スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

SAAB・サーブの暗い将来(4)-にっちもさっちも

2009-02-27 08:32:26 | スウェーデン・その他の経済
SAABは不安定な低空飛行を続けている。国内の下請企業からの部品が再び納入され始め、生産活動が今週から行われるようになったものの、今度はSAABがEU圏外から輸入している部品をスウェーデン税関が差し押さえてしまった。

従来はSAABが関税をツケで後払いにして納めていたものの、SAABが会社更生手続きに入ったため、このツケができなくなったのだ。それに、スウェーデン税関はSAABが関税を支払う能力も疑わしい、と見ている。「関税をちゃんと即金で払ってもらわないと、部品は渡さない!」というわけなのだ。SAABにとって、にっちもさっちもいかないとは、まさにこのこと。(翌日、木曜日にはこの問題も一時的に解決し、生産活動が再開された。)


それから、今週火曜日は、産業大臣と産業省の政務次官、そして労働市場大臣SAABの本拠地、トロルヘッタンを訪れ、SAABの経営陣や労働組合、地元自治体などと協議を行った。スウェーデン政府がこれまで示してきた冷たい態度は、少し柔らかくなり、双方の間で「建設的な会話」が交わされた、と伝えられている。

しかし、SAABとしては、会社更生を行うにあたって、スウェーデン政府が自動車業界に対して打ち出した救済パッケージ(救済ローンや信用保証など)を利用したい、と目論んでいたものの、産業大臣はこう突っぱねた。

「SAABを買い取り、所有者となってくれる企業や資本家が決まってはじめて、政府は救済パッケージを使った支援を行う。」

実際のところ、SAABに関心を示している企業や資本グループは、国内外からいくつか名乗りを上げているらしい(どこかはまだ公表されていないが、有力なのは8主体ほどだとか)。しかし、彼らとしては、スウェーデン政府の支援なしではリスクが高すぎて、実際に買い取ることは難しいようだ。


木曜日の晩にトロルヘッタンで、従業員がデモ。参加者は3000人。写真右は社会民主党党首モナ・サリーン


こちらはSAABの新モデル9-3X。今週、キルナの試験場で走行テストなどを終え、記者団にも公開された。自動車専門家の評価はかなり良い。うまく行けば、今秋から発売開始。

――――――
AのためにはBが必要。でも、BのためにはAが必要・・・。
「あちらが立てば、こちらが立たず」「ヒヨコが先か、鶏が先か」


スウェーデンで生活を始め、言葉を習い始めてから半年ほど経った頃に、このジレンマ的状況を一言で言いあらわす表現を耳にした。

Moment 22 (tjug(å)två)

それ以来、この言葉が気に入ってしまった。
でも、なんでこんな言い方をするの? 答えは次回。

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
SAAB (おじぃ)
2009-02-27 18:35:26
Yoshiさん

2月26日付け「DAGENS INDUSTRI」に、「Tullen sinkar Saab」という見出しの記事に、「日本のGearboxメーカーとアメリカの燃料タンクメーカーからの部品納入が止まっているため車両の生産ができない」とあるらしいんですが、これは上のブログにある関税を払えないことと関係ありますか?

Unknown (Yoshi)
2009-02-27 18:57:07
まさにそうです。
Tullenというのは税関のことで、関税を払わないと部品納入させない、と言っていたのです。
しかし、どうやら問題は解決したようで、木曜日から生産が再開されたみたいですが。
SAAB (Usui)
2009-03-02 02:47:50
Yoshiさん相変わらずにお元気で良いニュース有難うございます。今日の新聞によるとGMはOpelのEisenach工場をダイムラーに売ることになり、ダイムラーはハンガリーに新設するのを止めて流用するそうです。SAABもスウェーデン政府とGMが協議してそれなりの解決方法があるかもしれません。それにしても2社も有名乗用車メーカーを持っている国は900万の小国ではありませんよ。トーシュランダ工場は直ぐ船に載せて輸出できるようになっているんですね。

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