い・ち・に・ち

明日が今日になって昨日になるような毎日

その二十

2020-10-30 | オキテ
風が運ぶ陽射しの音が影を揺らす
柔らかな温度で濃淡に染めていく

足音も立てず静かに近づいた季節
重ね着が欲しくなる凍てついた空気

そんな風にいつの間にか
向かう気持ちは一直線で
迷いも躊躇いも知らぬままに
心を満たしていく
決まりのない正しさ

その十九

2020-10-29 | オキテ
笑顔を思い浮かべるだけで
スーパーウーマンに変身出来る
単純明快な能力を持ち
無邪気なオーラを纏い
涙を隠して笑わせたりもする

道化を演じる実力は無くても
無償の心を貶されたとしても
泣くことは無い
恥じる事も無い
ただ君のしあわせだけを祈る



その十八

2020-10-28 | オキテ
同じ言葉が行き交う朝

早起きのスズメは朝食を終え
おしゃべりに忙しい

低くなった太陽が
追い立てるように部屋を照らす

秒針のリズムに乗り一日の準備をする
ハネ上がった髪の方向に思わず笑う

同じ流れの日常が進む

ふと気付いてしまうのは
頼りないけど情けないけど

振り向いてもいない
呼び止める背中も見えない

置いてきぼりの忘れ物の記憶

その十七

2020-10-26 | オキテ
思いをぶちまけている内に
分離されたしたたかさが
私を追い込む

正しいと思い込んでた事実は
脚色された偽の設定で
笑えない勘違いと
架空の世界が渦巻く

自分の中では
見事に消化されて
強い人間になったつもりでも
ひとつのホコロビが土台を失う

もう一度初めから
少しずつ踏み固めたら
昨日より高い目線で
見渡せるはず

その十六

2020-10-25 | オキテ
背伸びして見えた景色

初めてだけど懐かしくて
静止画のように落ち着いて
隅々まで見たいような
瞬きで消えてしまいそうな

儚いという美しさに
スガル年月の長さを
慈しみ感謝しながら
向かう気持ちを解き放つ

自由にどこまでも行けるなら
思いのままに飛べるなら
つま先の痛みも忘れ
弾みをつけて飛び出そう

その十五

2020-10-23 | オキテ
気持ちは本音を言おうとした
出た言葉は削られた違う嘘

瞳の中が見えた気がした
望む言葉が吐息に消える

独り言が聞こえるように
はね返す距離に戸惑う

誰もが閉ざす自分の殻に
行き場のない心が叫ぶ



その十四

2020-10-22 | オキテ
その笑顔を信じてみる

もう一度見るために
もう一度笑うために

何を迷っていたのか
今になっては分からない
答えを出す前に
違う疑問が被さって
次々と
シグナルが点滅する

経過は中途半端のまま
続く場所を探し回る
風の吹く方向に
指を立ててみる
目を閉じたら
見えるものもある

その十三

2020-10-21 | オキテ
眠れない夜は眠らない
昔々の事を小説を書くみたいになぞりながら
些細なことまで思い出しながら記憶を綴る

役になりきって
思う存分脚色する

自分勝手な思い出は
主演女優賞の栄冠に輝く

ページは膨れ上がり
いつの間にか
現実と夢の境目を超えている

眠れない夜はいつか朝を迎える

その十二

2020-10-19 | オキテ
降り出しそうな雨の重みが
浮かれた心に影を落とす

妄想の世界で夢見た場面は
色を付ける前の失敗作

才能がないからと
始めることまであきらめて

見つけ出せない苛立ちを
世の中のせいにする

逃げ込んだ先にも
未来はあるのだろうか



その十一

2020-10-18 | オキテ
思い出すことは無いけれど
誰にでもある記憶のゆりかご

何を思い揺られていたのか
何を知り夢を見たのか
微笑みにあくびして
泣き声ですべてを満たす

上書きされた記憶の重みに
刻印された消えない掟

覆い隠された芯の部分で
絶え間なく脈打つ真実