スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

スウェーデン経済、猛牛のごとく・・・

2007-08-27 05:12:20 | スウェーデン・その他の経済
スウェーデン経済が今、とても熱い!

2006年は年間成長率が4~5%と非常に高い経済成長を記録した年だった。今年2007年は去年よりも成長が遅いものの、それでも3%はキープしている。

GDPの成長率の推移(年率換算)

今年のスウェーデン経済の特徴は、雇用が大きく回復していること。スウェーデン統計局(SCB)は1959年以来、サンプル抽出型の雇用調査を毎月実施しているが、職に就いている「就業者」の数は2007年7月の時点で466万人で、過去最高を記録したという。去年の7月に比べ、11.6万人も伸びている。

就業者数の推移

しかも、伸びが顕著なのは、近年の日本のように「非正規雇用(パート・派遣・有期限)」ではなく、「正規雇用(フルタイム・無期限)」というから嬉しい。これまで大きな問題であった若者の雇用も大きく回復している。大卒だけでなく、高卒でも比較的容易に仕事が見つかるようになった。

スウェーデンは1980年代後半のバブル景気のおかげで、1990年に過去最高の就業者数を記録したあと、バブルがはじけ、その後、なかなか雇用が回復しない状況が続いてきたが、今回、やっとその記録を塗り替えたわけだ。

失業率は、4~5%に下降。また、労働力人口(16~64歳)に占める就業者の割合である「雇用率」は、79.3%に達し、政府の目標である80%まであと少しだ。(ちなみに1990年の雇用率85%まではまだ遠い。それは、雇用の回復以上に労働力人口が増えたため)

一方で、失業期間6ヶ月以上の長期失業者は減るどころか若干増えているという。なので、今後の課題はこの長期失業者をいかに減らしていけるか、ということだ。
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さて、私がスウェーデンへやって来た2000年はITバブルが翌年にはじけ、経済が冷え込んだ時だった。その後、ゆっくりと回復し始め、2004年以降は3%前後の成長率を記録するようになった。しかし、なぜか雇用は低迷したままで「雇用なき成長(jobbless growth)」という言葉がメディアで何度も使われた。大学の友達の中にもなかなか就職できない友達が沢山いた。だから、そんな時代を思えば、なんだか信じられないくらいだ。

さて、ではこの高成長および雇用回復は、2006年秋に誕生した中道右派政権の新しい政策の賜物なのか・・・? その評価は大きく分かれるところだ。失業保険などの社会給付の削減と労働所得の減税による「アメとムチ」政策が功を奏した、という意見もあるが、むしろ、2004年以来回復してきた景気に、雇用のほうがタイムラグ(時間差)を持ちながら追いついてきただけ、つまり、新政権の政策とはあまり関係がない、という見方のほうが説得力を持っているように思われる。

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2 コメント

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Unknown (もぐら)
2007-08-29 08:38:44
スウェーデンは日本と違って本当の意味で景気回復しているのですか!?
企業の業績が上がって、それが従業員の懐を暖かくして、消費が上手く回っているということですか!?
Unknown (Yoshi)
2007-08-31 07:27:04
返事遅くなり失礼しました。

「日本と違って本当の意味で景気回復」の部分、具体的に何を指しているのか、おっしゃっていただければ、返事が書きやすいです。

今ひとつ思いつくところでは、日本の現在の景気回復は、一般の人々のもとに恩恵をもたらしていないことが指摘されたことがあります。http://blog.goo.ne.jp/yoshi_swe/e/e73f12dc1f97c9d0a7b2920f10eb24cd

これまでのリストラなどでスリムになった大企業は、大きな利潤を獲得し、そのおかげで、これらの企業の株価は上昇していている一方で、その利潤が働く者に公正に分配されていない、というものです。

もし、その点のことをおっしゃっておられるのなら、まぁ、本当の意味で景気回復しているといえるかもしれません。

上述の通り、正規雇用の伸びが大きいとのことです。(スウェーデンでも近年は非正規雇用が増えつつはあるが、企業がそれを利用する際には、様々な制限がついている)

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