11月13日に中川重年さんの講演会、11月17日に環境動物昆虫学会(環動昆)の研究会に参加しての感想。
中川さんは全国雑木林会議の世話人で、今盛んに行われている里山での作業や楽しみを普及するのに力があった人です。中川さんは最初中国の里山の写真を見せました。それはナラの林らしいですが、木を短期間で切るので2mほどしか高さがありません。しかし、樹間の草の中にいろいろな希少種が混じっているというのです。
中川さんがこの写真を見せたのは本来の里山の姿がどうだったのかを示すためですが、中国でもこうした風景は少なくなってきているそうです。もちろん日本ではほとんど見られず、大阪近辺では妙見口近くの薪炭林が希少な例だそうです。
かわって17日の環動昆研究会では「COP10につなげる里山再生」と題してミニワークショップが開催されましたが、その中で里山放置林の再管理で主流となっている「ササや低木など下層植生のみを管理する方法」の昆虫への影響が森林総合研究所松本氏から報告されました。一部を報告資料から引用します。
「ゴミムシ類では、放置林には安定した環境を好む種を含む森林性種と生息場所選好性の幅の広い生息場所ジェネラリストと森林性ジェネラリストが生息している。下層植生のみを管理している高木林のゴミムシ相は基本的に放置林のそれであるが、管理(=撹乱)によって安定した種が損なわれ、ジェネリストが残されて群集構造が単純化する。また、下層のみ管理しても陽性草本など草原性種を含む薪炭林的なゴミムシ相は回復しない。」
これに対しチョウの場合は個体数比が変化するが、構成種にはほとんど変化がないとのことでした。また、一般にゴミムシ類は動かない昆虫の例として生物相が持続していることを示すと考えられます。
里山管理ではつい大きな木を残したいという気になるものですが、本来の里山の姿とは似て違うものではないか?と疑ってみることも必要ではないかと思います。