スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

キプロスの預金課税 (その後 2)

2013-03-25 02:45:27 | スウェーデン・その他の経済
以下、スウェーデンの新聞、ニュースなどの情報をまとめます。

EU・欧州中銀は木曜日、キプロスに対して「月曜日までに58億ユーロを自前で調達する案を提出できなければ救済はしない」と最終通告を言い渡していた。一方、ロシアからの支援を期待して、キプロス政府はロシアに財務大臣を送って交渉していたが、そちらも難航。昨秋にロシア政府が供与した融資の延長や、キプロスの天然ガス採掘権、銀行の売却によって新たな資金確保の案を提示したものの、ロシア側はともに拒否。

キプロス国内では、新たな案として、政府資産や年金基金、天然ガス資源、教会資産などからなる「救済基金」を作り、経営破綻した銀行救済に充てることが検討されてきた。ただし、年金基金にまで手を付ける案に対してEU・ECBは難色を示しており、この案を拒否する可能性も高い。

ちなみに、教会資産、と書いたが、キプロスでは正教会が巨大な財産を所有しており、土地のほか、銀行資本、醸造所も所有しており、総額は数億ユーロにのぼるとのこと。この背景には、オスマントルコ時代にキリスト教会が資産所有の特権を認められていたという歴史的事情があるようだ。

この他、一度潰えた預金課税の新たな案として、先週の段階では10万ユーロ以上の預金口座に15%の課税を行うことも検討されていた。

先週木曜日の動きとしては、キプロスの大手銀行3行がギリシャに持つ資産をギリシャの銀行に売却することを、キプロス政府が発表(この3行はギリシャ金融市場に進出しており、ギリシャ国内の貸 出・預金の約1割のシェアを持つ)。経営破綻した3行はこの売却で資金を部分的に確保できる。それに伴い、キプロス政府がこれら3行の救済に必要とする資金額も若干減る。

キプロス国内の銀行は休業したまま。しかし、現金がなければ生活にも支障が出るため、ATMには現金が補充され、1日あたり最大500ユーロまでの引出しが認められているとのこと。銀行営業が再開されるのは休日明けの来週火曜日だが、EUからの支援がなければ取付騒ぎによる連鎖倒産となる。また、財政危機に陥っている他のユーロ加盟国でも、同様の預金課税が実行されるのではないかとの懸念が広がれば、預金の一斉引出しに繋がり、金融システム全体の信頼失墜をもたらす可能性が高い。

(キプロス経済に占める金融部門の割合が大きいことは知っていたが、GDPの実に45%を占めているとのこと。)

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以上は先週末に私がこちらでのニュースをまとめたものだが、先ほど(スウェーデン時間、月曜日朝1時)の情報によると、キプロス政府とEU・ECB・IMF(トロイカ)との間で週末に続けられてきた協議の末、大まかな合意に至ったとのこと。

合意の一つは、10万ユーロ以上の預金がある口座に対し、40%の課税を行うことらしい。言い換えれ ば、民間主体の預金の4割を国が差し押さえるということ。10万という境界が設けられたことで、一般の庶民の負担は軽減されたようだが、それまで議論されていた税率がせいぜい15%であったから、40%という税率に大きく跳ね上がったことは驚きだ。

キプロス議会の各政党党首との協議や議会での採決はこれからになるらしい。EU・ECB・IMFのトロイカが突きつけた最終期限は月曜日であるため、のこり1日足らずである。

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