相変わらずの話題だが,大学祭ジャズ喫茶に関連して ジャズ研内部で最大の議論を巻き起こしたのは,ギター・ベースのNNデュオだった,らしい.
タイトルの「現代音楽的」という形容詞はぼくの感触で,たぶん演奏者の意図とは違うだろう.
ここでいうジャズ喫茶は,大学祭 (学園祭) で,ジャズのサークルが開催する模擬ライブハウス.教室の椅子・机を並べ替え,窓にはガムテープで暗幕をはってムードを演出する例が多い.当 H 大学でもそんなものだったが,今年は様変わりした.大学敷地内で商業施設が営業している「カフェ」に場所を移したのだ.そのために,問題が起きた らしい.この「ジャズ喫茶」には 14 バンドが出演.このデュオはそのひとつ.
当の演奏者が mixi にアップした文章によれば,この演奏にはいくつかルールかあり.
- 最初は2分間で2回,次は4回...と音の密度を増やしていき,最終的に40回/2分とする.
- ルートと長三度を組み合わせた音をだけを使う.
- 次のルートに移るときは、上下半音、上下短三度、上下長三度から選択する.
- リズムを感じないようなタイミングで音を出す.
持ち時間 30 分で 1 曲.タイトルは 知りません.
客側 すなわち こちら側からの見聞では...
二人は携帯を睨みながら演奏.
はじめは音のつながりがないし (あってもわからない),何をやっているのか - これからどうなるのか という緊張があるが,(自分も含め たいていの人は) すぐに退屈.ぽつぽつと世間話をしたり,雑念にふけったり,居眠りしたり,最後に音が増えて音楽らしくはなったころは,いやに似たような音ばかりだな とは思ったが,ほとんど聞き流し状態.
「あのひとたち何してるの?」というお子様の発言が最も素直な反応だろう.
ただし音楽自体は 比較的小音量で,不協和音もなく,聞いて不快になるわけがない.むしろ快いものだった.
もちろん,音楽は感動をもたらすべし とするベートーベン的音楽とは対極.Don't Mean a Thing If It Ain't Got a Swing とも正反対.
無音の時間が圧倒的なので,ジョン・ケージ的という見方も出来るが,抑制された音の出し方から,ぼくはむしろサティの「家具の音楽」を感じた.ただしサティは幕間で演奏し,「あたかも音楽が存在しないかのように振る舞ってほしい」と客に要求したというが,このたびのNNデュオはサティと違って,プログラムにエントリーして,積極的に聞いてもらうことを要求していた.
こういう演奏に腹を立てる人はいる.実はこのシリーズは断続的に H 大ジャズ喫茶で行われていて,数年前の演奏 (今回と違う音楽だったが,幕の向こうの演奏者のひとりは共通だったと思う) では,終わったとたん ジャズ研会長をつとめたこともある U さん (tb のすてきな女性です) が立ち上がって「サイテー!」と叫んだのを 今も鮮明に覚えている.
このたびも,演奏中10人ほど席を立って帰って行き,そのうち 何人かは怒っていたということだ.
冒頭に書いたように,今回は「カフェ」という商業施設で演奏した.ゆえに,お客さんが立腹してお帰りになるような演奏はしてはいけない,という意見から議論がはじまった と,私は理解している.加えれば,この直後が出番だったバンドはお客さんが減ったと怒っていた.さらに,演奏したひとたちは皆,いい雰囲気だから来年もここでやりたいと思っている.
「カフェ」が構内にあるなんて,昔は考えられなかったことだが,いまの学生さんは,大げさに言えば,商業主義と芸術主義の対立に直面しているわけである.
もうひとつの,昔は考えられなかったことは,このローカルな議論がネット上の mixi で延々と展開され,現在も続いていることだ.mixi 会員全員に公開とのことなので,興味のある方はどうぞ.