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バルジ大作戦


監督 ケン・アナキン
出演 ヘンリー・フォンダ、ロバート・ショー、チャールズ・ブロンソン、ロバート・ライアン、ハンス・クリスチャン・ブレヒ

 第2次世界大戦末期。ヨーロッパ戦線。ドイツの敗戦は確実なものとなっていた。連合国軍は戦勝気分にうかれ、油断が生じていた。
 ドイツは起死回生の大作戦を実行。アルデンヌの連合国軍を急襲。突如、襲い来るドイツ陸軍のタイガー戦車の大群に、連合国軍は劣勢となる。
 この作戦を実行する現場の指揮官に任じられたのが、歴戦のベテラン戦車隊長へスラー大佐。ロバート・ショー演じるこのヘスラーが実にかっこいい。プロ中のプロの軍人。鋼鉄の意志で任務を遂行する。
 ヘスラーが初めて、自分の部下となる戦車兵と対面するシーンが印象的。ベテランの戦車兵はほとんど残っていない。これからあずかる兵を見てヘスラーは愕然とする。「子供ばかりじゃないか」
 その若い戦車兵たちが歌いだした。「パンツァーリート」ドイツ戦車兵の歌。

♪雪も嵐もなんのその
ほほ笑む日差しもなんのその
熱い昼間も
凍てつく夜も
埃まみれのこの顔に
浮かぶは我らの鋭気のみ
我ら無敵の戦車隊
嵐をついて突き進む

 ヘスラーもヘスラーの当番兵も、そこにいる全員が合唱した。ヘスラーはこの若者たちと戦うことを決心する。感動的なシーンだ。
 今から二昔以上昔、小生はSF大会の準備に関わっていた。DAICON5実行委員会の後、みんなで飲みに行くことが多かった。確か大阪の宗右衛門町のビアホールだったと記憶する。そのビアホールで20人ほどでこの「パンツァーリート」を合唱したことがあった。小生のセイシュンの想ひでなのだ。
 この映画には3人の主人公がいる。表向きの主人公はアメリカ軍の情報将校カイリー中佐だが、裏の主人公はヘスラー大佐。ヘスラーの本心は勝利を望んでいない。もちろん敗北は絶対しない。ヘスラーの本心は戦争が永遠に続くことが望み。骨の髄からの軍人ヘスラー大佐は、ずっと、死ぬまで戦い続けていたいのだ。ヘスラーは有能な軍人であると同時に、戦争狂という狂人なのだ。
 ヘスラーの当番兵コンラート伍長は息子思いの初老の男。戦争が終って家に帰るのを楽しみにしている。ところがヘスラーの本心をかいま見、なおかつ家は、ここだ、戦場だ、といわれて、この人にはついていけないと思い、現場の歩兵に転属する。ヘスラーは狂人だがコンラートは健康な普通の人だ。
 ラスト、ヘスラーは戦死。コンラートは生き残り、歩いてドイツへ帰っていく。この映画の真の主人公はコンラート伍長なのだ。少なくとも小生はそう解釈した。派手な戦車同士の戦闘シーンが多いスペクタクル映画だ。観ていて確かに爽快ではあるが、これは戦争なのだ。スポーツではない。殺し合いなのだ。コンラートを「バジル大作戦」の主人公と見ることで、反戦映画と観ることもできる。小生はそう観たい。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (ひふみー)
2009-12-26 23:16:50
初めまして、突然失礼します

この映画、昔から好きで毎年クリスマスの頃に1回
見ることにしてます
確か子供の頃TVでたまに放映してたのもそんな時期で
(多分作中の時間と合わせてたんでしょう)
・・・・実は今年もこれからDVD見る予定です(笑)
実はその「事前の雰囲気作り」に本作タイトルでググってみて
こちらのページを覗かせて頂いた訳で・・・

コンラート伍長、実にいい味出してますね
非常に印象に残るセリフは、ヘスラー大佐の本心を知って
転属を願い出た挙句「貴様は裏切者だ」と言われたのに対して
「私が裏切者(トレイター)なら、あなたは殺人者(マーダー)だ」
「その制服のために息子を殺し、国を殺し、世界を殺す!」
「誰の為に…あなたの為に!?(for who? for YOU!?)」と
珍しく激しい口調で反論する場面ですね
まさに、名台詞です

あと、存在感がヘスラーに喰われてるとか言われがち(笑)な
表の主人公カイリーさんも、結構好きです
「しぶとく足で調べる」「全てを疑って見る」が染み付いた
“現場の刑事上がり”という、何となくショボくて
(刑事コロンボみたいなのを連想します)全然軍人的カッコ良さとは無縁の、
ある意味ヘスラー大佐とは、コンラートと別方向で対照的なキャラクター。
その地味な刑事的思考・洞察力が敵の弱点を見つける鍵となる物語展開
鋼鉄の意志を持つ凛々しい貴族的風貌の軍人が、ショボいデカ上がりの
(ちっとも軍人っぽくない)彼の地味な執念に敗れる
そんな構図も、この映画の魅力の1つだと思います……

