バルト三国の経済成長は凄まじいものだった。EUの統計によるとラトヴィアは2000年代に入ってから年率6~8%の実質経済成長を誇っていたが、それが2005年には10.6%、2006年には12.2%、2007年には10.0%と二ケタ台に至った。エストニアやリトアニアの成長率はこれよりも若干低いものの、やはり10%に達した年もあった。
ラトヴィアの首都リガ。高層ビルはスウェードバンクの本社ビル
この頃、バルト三国では金融機関による安易な貸出が次々と行われていた。そして、それを先導していたのはスウェーデン系の銀行だった。スウェーデンで放映されたあるドキュメンタリー番組のなかで、当時ラトヴィアでIT企業を経営していたスウェーデン人がこう振り返っている。
「地元で採用した若者が、雇用証明書が欲しいと言ってきた。高級スポーツカーを買うために銀行でローンを組みたいが、所得と雇用の証明書が必要だと言うのだ。彼は採用して間もなく、まだ20そこそこの若者だったから、そんな彼が年収の何倍もするような高級車を買うと言うから、ビックリしたよ」
そんな若者は彼だけではなかったようだ。建設会社のプロジェクトリーダーを務めていた20代の男性は5台の高級スポーツカーを銀行のローンによって購入したという。また別の若者は、新興住宅地の高級マンションを投機目的で5つも購入したという。しかも、すべて同じ銀行からの借り入れだ。さらに驚くことに、この若者が同じ銀行に再び足を運び「高級クルーザーを買う」と言ったところ、新たな借り入れをすることができたという。この若者が既にどれだけの多重負債を抱えているかが、同じ銀行内ですら全くチェックされなかったらしいのだ。
貸出の際の担保の確保もいい加減だった。保証といえば、借り手の雇用と給与の証明書。つまり、その借り手が今の仕事に就き続け、給与が今のスピードで毎年急上昇していけば、返済能力には問題がない、と銀行側は考えていたようだ。
スウェーデン系の銀行に勤めていた現時採用の行員も、当時のずさんさを認めている。彼女が言うには、行員の貸し出し量に応じてボーナスが決まっていたのだそうだ。だから、貸出を増やすことにみな専念して、貸出の際の審査は相当いい加減だったらしい。彼女自身は業績が評価されて、16か月分の月給に相当するボーナスをもらったこともあるという。
また、バルト三国にもともとあったハンサバンクの幹部も、スウェーデン系のスウェードバンクに完全に買収された2005年に、貸し出し上限を撤廃したと述べている。
スウェーデン系銀行はそれだけに飽き足らず、新たな顧客層の開拓として未成年にも目をつけたらしい。親の同意のもとで、6歳以上の子供にも決済機能付きのキャッシュカードを販売していたという。上記のドキュメンタリー番組の中で、9歳の女の子が「クラスメイトがみんな持っていて、お菓子を買うときにカードで払っていたから、私も親にせがんでカードを持つようになった」と語っていた。
こんな話を聞いていると、スウェーデンの80年代後半のバブル膨張当時の状況よりひどい。
しかし、既に触れたように、貸出において十分な担保を確保することもなく、同一銀行による多重の貸出も横行していた。銀行側にとっての唯一の保証は、借り手の雇用が安定し、給与が将来にわたって急激に上昇していくことだった。だから、その前提が崩れれば、銀行はたちまちピンチに陥ることになる。(続く・・・)
ラトヴィアの首都リガ。高層ビルはスウェードバンクの本社ビル
この頃、バルト三国では金融機関による安易な貸出が次々と行われていた。そして、それを先導していたのはスウェーデン系の銀行だった。スウェーデンで放映されたあるドキュメンタリー番組のなかで、当時ラトヴィアでIT企業を経営していたスウェーデン人がこう振り返っている。
「地元で採用した若者が、雇用証明書が欲しいと言ってきた。高級スポーツカーを買うために銀行でローンを組みたいが、所得と雇用の証明書が必要だと言うのだ。彼は採用して間もなく、まだ20そこそこの若者だったから、そんな彼が年収の何倍もするような高級車を買うと言うから、ビックリしたよ」
そんな若者は彼だけではなかったようだ。建設会社のプロジェクトリーダーを務めていた20代の男性は5台の高級スポーツカーを銀行のローンによって購入したという。また別の若者は、新興住宅地の高級マンションを投機目的で5つも購入したという。しかも、すべて同じ銀行からの借り入れだ。さらに驚くことに、この若者が同じ銀行に再び足を運び「高級クルーザーを買う」と言ったところ、新たな借り入れをすることができたという。この若者が既にどれだけの多重負債を抱えているかが、同じ銀行内ですら全くチェックされなかったらしいのだ。
貸出の際の担保の確保もいい加減だった。保証といえば、借り手の雇用と給与の証明書。つまり、その借り手が今の仕事に就き続け、給与が今のスピードで毎年急上昇していけば、返済能力には問題がない、と銀行側は考えていたようだ。
スウェーデン系の銀行に勤めていた現時採用の行員も、当時のずさんさを認めている。彼女が言うには、行員の貸し出し量に応じてボーナスが決まっていたのだそうだ。だから、貸出を増やすことにみな専念して、貸出の際の審査は相当いい加減だったらしい。彼女自身は業績が評価されて、16か月分の月給に相当するボーナスをもらったこともあるという。
また、バルト三国にもともとあったハンサバンクの幹部も、スウェーデン系のスウェードバンクに完全に買収された2005年に、貸し出し上限を撤廃したと述べている。
スウェーデン系銀行はそれだけに飽き足らず、新たな顧客層の開拓として未成年にも目をつけたらしい。親の同意のもとで、6歳以上の子供にも決済機能付きのキャッシュカードを販売していたという。上記のドキュメンタリー番組の中で、9歳の女の子が「クラスメイトがみんな持っていて、お菓子を買うときにカードで払っていたから、私も親にせがんでカードを持つようになった」と語っていた。
こんな話を聞いていると、スウェーデンの80年代後半のバブル膨張当時の状況よりひどい。
しかし、既に触れたように、貸出において十分な担保を確保することもなく、同一銀行による多重の貸出も横行していた。銀行側にとっての唯一の保証は、借り手の雇用が安定し、給与が将来にわたって急激に上昇していくことだった。だから、その前提が崩れれば、銀行はたちまちピンチに陥ることになる。(続く・・・)
というか世界中がレバレッジによる高収益に沸いていたとき一人だけ堅実に地道な活動をしていたのでは顧客がすべてよそに行ってしまうという、どうしようもない現実ががが。
日本ではマスコミの情報統制でEUの時限爆弾についてはほとんど報道されません。しかしネットではバルト3国がEUの信管になるのではと心配されています。
また、現地の最新情報を知らせてください。
(もっとも信管が爆発したら影響は瞬時に世界を駆け巡るでしょうが)
5月にエストニアに行った時には見る車ほぼ全てが新車だったのに驚いたのを覚えています。バブルの時は何処も同じ、と言う事でしょう。
今年の5月ですか?
時期的にはすでに大不況に突入したあとなので、手放した人もおそらくたくさんいるかと思います。