主人公は印刷会社の営業部員・浦本学。32歳で主に文芸書を担当している。
出版社から仕事を取り、工場の印刷機の稼働率を上げるのが使命だ。
プロローグに「この先本が売れなくなるのは火を見るより明らかで、印刷業界は
客観的に見れば斜陽産業、沈みかけた船だ」という言葉がある。
浦本は奮闘するが、常に葛藤が隣り合わせ。
作家、編集者、装丁家、印刷会社や製本会社の人々の仕事もきめ細かに、
作家、編集者、装丁家、印刷会社や製本会社の人々の仕事もきめ細かに、
愛情を込めて描かれる。
著者の3年にわたる取材の成果だろう。
「一冊の本が読者の心を突き動かし、人生を変えることもある」という一文は
本に携わる人たちの矜恃(きょうじ)だ。
本のエンドロールとは奥付のこと。著者、発行者、出版社、印刷所、製本所などが載っている。
本のエンドロールとは奥付のこと。著者、発行者、出版社、印刷所、製本所などが載っている。
この本では、さらに工夫が凝らされ、まるで映画のようなエンドロールが。温かな余韻が残る。
(西秀治)=朝日新聞2018年4月7日掲載
(西秀治)=朝日新聞2018年4月7日掲載
この本の写真を見て、
一昔前に朝日新聞社の工場見学にmio maritoと出掛けた事を思い出しました。
記憶に残っているのは超巨大な巻取紙に驚いたこと!
これから入ってくる重大ニュースのために余白を残してレイアウトし、分かり次第
にオペレーターが打ち込み、朝刊に間に合うように準備万端しているという話しの
記憶もあります。
そして、私たちふたりの写真を載せ「◎◎さまご夫妻、京都朝日新聞工場見学」なん
て書かれた新聞をお土産に貰いました。その新聞を探したのですが、大事に保管し過
ぎて見つけられませんでした!
会社説明会就活生の前で『本を刷るのではなく、本を造るのが私たちの仕事です。
印刷会社はメーカーなのです。』
営業の浦本のコメントから始まりました。
1冊の本が出来上がるまでの過程をその場に私自身も参加しているかのような錯覚で
展開され、ページを捲っていきました。
「電子書籍」と「紙の本」との鬩ぎ合い。 あ~~!
「電子書籍」が「出版会社」に払う対価や、本の厚みを確認する「束見本(つかみぼん)」、
「並製(ソフトカバーのこと)」等々、説明され、益々これから本を読む楽しみが増え
ました。
また、刊行日時が絶対条件下で、刷り直しが出来ない時の誤字を訂正する方法も、
修正後のページを新たに継ぎ足す「一丁切り替え」、「シール貼り」。 へぇ!
実際、このストーリーの中で変換ミスの誤字が製本完了後に発見されてます!
目次部分だけの誤字で『陽の当たる場所』がひどい間違いの『火の当る場所』。エッ!!
十周年記念作品を12回目の結婚記念日に妻に贈りたいという作者の個人的かつ強い願望で、
誤字のままで予定通り刊行になったが、その後読者からのクレームもなく、
話題にも上らなかったのには驚きです。 気付かなかった? まさか!
私だったら目ざとく見つけ、そっと出版会社にお知らせするかも。
勿論、第2刷からは修正され何事もなかったかのように。
この本に出てくる「スロウスタート」、「長篠の風」等の関わった本が実在しているの
では、と感じネット検索までしてみました。
本当にリアルでスピード感も有り、印刷会社の一員となってどっぷりと浸かりました。
多くの本のページ数は16の倍数になっているそうで、「本のエンドロール」のページ数を
調べて見ました。 奥付を含めて「384」ページ、16の倍数になってます~~!
たくさんの人が関わって、大変な行程をいくつも経て本は作られていることを
今まで意識せずストーリーだけをただ読んいただけですが、これからは本に関わった
人たちを感じなが ら、読んでいくと思います。
「誰かのためが自分のためになり、自分のためが誰かのためになる」
とこの本の中で語られています。
この本には「エンドロール」があり、この本に関わった人たち、スタッフ全員の名前が
載っています。
いい本にまた出会いました。 Grazie mille !