※この投稿は、別稿「ABCCを設立した米国政府の狙いは?」を先に目を通してからお読みください。
米国政府はABCCに対して被爆者の治療をさせなかった。それは何故だったのか。ABCCに関する1950年代の米国公文書(米国立公文書館)によるとその理由は、
パーソンズ駐日公使が国務省北東アジア部にあてた文書(1954年2月)では、「(治療すれば)被爆者に特別な意味があり、他の兵器の被害者とは異なるという見方を支持する事になる。原爆投下への謝罪と解釈されかねない」としている。
また、ロバートソン極東担当国務次官補にあてた文書(1954年1月)では、米国政府の公式見解として、「被爆者支援の責任は負わないし、その他の爆撃による被害者と区別する事はできない」としている。
つまり、米国政府は当時の冷戦下で、非人道的と非難され原爆が使いにくくなるのをおそれ、それを防ごうとしていたのである。その事は、国家安全保障会議特別会合録(1953年2月)のダレス国務長官の「米国は核兵器を覆い隠す事で、その使用が非人道的であるという考えを助長してしまっている。なぜ、10個の通常兵器で1万人を殺すのが道徳的で、1個の核兵器で同じ事をするのが非道徳的なのか、理解できない」という発言に明確に表れている。
(2021年1月28日投稿)