室生犀星
「小景異情 その一」
半紙
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白魚(しらうお)はさびしや
そのくろき瞳(め)はなんといふ
なんといふしおらしさぞよ
そとにひる餉(げ)をしたたむる
わがよそよそしさと
かなしさと
ききともなやな雀しば啼けり
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「小景異情」の「その二」は、
有名な「ふるさとは遠きにありて思ふもの」で始まる詩ですが
これはその前に置かれた詩。
生まれてすぐに里子に出され
育ての親に虐待された犀星は
金沢の自然だけが、安らぎを与えてくれたのでした。
けれども、その自然でさえ、犀星の悲しみを誘うときもあったわけです。