スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

「12月合意」により、スウェーデン議会の再選挙が回避される (その2)

2014-12-29 23:58:25 | 2014年選挙
12月に10日間ほど日本に帰国したが、その時に何人かの人から「スウェーデンの2015年の予算案は議会で否決されたらしいが、では予算が決まらないまま2015年になってしまうのか?」という質問をもらった。

いや、スウェーデン議会において12月3日に与党側の予算案が否決されたわけであるが、同時に、野党である中道保守4党が共同で提出した予算案は可決されたのである。つまり、2015年は中道保守4党の作った予算で行政を執行することが既に決まっているである。これは、3月22日に再選挙を実施しようが、実施しまいが、そして、その再選挙でどちらの陣営が勝とうが、全く関係なかった。

だから、12月3日に自分たちの予算案が否決されたロヴェーン首相が「議会の再選挙に打って出る!」と宣言したものの、たとえ再選挙を実施して勝ったとしても、2015年に関してはこの日に決まった野党側の予算を覆すわけにはいかないのである。だから、ロヴェーンの宣言は、ある意味、滑稽なことに思えるかもしれない。


【 2015年春予算で若干の変更は可能 】

前回書いたように再選挙は回避されたロヴェーン政権が続投することになったわけだが、2015年の予算はこのように既に決まっている。ただし、若干の修正は可能である。

ある年の予算は、その前年の秋に各党の案が議会に提出され、審議・採決されるわけであり、これは「秋予算」と呼ばれる。この時に決まるのが、メインの予算、つまり、本予算である。これに対し、4月にも議会で予算審議がある。これは「春予算」と呼ばれる。

「春予算」とは、その年の秋の本予算審議に向けて具体的な方向性や優先順位を前もって示す、予算折衝のたたき台の役割を持つものである。各党(おもに与党)が自分たちの春予算案において、自分たちの掲げる政治の方向性や実施したい改革などを盛り込む。また、場合によってはその前年の秋に提出された本予算に若干の追加・変更を加えることも可能である。そのため、ロヴェーン政権はこの春予算において、自分たちの政策を2015年の予算に盛り込む余地があるわけだ。

ただし、春予算で修正できるのは、その年の予算全体のせいぜい1割程度と言われる。所得課税については、年始が区切りなので、2015年の途中から所得税率をいきなり変えることはできない。一方、社会保険料の料率については、年の途中でも変更が可能であるので、ロヴェーン政権が選挙の公約で掲げ、今月初めに否決された予算案に盛り込んでいた若年者の社会保険料の減免措置の廃止(つまり、半減されている現段階からの引き上げ)は実行に移すことができる。そのため、歳入を少し増やすことができる。

歳出面については、公共支出を増やすような政策は歳入面での上昇が伴わない限り、予算には盛り込めない。そのため、左派的な政策を実施する余地は2015年に関しては、あまりないと言えるだろう。本格的な政策変更は2016年の本予算の審議(2015年秋に議会で実施される)を待たなければならない。

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2 コメント

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Unknown (中野多摩川)
2014-12-31 08:03:52
そうか、私も勘違いしてました。とすると政府は野党が作った予算でほとんどの行政を執行しなければならないわけですね。やりにくいでしょうね。

今年もいろいろ勉強させていただき、ありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。
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Unknown (Yoshi)
2015-01-14 11:13:47
こちらこそ、よろしくお願い致します。
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