不良おやじの小言

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日本の学ぶべきロシアの財成破綻

2009年12月06日 | 金融の経済問題
ロシアのハイパーインフレとモラトリアム
ロシアがハイパーインフレになったのはつい最近のことです。

高い金利を餌に各国の投資資金を呼び込みましたが、決済ができなくなり、
通貨ルーブルが持たなくなり、ルーブルの切り下げ、モラトリアムを実施しました。
下記はロシアのハイパーインフレの状況です。
(2003年当時、株式会社東京三菱銀行 ロシア・東欧部長 松村紀 氏の講演内容の一部を抜粋)
『※ソ連崩壊後のロシアの銀行制度
ロシアでは、1990年にロシア中央銀行が設立された。
ロシア中央銀行の主要な活動目的はルーブルの安定性の擁護と確保とされている。
そして、ロシア中央銀行は唯一の発券センターであり、
銀行の管理監督機関であると定められている。この後者の役割は日本の銀行制度と異なる点で、
日本銀行は銀行の管理は行わない。日本の銀行制度を管理するのは、金融庁である。

同時に、商業銀行が次々と設立されるようになった。
1995年までの間に累計で2,600行の金融機関が設立され、
2003年7月1日現在の金融機関数は、1,332行である。うち1,281行が銀行で、
51が銀行ではない金融機関である。

※市場経済化へ向けた財政金融政策
92年1月に価格自由化が突然始まった。
国有企業の私有化を後回しにしたままで価格の自由化を行ったもので、
各業界ごとにまだ大企業による寡占状態が残ったままで
価格を自由に決めることができるようになり、各社が価格を上げていったため、
たちまちハイパーインフレが起こった。
また、92年7月にはルーブルの変動相場制移行を行った。
経済が不安定なために変動相場制の下でルーブルの価値が急激に下落していった。
更に、徴税体制が未整備であったため、歳入不足に陥った。

一方で、IMFが介入してきて、金融引締め、通貨供給量の抑制などインフレ抑制政策を
指導してきた。このため中央銀行の政府融資も停止し、財政がとたんに逼迫してしまった。
財政赤字補填のために短期国債が大量に発行されることになった。
96年には大統領選挙があり、エリツィン大統領が再選を果たすにあたって、
いろいろな約束をしたため、政府はさらに資金が必要になり、国債が大量に発行された。
その引き受け先は、一般金融機関や年金基金や政府機関であったのだが、
それだけでは間に合わなくなってきたため、
外国の投資家に短期国債のマーケットを開放していき、
投機的な外国の短期資金を導入することにした。

逃げ足の速い外国からの投機的な資金を繋ぎ止めるために、
国債の利回りをずっと高めに維持する必要があった。
それと同時に、為替相場が安定している必要もあったため、
目標相場圏を設けて、中央銀行が為替相場を無理やりに維持した。
ところが、97年にアジアで金融危機が起こり、
これをきっかけとしてロシアに入ってきていた投機的な短期資金も
一旦引き上げる傾向が出てきて、これが98年初めあたりから顕著になってきた。
そのため更に高金利を維持しなくてはならなくなり、
短期国債を発行するたびに発行額が増大し、
一方ではルーブルのレートを維持し続けなくてはいけないので、
ルーブルを買い支えたために外貨準備が枯渇した。
IMFから緊急融資を受けたりしたが、間に合わなくなり、98年8月に破綻を迎えた。

