い・ち・に・ち

明日が今日になって昨日になるような毎日

六十七片

2022-01-31 | 雪花
余所行きの真実

相手によって違う顔を見せるから
本当が見えないと言うのですか

同じ空を見上げて
同じ空気を吸って
同じことを感じなければ
自分とは違うと思うのでしょうか

念入りに化粧をして
何度も鏡の前に立って
360度の想像をめぐらし
2時間後の心拍に胸を押さえる

起き抜けの寝ぼけた顔で
自由に跳びはねた髪を結び
面倒くさいを前面にぶら下げ
重い腰を上げようともしない

いつだってどんな時も
そこにいるのが本当の自分
見た目も仕草も言葉遣いさえ違っても
その時のすべてが本当だから

知ってる顔と知らない顔
分かってるつもりの心の行方
誰も知らないひとりに迷わず
その時のその一瞬すべてが真実


六十六片

2022-01-30 | 雪花
間にあるもの

会いたくて一夜で飛び咲く花がある
夢でもと眠れぬ夜の月を慕い

ため息ひとつで逃げた想いを
悔やみながら恋しがる

隔てる海が繋ぐもの
離れた大地を巡りながら
ひとつの星を潤して

これからとここからを
途切れることなく
注ぎ続ける


六十五片

2022-01-29 | 雪花
そこまでの準備

真っ白な雪になるまで
ひらひらと花に舞うまで

魔法の杖が使えないなら
呪文の丸暗記が苦手なら

コツコツと積み上げた時間
自然が織りなす当たり前
目に見えぬ成長と不思議

何一つ
驕ることなく全うし
逃げ出す情けも捕まえる

太陽をナダメながら
空気の温度を下げて行く

水の流れを吸い上げて
色を変え形を変え

もうひとつの潔さで


六十四片

2022-01-28 | 雪花
許容範囲

自分だけのモノ
強要されても無駄なもの
その時がすべてを決める

好みが変わる
好き嫌いの境目が消える
理由は無いに等しい

気まぐれも我儘も
決まりも我慢も
平等に訪れるわけは無く

その日その時
そこだけのリアルが
その人にだけやって来る

だから
比べる基準は無く
優劣の振り分けも要らない

六十三片

2022-01-27 | 雪花
若返りの成長

慣れてくると容易くなる
自信の合間に油断の穴が開き
もろくなった緊張が破れる

追い打ちをかけるように
次から次へと道を外れて
ほつれた場所が見つからない

やり直すことに制限があって
新しいスタートにも条件があって
当てはめるために試練がある

疲れた時の休憩時間に
窓に映る自分を見れば
素顔を隠し余所行きの表情で

若返りを望む成長という名の証


六十二片

2022-01-26 | 雪花
イタイ場所

後2メートルで会えるのに
気まぐれな北風が
渦巻きながら過ぎて行く

いつもなら気にならない
ヘリコプターの回る音も
空と地表を切り離し
白い景色を煙に巻く

行ったり来たりのその訳は
邪悪な心を呼びながら
いつか終わるの慰めも
偶然の一致を阻むだけ

切実に唐突に確実に
今イタイ場所

六十一片

2022-01-25 | 雪花
行き止まりの迷路

あるはずがない
袋小路なら戻ればいい
戻る途中で迷ったら
今度こそ手を離すな

落ち着けと言い聞かせても
心臓はバクバク音を立てる
焦るなと思う気持ちが
余計な考えばかり生む

人から見れば大人の静けさも
頭の中のシナプスは途切れ
穴の開いた駄々洩れの心を
塞げない幼さが笑ってる

悟りを開いた人たちの
咲き誇る能力の超人たちの
言葉を連ね教えを請いても
身に余る凡人の空洞がある

六十片

2022-01-24 | 雪花
余計なものまで欲しくなる

空腹時の買い物は勿体ないと思わないから
今度のティータイムまで考えてしまう

来るかどうか分からないのに
約束のラインも変更可能なのに
ただの社交辞令かも知れないのに

ベールに包まれた淡い想いは
ぼやけた輪郭が美しく見えて
飛び越えた視線もキャッチしてしまう

いくつになったら地に足付けて
いつになったら現実を受け止めて
春夏秋冬の朝に応えられるのだろう




五十九片

2022-01-23 | 雪花
選択した運命

考える力もなくこの世を知り
選ぶ権利もなく人の輪に入る

途中から許された選択の自由は
無限大の範囲の中で点になる

平凡を慈しみ
安泰に感謝して
健康と幸せの祈りを捧げる

何年もの歴史を遡る悔やみは要らない
目の前の自分自身の歩き出した人生を
運命と一括りにはしない

引力に愛された汗と涙も
いつでも君を支えてる



五十八片

2022-01-22 | 雪花
タテマエの見せ方

冷たさに氷った結晶なら
計算のない美しさで
それぞれが当たり前に
輝きながら舞っている

日の光を浴びて
固まり溶けながら
地表までの世界を
洗い流していく

そんな風に出来たらいいのに

保護色に身を隠し
生き長らえる事だけ信じ
輝きを閉じてひっそり溶け込む
計算上の割り切れないタテマエ