雫石鉄也の
とつぜんブログ
3人のサンタ
は~い、みんな、みんなのところにもサンタさんは来たかな。みんなはいい子だからきっとサンタさんが来て、すてきなプレゼントをもらったことでしょう。で、サンタさんですが、どんなおじいさんでしたか。赤い服着て、白いひげ、赤ら顔のちょっと太り気味のやさしい顔のおじいさんでしたでしょう。
「はい」
はい、ともあきくん。
「違います。僕の家に来たサンタさんは、おじいさんではなかったです」
おじいさんではないサンタさん。どんなサンタさんでしたか?
「おじさんでした。トナカイのソリではなく、ワンボクッスカーでやってきました」
ピンポーン。チャイムが鳴ったので、玄関まで行ってドアを開けました。茶色の背広を着たおじさんが立ってました。なんだかおどおどしてます。気の弱そうなおじさんでした。
「こんばんは。あなたがともあきさんですか」
「はい」
「メリークリスマス。私、こういう者です」
おじさんは名刺をくれました。
世界クリスマスプレゼント配布株式会社
サンタクロース部 係長代理補佐
三田九郎
「ともあきさんは変速機付の自転車をご希望でしたね」
「は、はい」
「少々、お待ちください」
おじさんは、青い自転車を持ってきました。
「こちらでよろしかったですね」
ぼくは緑色の自転車が欲しかったのです。
「違います」
「どう違うのですか」
「ぼくは緑色のが欲しかったんです」
おじさんは困った顔をしました。
「なんとか青でお願いできませんか。私のノルマが達成できません。ノルマが達成できないとリストラされます」
半分泣き顔でぼくに頼みます。ぼくはなんだか、かわいそうになりました。おとうさんぐらいの年のおじさんのたっての頼みです。
「判りました。この自転車でいいです」
「ありがとうございます。では、この受領書にサインしてください」
おじさんはぼくがサインした紙を大事そうに持って行きました。
「おお」
はい。りょうたくん。「おお」とはなんですか。「はい」といいなさい。りょうたくんにもサラリマンのサンタが来ましたか。
「オレとこはそんなサンタじゃなかった」
ドンドン。大きな音でドアをノックする人がいた。オレはおとうさんかなと思った。おとうさんはよく酔っぱらって夜中に大きな音をたてて帰ってくるから。ドアを開けると知らないおじさんがいた。
大きなおじさんです。真っ黒いヒゲが顔いちめんにはえてる。クマみたい。
「小僧、お前はこれが欲しかったんだろ」
大きな声。耳が痛いほど。赤い自転車をそこに置いた。
「あ、おじさん、サンタさん?」
「そうだ。わがはいはいつもは山奥で木こりをやっとるが、クリスマスシーズンだけ、頼まれてサンタをやっとる。さ、小僧、自転車を受け取れ」
「オレ、黒い自転車が欲しいんだ。こんな赤いんじゃイヤだ」
「小僧、お前も男だろ。男が細かいこというんじゃない。え」
クマおじさんはオレの背中をドンとたたいた。
「ゲホゲホ」びっくりしてセキが出た。
「うう、サンタさんってやさしいおじいさんじゃないの」
「確かにそんなサンタもおる。けんど小僧の担当になったのはわがはいだ。いいからこの自転車を受け取れ」
「でも」
「ごちゃごちゃいうんじゃない。わがはいの受け持ちは小僧の分でしまいだ。早く山に戻って仕事せにゃ雪で山に入れんようになる。だまって受け取れ」
クマおじさんはそういうと赤い自転車を置いて行った。
「あ、あのう」
はい。たかひろくん。たかひろくんちにもサンタさんが来たんですね。どんなサンタさんですか。りょうたくんのようなクマサンタさんですか。それとも、ともあきくんのようなサラリマンサンタさんでしたか。
「ぼくの家にきたのは、おじさんやおじいさんではなく、おにいさんでした」
ルルル。ぼくの携帯が鳴りました。ぼくは塾へ行く関係で携帯を持ってるんです。
「はい。アライです」
「はい。たかひろくんですね」
「はい」
「私、クリスマスプレゼンを配布している、株式会社サンプレゼンスの五木谷といいます。これからプレゼントを持っていきます。よろしいですか」
「はい」
「10分後に行きます」
