Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

平成復元源氏物語絵巻

2006-08-26 17:59:16 | お絵かき
福山の広島県立歴史博物館特別展「よみがえる源氏物語絵巻-平成復元絵巻のすべて-」

国宝「源氏物語絵巻」は剥落や褪色がはなはだしい.そこで平成11年から先端の科学技術などを駆使して,当時の材料と当時の技法で当時の姿に復元摸写する事業が進められてきたという.ここには国宝そのものは展示されていないが,隣り合う原図のディジタル写真と模写図が並べて比較できる.色が鮮やかになっただけでなく,現在の原図とは全く変わった色になった場合もある.これにともなって,原図では認識できないモノもあぶり出されている.「百聞は一見にしかず」です.

絵巻というのは純粋絵画ではなくイラストレーションだなと感じた.色鮮やかと言っても,現在の絵の具とは違う色で,色の種類もあまりないようだ.人物はみな同じ顔だ.少女マンガの人物もみな同じような顔だが,慣れるとしだいに個人を認識できる.昔の読者には絵巻物の個人が認識できたのだろうか,それとも,そんなことは問題にしなかったのだろうか.鳥瞰図的な構図も含め,当時の絵巻イラストレータと読者にはいろいろな暗黙の了解があったらしい.

絵巻の各場面の解説も展示されている.けっこうおどろおどろしい内容.源氏物語というのは有閑貴族の大不倫小説らしい.展覧会を観ているのは,広い年齢層の,ほとんど女性.

帰りに松永のはきものと郷土玩具の博物館に寄った.高田喜佐「シュー・シューパラダイス」展を開催中.すいていた.ここもお薦めです.J 子はショップで「ジャズマンは黒い靴」(マガジンハウス 1988)を購入.同じ敷地のカフェも雰囲気がある.

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東京奇譚集

2006-08-21 18:07:56 | 読書
村上 春樹 2005年9月 新潮社.
図書館に返却に行ってこんどはこれを借りてきた.著者はノーベル賞に近い位置にいるそうな.

じつはこの著者のマジメな小説はほとんど読んだことがなかった.
「アンダーグラウンド」とその続編に感心したが,小説ではない.
「ポートレイト・イン・ジャズ」など一連のジャズ関係は好きだが,和田誠の挿絵の魅力も大きい.でも寺島某etcの,いわゆるジャズ評論家の文章はたいてい腹が立つが,村上に限ってそんなことはない.

安西水丸などが挿絵を描いている長たらしい題名のメルヘン調のは,ややかまとと的で,おとなが読むのに恥ずかしい感じ.
本書は短編集で,なかでは「品川猿」がその系統.しかしここまでくれば芸のうち.

一冊をあっという間に読んでしまった.案外いまの自分と合っているのかも.なかでは,とくに怪奇現象が起こるわけではないが,「偶然の旅人」が良かった.
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博士論文 進駐軍クラブから歌謡曲へ

2006-08-15 11:58:02 | 読書
東谷 護 「進駐軍クラブから歌謡曲へ―戦後日本ポピュラー音楽の黎明期」みすず書房(2005).

大学の図書館はずっと休館だが,市立図書館はまじめに開館していた.なんだか堅い本と思って借りたのだが,あとがきによれば京都大学大学院人間環境学研究科に2004年に提出された博士論文がもとになっているとのことである.じつはこの京大の研究科にはプラズマ物理の講座もある.

敗戦後進駐軍に娯楽を提供した日本人楽士たちの経験が今日の大衆音楽につながっている.この伝説を学術的な立場から論じようとしたもの.amazonのこの本のCMには,原信夫、穐吉敏子、宮間利之、小野満、ジョージ川口、渡辺貞夫、堀威夫,雪村いづみ、江利チエミ、ペギー葉山、松尾和子,小坂一也,渡辺美佐・晋夫妻などの名が出ているが,こうした有名人のゴシップを期待するとはずれる.この本はもっとマジメなのだ.当時の仕事の獲得法,報酬,労働時間,環境,管理体制,さらには進駐軍クラブの見取り図など,具体的なデータがおもしろい.

「聞き書き」も心に残る.敗戦で毎日吹いていた楽器を失った軍楽隊員は,唇が痙攣したという.こうした人達には渡りに船の職場だった.彼らは一般人には想像できない贅沢ができたが,いっぽうそのことに引け目も感じ,座席の確保が困難だった時代に,巡業のための進駐軍専用列車ではすぐさまブラインドを下ろしたりしたそうだ.駐留軍兵士はみなノー天気というのが通り相場だが,終戦直後の彼らはみな日本人におびえていた,彼らの体臭に死臭を感じたというもとクラブ従業員もいる.

