礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

「アカギ叢書発刊の辞」(1914)を読む

2013-10-16 04:22:27 | 日記

◎「アカギ叢書発刊の辞」(1914)を読む

 アカギ叢書の巻頭には、二ページにわたって、「アカギ叢書発刊の辞」というものが載っている。本日は、これを紹介してみよう。なお、コメントは次回に回します。

 アカギ叢書発刊の辞
 予往年将に〈マサニ〉中学を終へて、生涯を捧ぐべき職務を選定する必要に迫らるゝや懊悩〈オウノウ〉之を久うして〈ヒサシュウシテ〉遂に書籍出版業を得たり。即稍〈ヤヤ〉狂熱を有したる文筆の楽〈タノシミ〉を棄て、直に〈タダチニ〉一書肆の丁稚〈デッチ〉となつて初めて轅〈ナガエ〉を握るや、爾来葱忙〈ソウボウ〉の間に既に六星霜を経たり。未だ何等の得る所無きを恥づと雖〈イエドモ〉、当今所謂〈イワユル〉書籍界の状勢を見、立志以来の『書籍によりて享受し得べきあらゆる幸福は、必ず之を一般に普及せしめ度し〈タシ〉』との信念に至りては、年を経て益々固きを覚ゆ。是〈コレ〉予が菲才自ら顧みず大正三年元旦を期し、書籍出版業として微を此処〈ココ〉に致すべく立ちたる所以也。
 当今書籍出版業たる予の最も痛恨に堪えざるものあり。古今東西の科学、芸文にして、誠に珍重すべき内容を有し乍ら〈ナガラ〉、吾国に於る普及の程度真に〈マコトニ〉微少を極めたるもの之なりとす。原因とすべきもの多々ありと雖、書籍の価〈アタイ〉高きに過ぐる一〈ヒトツ〉也。内容難渋を極めたる一也。尨大〈ボウダイ〉なるが為に繁忙の今日、止むを得ず閑却せざるを得ざるもの一也。先づ第一着手として今日アカギ叢書を刊行するに至りたるは、誠に此処に見る所あれば也。即アカギ叢書は各冊を全部金十銭にて提供す。外国語、古代語は、全部通俗にして度に適せる現代語に翻訳す。如何に尨大なる内容をも、妙味を失はざる限り、必ず袖珍〈シュウチン〉百頁にコンデンスす。依つて以て従来専門家、篤学者のみの専売に委し〈マカシ〉たる宇宙の真理、学術の宝庫の、高価、尨大、難渋の三大門戸を開放して、あらゆる人士の活用に供せんとす。未だ善美を尽さずと雖、予が事業の第一声としては私に〈ヒソカニ〉誇とする所也。希くは〈ネガワクハ〉大方の諸賢、幸ひに善導を賜へ〈タマエ〉。
 大正三年三月   赤城正蔵〈ショウゾウ〉白

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「日本のレクラム」を名乗っ... | トップ | 「アカギ叢書発刊の辞」と「... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事