すこし複雑かと思う.
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竹原にて

2015-04-23 18:18:47 | エトセト等


クリムソンクローバー.



そのクリムソンクローバーの大群落...と言いたいが,空き地に生えているだけ.



この幟のイラストはすべてアップリケ.



かぐや姫マンホール.

酒蔵そば処 たにざき で昼食.酒 1/3 合+やきみそ+もりそば の「ほろ酔いセット」.J 子は 鯛めし+もりそば のセット.各 1000 円.こちらは満足.J 子は鯛めしが冷たいと不満.平日のためか,男性一人で調理のみならず接客も会計も切り回していた.蕎麦は東京の味.汁はぼく的にはもっと辛いほうが好み.店主は名人・高橋邦弘のもとで修行したそうだ.
藤井酒造の中にある.ここの「龍勢」は竹鶴に劣らぬ良いお酒.
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銀座 千と一の物語

2015-04-22 08:36:26 | 読書
地下鉄で通学した時代に銀座で途中下車してうろちょろしたので,銀座が懐かしい.
この本は,フリーペーパー「銀座百点」に連載された,藤田宜永の銀座をテーマにする掌編をまとめたもの.文藝春秋 (2014/3).

4編ごとに内容にちなんだ写真 (鈴木七絵) が4葉ずつ挟み込んである.表紙はそのうちのいくつかを額装して撮影したらしい.
18 x 12.8 x 3.4 cm という寸法の造本も凝っている.厚い紙を使って,わざと本のボリュームを上げたようだ.

舞台となり,固有名詞が上がった店はすべて実在する.巻末には電話番号と地図.こういうことができるのも銀座ならでは.

どれも似たようなストーリーで,たいてい,もう若くない男女が偶然の出会いをして,予定調和的に終わる.たまに期待が裏切られるとしても,悪い方向にではないから,読む方も安心してマンネリが楽しめる.
一人称記述が多い.猫と碑も「俺」「わし」として登場する.
連載時 (実は銀座百点を購読している) に愛読していたはずだが,ストーリーを覚えていたのは1割程度だった.

図書館で借用.
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前立腺癌手術まで

2015-04-20 08:06:37 | エトセト等


やっと,と言うか,ついに,と言うか,来月中旬手術の運びとなり,麻酔の先生から説明を受けて同意書に署名してきた.こんな漫画をパンフレットの余白に描き加えながらの説明で,すごい画才だ.後で見ると,マスイ・痛み止め・ZZZ...などの文字は判読できるのだが,朦朧とした目つきのあおむけの顔は何を意味していたのか,思い出せない.
サンソの文字だが,全身麻酔だと自力で呼吸ができないので,チューブで酸素を送り込むのだそうだ.こんなことも初めて知った.

PSA なる生体物質の血中濃度値が前立腺癌の指標として使われていて,検査は地域の健康診断でもオプションとされている.グレイゾーン(PSA値 4 - 10ng/ml)では 前立腺癌の確率は 30 %前後.この値が一昨年 8 月は 4.84 (以下 単位 ng/ml を省略) だったのが,昨年 8 月には 7.43 になった.上昇率が大きい.PSA は癌以外の要因でも大きい値を示すことがあるというが,とにかく生体組織検査 (痛い! 恥ずかしい!) を受けたら,癌が見つかった.悪性度は低いが左右両方の前立腺が侵されていた.

胃や肺とちがって,前立腺は生殖年齢を過ぎてしまえば無用の長物.手術で摘出することにした.癌が前立腺にとどまっている限りは実害はないのだが,骨に転移すると,痛い痛いと言いながら死ぬのかもしれないのだ.生検までは町の病院のお世話になったが,大学に勤めていたと言ったら,当然のように大学病院に回された.

患者としては,現状では自覚症状がなく,バーチャル世界のできごとみたい.
癌であるとわかれば,PSA は癌進行の目安になる.この値は (昨年 8 月の 7.43 から) 今年1月は 7.53,最近 (4 月) の測定では 7.70 であった.MRI によれば転移はないが,癌そのものは ゆっくり しかし着実に進行しているらしい.近藤誠医師の言う「がんもどき」とは違うようだ.

ダ・ビンチなるロボット手術で,最初に大学に行ったらやたら検査が続いたあげく,その後半年も待たされた.もっと重症な方を次々と優先させた結果らしい.
この間,落ち着かなかったし,まとまった仕事も引き受けられないし,癌患者と付き合うのは腫れ物に触るような感じらしく 遊んで貰えないし...
手術して貰いたいという気分は熟してきたようだ.
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わが家のチューリップ

2015-04-18 09:37:36 | エトセト等


昨年の「チューリップ狩り」の成果.J 子流に at random に並んでいる.北側なので,みんな日の当たる方を向いているのが,健気.
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メシアン 鳥の歌

2015-04-17 07:09:58 | 新音律
http://www.oliviermessiaen.org/birdsongs/ には,鳥の絵とともに,さえずりのソノグラム,メシアンによるスコアが載っているばかりでなく,オーディオファイルで両者を比較することができる (ここに挙げた図にはオーディオがコピーしていない).