※1998年8月金融危機発生前の銀行セクター
ソ連時代の終わりごろから商業銀行が次々と設立され、
90年代に入ってから新しくできた銀行は経営がうまくいっていた。
超インフレとルーブルの対ドルレート下落の下で、
これらの銀行の資産価値はコストを上回る上昇を示していった。
ハイパーインフレのおかげで、不良貸し付けの負担が軽減した。
外国為替の投機は、大きな収益を生み出した。
もう一点、IMFの指導が徹底するまでの間は、国家が企業に対して優遇貸付を行っていたので、
それを銀行が間に入って取り扱うことで収益を生み出すことができていた。
不安定な経済情勢の中で発生するひずみに乗じて荒稼ぎするトレーダーのようなものであった。
1997年あたりになると、マクロ経済が安定してきたため、
容易な投機的収益機会が失われてしまった。
97年から98年にかけて、ルーブルが下がりきって、為替が安定してきたので、
為替相場の投機で儲けるということはできなくなった。
それと同じ時期に、短期のルーブル国債の市場が拡大し、これが高金利であったために、
失われた容易な収益確保手段の代替となった。しかし、
ここで上手く変身できなかった銀行は淘汰されていった。

※ロシアの金融危機
98年8月17日、ロシア政府と中央銀行が共同声明を発表した。
要点は3つあり、
第1は、それまで設けていたルーブルの目標相場圏を変更するということであった。
これは1ドル=6ルーブルから28ルーブルへのルーブルの実質的切り下げをもたらした。

第2は短期国債の償還繰り延べという実質的なデフォルト(債務不履行)であった。

第3は、対外民間債務の3ヵ月間の返済猶予(モラトリアム)である。
対象となったのは貿易債務ではなく、借入、マージン・コール、先物為替などの金融債務である。
これらの措置の結果、特にロシアの大銀行が破綻してしまった。

※ロシア大銀行の破綻の原因
当時のロシアの大銀行が破綻した理由の一つは、銀行の調達サイドの問題である。
国内で預金をきちんと集められていた銀行は非常に少数であり、
多くの大手銀行は資金調達を海外の資本市場における外貨建て短期投機的資金に依存していた。
運用面について言うと、集めた資金を短期国債への投資や不正融資をすることで運用していた。
第3に大手銀行の多くが外国投資家との先物為替取引を行っていたことが挙げられる。
外国の投資家と先物取引を行いながら、ヘッジをせずにいたので、
ロシアの銀行はルーブル相場の急激な下落の結果債務を履行できなくなってしまった。
ロシアの大手銀行が海外の資本市場において資金調達を活発に行った背景には
、欧米の投資銀行が盛んにそれを勧めたことがある。
さらに欧米の法律事務所、公認会計士事務所、格付け機関なども
自分たちのビジネスのためにロシアの銀行に積極的にアプローチし、海外での調達を煽った。

※金融危機の影響
金融危機により、ルーブルの実質的な大幅切り下げと償還の停止がなされて、
半分以上の銀行が支払不能になった。
残りのほとんどの銀行も政府の支援なしでは生き残れないと思われた。
しかし、実際に清算された銀行は比較的少数であった。
その間にインサイダーが資産を剥ぎ取り、それを新銀行に移すということも行われた。
一部の投機家は大変な損失をこうむったが、それが実体経済に与えた影響は限定的であった。
実体経済への影響が限定的であったということは、
銀行システムが実体経済の金融において十分な役割を果たしていなかったということでもある。
事実、銀行システムを通じた民間ビジネスへの資金供給はごくわずかであった。
銀行を信用せず米ドル現金をタンス預金していた一般の人々には大きな影響はなかった。

※銀行システムの再編成
銀行セクターの再編が始まったのだが、明確な戦略が打ち出されないままに時が経過していった。
再編の進捗は緩慢で、調整がなされておらず、非効率であった。
金融セクターの新たな倒産法は適切に実施、適用されず、
中央銀行は個々の銀行を資金注入によって支えるにとどまった。

※危機を生き延びた銀行
危機を生き延びた銀行がどのような銀行であったかというと、
一つはロシア中央銀行の子会社である。
その代表がズベルバンク(貯蓄銀行)やロシア外国貿易銀行である。
そのほかには、一部の中小銀行や地方の銀行がある。
これらの銀行は海外からの外貨建ての資金調達や短期国債の運用とも無縁であったため、
金融危機の影響を受けなかった。さらに、外国資本の銀行というのがある。』

