滋賀の龍谷大学で開催された日本生態学会。すべてのプログラムを聞きたかったですが、私の聞きに行った範囲での感想。
生物学者やナチュラリスト中心の自然保護はどうしても希少性に偏りがちに思えるが、自然保護という社会的活動を実現するには生物学の枠を超えることが必要というのが今回の大きな印象。
ひとつは滋賀の知事嘉田さんの講演。嘉田さんは早くから自然対開発の構図に疑問を感じ、「生活環境主義」=生活と関わる自然という視点で人間を重要な要素に据えた研究をしてきた。しかし、高名な研究者から「人間はノイズだ」と言われたり、田んぼ研究の予算を減らされたりと研究者としてはいろいろな思いがあったようでした。そして環境を守るためには研究者から政治家への飛躍が必要だった。
また、今回は「内なる生物多様性」ということばを冠したワークショップ、企画集会が行われた。中心は愛媛大学の日鷹先生。日鷹先生の説明は難解なんですが、静岡県の生物多様性戦略の担当者の解説をもとに「内なる生物多様性」とはなにかを解説するとこんな感じ。これは農林県で生物多様性を広めていくための便法としてはじまったもの。行政の決めたレッドデータを持って行って「これを守りましょう」と言ってもうまくいかない。これが「外なる生物多様性」。しかし、田んぼの生物調査をしてホタルやドジョウが出ると農家の人は喜ぶ。農家や林家の人にはその生活の中で大切だ大事だと思っているものがある。それが「内なる生物多様性」。それを見つけ出す過程で身近な自然の価値を再認識していこうというアプローチ。ということになるみたいです。先に述べたようにこれは農林県ではじまった方法ですが、都市住民にも応用できると思われます。もちろんフィルターは必要ですが。ここでも既存の生物学的枠組みを超えたアプローチが生まれています。
生態学会での保全テーマの発表に限界を感じてきていましたので今回の発表はおもしろかったです。もっとすすめて自然環境保全活動学会でもないかな。