Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

「文学少女対数学少女」

2021-12-13 10:33:23 | 読書
陸 秋槎,稲村 文吾 訳,‎ 早川書房 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2020/12).

「BOOK」データベースより*****
高校2年生の“文学少女”陸秋槎は自作の推理小説をきっかけに、孤高の天才“数学少女”韓采蘆と出逢う。彼女は作者の陸さえ予想だにしない真相を導き出して…“犯人当て”をめぐる論理の探求「連続体仮説」、数学史上最大の難問を小説化してしまう「フェルマー最後の事件」のほか、ふたりが出逢う様々な謎とともに新たな作中作が提示されていく全4篇の連作集。華文青春本格ミステリの新たなる傑作 ! *****

4篇とも現実の事件の中に虚構の事件がある,作中作構造.登場人物も二重だが,登場人物表には現実事件の人物しかリストアップされていない.そもそも中国人の名前は覚えにくい.これならジャックやベティのほうが,よっぽど与し易い.名前から性別も判断できない !
著者と,作中の文学少女とは同じ姓名だが,著者の陸秋槎は男性.中国人はこの名前を文学少女のものとしても,違和感を感じないのだろうか.

しかし本文は,人物の名前を日本人に変えてしまえば,ほとんどそのまま日本製ミステリとして通用しそう.
「元年春之祭」はいかにもな漢文ミステリだったのと対照的.

どの作にも数学理論が登場する.目次は「連続体仮説」「フェルマー最後の事件」「不動点定理」「グランディ級数」.著者あとがきにあるように,この本の数学知識は「俗諦」でしかないのだろうが,数学専攻の友人がいるので感想をききたいところ.ミステリのネタになりそうな数学は限られていてこの4篇あたりが限界かもしれない.もう1篇 未完成の作品が存在するらしいが...

著者あとがきの他に,麻耶による解説と,原書にあった解説の翻訳を収録している.前者はお付き合いという感じだが,葉新章による後者は,ミステリにおける数学の比重から説き起こした力作であった.

オールドタイマーは数学に絡めたミステリ談義から,竹本健治あたりの昭和のメタ・ミステリを連想した.著者は麻耶雄嵩を敬愛しているらしい.面白かったけど,次に読むのはふつうのミステリにしよう.
図書館で借用.
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