Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

続 「山・原野・牧場 - ある牧場の生活 -」 の文章

2021-12-02 08:53:23 | 読書
ひきつづき,坂本 直行,「山・原野・牧場 - ある牧場の生活 -」山と渓谷社 (ヤマケイ文庫 2021/9) について.

山岳書とでもいうべきジャンルがあり,古いところでは 田部重治,木暮理太郎,尾崎喜八 などの名前を思いつく.昭和に入って,このジャンルが開拓され始めたらしい.この本の著者が意図したタイトルは「ある牧場の生活」であったが,竹村書房が著者に無断で,「山・原野・牧場」というタイトルで出版した.本屋は山岳書として売ることを意識したのだろう.その後ふたつの山岳書出版社から出たときも「山・原野...」が踏襲された.

戦前の山岳書は,高等遊民の山遊び文学といった趣がある.しかしこの「山・原野...」は牧場の労働の実態をつづったものである.ただしプロレタリア文学と異なり,トップ画像から想像がつくように,内容はとても楽しい.絵は可愛いが本文には豚の子は牛に踏み潰されたりで,よく考えるとあまり楽しくない.だいたいこんな調子.
電気なし.郵便配達夫の凍死.馬に履かせるアイゼンを五徳というが,これで踏まれて足に穴が開く...

ヒトは方言でしゃべる.そればかりか地の文の単語にも方言が入りこみ,なんだろな と思うこともある.
馬・豚・牛・鶏・犬,プラス野生動物たちはヒト以上に存在感がある.
可愛い豚を食べるいいわけがユーモラス.野生動物はどれが美味いという記述がていねい.カラスが鶏の卵を盗む件が面白かった.

1から 13 まで番号付けされた段楽が,冬・春・夏・秋・冬の序曲 と5つに分かれているが,月刊誌に連載されたときの事情によるものだ.

著者は牧場で労働生活する以前に,北大生という高等遊民の身分で山岳部で山を謳歌していた.牧場にはしばしばかっての山友達が現れる.
最後の「飯場の話」は,茗渓堂版で付け加えられたということだが,山歩きの際に止めてもらう飯場の人夫たちの生活を,高等遊民的視点から描いている.


追記
北海道の六花亭製菓の包装紙が坂本直行によるもの.河西郡中札内村の「六花の森」には坂本直行記念館,直行山岳館,直行デッサン館,花柄包装紙館などがあるそうだ.
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