きっちり10分後にチャイムがなった。ドアを開けると大学生ぐらいのおにいさんがいました。グレーの背広を着て、細いネクタイをしてました。
「20秒遅れてしまった。申し訳ありません」
そういうとおにいさんは、黒い自転車を車から出しました。ちなみ車はBMWのワゴンでした。
「これが、たかひろくんのリクエストの自転車ですね。ご確認ください」
ぼくは白い自転車が欲しかったのです。
「違います。ぼくは白い自転車に○をつけました」
「そんなはずはありません。これをごらんください」
おにいさんはスマホを見せてくれました。メール受信の履歴にアライとありました。そこに、品目、自転車、希望色。黒とありました。
「あの、このアライは隣町のりょうたくんです。ぼくではないです」
「おかしいな。事務の間違いかな」
そういうとおにいさんはスマホで電話した。
「はい。アジア日本コシエン担当の五木谷です。シンハン町のあらいたかひろさんの自転車、色は白になってますか。うん、はい。白で受付されている」
おにいさんは別の所に電話しなおしました。
「五木谷です。倉庫のヒヤマさんお願いします。あ、ヒヤマさん。あらいたかひろさんの自転車の出庫伝票を見てください。色はなんですか。あ、黒。事務所からのメールを見間違えましたね」
おにいさんはメガネをキラリと光らせると、とつぜんガバッと地面にしゃがみこみました。額を地面にすりつけて土下座しました。
「まことに申し訳ありません。弊社の倉庫の手違いでした。ほどなく自転車の在庫管理担当のヒヤマも来ます。いかようにもおわびします」
それから小太りのおじさんが白い自転車を持って来ました。それから二人そろってまた土下座しました。
「申し訳ありません。リクエストの白い自転車です。それからこの黒い自転車はおわびのしるしです」
「自転車2台もいりません。りょうたくんが黒いのが欲しいといってました。りょうたくんに回したら」
「りょうたさんは担当が違います。りょうたさんには木こりのクマゾウがいってます」
「でも、自転車2台も」
「どうしても受け取ってください。それが弊社の気持ちです」
きみのところにはどんなサンタさんが来ましたか?
「はい」
はい、ともあきくん。
「違います。僕の家に来たサンタさんは、おじいさんではなかったです」
おじいさんではないサンタさん。どんなサンタさんでしたか?
「おじさんでした。トナカイのソリではなく、ワンボクッスカーでやってきました」
ピンポーン。チャイムが鳴ったので、玄関まで行ってドアを開けました。茶色の背広を着たおじさんが立ってました。なんだかおどおどしてます。気の弱そうなおじさんでした。
「こんばんは。あなたがともあきさんですか」
「はい」
「メリークリスマス。私、こういう者です」
おじさんは名刺をくれました。
世界クリスマスプレゼント配布株式会社
サンタクロース部 係長代理補佐
三田九郎
「ともあきさんは変速機付の自転車をご希望でしたね」
「は、はい」
「少々、お待ちください」
おじさんは、青い自転車を持ってきました。
「こちらでよろしかったですね」
ぼくは緑色の自転車が欲しかったのです。
「違います」
「どう違うのですか」
「ぼくは緑色のが欲しかったんです」
おじさんは困った顔をしました。
「なんとか青でお願いできませんか。私のノルマが達成できません。ノルマが達成できないとリストラされます」
半分泣き顔でぼくに頼みます。ぼくはなんだか、かわいそうになりました。おとうさんぐらいの年のおじさんのたっての頼みです。
「判りました。この自転車でいいです」
「ありがとうございます。では、この受領書にサインしてください」
おじさんはぼくがサインした紙を大事そうに持って行きました。
「おお」
はい。りょうたくん。「おお」とはなんですか。「はい」といいなさい。りょうたくんにもサラリマンのサンタが来ましたか。
「オレとこはそんなサンタじゃなかった」
ドンドン。大きな音でドアをノックする人がいた。オレはおとうさんかなと思った。おとうさんはよく酔っぱらって夜中に大きな音をたてて帰ってくるから。ドアを開けると知らないおじさんがいた。
