海と緑とこどもたち HONDA ECOACT

地域にこどもたちと自然とのふれあいの場をつくろう!

本の紹介「天敵なんてこわくない」

2009-01-30 00:27:35 | 本と雑誌

「天敵なんてこわくない 虫たちの生き残り戦略」西田隆義 著 八坂書房

「カワリウサギが増えるのはオオヤマネコが増えたからという証拠はたくさんある。しかし、反対にカワリウサギが減る原因がオオヤマネコによる捕食という証拠はほとんどみつからなかった。なぜならオオヤマネコが食べることで死ぬカワリウサギの数を計算してみても、旺盛なカワリウサギの増殖を抑えて減らすにはほど遠いからだ。」

 よく言われる「天敵が被食者の数を制御する。」というアイデアは膨大な野外調査により否定されている。しかし、天敵によるコントロールが本当にないのか疑問に思った筆者は「被食者が天敵から受ける効果というものは、食われて数が減るだけでなく、むしろ食われないように被食者が発動する捕食回避策を媒介して間接的に働いているのではないか」と考える。

 本書の中では3例の研究が紹介されている。ひとつはインドネシアで行われたスペシャリスト捕食者であるニシダホシカメムシとダイフウシホシカメムシの例、二つ目は外来のミカン害虫ヤノネカイガラムシと寄生蜂の例、三つ目が日本の休耕田に見られるバッタ、カエル、鳥の例。これらの研究が筆者のアイデアを検証したかどうかはネタばれになるので、読んでいただくことにしたい。

 本題はさておき、研究の中で発見された様々な生態は興味深い。特に3番目の休耕田の事例は身近な題材であるだけに、里山ナチュラリストにとって興味深いと思う。カエルはバッタの主要な天敵に思えるが意外とバッタを食べていない。ヒシバッタの1種トゲヒシバッタはいかにしてカエルに食われるのを防いでいるか?チョウのビークマーク(鳥のついばみ跡)は襲われやすさを物語る?よく見られるイナゴの足の自切行動は生き残りに役立っているのか?ヒシバッタの色彩や斑紋の多型はどういう目くらまし効果があるのかなど話題満載で、これだけでも読む値打ちがある。なお、第2章の「適応をどう説明するか?」は重要な議論であるが、一般には難しい。本の装丁が児童書風で読みやすそうに見えるだけにこの章は後回しにすべきではなかったか、おせっかいながら飛ばして読むことをお勧めします。


自治体版生物多様性戦略

2009-01-21 00:28:53 | 自然

 昨年の6月に生物多様性基本法が施行され、都道府県や市町村も生物多様性地域戦略を定めることが努力目標となりました。

 それに先んじて、府県版生物多様性戦略を決めた県がいくつかありますが、その中で県民参加重視の特徴が著しいのが千葉県。そこで、生物多様性千葉県戦略を調べることにしました。ホームページに専門委員会やタウンミーティングの報告が掲載されていますので、読むことができます。

 しかし、会議録というのは一般に読みにくいもの。当事者は何について議論しているかわかっているが、会議録というのは得てしてそこが説明されていないことが多いので四苦八苦して読んでいます。また紹介します。


流水と止水の相互作用系としての河川

2009-01-18 12:59:32 | 自然

2009.1.6 第10回 森川里海連環学セミナー「流水と止水の相互作用系としての河川生態系」竹門 康弘 先生(京都大学 防災研究所)を聞きました。非常に密度の濃い内容の豊富な講演でした。いくつか印象に残ったことをメモします。

①巨椋池はかつて宇治川、木津川のバックウオーター(背水)的な環境。バックウオーターは増水すると河道になるがひいたとき取り残される水域で泥がたまりやすい。こうしたゾーンは河川があるからこそできる環境。河川と一体の止水環境は、ずっと止水のままのクレーター湖などと違う。本当の川(たとえば外国などに見る)は池沼の生物も多数みかけるが、日本の川はそうではない。オグラヌマガイは嫌気的環境つまり泥の堆積した背水域のような止水環境に適応している。

②多くの動物は生活に水通しの良い砂州必要。こうした環境は増水の機会減少、ピークの減少、土砂供給減少で危機的状況。

③裸地砂州はろ過装置として有用。砂州の発達により自浄作用、生態効率高まる。しかし、裸地砂州が植生に覆われ、ハグロトンボなど植生依存の生物増えている。

④1970~1980ごろ、林道建設の土砂が淵を埋め、川が平瀬に→日本中がオイカワの川に。現在、山からの土砂の供給少なく植生破壊されず撹乱なくなったためオイカワが減少し山地渓流型のカワムツの川へ。例)鴨川。

⑤樹冠の下のヒゲナガカワトビケラは落葉起源の有機物を多く食べている。その範囲は10~20mていど。川は連続体のようで実は不連続体、あっという間に消費されてしまう。空気も水も自由に行き来しているように見えて実は局所的範囲でまわっていた。「流域一貫」という考え→土砂などにあてはまるもの、対して物質循環は意外と狭い範囲でまわっている。(生態学者の)認識はそういうふうになりつつある。

⑥喜撰山(1919)横山大観 全山アカマツの里山→今は照葉樹林

 かつての治山砂防事業の目的は森林再生→土石流防止に変化。もともと日本の川は土砂が動く川だったか?→森林伐採の影響により昭和の中ごろまで山地の土砂供給多かった。→70年間に砂州の植生化が進行。→1000年以上起きなかったことがおきている。→どのくらい土砂が出てくればよいのか?

⑦土砂動態を河川にとりもどすための方途・・いろいろあるが、その中のひとつに「内水面漁業(運用?)規則」遊水料の根拠は放流義務→繁殖場管理義務→自然再生促すために変える。

⑧止水域に止水環境つくる。たとえば城北ワンド。淀川大堰による背水域のためプランクトン、藻類多くそして有機物がたまる→城北にはかつてのワンド環境復元できない。最初ワンド掘ると1,2年目は良かった→ずっと掘り続けると良い。ワンドメンテナンスの方向へすすむべし

⑨撹乱を場の構造を再現するために経済原理でどうすればよいのか示すべし


オオワシ!

2009-01-07 00:07:53 | あちこち自然探訪

 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

 5日の日、湖北野鳥センターに行きました。ここは、今が最高の季節。湖上にはコハクチョウ、オオヒシクイ、マガン、カンムリカイツブリ、そして背後の山本山にはでかいオオワシが!

 写真はセンター備え付けの望遠鏡でのぞいたオオワシをデジカメで撮ったものです。どれかわかりますか?まんなかより少し右下、マツの緑の間に見える白いものがオオワシの羽根の白い部分、いわば肩の部分です。

 オオワシは野鳥センター前の湖上のオオバンなどを捕らえに来るらしいです。

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