このハイパーインフレの時物価は年間で70倍にもなってしまい、
100円のパンが、1年後に7,000円にもなったわけですから、
ロシアの公務員、教師、年金生活者、軍人など
生活できない人たちが続出しました。
一方で国営企業の民営化にあたって、
国民に国有財産の権利を証券にした
補助金(クーポン券、商品引き換えのようなもの)が発行されたのですが、
共産党等の旧官僚エリート層が、有利な立場を利用し、
これを二束三文で買い集め、国有財産を安く手に入れ、
市場経済時代の事業家となって富裕層になっていきました。

その後デノミの実施や石油の高騰等により、経済は一時持ち直したのですが、
また2009年度のインフレ率13%以上、実態の失業者数600万人と、
いぜんとして不安定な状態で、2009年はマイナス成長になるようです。
では日本はロシアとどう違うのでしょう、日銀券の発行残高は現在約80兆円前後、
手形・小切手取引残高25兆円とすれば現物取引合計は105兆円前後、
これに対し、国民の現在の総資産は約1,500兆円と推定され、
国債発行残高は2008年で地方債も含め約900兆円、
平成19年国民総生産約516兆円ということです。

この現物取引と国民総生産や国の借金との差はなんでしょう、
結局ほとんどは外貨と信用取引ということなのです。
それは外貨のほかカード、株式、デリバティブ、信用保証等の日銀券を伴わない
取引が殆どだということです。余りロシアと変わりありません。

つまり現物のお金、手形、小切手取引が国民総生産の約20%に対し
、国の借金は国民総生産516兆円を上回る約900兆円(174%)になってしまったのです。
そして外貨は別としてそれを益々飛び越えて、カードや株式取引、デリバティブ、
信用保証等信用取引というものが
政府の国債発行や民間の金融機関によって作り上げられてきたのです。
市場はすでに実体経済をはるかに超えて、
架空の市場を作り上げる状態になっているようなのです。
それもその市場では金融機関やトップグループの大企業、
そこからたくさんの収入を得た個人資産家によって、運営され続けているわけです。

この中での日銀の役割において、インフレに対する番人の役目は大きく、
もし政治や市場の要求に通りに、日銀券をたくさん印刷していたら、
また国と一緒になり金利の高い国債を発行し、外国資本を呼び込んでいたら、
インフレに見舞われ、ロシアのように、大変だったと思いゾッとします。

その面では日銀は、経済の基本的ルール(日本銀行の金融政策の理念を
「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」としています。)を守り、
金融機関の中で唯一その役割果たしたともいえるのではないでしょうか。

ただ日銀券と手形、小切手等に対するコントロールは効きましたが、
他の信用取引には余り効きませんでした。
その意味では日銀の日本の市場に対する役割は小さくなっているのだと思います。
信用取引という過剰流動性は日銀券や手形、小切手による決済システムを
はるかに超えてしまったのだと思います。それは全世界も一緒だと思います。

次にでは、同じように高金利で外国資本を呼び込んできた、
アメリカは何故ロシアのようにならないのでしょう、この疑問はよくは解りませんが、
簡単に言うと、全世界がアメリカの第二次大戦後の将来性と
圧倒的な軍事力を信用したからと思われます。
しかしアメリカは圧倒的軍事力の過信とそれをバックにした力の戦争で、経済的には疲弊し、
貧富の差も拡大し続けています。その為現在その信用力も怪しくなりつつあります。
経済的にはロシアと余り変わらない政策を行っているからです。

