五小節

この時期は
使えない言葉がある

ここにいるよ
と　教えてくれた
もうすぐ会えるね
と　ほほ笑んでくれた

プツン　と切れた
鈍い痛みを残して
体中の涙に包まれ
鼓動を埋めた

こんにちはも　
さよならも
知らずに

四小節

今目の前にあるものが現実なら

願いを込めた想像上のそれは

夢なのだろうか

目覚めれば忘れてしまう

物語の主人公でも

その先の続くを描いていく

三小節

うつむいた君
かける言葉に
正解はない

百人に百通り
指紋の数だけ
違いがあって

暗闇の中
星の数だけ
キラメキもある

二小節

いつからだろう
記憶を辿っても
もっともっと前になる

一生懸命と言う言葉
そのものの汗に
こみ上げる涙で答えた

この思い
名前は付けられない
分かるのは
瞬間が始まりで
育って行くのが今

一小節

雨音で目が覚める朝

駐車場が遠くなり

髪を濡らす一粒が

気分さえ支配する

予定が滲むのを

空のせいにした

二百歩

羽広げ　乗る向かい風　夢が咲く


やっとの思いで顔を上げ
膝に付いた手を放す
涙と汗は風が連れ
助走をつけて
空を目指す

百九十九歩

雲間から　覗く雨音　リズムとる

灰色に染まる空
形を変える雲の中から
雨つぶが連なって
線になる

大地を潤す
着地の音が跳ねる

百九十八歩

次もある　旅の途中で　開くドア

寝過ごしても
計画のない旅でも

窓を流れる
見知らぬ風景が
記憶に残らなくても

開いた新しい風は
吹き抜けるはず

百九十七歩

見つけ出せ　五感目覚める　指定席

平凡とささやかな安らぎの中
幸せだったと思える人生

波乱万丈
レンズ越しのような
ドラマチックな人生

一つとして同じものが無いのなら
気付くのはいつだろう

後戻り出来ないけど
歳を重ねる希望があるなら
まだ
間に合う

百九十六歩

この一歩　昨日を連れて　明日へ行く

昨日までは出来なかった
さっきまでは泣いていた

昨日より上手くなった
拍手が照れくさかった

見えない明日に
今までの自分を連れて
また一歩

踏み出す