い・ち・に・ち

明日が今日になって昨日になるような毎日

三十五段

2020-07-31 | 階段
過去形の優しさを思い出に変えて
これからの努力を明日に繋ぐ

守られていたのはいつも自分で
瞳に映る本当の強さに気付かなかった

感情のままに浮かんだ言葉より先に
投げつけた心をそのまま受け止めてくれた

なぜとは聞かない
どうしてと問う代わりに
温もりの長い腕が
真っ直ぐなまつ毛の影が
包み込む
それだけで生きていける



三十四段

2020-07-30 | 階段
それぞれの場所で
お互いを感じながら
宇宙の均衡の中
保ち続ける無数の星

ひとりぼっちだとそっぽを向いたら
通り過ぎてしまう小さな温もり
泣きながら突っ走ったら
見逃してしまう優しい微笑み

気付いたなら
ためらわずに素直になる
目を離さずに
理由もつけずに
ただ心のままに見つけたもの

三十三段

2020-07-29 | 階段
ぬるい季節が同じ角度でやって来る
水田のさざ波が風を低く呼び止めても
耳に届くのは寂しい空のため息に似て

厚い雲をかき消すように
矢羽根をまねて突き進んでも
ぼやけた的に滲む太陽が重なる



三十二段

2020-07-28 | 階段
ギリギリの歩幅がその一歩をためらう
進んでみなくては分からないのに
軟弱な建前が大人の顔で固まる

心からの笑顔を選び出せなくて
相手が見る表情を演じ続ける
仮面の下の本心が同化し始める

壁のない閉ざされた世界を思いやり
出口を求めて迷路を彷徨う

それでも前を向けるのは
穏やかな声に包まれた
会いたい笑顔 見たい一瞬


三十一段

2020-07-27 | 階段
見渡せるような晴れの気分で
一段上の世界にあこがれた

同じ速度で運ばれる
歪みのない箱の中
大きさは違っても
軋みの音で曲がって行く

行きつく先はどこだろう
箱の中身は何だろう
同じ形を成すために
捨て去るものは何だろう

良し悪しで分けられて
優劣で決められて
見えない運命の引力が
手招きしていても

雨宿りして風と戯れ
星空の下木々と眠る
羽ばたく翼は
自分で見つける

三十段

2020-07-26 | 階段
氷の粒を光の輪が繋ぐ
君の吐息を染めながら
軌道の行方を追いかける

呼吸の順番を間違えて
止めた次を考える
息をのむ瞬間が
続く先を考える

静寂な空気のしぶきが
モノクロの世界に
息を吹き込む



二十九段

2020-07-25 | 階段
手の平に握りしめた強運を
拍手で託す明日の夢

おまじないも占いも
心の無事を願うため
見えない力が加わって
希望の魔法をかけるなら

合わせた両手の間にも
奇跡の種が芽を覚ます

二十八段

2020-07-24 | 階段
強がりが薄い一枚の盾だとしても
角を合わせ真ん中を見つけ
繰り返す折り目の確かさが
強さを足して形を変える

初めて出会う祈りの形
思いを込めた千羽が連なる
風に舞う儚さと折り重なる強さを持って
命ある姿を見せる

二十七段

2020-07-23 | 階段
夢見るウサギは月の中
光に照らされ君を思う

木々も眠る暗闇に
恋しい気持ちを映し出す

季節の雨が涙を誘い
淡色のさざ波が時を揺らす

距離を保ちこぼれる雫が
奏でる音で跳ねたなら

雲の扉を射抜くように
君のもとに届けばいいのに

二十六段

2020-07-22 | 階段
格言の数の多さに見る伝える事の難しさ
自分の中でのマックスな思いが
相手に当てはまるとは限らない

目を見て通じ合える奇跡の確率も
偶然のテレパシーのいたずらも
その場限りと都合よく受け止めて

運がいいとか悪いとか
他力本願で誤魔化していたけれど
向き合うためには
伝えるためには
まだやるべき事がある