い・ち・に・ち

明日が今日になって昨日になるような毎日

六十四段

2020-08-31 | 階段
しあわせのフルコースは
まぼろしのメニューだから
どんなに探し歩いても
見つけることは出来ない

曇り空の目覚めは
昨日を引きずったまま
新しい太陽を隠して
曖昧な時を零していく

なのに心の中に
片付けられない思いがあって
時とともに増え続ける
書ききれない明日のメニュー



六十三段

2020-08-30 | 階段
澄み切った空には
透明な水玉模様で
描ける限りの
夢を飛ばす

地上に居座る
暑い空気が
浮かぶ軽さを
押し込めても

回りながら
形を整え
焦らず騒がず
ゆるい上昇を待つ

六十二段

2020-08-29 | 階段
子供と大人の境目を
過ごした年数で決めるなら

遠くまで行ける脚力と
50センチ上の景色を連れて
違う世界に行けるはず

置いてきぼりの心をなだめ
一緒に先を目指しても
時計の針は速さを変えない

ふてくされた先入観で
お互いの立場を羨んでも
無言の時は着実に刻む

六十一段

2020-08-28 | 階段
造られた常識の世界では
「はみ出す」痛みと
「違う」嘆きが
臆病の壁を高くする

保身の教えは学ばなくても
生きる過程で受け継ぎながら
その他大勢の安らぎを覚える

生きるための課題の中に
答えは無限にあって
正解はひとつもない

間違い探しも反論も
見方を変えれば
自分だけの答え合わせ

さあ
どこに合わせるか




六十段

2020-08-27 | 階段
たった数秒がもたらした無期限のしあわせ
すべてを追い払い独占を許した究極の魔法

健気なヒロインじゃなくても
時間に追われる現実の姫でも
突然の夢物語に引き込まれた

周りの景色は何ひとつ変わってなくても
手探りの不安に押しつぶされても

今なら
空も飛べそうな
宇宙を抱える壮大な気持ちの誕生

五十九段

2020-08-26 | 階段
どんなに着飾った言葉でも
順番待ちの狭き門

風の合図を鳴らしても
先を急いで吹き抜ける

閉め切ったガラス窓
すきま風さえはね返し

待ち望むものは見つからない

太陽に背を向けて
音だけ眠る暗い夜に

新月の明りだけ
ほほ笑むように覗いてた

五十八段

2020-08-25 | 階段
夢の登場人物のミスキャスト
記憶の隅で出番を待つ
七変化可能な後ろ姿

視界の中の風景は都合の良い姿を見せる
人混みの中の一瞬がモノクロの世界に色を付けて
手に入れたい微笑みにスポットライトをあてる

眩しさに目を細めても
あふれる涙と一緒に
こぼしてはいけない


五十七段

2020-08-24 | 階段
思い浮かぶのは季語の無い短い詩

花咲く音を頼りに淡色の風に乗る

どこまでも青い空に雲で夢を描く

黄昏よりも静かに実りの音がする

星屑が大地を目指して降ってくる

いつでも心にあるのは愛しさの痛み



五十六段

2020-08-23 | 階段
ひとつの言葉が複数の意味を持つ以上に
声と表情が言葉以外の顔を持つ

見えないもの
気付かないもの
相手の心に映る
私自身

鏡の反射より透明に
しみ込んでしまう
誤魔化しきれない
胸の内

言葉の意味を消してしまう
無表情の削除機能 yes or no

五十五段

2020-08-22 | 階段
羨むような高さにも
太陽に愛された分
突き刺す光の痛みがあって

思わず目を閉じて
手をかざして守っても
避け切れない目眩がある

夜の静寂をぬるい風が横切る
涙の跡を辿るように
夜明けの時を巻き戻す