い・ち・に・ち

明日が今日になって昨日になるような毎日

百片

2022-03-05 | 雪花
花咲く音を聞いた

近付いてくる春のように
やわらかなペン先が
羽ばたく名前を記す

瞳に映る光を抱いて
明日のために
微笑みを照らす

足を踏み外さぬように
慎重に一歩を見つめ
次の一歩を望んでる

見守る陽射しを浴びながら
待ちわびるしずくを受けながら
花咲く季節はそこにある

九十九片

2022-03-04 | 雪花
二階の窓に届く風が
泣き声にしか聞こえないのは
ひとりぼっちの過ちに
気付いているから

言葉にしてしまえば
逃れられるかもしれない
見落とした過ちを
風がサラって行くかも知れない

目の前になくても
心の奥深く落ちて行く
始まりの掛け声に
目を覚ますこともある



九十八片

2022-03-03 | 雪花
たったひとつを見つけるために
消去法を用いていたら
本末転倒の判が押された

選べないもの
ひとつに絞れないもの
両極端の願望が渦巻く

比べてはいけないもの
天秤にかけても動かないもの
唯一無二の現実が構える

よれよれの頑固さと
ふわふわの根性を
抱きしめたまま突破する

九十七片

2022-03-02 | 雪花
頭の中はどちらかというとカラフルで
一貫性のない無鉄砲なヒラメキが飛び交う

行きつく先を望む前に
今どうしたいかが目の前に立ち
この先の景色を見せまいとする

冷静な自分に息を吹きかける
ぎこちないため息が
春の温度を忘れないように

花開くための太陽が
雨の日の暗さを
悪者にしないように



九十六片

2022-03-01 | 雪花
このままがいいなんて思うほど
大人じゃないし
これからの夢を語るほど
子供でもないなら

見た目の大人感と中身の幼さ
見える部分と見えない部分
ちぐはぐな引っ張り合いが
凸凹の曲線を描く

すべての生き物を受け入れて
設計図も無いままに
真ん丸な球を描くため
熱くて強い中心が要る

九十五片

2022-02-28 | 雪花
言葉より先に
気持ちが飛び出してしまうので
一度透明人間になる

一呼吸で足らない時は
三つ数える
十じゃないの?と言われても

数秒間自分を消したら
もう一度向き合ってみる

変わっただろうか
さっきと違う気持ちだろうか

どれにしようかな
神様の言う通り・・

九十四片

2022-02-27 | 雪花
夜明けが少し慌ててのぞき込む
いつもより鋭い角度で見下ろす朝

季節が変わる瞬間を
見えない温度で連れてくる
汗ばむひなたの揺らめきに
厚手の上着を脱ぎながら

眠る木々の若葉のように
春の日の目覚めを促す
大地に張った根っこに抱かれ
新しい朝に出会うために


九十三片

2022-02-26 | 雪花
背伸びしても届かないなら
何を踏み台にしようか

一日にして成らぬものばかり
昨日より進んだものを
確かめたつもりの時間だけが過ぎる

すべてを癒してくれると言う時の流れは
悲しみと苦しみをこれでもかと詰め込み
いつしか涙の理由も薄れて行く

音もたてずに過行く時に
逆らうことなく泣くだけ泣いて
お腹がすいて眠くなれば
パンパンな心もいつしか緩む

ほんの少しの弾力に
手のひら分のやわらかさで
もう一度だけ弾みをつけて
ジャンプしたら届くだろうか


九十二片

2022-02-25 | 雪花
近くの屋根が遠い山に重なる
明日まで見渡せるような大地の景色

想いは距離を選ばずに
まつ毛の隙間を自由に羽ばたく

自分勝手な深呼吸が
現実逃避の旅に出かける

気が遠くなるような短い時間に
たったひとつの願いを込めて

明るい陽射しの裏側で準備する
流れ星のキラメキを待っている


九十一片

2022-02-24 | 雪花
誰も見ていないのに視線を気にした
誰も聞いていないのに嘘をついた

雨が降っていないのに頬が濡れた
懐かしい歌声が風の間に流れた

忘れ物をしたようで落ち着かない

知らない明日が不安なのか
置いてきた昨日を忘れられないのか

水色の空と白い雲だけが浮かぶ
描き上げたばかりの風景も

いつしかイニシエの色に染まる

淡々と進むだけの時につかまり
落とされない様にしがみ付いた今