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1940年6月、国民精神総動員運動から新体制運動へ

2023-05-13 12:15:54 | アジア・太平洋戦争

 今、安倍政権は「国民精神総動員運動」以降の歴史をテキストとして国民の生活環境を作り変えようとしている。

1937年から近衛内閣によって始められた「国民精神総動員運動」は、警察の取り締まりのもとで、行政組織などを通じて推進された。「非国民」というレッテルをはって同調させようとしたが、自発的・能動的な国民運動に発展させる事には行き詰まり、近衛の側近グループから「下からの盛り上がる国民運動」を推進するための「国民総動員の再組織化」が提唱された。それが「新体制運動」であった。「新体制」とは、自由主義的・民主主義的な旧体制」を一掃し、天皇制を中核とする日本型全体主義を樹立することであった。

 1940年10月7日発行の内閣情報部発行の『週報』臨時号「新体制早わかり」(1940年10月7日)によると、「政党がなくなる事、色々の団体が一緒になる事、小売り商人が合理的に合同する事、暮らし向きが変わる事……いや何々と、色々考えられましょう。しかし、どれも新体制の部分的現象にしか過ぎません。新体制とは、もっと大がかりなものです。国歌と国民を揺り動かす大きな動きです。日本が、今世界歴史の推進力として、大東亜の、いや世界の新秩序を建設してゆくための体制です。全国民が聖旨(天皇の思召し)を奉戴(つつしんでいただくこと)し、一億一心一体となって国家国民の総力を十二分に発揮できるような仕組みであります。世界は今、御承知の通り、大動乱、大転換の真っ只中にあります。これは、フランス革命後の思潮であった自由主義、民主主義を背景として、いわゆるイギリス的秩序で発展し、又固められていたところの世界が行き詰って、新しい哲学、新しい世界観に基づくところの世界、即ち結論的には通俗的にいう全体主義的な世界になりつつあるのです」と国民向けに解説している。

 新体制運動によって生活様式の画一化が促進されたが、この統制は、戦争経済のもとで一部の受益者と犠牲者との生活格差が拡大し、国民の不満が増大した事に対処しようとするものであり、国民生活の低い水準での平準化と負担の平等化が目指されたのである。

(2016年4月9日投稿)

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