Sbagliando si impara. (間違うことで人は学ぶ。)

イタリア語の勉強に、nonna ひとりでフィレンツェへ。自分のための記録。

「太陽諸島」多和田葉子

2023年02月06日 | 読書
「地球にちりばめられて」「星に仄めかされて」に続いての第3弾を、多和田さんは
どのように物語を展開し、はたまた転回していくのか。期待を持って読みました。
       

「響きあう言葉とともに 地球を旅する仲間たちの行方はーーー。
 国境を越えて人と人をつなぐ、新しい時代の神話
  ヨーロッパで移民として生きるため、自家製の言語(パンカス)をつくりだした
  Hirukoは、消えてしまった故郷の島国を探して、仲間たちと共に船の旅に出る。
  一行を乗せた船はコペンハーゲンからバルト海を東へ進むが、沿岸の港町では
  次々と謎めいた人物が乗り込んできてーーー。」  (本の帯より)

国籍、人種、性別、言語の異なる6人がコペンハーゲンを出港し、バルト海を東へ移動します。
都市の名前を載せた地図は、方向音痴である私の手助けになりました。
      
Hirukoの生まれ育った島が本当に消えてしまったのかどうかを確かめる旅でしたが、
途中で目的さえもあやふやに。

佐渡島、長崎、新潟、福井、シガ、出島等々の地名は出てくるが、
「日本」という国名は第3弾でも出てこない。
「日本」ではない? やはり、私の推測間違いなのか、何か意図でもあるのか。
そういえば、「海にいるから、国境はない」。「たとえ、国がなくなっても町はなく
ならない」と。  「日本」という国はひょっとして、、😔 

海の上という国境のない船上で、異文化や言語の議論が交わされる中でも、多和田さん
の「言葉遊び」が飛び交う。出た~~♡って感じでワクワク。
でも、今回は正当な「ことばあそび」が多かったように思ったのですが・・・。
「5 7 5」でHirukoはお喋りしますが、相手は気付いたかどうか。

また、物語の中ではたくさんの言語が飛び交います。
自然に発生したHirukoの手作り言語「パンスカ語」、「デンマーク語」、「独語」、
「仏語」、「英語」、「日本語」が感情によって入れ替わり、言語によって1人の
人間の思考にも影響を与えていることが面白いところでした。

ポーランドで生まれた「エスペラント語」の話しもありました。
世界共通語として作られた人工語として、一時日本でも騒がれました。
この人工語も生きた人間に使われることで変化してきたと、議論されていました。
どのように変化したのか興味深い話しで、調べて見たくなりました。
でも、そもそもエスペラント語を学んでない!

「『くに』に帰りたいのではなく、一体どうなったのかが知りたいだけ。
漢字の国がいつの間にかひらがなの『くに』になっていた。みんなといっしょに、あの
くにを訪れた時、あのくには懐かしさの中に失われたものではなく、計り知れない未知に
変貌しているだろう。」

「計り知れない未知に変貌」なんて、どう解釈したら良いのでしょう。
放射能汚染水を海に捨てる話しも語られており、
社会問題、環境問題を物語風にサラッと語っているだけに、余計に心がざわつきます。

「ディナーには参加する。それまで邪魔するな。ドアをノックするなよ。」
Susanooの台詞、どこかで耳にしたような。 Susanooが絡む神話「天岩屋戸」??

サンクトペテルブルク、都市と結婚するはずだったのに上陸できなかった女性「プリンス・
ベーニュ(櫛)」は、「クシナダヒメ」だったとか、彼女が一緒だと安全だとか、昔々の
神話的な話しがひょっこり出て来て、油断してるとストーリーが読めない!
クシナダヒメはどうやらSusanooの婚約者でもあるようで、八岐大蛇の神話の登場人物と
重なります~。

「家になる,わたし自身が、家になる」とHirukoは宣います

『明日のことが分からなくても、わたしたちはまだこのまま一緒に旅を続けていくことが
できそうだった。』

何も分からないままに、何事も解決せず、あやふやなままに第3弾も終わり、まだまだ、
多和田さんは、たどり着く保証もないHirukoの「くに」に6人を旅立たせたのでした♡


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