またヨーロッパEUにおいては、財政基盤が過剰財政赤字状態でないこと。
(年間財政赤字GDP比3%以下、債務残高GDP比60%以下)という条件がありますので
日本やアメリカより健全財政ですがロシア崩壊後の東ドイツ等共産圏一般労働者との
格差は広がっているようです。
ちなみに日本の年間財政赤字は2004年度で33兆円(対名目GDP比6.5%)、
財政赤字の累積である債務は839兆円(対名目GDP比163.5%)にのぼります。
全世界では民主主義とは思えない数々の現象が、前記ロシアだけではなく、
先進国アメリカ、ヨーロッパ、日本等でも表れています。
それはひとえにそれらの国が、経済に対する政治の姿勢や真実の経済報道が少なかったことに起因しているような気がします。

経済報道に関しては現在でも過剰流動性や、経済市場、所得配分、会社とは何か?
等はっきりと解明されていない部分が多くあるのだと思います。

報道だけでなく、経済学者や政治家等経済にかかわるすべての人が、病気のガンのように
、経済活動の真実を見抜けないでいるのだと思います。
それに加え、CM収入に頼る報道、国家機関の交付金に頼る報道が相俟って、
全世界の人民に会社を含めた、経済の仕組等の真実の報道がなされなかったことが
世界を複雑にしてしまいました。
応分の金儲けやその為の努力が悪だと言っているわけではありません
。人が生まれてくるのは平等であり、
将来に対するチャンスや希望や夢や生きがいは皆がもてるように人々は目指してきたわけです。

それを目指すには政治が大きな役割を持っているということは明白だと思います。
もっと単純に、人を騙すことは悪いこと、人を殺すことは悪いこと、
金銭だけを求めることは悪いこと、一生懸命努力することはいいこと、
助け合うことはいいこと、社会の為になることはいいこと等
単純明快な世界を作り上げるべきだったのだと思います。

それを、株式会社を中心とした資本主義を過信し、その仕組みを複雑にしたために、
北朝鮮のような独裁者企業とか、異常な利潤追求とか、戦争の大義名分とか、
貧困が努力をしないせいだとか、無理にそれらの現象を正当化する理由を探すようになり、
正義とか、勇気とか、良心とかが解り憎くなってしまったようです。
このような状態の中、日本の政治を見ていて、エリートや富裕層でない人々は皆、
ロシアのように、いつ高金利やインフレに襲われ、
自分達の生活は大丈夫だろうかと将来に不安を抱かない人がいるでしょうか?

個人的には資本主義も社会主義も共産主義も、民主主義に向かう一過程にすぎないと思います。
日本には文盲等殆どいなく、教育水準も高い訳ですから、
全世界の中で最も民主主義に近い国だと思います。
模範的民主国家を作り上げることが出来る可能性が充分ある国だと思います。
ということは今後どうしても、膨らんだ財政を正常に戻す基本作業は必要ですが、
その作業と同時に、
① 働きに対する公正な所得配分、公正な税制、
② 株式会社制度の見直し、
③ 不正な所得の排除、
④ 私有財産制やそれに伴う相続との問題(親と子の人間性をどう評価するか)---
キャピタルゲインをどこまで認めるか、(先人が努力したであろう遺産で毎月なにもしないで
1、500万円所得が入ることがいいことなのかどうか?)
⑤ 一旦日雇いや派遣労働に入り込んだり、中年でリストラに会ったら、
先進国の履歴書を重視する社会においては、そこからなかなか這いあがれない問題があります。
これに対しどうその人達に将来の希望や夢を与えるのか?
⑥ 国、民間とも透明で、徹底して仕組・手続き等プロセスを情報公開する政治・経済、社会、
等色々の難題を解決していかなければならないのだと思います。

今からは特に政治家の良心が問われる時代なのかもしれません。
むかしテレビで少女が叫んでいました「同情するなら金をくれ!」と
人生、金だけではない夢とか希望のある世の中になるにはまだまだ先のことですかね?
「いやまだまだ何の何の、夢や希望を持ってるよ!」
「でも生命は後何年!?」
「老兵は死なず」ではなく将来のない老兵は「立ち去るのみか!」
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