大きなおじさんです。真っ黒いヒゲが顔いちめんにはえてる。クマみたい。
「小僧、お前はこれが欲しかったんだろ」
大きな声。耳が痛いほど。赤い自転車をそこに置いた。
「あ、おじさん、サンタさん?」
「そうだ。わがはいはいつもは山奥で木こりをやっとるが、クリスマスシーズンだけ、頼まれてサンタをやっとる。さ、小僧、自転車を受け取れ」
「オレ、黒い自転車が欲しいんだ。こんな赤いんじゃイヤだ」
「小僧、お前も男だろ。男が細かいこというんじゃない。え」
クマおじさんはオレの背中をドンとたたいた。
「ゲホゲホ」びっくりしてセキが出た。
「うう、サンタさんってやさしいおじいさんじゃないの」
「確かにそんなサンタもおる。けんど小僧の担当になったのはわがはいだ。いいからこの自転車を受け取れ」
「でも」
「ごちゃごちゃいうんじゃない。わがはいの受け持ちは小僧の分でしまいだ。早く山に戻って仕事せにゃ雪で山に入れんようになる。だまって受け取れ」
クマおじさんはそういうと赤い自転車を置いて行った。
「あ、あのう」
はい。たかひろくん。たかひろくんちにもサンタさんが来たんですね。どんなサンタさんですか。りょうたくんのようなクマサンタさんですか。それとも、ともあきくんのようなサラリマンサンタさんでしたか。
「ぼくの家にきたのは、おじさんやおじいさんではなく、おにいさんでした」
ルルル。ぼくの携帯が鳴りました。ぼくは塾へ行く関係で携帯を持ってるんです。
「はい。アライです」
「はい。たかひろくんですね」
「はい」
「私、クリスマスプレゼンを配布している、株式会社サンプレゼンスの五木谷といいます。これからプレゼントを持っていきます。よろしいですか」
「はい」
「10分後に行きます」
きっちり10分後にチャイムがなった。ドアを開けると大学生ぐらいのおにいさんがいました。グレーの背広を着て、細いネクタイをしてました。
「20秒遅れてしまった。申し訳ありません」
そういうとおにいさんは、黒い自転車を車から出しました。ちなみ車はBMWのワゴンでした。
「これが、たかひろくんのリクエストの自転車ですね。ご確認ください」
ぼくは白い自転車が欲しかったのです。
「違います。ぼくは白い自転車に○をつけました」
「そんなはずはありません。これをごらんください」
おにいさんはスマホを見せてくれました。メール受信の履歴にアライとありました。そこに、品目、自転車、希望色。黒とありました。
「あの、このアライは隣町のりょうたくんです。ぼくではないです」
「おかしいな。事務の間違いかな」
そういうとおにいさんはスマホで電話した。
「はい。アジア日本コシエン担当の五木谷です。シンハン町のあらいたかひろさんの自転車、色は白になってますか。うん、はい。白で受付されている」
おにいさんは別の所に電話しなおしました。
「五木谷です。倉庫のヒヤマさんお願いします。あ、ヒヤマさん。あらいたかひろさんの自転車の出庫伝票を見てください。色はなんですか。あ、黒。事務所からのメールを見間違えましたね」
おにいさんはメガネをキラリと光らせると、とつぜんガバッと地面にしゃがみこみました。額を地面にすりつけて土下座しました。
「まことに申し訳ありません。弊社の倉庫の手違いでした。ほどなく自転車の在庫管理担当のヒヤマも来ます。いかようにもおわびします」
それから小太りのおじさんが白い自転車を持って来ました。それから二人そろってまた土下座しました。
「申し訳ありません。リクエストの白い自転車です。それからこの黒い自転車はおわびのしるしです」
「自転車2台もいりません。りょうたくんが黒いのが欲しいといってました。りょうたくんに回したら」
「りょうたさんは担当が違います。りょうたさんには木こりのクマゾウがいってます」
「でも、自転車2台も」
「どうしても受け取ってください。それが弊社の気持ちです」
きみのところにはどんなサンタさんが来ましたか?
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