い・ち・に・ち

明日が今日になって昨日になるような毎日

五十五通

2021-06-30 | 便り
絡まる糸をほどけずに
決まらぬ距離が
転がり落ちる

はみ出した一本が
突き出た棘に引っ掛かり
重みのままに流れを作る

たどり着いたその場所で
すべてをほどき一本になるか
手繰り寄せた儚さに
すがって元に戻るのか

決めるまでの時間が動く
焦りと弱さに問いながら
昼の太陽と夜の月が
無言の合図で入れ替わるまで

五十四通

2021-06-29 | 便り
夢だと言い聞かせて無理やり起きる

目覚まし時計も眠る薄目を開けた朝
季節を間違えた冷たい空気が
全身の伸びを止めた

新しい一日を迎えるために
夜の画面を閉じたまま
念入りにほぐした体で
低反発に沈んだはずが

鍵をかけ忘れた苦い記憶が
じわじわはみ出し夢に溶けた
修業が足らない中途半端を
満たす日まで今日も頑張る


五十三通

2021-06-28 | 便り
挑戦することを止めない
思うための熱量

そんなことと笑われたとしても
思い込みの願望だとしても
くすぶりながらも消えない芯

制限のない
束縛されない
大きさも重さも自由な
果てしない思い

輪郭のない幻の予想図に
汗と涙がシミを作り
よれよれのセピア色に変わっても
止められない いつかその時

五十二通

2021-06-27 | 便り
向きを変えても
太陽の方向は知っている

雲の上の灼熱が光年をまたぎやって来る
雨を吸い上げ空を洗い
地上を濡らし息吹を育む

宇宙規模のキセキの中で
知ってしまった当たり前の世界
知る術もない異なる世界

分かっているのは
今ここにいるという事
取り巻くすべてが今だという事

五十一通

2021-06-26 | 便り
切り取った一瞬の視線に気づかなかった

コマ送りの映像がやわらかさをほどいたから
同じポーズでお道化る君の悲しみが見えなかった

気付いた時には通り過ぎた過去
あの時を振り返っても
思い出の中のまぼろし

今更の優しさも虚しいだけで
思いやりの重さだけが後悔を生む
身勝手な後付けが痛みになった

五十通

2021-06-25 | 便り
五十通ものやり取りを
特別だと思っていた頃

準備をしている間さえ
伝わる言葉にドキドキしながら
すでに心の中はあふれていた

象徴と共に変わる時代でも
ひとりの人生を区切るものではなく
偏った特徴を指して年表の中に収める

すべてに当てはまるものを探し続けても
妥協と忍耐とまやかしの極意で
紛れ込む一寸先さえ闇の中

目を閉じてひとつふたつと数えたら
真っ暗な闇でさえ
濃淡の光の彩りに気付くはず

四十九通

2021-06-24 | 便り
気まぐれに感じる雨も
空の感情でないのなら

たった一秒の出来事も
すべてが決まっているのだろうか

何かに左右され
どちらかを選び
待てない焦りが
結果を決める

時間をかけて
全身に問い
すべてを開いて
挑んだ結末もある

遠い先より目の前を見ろと
今やるべき事今しかできない事
先延ばしの計画がそっぽを向かない様
明日の自分に堂々と会えるように

四十八通

2021-06-23 | 便り
誰かに言ってもらいたい言葉
自分宛ての便りが一番欲しい言葉

慰めより優しく
戒めより響く
傷ついた心が
うれし涙で泣き笑いする

踏ん張って立ち上がる時
涙を飲みこんで口をギュッとする
堅くなった根性が崩れそうになる
その手をつかみたくなる

誰と誰の間に平等を掲げたのか
相手によってその意味が変わるなら
無限大の記号のように
始まりと終わりは永遠に無い


四十七通

2021-06-22 | 便り
長いものに巻かれていると
少しの安堵と苦しさがあって
誤魔化すために
あきらめの優しさにすがった

何処を探しても
どちらを見ても
「誰にでも」ではなく
「誰かに」の限定があふれ

それならと
ひとつくらいはを待つのではなく
ほんの少し緩めた隙に
たったひとつを探してみる

星の数を例えてみても
限りなく不可能に近い唯一
それでも何処かにある
自分だけのたったひとつ


四十六通

2021-06-21 | 便り
最初から用意されていた道もある

失敗しても終わりじゃないと
次があるから大丈夫だと
甘やかすというより
未来というものが分からなかった

自ら切り開くものだと教えられ
精一杯の根性と勇気を求めた
限界を作るのが自分なら
それ以上は必ず存在すると

戻ってきた決意表明が
コロコロと頭の中を巡る
幾通りもの筋道が
閉ざされる前に次を目指す