長文失礼いたしました
 
 
 
ひふみーさん (雫石鉄也)
2009-12-27 05:20:14
ようこそお越しくださいました。
ごていねいなコメントありがとうございます。
なるほど。私はコンラート伍長を主人公と見ましたが、カイリー中佐を主人公と見ることによって、真に歴史を動かしているのは、派手な天才ではなく、地道に働く凡才ということが判るわけですね。
そういう見方をすれば、これは戦争映画というよりも、歴史ドラマ(第2次世界大戦は、歴史上のできごとか、現代と地続きのできごとかが問題ですが)と見ることができるわけですね。これは勉強になりました。
私の好きなシーンはやっぱり、「パンツァーリート」のシーンですね。
 
 
 
本編視聴後・・・・ (ひふみー)
2009-12-27 07:17:14
再び失礼いたします

先ほど見終えました
やっぱりいい映画ですね、パンツァーリートの場面は
やっぱり燃えます

この映画は件の「3人の主人公」の他にも、テリー・サバラス演じるヤクザな戦車兵ガフィ
(例のパンツァー・リートの凛々しい場面の直後に、彼の“商品”を満載した戦車が
実にくだけたファンキーなBGMと共に初めて登場する場面の対比!!)や
新米の弱虫中尉殿が屈強なベテラン軍曹との脱出・捕虜・そしてその死を通じて
一人前の将校として成長する姿、
「霧が晴れれば戦闘になり、味方も大勢死ぬ。しかし、晴れて欲しい」と
重大な責任を負わされた“司令官の孤独”の心情をチラリと見せるグレイ将軍など
「戦争」の中での様々な人々の姿を描写した一種の“群像劇”でもあります

史実上の「バルジの戦い」とは大幅に異なる脚色されたストーリーだとして
難癖付けられる事もある本作ですが
(「この戦いの“エッセンス”を表現する為に再構成された物語だ」と
エンドロール前の献辞で述べられてるんですけどね)
単純な娯楽戦争アクションや歴史的ドキュメントだけではなく
戦争と言う状況の中での“人間のドラマ”という「映画」をこそ
監督は撮ろうとしたのだと思います
(まぁ、子供の頃はそんな事考えもせずに「戦車カッコいい~」だけで見てて
そんな「人間ドラマ」の魅力に気づいたのは大人になってからなんですが)

・・・そういえば「地道な凡人が歴史を動かす」どころか
そのカイリーに敵の弱点を気づかせた最終的な切っ掛けは、
歴史などというモノから一番縁遠い、人間味ありすぎる(笑)ヤクザ戦車兵
ガフィの燃料補給場面、「サイフォン式にやるんだよ、バカヤロウ」(ペッ!)
→捕虜のゴムホース、というのも何か面白い対比です
国家の命運と己の“戦争欲”をかけて戦うヘスラーに対する
コンラート、カイリーとはまた別の「対立軸」キャラとしての
「生き残って金持ちになって帰国してェんだよ」なガフィという構図も見えますね

TV放映などではカットされがちな細かい場面でも意味深なモノは多くて
今回見てて初めて気づいたのが、自分の疑念を確信するカイリーがふとこぼす
「軍隊生活はまだ短いが、警察の仕事と比べると随分楽だ」というセリフ

確かに「戦争」は巨大な規模で物事・歴史が動き、大量の死と破壊を産む
恐ろしい出来事ですが、ある意味「単純な“力”のぶつかり合い」であり
同じ“戦う仕事”としては軍隊よりも、都会のコンクリートジャングルでの
むき出しの人間の欲望や心理的暗黒、それらによって生み出された
「先の読めない」犯罪行為との“終わらない戦い”の仕事の方が
よっぽどキツかった、とでも言ってるかのようでした・・・・・


またも長文の独りよがりな感想文、失礼いたしました
 
 
 
ひふみーさん (雫石鉄也)
2009-12-27 11:56:35
いえいえ。
なかなか読ませるコメントを、ありがとうございます。あなたが、いかにこの映画が好きかがよく判る
好コメントです。
確かにテリー・サバラスのガフィも面白いキャラですね。わたしは、ブロンソンのファンですので、ウォレンスキー少佐も好きなキャラクターです。ベテランのプロの軍人ですね。へスラーは病気のプロの軍人ですが、ウォレンスキーは健康なプロの軍人ですね。
 
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