メシアンは 20 世紀の作曲家だが,自称 鳥類学者で,世界中で鳥の声を採譜したという.軽井沢での採譜に同行した星野嘉助 (星野温泉主人) の回顧談によれば,メシアンはオーケストラ用の五線紙に,ときどき口笛で真似たりしながら,何種類もの鳥の声を同時進行的に採譜した.白譜は次から次と一杯になっていったそうである.

ちなみにコーネルのウェブサイトで,鳥の声を採譜するには録音後スロー再生すると,音域がフルートあたりになるので採譜できるという「秘訣」を読んだ覚えがある.メシアンから見れば,バカみたいだろう.



メシアンによる「七つの俳諧-ピアノと管弦楽のための日本の素描」.第6曲が Les Oiseaux de Karuizawa/軽井沢の鳥たち.冒頭のウグイスは,やっぱり 16 トンのイメージとは違うが,そんなもんでしょう.
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泡坂妻夫 からくりを愛した男

2015-04-16 08:00:00 | 読書
KAWADE夢ムック 文藝別冊 河出書房新社 (2015/2)

内容紹介*****『しあわせの書』で再ブレイクのミステリ作家・奇術師・紋章上絵師でもある作家の初の総特集。対談:北村薫×法月綸太郎、寄稿多数。*****

この文藝別冊は特にミステリ作家としての泡坂を特集している.手品つながりで,あのナポレオンズが登場するのが面白い.直木賞受賞後はふつうの「文藝路線」に転向した感があるが,そちらの路線はこの本の範囲外らしい.

泡坂自筆の漫画が十数葉.雑誌「奇術研究」に掲載されたもので,奇術ネタだがどれも楽しい.紋章上絵師という職業も手伝っているのだろうが,一目で氏の絵とわかる書き方.漫画だけ集めて出版してもらいたいところ.中井英夫による亜愛一郎のスケッチはご愛嬌.

本書で竹本健治は,「匣の中の失落」への泡坂のアドバイスに関連して,「泡坂さんには『ドグラマグラ』や『黒死館』や『虚無』を面白がる感性はあまりなさそうだ」と書いている.なるほど.
やはり本書の法月綸太郎との対談中で北村薫が「乱れからくり」中の「からくり師の目からは,芸術も科学も,まるで駄目」という文章を引用している.これに反発するような野暮天は泡坂文学とも無縁なんだろう.

1970 年代末と思われるが,駅前で倒産した出版社の本を二束三文で売っていた.このとき買って読んだ短編集「亜愛一郎の狼狽」が 16 トンの泡坂作品初体験.こんなのありか !! と思った.周囲のミステリ好きにも読め読めと強要したが,全く評価しない人もいて当惑した記憶がある.
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日本人の声

2015-04-14 08:10:22 | 新音律
鈴木松美 編著,洋泉社 (2003/03).

図書館でパラパラとめくったら,美空ひばりや宇多田ヒカルのソノグラムでこぶしや 1/f 揺らぎを解説していたので借用.
著者はソノグラムを「声紋」と言っている.ただし,スペクトルそのものを声紋ということもある.指紋にかこつけての命名 ? と思う.しかしフーリエ変換は標本の大きさや窓関数に左右されるから,指紋のようにだれが採っても同じとはいかないと思うのだが....
こういう本でフーリエ変換をどう説明するか,著者が悩むところだが,この本の方針は「説明しない!」である.

著者は科学警察研究所にて主として音声・音響分野の研究に携わり,その後個人経営の「日本音響研究所」を設立したが,現在はご子息がここを後傾している.度々マスコミに登場し,最近ではイスラム国日本人拘束事件で後藤健二の声紋を鑑定したとのこと.

「BOOK」データベースによれば*****「女性の声は低音化し、男性の声は高音化している」や「子どもの声が低くなった」というのは本当だろうか?「海外ではこぶしやだみ声が受け入れられない」や「仏教と声には意外な関係がある」というのは事実か?あまりに身近すぎてふだん意識することのない声を理解するために、発声のメカニズムといった声の基礎知識から、人を癒したり、安心させたりする声の不思議な力までを解読。発する人の体格から気質、生活環境、時代状況までを反映する声を通して日本人を浮かび上がらせる画期的な試み。*****

200 ページ足らずの新書ですぐに読了.「日本人」のタイトルを超え,犬の声の翻訳の話題 (バウリンガル) も盛り込まれている.
中村明一「倍音」と主張がかぶる部分があるが,こちらの鈴木氏の記述のほうが早いし客観的に思えた.
これは 10 年以上前の刊行だが,2011 年には「あの人の声はなぜ魅力的なのか ~惹かれる声と声紋の科学~」という本が技術評論社から出ている.
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