い・ち・に・ち

明日が今日になって昨日になるような毎日

八十六通

2021-07-31 | 便り
日陰を求めて
いつもと違う道を通る

信号のある道は熱を帯び
蜃気楼の中に紛れ込む

この先は繋がっているはず
見慣れた高さが空に対抗して
陽射しの強さを増している

曜日の時間は関係なく
365日の活動を見守っている
さぁ 後もうひと踏ん張り

八十五通

2021-07-30 | 便り
この場所しか知らない頃は
ここがすべてであり
これが最大の世界だった

地球の姿を見られる世の中で
月光よりも美しい灯りを知った
目の前を遮る霧も暗闇も
童話の世界の物語に変えた

大海を知ったはずのカエルでも
そこに飛び込むものはおらず
淡水の洗礼を受け鳴き続ける
認めることに命を懸けて

それぞれが
それぞれの
居場所を求めて旅をする

八十四通

2021-07-29 | 便り
これが決まりだからと閉められたら
そこには経緯も理由も説明もなく
やり手の鍵師さえお手上げの
頑丈な扉が残る

いくつもの扉に阻まれて
区切られた枠の中で右往左往する
疲れて眠る場所もひと休みの木陰さえ
見つからないこともある

だから今
すべてが眠る夜がないとしても
すべてが息づく瞬間を見逃したとしても
どこかで
虹の橋を渡る風が吹き
飛び立つための羽を広げた
君を見るため天を仰ぐ

八十三通

2021-07-28 | 便り
好みで決まる第一印象
頭で考えても始まらない
説明書も役には立たない
感じたままの記憶が残される

ありとあらゆる情報が頭の上を行き交う
ため息に押し出された重みが頬をたたく

目の前に降りた闇に驚き辺りを彷徨う時
同じ台詞が四方から聞こえぼやけて見える声の主

思わず聴き入ってしまうのは
なぜか頷いてしまうのは
何色にも染まる白紙の心
姿を変えて空に飛ぶ

八十二通

2021-07-27 | 便り
耳に届いた声がストンと心に落ちた
縮こまった気持ちがグーンと伸びをした

ホンワリと温かくて
沁みるほど熱い
何処から集まって来たのか
何処に隠れていたのか

考える隙もないほどに
満たされた丸い気持ち
待っていたのかな
知っていたのかな

誰も知らない 見えない声
見えた気がした

八十一通

2021-07-26 | 便り
昨日からのいちにち
成長と呼べる未熟な部分
維持したと言える大人の証
進歩と後退のかけ引き

見えないたった一日
積み重ねた年月の高さ
気付くことのない
昨日と違う一日

分単位の心の変化が
24時間の長さを決める
ひとつの目標が
生きてる重みを教える



八十通

2021-07-25 | 便り
目を止めた明りに足が止まる
見惚れた瞬間に時が止まる

頭で考えた理想の世界と
まるで違う目の前の景色に
疑うことも忘れ
理想像も消え
ただ吸い寄せられた

生まれたての脳細胞が
教えもなく迷いもせず
本能のまま結びつくような
無限の考えを伸ばし
心を射止めた



七十九通

2021-07-24 | 便り
待つ時間は余計なことを考える
落ち着かないままにそわそわを楽しむ

未知との遭遇を何度体験してもまぼろしになる
目に焼き付けようと心に刻もうと努力はしたが

何度会えば何年たてば
現実の姿が見えるのだろう

すれ違う街角で
会釈する距離感で
目に留まるものが違うように

目も眩む陽射しより明るく
月光が見せる夜空の星よりも近く
目を開ければ消え去る夢よりも儚く

七十八通

2021-07-23 | 便り
何が違うのか考えた

立場 経験 日時 環境
何よりひとりひとり

歩み寄るために踏み出す勇気
受け入れるために広げた心

ひとりに課せられた忍耐と努力が
限界を超える怖さ

なぜか広がる被害者意識と
食い止めるための最大の痛み

誰が背負うべきなのか
誰もが逃げ出す円満の歪み

七十七通

2021-07-22 | 便り
その時相手の望む答えを言った

聞きながら状況が見えていた
表情さえも分かる気がする
浮かんだままの言葉を
あの口調で言ったに違いない

たしなめる言葉は聞きたくないだろう
友達なら言ってくれるという
ドラマ仕立ての台詞は飲みこんだ
話し終えた時いつもの眼差しがあったから

何処でも繋がる便利さが
不思議な距離感を生む
心が通じ合うという
見えないものを測るには