い・ち・に・ち

明日が今日になって昨日になるような毎日

百話

2020-06-25 | 物語
心のベクトル

たとえ得意分野でも
苦手意識と出くわせば
とたんにうろたえる
未完成な心

それを
純粋と言う甘い言葉で味を変え
飲みこむ勇気も持てぬまま
肯定しながら背を向ける

誰かが
名前を呼んでくれたなら
はみ出す笑顔で振り返り
並ぶ幸せを掴むのだろうか

九十九話

2020-06-24 | 物語
模範の形

満点をもらえなかったのは正解がないから
採点する人の心が読めなかった幼さが嘆く

自由と引き換えに手にした翼は
その先を制限の枠に閉じ込めた
見渡す限りの窮屈の範囲で
決められた進む長さが同じなら
最大限をものにするため〇になる

ぐるぐると回る思考の先が
上昇気流の無制限なら
地球を飛び立つ覚悟を連れて
上へ上へと目指すがいい
球体から放たれた無限の形まで



九十八話

2020-06-23 | 物語
願い事はひとつ

雨音で目を覚ましても
積み重なる悲しみが
順番を守らなくても
頬を叩いて起き上がるのは

守り続けた灯火を
温もりの輪で暖めて
毎日毎日手をかざし
消えないように祈るため

同じことを繰り返し
弱い心にカツを入れ
時にナダメへこたれても
消せない種火は

いつもある

九十七話

2020-06-22 | 物語
無地に咲く花

周り中を囲まれた
狭くて大きすぎる心の中に
目立たないハタが織りなす
小さく大きな花がある

大木にあこがれて上を目指し
悲しみの涙は風に飛ばした
心地よい日差しに葉を広げて
明日はもっと空に近づく

土を掘る叩きつける雨も
葉をしぼませる熱い光も
根を張り耐え抜く命があった

地平線の区切りまで
見渡す平坦な無地の中に
縦と横が交わる奇跡



九十六話

2020-06-21 | 物語
上手な笑顔

誰も見ていない時
そのままの表情が
本当だとしたら

瞳にさえも映らない
確かめる術も知らぬまま
自分が見えない
反転の顔

響く言葉が心に伝わる
開けた扉が涙を誘う
伏し目に集う氷の粒が
無音の高さで光を纏う

九十五話

2020-06-20 | 物語
揺れる季節

真夜中の1分
昨日と今日を贅沢に過ごすはずが
瞬殺の60秒
そわそわとドキドキの
動悸だけが通り過ぎた

梅雨寒のしっとりした風が
肩を撫でる
気まぐれな小雨が
髪を乱す

ギュウギュウに詰め込んだ思いは
運ぶ途中であふれ出し
雨の合間をすり抜けた

行き先は風まかせ
雲の重さに加わるか
太陽目指して昇るのか

九十四話

2020-06-18 | 物語
元気ですか・・

文字にしなければ聞けない言葉
顔を見たら言えない言葉
心の中にいつもある言葉

海を越えようと
時空の距離より近いはず
光の速さで同じ声も届く
泣き顔は見られていない
無謀な望みも知られていない

宇宙相手に
地球規模の塵にも満たない
大胆な野望も見過ごされ
独りよがりな満足も
多数決の溝に埋まる

それでも始まりの一粒が
目に留まらない大きさで
深い根性を育てるのなら
いつか届くその日まで
繰り返しながら覚えてる



九十三話

2020-06-17 | 物語
空を抱く雲

雲ひとつない真っ青な空を望んだ
顔を上げればどこまでも飛べそうな
透明な空気まで染め上げる青空

前を見て歩いていたら
同じ高さの夢を見た
流れる汗もこぼれる涙も
落ちる速度を変えぬまま

足元を濡らした夢がしみ込んで
咲かせた花に名前を付ける
風に誘われ飛び立つ泡の
行方を追いかけ空を見上げる


九十二話

2020-06-16 | 物語
重なる鼓動

頑張らなくても考えなくても
休んでいても眠っていても
動き続ける守り続ける

時々くれる合図の理由
大丈夫だよここにいるよ
前を向いて ファイト!

怖気づきそうな暗闇の中
膝を抱えて泣き止んだら
洗われた瞳にも映るはず

微かな光に浮かぶ影
鼓動の波長が闇を揺らし
重なる速さで夜が明ける



九十一話

2020-06-15 | 物語
あの頃の微熱

音もなく冷えていったのか
心が春を拒んだのか
この場所に決めたのは
初めての風景だったから

あの頃を思い出せと
その時の気持ちに戻れと
簡単な慰めにもならない
固まった言葉が続く

思い出しても
同じ感情はそこには無く
出来事だけが
箇条書きに並ぶ

切ない苦しさも
悲しみの涙も
楽しい笑い声でさえ
過ぎ去ったあの頃を

計ることは出来ないのだから