海と緑とこどもたち HONDA ECOACT

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ささやま活動レポート 2016年2月27日

2016-02-29 18:08:15 | ささやま里山

 2016年最初のユニトピアささやま里山再生活動を行いました。本日は、田起こしに先立ち、排水のための溝きりの作業をはじめ、水路の修復、となりの谷の湿地回りの木橋の修復などの作業があります。
 それに先立ち、田んぼにヒキガエルが産んだ卵を移転する作業をしました。

田んぼの水たまりに産み付けられたヒキガエルの卵、アカガエルのものも1つありました。


こちらは1枚目の写真のすぐ横にある小池に生んだヒキガエルの卵


田んぼの卵は竹ぼうきでかき寄せてバケツなどに入れて、田起こしの邪魔にならない水路やため池に移動しました。アカガエルの卵塊はすぐ横の池に移動しました。


 こうしてカエルの卵塊に接触すること自体影響を与えるかもしれません、また、移転した先の水たまりが卵の成長に良い場所かどうかもわかりません。しかし、とにかくできる範囲で作業することにし、移転しました。

 この棚田の田んぼは下に2枚、上の段に3枚あるのですが、昨年上の段の田んぼにたまった水にヒキガエルが産卵し、田起こし作業の前で困ったことになっていましたので、これを見越して昨年11月28日に溝を切ってそこにたまった水に産卵を誘導するようにしていたのですが、ヒキガエルはその小さな水たまりには見向きもしませんでした。

 次の写真は上の段の田んぼに切った溝に水がたまった様子。田んぼの面には水たまりができず産卵は行われなかったが、溝の水たまりにも産卵は行われなかった。




 下の段の田んぼと小池。左二つが田んぼ、右が小池。この小池には産卵したが、あまり多くない。まんなかの田んぼにできた水たまりに大量の産卵があった。また、手前の湿地(草が生えているところ)には産卵は見られなかった。


 この結果を見ると、ヒキガエルはより広い水面を選択するのではないかと思われます。
 今後は ①湿地などにより広い水面をつくってそこに誘導する。②ヒキガエルに産卵されたくない田んぼは産卵時期以前に排水溝を作っておく。③田起こしをしない冬水田んぼをつくる。などの対策が考えられます。
 里山では田植えを境にカエルの種類が入れ替わる、アカガエル類は田起こしまでに成体になって出ていくと聞いてましたが、この話は考え直さないといけないですね。

 隣の谷の湿地では今年もたくさんの卵が産み付けられていました。ヒキガエルの成体も見られました。


上段の田んぼに排水のための溝を切ったようすです。この右側の水路に卵の一部を移転しています。


 この日は園内の各所を見回りましたが、昆虫ではテングチョウを1個体。植物もオオイヌノフグリをひとつみたていど、あとはフキノトウが動き出しているのをみたていどでした。

 植物保護ネットの見回りではキツネノカミソリの葉が動き出しているのを見ました。


矢代池も池干しをしているためか、その下の湧水は水があまりなく、去年ここでなにか生き物が動いていたので期待したのですが、なにも見られませんでした。


 ところで、昨年末11月から12月にかけて、ナラ枯れにあったアベマキの一部を伐採しました。そのあとで、分割作業をするときにスタッフに年輪測定をしてもらいました。その結果がまとまりました。このアベマキは棚田の南側の山の林道沿いに並んでいるもので、どういう用途があったものかまだわかっていません。林道は急な斜面にあるので、土留めという可能性、あるいは”はさがけ”という可能性も考えています。
 今回伐採したものは林道の手前にある2本ですが、以下の写真は伐採する1年前の写真に伐採位置と直径年輪数を書き加えたものです。
 まず1本目ですが、白い囲みに数字を書き込んでいるのですが、見づらいので数字を説明しますと、一番下は径40cm年輪数90年、つまりこの位置がおよそ90年前ということです。中段は径35㎝80年、上段は枝先の切断面の一部ですが、ひとつは径27㎝65年、ひとつは径22㎝50年でした。


もう1本は、一番下が径50㎝125年、中段が径28㎝70年、最上段が径15㎝60年でした。


 現地スタッフから聞いた、ここにこどもの頃来たことがある人の話では、戦後間もないころまでこの棚田で耕作が行われていたということです。つまり、およそ60数年前まで棚田が使われていたということですから、棚田が現役のころのアベマキは今より少し低かった程度の高さだったと想像されます。はじめは”はさがけ”の木のように、ポラード仕立で高さを低く管理していたのではないかと思っていましたが、60年前でもそこそこの高さはありますので、今はこの推測は間違いだったと思います。アベマキはごく自然に成長した姿のようです。ただし、2本目の木は55年で中段の高さですからこちらは手が加わった可能性があります。アベマキはその後少し成長しましたが、枝先に近い位置で年輪を重ねていますので、現在の高さはこの場所におけるアベマキの成長の限界ということでしょう。
 アベマキ列木の成り立ちも植えたようにも見えますが、アベマキは林縁でよく見ることがありますので自然に芽生えたものを道沿いだけ残したとも考えられます。
 ナラ枯れで倒れたアベマキは今後復元したいと思います。