スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

絶好調のスウェーデン国鉄(SJ)

2007-02-04 08:49:44 | スウェーデン・その他の経済
ストックホルムへ行くのに鉄道をよく利用するので、X2000を始めとするスウェーデン国鉄SJの動向にはとても関心がある。
ちなみに、以前SJについて書いた記事としては、
スウェーデン国鉄(SJ)の切符の買い方
X2000の一新


前も書いたが、国鉄SJの “S”は“スウェーデン”のSではない。正式名称はStatens Järnväg、つまり文字通り「国鉄」なのである。2000年に株式会社化される(全株を国が保有)。しかし、その後も業績悪化が続き、乗客の足は遠のき続け、2002年には倒産寸前の危機に陥る。そのため、思い切った人事によって、それまでスカンディナヴィア航空(SAS)の社長を務めていたJan Forsbergを社長として迎え入れることにした。

彼が就任した当時、運賃体系は複雑極まりなく、同一区間の切符になんと50を越える異なる価格が付けられていたという。その価格体系を整理統合するとともに、航空業界では盛んに用いられていた「切符を買うのが早ければ早いほど、運賃が安くなる」方式を取り入れた(一説には、ヨーロッパの格安航空会社の先駆けであるRyanairの料金システムを真似たとか)。

それに加え、需要に即した増便や新規投資、さらには1990年にデビューした新型特急X2000のリフレッシュを始めたり、食堂車をシンプルにしたりした結果、業績は次第に向上して行き、2004年に始めて黒字を記録するようになったという。

そして、2006年の業績が先日発表されたが、業績はさらに伸び、これまでで最高を記録した。株主である国にも、株式会社化後、初めての配当を行うという。さらに、従業員に対して特別ボーナスが支払われるとか。業績が最大を記録した一つの理由は、旅客数が9%も伸びたことらしい。スウェーデンの旅客運輸市場は2006年に4%の伸びを見せている、というから、つまり、SJは市場全体の成長以上に長距離バスや飛行機、乗用車から、乗客を分捕ったということになる。実際、Stockholm-Göteborg間の旅客シェアが30%に達したという(航空機は20%)。

鼻高々のSJ社長

ただ、列車の遅れが2006年は若干悪化したらしい。スウェーデンでは5分以上遅れないと「遅れ」にはカウントされない。しかし、こんな緩い「遅れ」の基準を用いても、全列車の10本に1本は「遅れ」ているのだ。言い換えれば、「時間通りに着いた」(つまり、5分以内の遅れ)のは90%に過ぎない(2005年はそれでも91%だった)。特にX2000の遅れがひどく、X2000だけに限ってみると、「時間通りに着いた」X2000は74%に過ぎないのだ(2005年は77%)。(5分以上遅れないと「遅れ」たことにはならないが、切符の払い戻しは最低でも20分遅れないと受け付けない、というルールになっている。払い戻し希望の際には“Resegaranti”の制度を利用しよう)

(個人的な感想を言わせてもらえば、大きな問題はストックホルム駅のすぐ手前の線路が“ボトルネック”になっていることだと思う。ストックホルム駅の前後の線路は、SJの他に通勤列車も同じ線路を使っており、朝のラッシュ時に通勤列車ダイヤが乱れだすと、自然とX2000を始めとするSJのダイヤも大きく乱れる。朝一番のX2000でストックホルム入りしようと思っても、直前のSlussenあたりで立ち往生し、5分も10分も待たされるのを何度か経験した。SlussenからGamla stan横を通る線路はもうキャパシティー一杯で、運河の上に新線を引くか、運河の下にトンネルを掘るか、大きく迂回路を作るか、など議論の最中だとか)

ともあれ、温暖化対策や大気汚染対策からも、鉄道の旅客数が増えることはいいことなので、これからももっと魅力のある鉄道にして欲しいものだと思う。


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