具体的な記述はいちいち面白いのだが,それだけでは博士論文にはならない.そこで考察が加えられるのだが,この部分はいまいち.とくにアメリカ音楽と歌謡曲との関連はいま三くらい.本書では楽士が歌謡曲の伴奏に転向したことくらいしか分からない.戦後の歌謡曲に用いられたブルース音階などにも言及して欲しかったし,その後全然アメリカ的でない「演歌」が台頭したのはなぜか...なども識りたいところ.社会学としてはおもしろいが,音楽学としてはどうもね.
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フランス人は「枯葉」が嫌い?

2006-08-11 16:30:47 | ジャズ
暑いので晩秋の話題.タイトルは正確に言うと「フランス人はジャズの枯葉が嫌い」です.

フランスから来た物理屋さんは,シナトラやN・K・コールの autumn leaves が気にくわなかった.
-訳詩の甘ちょろい内容は深淵で哲学的な原詩を冒涜している.
-イントロ(verse)を省略するのも気にくわない.
-そもそものタイトル les feuilles mortes は「死んだ葉っぱ」で,それだけでイメージをかき立てる.日本人だって「上を向いて歩こう」を「スキヤキ」にされたら腹が立つだろ (確かに!!).

歌なしの,マイルスやビル・エヴァンスの枯葉は?
-あれは別な曲だ.どうこう言うのはスマートじゃないね.
-でもアメリカ流は,もと歌と譜割りが違う.延ばすところが長すぎて間がぬけている.

ですって.要するにフランス語の「語り方」ともとの譜割りとは密接に関係しているので,これをいじってもらいたくないらしい.日本人のシャンソン歌手の「枯葉」は,何をいっているのか分からないが,なかなか良いのだそうです.

かってこんなご託宣を聴いたせいで,セッションでもなんとなく枯葉が演奏しづらい.かってシャンソンに忠実に演ってみたこともあるが,なんだかしっくりこなかった.

french lyrics by Jacques Prvert 有名な詩人だそうな.
English lyrics by Johnny Mercer 作詞は Moon River, Satin Doll, Skylark 等々. Dream では作詞作曲.シンガー・ソングライターの元祖.彼の単純な訳詩だから枯葉がアメリカ人に受けたという側面もありそう.
Music by Joseph Kosma
印税は世界一と聞いたことがある.

http://www.johnnymercer.com/FAQ/Autumn%20Leaves.htm
にJohnny Mercerの詩ではない,フランス語の直訳英語が出ている.「死んだ葉っぱをシャベルで掻き集める」なんて確かに意味ありげ.
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旅日記 - 仙台・那須・東京

2006-08-07 09:03:08 | エトセト等
仙台へ.
高校時代の友達がそば粉を練って延ばして切って(ここで少し待つ)茹でて食べさせてくれた.彼は広島にその道の達人,高橋某がいると言っていたが,その達人が酒まつりのときに打ったようなそばであった.達人そばと違ってたらふく食べることができた.もうちょっとで新蕎麦の季節だとか,すこし残念.

学会は空前の参加者で,懇親会は芋を洗うようだった.

那須へ
S田先生の別荘に一泊.清潔だがごたごたして下宿のような雰囲気もあり住み心地よさそう.朝起きたらカブトムシが1ダースあまり食卓に.夜中に拾ったのだそうだが,どれも日本酒をしみこませたティシューにしがみついて離れない.ときどき足を動かす程度でみなアル中気味.

大丸温泉.開店を並んで待って入る.露天風呂は虫が多く閉口.飲泉所というのがあって茶碗が置いてある.温泉は甘かった.

先生ご懇意の「照葉」という店で十割蕎麦初体験.太く短く堅い.外で食べた方が涼しそうだったが,そちらは犬連れ専用とのこと.写真では掘っ立て小屋みたいだが,犬専用の運動場完備.あっ昨日も高速のSAで山形蕎麦というのを食べた.このへんでは蕎麦と同時に一人前ずつそば湯も湯桶に入れて出てくる.

東京へ
銀座ライオン・音楽ビヤプラザをやはり初体験.30分演じて30分休憩のペースで,1回に6人も代わる代わる出てくる.クラシック音楽家のサービス精神は凄かった.

若沖の展覧会に行こうと上野で降りたら暑くて凄い人.近くの西洋美術館で間に合わせる.これこそ日和見主義.夏休みに感想文を出す宿題のためか,メモをとる子供がちらほら.聖書に題材をとった古い絵は分からない.常設展は初めてだが,松方コレクションをまとめて観ることができた.

三越本店で小西保文展.こういう絵です.
http://www.amcac.ac.jp/~suzuki/niki/0001ichiran/ka/konishiyasuhumi.html
隣ではシャガール展.ぶらりと入ってこういうのが観られるのだから,東京は良い.
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