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ポセイドン・アドベンチャー


監督 ロナルド・ニーム
出演 ジーン・ハックマン、アーネスト・ボーグナイン、レッド・バトンズ、シェリー・ウィンターズ

 1970年代に流行ったパニックスペクタクルの代表的な映画である。こういう娯楽映画は単純であれば単純であるほど良い。本作も単純である。津波で転覆した巨大な客船から、生き残った人々が脱出する。それだけの映画である。いまとなっては、この設定はウソになった。東日本大震災の時、沖にいた船は無事だった。津波は沖合いでは大きくなく、沿岸に近づくと巨大になる。
 ハックマン演じる主人公が、この手の映画としては珍しく牧師である。ところがこの牧師おとなしい聖職者ではない。「神はいそがしい。われわれ人間のことなんかかまっちゃおれん。だからわれわれは自分の力で道を切り開くのだ」「凍える冬の寒さが祈るだけでマシになるのか」「神は勇者をこのむ」この牧師が異常に強いリーダーシップを発揮して、みんなを導いて行く。
 船底は上だ。救助は上から来る。だから上に行けば助かる。船の素人の牧師が素人考えで、みんなを船底に連れて行く。強引である。しかし、なんの疑いも抱かず牧師について行くべし、との描き方をしている。この牧師はアメリカの象徴のような人物だ。正義はアメリカに有り。世界はアメリカにだまってついてくればいいんだ。
 と、いう具合に主人公のアメリカ臭さがいささか鼻につくが、名作であることは間違いない。牧師に異を唱える人物として、ボーグナイン扮する刑事ロゴを配置し、牧師に心酔している若い娘、牧師を補佐しみんなの案内役となる少年。決死の潜水で牧師を救う中年女性。などなど、適確かつ過不足なく脇役を配してドラマを盛り上げる。もちろん、彼らはすんなりと助からない。脱落して死ぬ者もいる。次々と襲いかかる危機。怖いのは水である。この映画ではただの海水が、恐怖の人喰いモンスターのように見える。
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