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十三人の刺客


監督 三池崇史
出演 役所広司 山田孝之 伊勢谷友介 松方弘樹 稲垣吾郎 市村正親

 傑作だ。面白い。ものすごく面白い映画であった。面白い娯楽活劇映画の条件は二つ。お話がシンプルであること。悪役が魅力的なこと。この映画はこの二つの条件を充分に満たしている。
 どんなお話かというと、悪い殿様が幕府のエライ役につこうとしている。天下万民のために殿様を斬る。この映画、要約すればこれだけの映画だ。
 悪役はもちろん、その殿様。明石藩主松平斉韶は将軍の弟。次期老中就任が内定している。この斉韶、性格が残忍で悪逆非道。参勤交代の途中、尾張藩の陣屋で接待に当たった、若い侍の奥方を陵辱して夫の侍を惨殺する。自分の非道を老中に告げて切腹した江戸家老の家族全員を虐殺。一揆首謀者の娘の両手両足を切断、舌まで抜いてなぐさみものにする。(永井豪の「バイオレンス・ジャック」にも同様の扱いを受けた娘が出ていたな)
 この斉韶、ものすごく飢えている。欲しくて欲しくてたまらないのだが、絶対に手に入らないものに飢えている。その飢餓感をいやすため残忍なふるまいをするのではないか。斉韶が飢えていることをよく表すシーンがある。食事のシーン。大きな鯛を食べているのだが、箸や手を使わず、鯛に直接口をつけてむしゃぶりついて食っている。
 斉韶は何に飢えているか。戦いに飢えているのだ。彼はパットン将軍ヘスラー大佐と同じ種類の人間なのだ。パットンやヘスラーは幸せだ。思う存分戦える。ところが斉韶が生きた江戸時代は天下泰平の世。戦なんかない。生まれてくる時代を間違った。もう200年早く生まれていたら、好きなだけ戦ができたろうに。だから、斉韶は自分を殺そうとする刺客に向かって「感謝する。きょうが生まれて一番楽しい日であった」といった。こうもいった「余が老中になったら、再び戦国の世をあらしめようぞ」こんな人物が老中に就任しようとしている。
 この映画の、稲垣吾郎演ずる松平斉韶は、悪役として、ヒース・レジャー演じる「ダークナイト」のジョーカーを凌駕していると小生は思う。
 島田新左衛門たち13人の刺客は、斉韶襲撃の場を中山道落合と決めて、落合宿を町ごと買い取って、町じゅうに仕掛けを施し要塞と化した。密かに暗殺するのではない。大勢の家臣に護衛された斉韶に真正面から戦をしかける。この13人も斉韶同様、戦に飢えた侍だったのだ。
 映画の後半50分は落合宿での、13対300の大ちゃんばら。50分が短く感じた。火牛の計やら、屋台崩しの大スペクタクル。爆発シーンもふんだんにある。それこそ「斬って斬って斬りまくる」13人の副頭目格が松方弘樹だが、松方にとっては久しぶりの映画での殺陣ではないか。さすがに松方の殺陣が一番うまかった。スターウォーズのへっぴり腰殺陣とはえらい違いである。
 またハリウッド映画と比較するのは気が引けるが、この後半50分の大殺陣。サム・ペキンパーの名作「ワイルドバンチ」の銃撃戦を超えている。あの映画のラストの銃撃戦は「死の舞踏」と呼ばれる映画史にのこるアクションシーンだ。この「十三人の刺客」のラストはそれを超えていると小生は思う。「ワイルドバンチ」は銃撃戦だったが、この映画は斬り合いだ。銃で撃たれるより剣で斬られる方が、傷は大きいし血の量も多い。まさに壮絶な大立ち回りであった。
 稲垣吾郎はヒース・レジャーを超え、三池崇史はサム・ペキンパーに勝った。WBCでサムライジャパンが世界一になったような映画だ。必見。 



コメント ( 4 ) | Trackback ( 10 )
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コメント
 
 
 
最初、 (せぷ)
2010-10-05 23:54:26
最初、トラックバックに『十三人の刺客』のタイトルを見つけたときはてっきり1963年のオリジナル版のレビューを書かれたのかと思いましたよ。
雫石さんは劇場には映画を観に行かれないかただと思っていたので。
久しぶりの映画館は如何でしたか?

映画は圧巻でしたよね。
中でも稲垣吾郎はすさまじかったですよね。
とてもジャニーズのアイドルとは思えない。
邦画もこういった本気度が窺える作品が増えると先が明るいんですけどね。
 
 
 
せぷさん (雫石鉄也)
2010-10-06 10:54:05
そうです。久しぶりの映画館です。
私も、本来は映画は映画館で観るものと思っています。
ただ、マナーの悪い客に不愉快な思いをさせられたことがたびたび。なんで金払ってこんな嫌な目にあわなければならないのかと。そういうわけで積極的に映画館に足を運びませんでえした。
今回は幸いなことに、まともな客でした。

稲垣吾郎、すごかったですね。日本人俳優で、あれだけの悪役、「ブラックレイン」の松田優作以来です。
ヒース・レジャーも松田優作もこの世にいません。だから、あれ以上の演技は見れません。稲垣は元気です。もっとすごい演技を見せてくれるかも知れませんね。
 
 
 
チャンバラ映画 (iina)
2010-10-20 14:14:43
面白かったですね。
後半は、チャンバラ・オンパレードでした。

アイドルが汚れ役を演じるというのも、スナップは新たなスタイルを目指した風です。
韓国TVシリーズ「アイリス」では、アイドルが凄みの殺し屋を演じていました。

 
 
 
iinaさん (雫石鉄也)
2010-10-20 14:27:42
おっしゃるとおり、大変に面白い映画でした。
後半のチャンバラは壮絶でしたね。やはり、銃撃戦より、斬り合いの方が、血の量が多いだけに、より凄惨です。
稲垣は一つ次元を超えた悪役を見事演じました。
 
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