い・ち・に・ち

明日が今日になって昨日になるような毎日

二十五通

2021-05-31 | 便り
後ろめたさをプラスに変えるには
極上の言い訳をご褒美とする

恥ずかしがり屋の誉め言葉を
すんなりと受け入れるために
無邪気な心に余裕を残す

いつの間にか固くなった心の
吸い取られた柔らかさも
頭の中で行き場を失う

複雑すぎる単純な変化
それぞれが当たり前に過ぎて
億の数に翻弄される中

歩み寄る難しさと
見上げる立ち位置の遠さに
立ちすくむ場所を探す

二十四通

2021-05-30 | 便り
客観視すれば驚くほどに我儘で
未熟にもかすりもしない悟りの境地

伝わらない優しさを押し付けて
自己満足していた
無償の愛以前に存在すらおぼつかない
音のない涙の行方

その時の一生懸命が
何に姿を変えるのか
知る人はいない平等の中で
自分だけに与えられた
唯一の答え

二十三通

2021-05-29 | 便り
悲しい話は聞きたくないと
明るい話題でその場を過ごす
尖った部分を削りながら
丸い自慢話の花が咲く

着色された感覚が
十人十色だとしても
向かい合う二人の間に
違う場面が映し出される

同じ時を過ごした安堵感が
ちぐはぐな共通点を見つける
カテゴリーに悩みながら
向かい合う呼び名を決めた

二十二通

2021-05-28 | 便り
愛想笑いをしても
すべてを肯定しても
嫌な話を聞いていても
そこに嘘はなく

立場を守るために
嫌われない様に
空気に溶け込み
居場所を確保する

本心を隠した
偽物を演じる
道化だと笑われ
哀れむ声がする

賢い選択が愚かな結果を招き
後悔が違う正解を導く
終わってから判る結末なら
その反対も然り

二十一通

2021-05-27 | 便り
月を覆う雲
神秘を超えた宇宙の不思議
直線上に立ちはだかるのは
光を遮る星よりも広く

君に届けと祈りを込めて
天使の羽を求め続けた
濁りを知った無垢な心を
濾過するために雲上に乗る

羽ばたきの風がおこす
透明な揺らぎを受けて
形を整え雨となり
地上を潤す恵みが降る

二十通

2021-05-26 | 便り
早起きな小鳥の朝のおしゃべり
夜明けを待つ屋根上会議

見慣れた風景も
毎日季節を変えていく

それでも
変わらない一日が普通に過ぎて
昨日と同じ流れを漂いながら
これでいいんだと思うことなく
小さなため息にさえ気づかない 

それを
平凡が幸せだと思うことで
この場所を維持するために
不安と恐れに挑みながら
小さな闘志を燃やし続ける


十九通

2021-05-25 | 便り
あの頃の気持ちを思い出すため
共有した時間の旅に出る

初めてだらけの世界の中で
初めての気持ちが生まれた気がした
憧れたワンシーンじゃなくても
運命の鐘の音は聞こえなくても


時間とともに成長した気持ちは
何かを失いながら大きくなる
同じまま続くことは無意味だと知り
ありのままの変化を受け入れようとした

あの頃の気持ちを思い出しても
同じにはなれない確かさだけが
共有できない心の扉に
難解なパスワードをつけた

十八通

2021-05-24 | 便り
朝の温度を抱き込んで
天日干しした雲になる

上着を一枚脱いだなら
空を見上げる風が吹く

太陽の見下ろす角度が同じなら
例え言葉を交わさなくても
姿だけは想像できる

空気より軽い雲の上
あれだけの粒を乗せたまま
大きさと色を変えながら

誰も知らない着地点を目指す



十七通

2021-05-23 | 便り
決心を声に出してみる
心より脳に近い所で
刻み込まれた印となる

痛みを伴う決意でも
報われない望みでも
時間とともに薄れるとしても

傷跡の確かさを
記憶のページをめくりながら
そっと撫でながら涙する

後悔でも達成感でも
これからとそれまでを信じ
閉じた傷口の表面に光る

十六通

2021-05-22 | 便り
呼び名に気持ちがこもるなら
寄り添いすべて受け止める

好きな声があって
響きが心を震わせる
話し方もその顔も
全身を覆いつくす勢いで
内容さえも音になる

風の便りと言うけれど
うわさ話か読めない文章か
願望を吹き消す静かさで
ハラハラと舞い降り雨に出会う