い・ち・に・ち

明日が今日になって昨日になるような毎日

四十八話

2020-04-30 | 物語
主語の威力

分かる気がする
思わず笑ってしまうような仕草も
照れ笑いの会話の途切れも
すべて理解できるし許容範囲
ただし一人称限定

落ち込んでいる時
挨拶を交わすだけで前を向ける
こわばった心が晴れやかになる
涙の顔は見せたくないし
全開の笑顔がすべてを物語る

同じ場面の同じセリフを
読み取る能力に優劣をつけるなら
主語に納まる君の名前は
天才以上の神の領域





四十七話

2020-04-29 | 物語
永遠の期限

表示されていない期限を知るために
まず始めてみなくてはならない

神様のシナリオは
解読不可能な暗号が続く
あれこれ考えて
いろいろな壁にぶち当たって
寸断された思考回路

修復するために
寄り道の甘い誘惑に迷い
目眩しそうな姿を堪能し
勘違いのトキメキに酔うまで
ご褒美を与えるのも近道

書き足されていく
続くと願う永遠のストーリー
目覚めた後の現実の痛みに
魔法の呪文が優しくささやく
名前を呼ぶ声が聞こえた気がした





四十六話

2020-04-28 | 物語
てっぺんの瞬き

高い理想を持ち日々努力する
昨日の失敗をバネに上を目指す

先細りの限界まで目を凝らし
点の続きを見ようと思った
容赦なく変わる視界の先は
現実だけが居座っていて

夜空を仰ぎ答えを求めた



四十五話

2020-04-27 | 物語
うつむいたやさしさ

君の笑顔が好きだ
君には笑顔が似合う

台詞のような甘い言葉が
隙間なく飛び交っていても
コマーシャルの軽快なリズムが
いつの間にか身に付いていても

そこに本当を見つける基準はなく

表情の見えない文章を読み取り
背景に彩られた言葉だけを信じる
体を揺らす音符の振動に
ときめきの鼓動を合わせる

隠しきれない心が叫ぶ
王様の耳は・・・





四十四話

2020-04-26 | 物語
思い出の確率

あの頃はとかあの人はとか
途切れた記憶を繋ぎ合わせて
懐かしさの場所に置くのは自分次第

同じ場所同じ時間の出会いでも
それぞれの心の温度は様々で
過去に遡る時間の長さを変える

変更を繰り返す設計図でさえ
そのままをなぞるのは難しく
書き換えた予定表と現実の
文字数さえ揃わない

確かに残った心のざわめきが
新しい思い出を飛び越えて
大きく深く広がって行くのなら
今はただ大切に そのままで


四十三話

2020-04-25 | 物語
禁断の横顔

話したことはない
首を垂れ頭上を通り抜ける声
それが万人に向けた挨拶でも
弱さを認めた独り言だとしても
浸ってしまう乾いた心

しみ込んで満タンになった思いは
溢れることを恐れるだけで
雨上がりの日差しにさえ後ずさりした
眠ったままの朝日の寝言が
寝坊した夕日にささやく

見つめたことはない
瞳に映る景色を思い
透き通る深さを想像しても
永遠の憧れと幻だけが残るなら
物語の表紙を飾る

朱色の空を見上げた横顔



四十二話

2020-04-24 | 物語
昔々のある所には

偶然のいたずらがあり
ありえない出会いがあり
これでもかと言う試練の中
めげないたくましさと
魔法の支援でのどんでん返しと言う
夢見る痛快さがあった

物語を描く時
想像上の花畑に佇む主人公は
始まりの姿だろうか
この先の見知らぬ道を進み
初めての出会いに驚き
知るであろう感情は

咲き誇る満開の微笑みと
うずくまる苦悩の痛みと
枯れない涙の嗚咽があっても
その先で待っている
陽だまりのような温もりが
続きを描いてくれる


四十一話

2020-04-23 | 物語
どちらかに決めるのは
どちらかを捨てること

だとしても
決めなくてはならない

考えすぎて結果が変わる
想像しすぎて先が見えない
危ない賭けに逃げたくなる
お告げの罠にハマってみる

どんなに騙してみても
納得できずに振出しに戻るなら
思い切って
直感とやらにかけてみよう

さぁ
深呼吸
決めるのは 今


四十話

2020-04-22 | 物語
やじろべえの一歩

とっさに掴んだ利き手の偶然
必然より重いしみ込んだ現実
藁をも掴むもがきの中で
動かぬ点の真価を問う

一面に広がる羽の重なりが
翼に形を変えた時
羽ばたく風に揺らされて
零れ落ちた片側の真実

伸ばし続けた両腕で
探し求めたその先が
球体のたくましさを称え
回り続けますように

三十九話

2020-04-21 | 物語
そこにいて
ボクはここにいる

じゃんけんの歩数だけ離れた距離に
夕日の長い影が重なる
手を振る寂しさも明日の約束が消した

季節を数えるようになって
押し付けられた約束が重なっていく
さよならの代わりに虚しさを覚えた

順番を守り
ズルをしないで
名前さえ忘れて
しゃがみ込んだ時

優しい笑顔をくれた人
やり遂げた汗が涙より奇麗だと
手を差し伸べてくれた人
後ろ姿に追いかける勇気をくれた

そこにいて
ボクはここにいるよ

いつかきっと会いに行く
約束はしなくても
必ず会える日が来るよ