いよいよ、次男カイのチェアマンディナーがやってきます。
これが来たら、すぐにフォーマル、そして卒業になる…と、とうとう、彼も巣立って行ってしまうのです。
すごく長かったようで、一緒に暮らせたのは、たったの17年間。
今日は、オーストラリアとは関係ないけれど、後悔も加えて、
私の宝物を、シェアしたいのです。
子供たちが小さいころ、私には、一日1回は何か辛いことをやらせる、と言うポリシーがあって、
毎朝、ランニングに連れて行きました。
”ママ、まってーーー、お手々痛いし、走れへんー” とカイ。
見ると、少しトゲトゲした、松ぼっくりみたいな花を小さな手に持っていて、走ると、振動で手をチクチク刺すらしい。
”それだったら、捨てなさい” と言うと、
”捨てたら、お花、泣きよる” と、痛いのを我慢して、泣きながらついてくる。
私は、毎朝、子供がまだ寝ている間に、アパートのジムに行っていたのですが、
ある朝帰ると、子供たちが居ない!
家じゅう探してもいない。外に出るワケは無いし、、、、
”アキ、カイーーー!!!”
と叫ぶと、バスタブに隠れていた子供たちが ”バァーッ!!!” と出てきたり。
”ママ、ママ、”と真面目な顔で側に来るので、”何?”
”こんな大きな、フガ出た”
”フガって何?”
”はなくそ”
”汚いなぁー、こっちにかしなさい” とテッシュをさし出すと、鼻の穴から、
鼻くそを出すまねをして、小さな黄色い小石をくれました。
いつだったか、スーパーに行った時、カイが何処からか、イチゴのパックを抱きかかえてきて、
”これ買おう” と言ったのに、高かったので、買ってやらなかったことがあります。
アキは、食が細く、難しかったので、何でも色々買ってやって、機嫌を取って食べさせたけれど、
カイは何でもよく食べてくれたので、気にかけてやっていなかったのです。
…ああ、イチゴくらい、買ってやればよかった、、、と、14年たった今でも、
あの時の、がっかりしたカイの顔を思い出すのです。
カイがまだ2歳のころ、マッサージスクールに通うことにしたので、保育園に入れました。
朝、保育園で別れる時、カイは、決して泣いたり騒いだりしないけれど、
カイを先生に渡して外に出ると、駐車場に一番近い、園庭のフェンスのところに来て、
フェンスにしがみついて ”ママ” と呼ぶのです。
行くと ” あのお花、取って” と適当にそこらの花を指さして、言うので、それを取って、
小さな手に渡してやると、一瞬、にっこりするので、
その隙に、“じゃあ、あとで迎えに来るからね” と、後ろ髪をひかれながらも、逃げるように、立ち去る
のが、お別れの儀式でした。
バックミラーには、いつまでもこっちを見て、花を持ってフェンスにしがみ付いている Kaiが見えました。
ある日、いつものように夕方、迎えに行くと、Kaiが走ってきて、にっこり笑って
小さな手を、私の目の前で開いて見せたのです。
そこには、私が朝、手渡してやった、“ねむの木の花”が、
Kaiの手のぬくもりで、ホカホカで、よれよれになってあったのです。
“ママ、待って” と言ってどこかへ走って行ったかと思うと、今度は、砂だらけになって、へなへなになった、
これも、朝とってやった “ねむの花” があったのです。
園の先生が、“今日は一日中、お昼寝の時も、大事にそのお花、持ってましたよ” と仰ったとき、
にっこり笑うKaiの顔を見て、私は、涙が出そうになりました。
嫌がるカイを引きずって、日本語学校に連れて行ったり、
ラスト10分でも、カイの大好きなシーワールドのモノレールに乗りに連れて行ったり、
ピアノを教えたり、一緒に、飛行機や家を作ったり、
あの時は、ちょうど離婚裁判で、朝目覚めるのが辛かった日々を、
笑わせてくれたり、驚かせてくれた数年が、とても懐かしく、涙が出そうにあるくらい、いとおしく思えるのです。
彼が10歳くらいの時、すごく難しい時期があって、本当に、体を張って、
…文字通り、声を張り上げて、広い場所に出て体力の限り、、、戦いました。
学校のカウンセラーの先生に話を付けてもらったら、何故かその後は反抗期もなく、いつもママに優しい、
いえ、誰にでも優しいらしい、子なのです。
うるさいくらいに、“おててつないで” と差し出された、あの小さな手を、もっとつないでやればよかった。
遊んで欲しがって、いつまでも、ママにまとわりつくカイを、無下にしないで、
納得するまで、遊んでやればよかった…
甘えて、抱っこして欲しがった時、ぐずった時、叱らないで、
あの、小さな体を、もっと抱っこして、安心させてやればよかった…
だって、そういうことを必要としてくれるのは、ほんの、数年の間だけなんだから、、、
と分かったのは、そうしなくなってから。
あの時は、毎日が戦いで、寝不足でしんどくて、それどころじゃなかった。
けれど、大切な一生に一度の、数年だったのに、
あの、ママを見上げる瞳、小さな柔らかな手は、もう思い出の中だけ。
今は、毎日自分の車で学校に通い、明日からは彼女とスキーに行くとはりきっているカイ。
もう二度と、あの小さなカイに戻ることは無いのね。
もう、私がしてやれることは、もう、殆どなくなってしまった。
小さな子供を持つお母さんたち。
今はきっと大変で、子供の事をかわいく思えないこともあるかもしれないけれど、
子供と過ごした時間は、将来、必ず、甘酸っぱい、
大切な宝物になります。
大変だけど、負けずに頑張ってくださいね!