スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

女性議員比率 47.3%!

2007-03-05 09:05:05 | スウェーデン・その他の政治
昨年、2006年9月のスウェーデン総選挙では、ある記録がさらに更新された。当選した国会議員のうち、女性議員の占める割合スウェーデンの政治史上、過去最高の47.3%になったのだ。スウェーデンは70年代半ば以降、二院制を廃止し一院制にしているが、この349議席のうち、164議席が女性の手に渡ったのだ。2002年の総選挙でも、45.3%と世界的に見ても高い割合だったのだが、それがさらに上昇したわけだ。

各党を見てみると、やはり違いがあることが分かる。
_____左党 : 63.6% (全獲得議席数 22)
_____環境党 : 52.6%(同 19)
_____社会民主党 : 50%(同 130)
_____中央党 : 37.9%(同 29)
_____自由党 : 50%(同 28)
_____キリスト教民主党 : 37.5%(同 24)
_____保守党 : 43.3%(同 97)

やはり、左派の政党(左党・環境党・社民党)リベラルを掲げる政党(自由党)などでその割合が高く、保守色が強くなるにつれ低くなっているのは面白い。キリスト教民主党は、子育ての男女分担は各家庭が自分たちで決めるべきこと、と男女平等政策には一番消極的な政党だといわれているし、中央党は農村部を支持母体にしているだけあって、やはり支持層に保守性が強いこともあってか、割合が低い(といっても、40%近くだが)。

さて、なぜこの様に高い女性議員比率が達成されるのか? 日本じゃ、たとえ女性が立候補したところで、同じ選挙区に立候補している男性議員を打ち負かすことなんて、よほど知名度がない限り、むずかしいではないか! 日本の政界で活躍する女性政治家といえば、主に国会外から起用された女性閣僚か二世議員くらいしか、頭に浮かばないではないか? ということは、スウェーデンの有権者の男女平等に対する意識がそこまで高いからか?

答えとしては、もちろん有権者の意識の違い、ということも挙げられるだろうが、むしろ、決定的なのは選挙制度の違いだと私は思う。スウェーデンの総選挙は、すべての議席が比例代表制で配分される。つまり、有権者は立候補者個人の名前を投票用紙に記入するのではなく、支持する政党名を記入するだけなのだ。各政党は選挙に先駆けて候補者名簿リストを発表している。選挙における得票率に応じて、各政党に議席が配分される。各政党は、候補者名簿リストの上から順番に誰が議席に付くかを決めて行くのだ。(選挙区制としては全国を29の選挙区に分割する、中選挙区制度を採用。また、有権者は支持政党の候補者リストの中の誰を実際に当選させたいか、を指名できる補助制度もあるが、利用する有権者はあまり多くない。)

つまり、女性の当選者が多い原因は、有権者それぞれが女性候補者に挙(こぞ)って票を投じるためではなく、各政党が女性候補を候補者リストの上位のほうにも男性とバランスよく配置しているためなのだ。もちろん、各政党がなぜ女性をリストの上位にも配置しているかといえば、男女平等への取り組みを有権者にアピールするためであり、また、有権者も各政党にそれを常日頃から要求しているためなのであろう。

スウェーデンでは、税制面や育児政策などを始めとする様々な政策分野で、男女平等・男女同権に向けた政治運動やそれに応える政治改革が戦後(特に70年代以降?)盛んに行われてきた。そうした動きの中にあわせて党内の改革を行っていけない政党は、票の獲得すら困難になってきている(継続的なキリスト教民主党の低迷の一因もここにありそう)。しかし、男女の議席配分に関しては、最初から順調に進んできたのではなく、むしろ90年代に盛んになった女性議員を中心とした大きな政治運動の結果である、といったほうがいい。その運動に関しては、また近いうちに・・・。

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