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K-20 怪人20面相・伝


監督 佐藤嗣麻子
出演 金城武 松たか子 仲村トオル 國村隼 鹿賀丈史 高島礼子

 世界の設定が非常に良い。映画が始まると、最初に字幕で設定が説明される。1940年代。大日本帝国は英米との戦争を回避。第2時世界大戦がなかった世界。実際の大日本帝国は敗戦によって消滅したが、この映画の大日本帝国は昭和20年代になっても健在。従って、華族制度もあり、極端な階級社会で、少しだけ科学技術の進んだ大日本帝国が映画の舞台。
 映画が始まるといきなり巨大な飛行船。飛び回るジャイロコプター。人々はテレビを観て、オート三輪で走る。観客はスチームパンクな世界にいきなり引きずり込まれる。このスチームパンクな大日本帝国の帝都に出没するのは、神出鬼没の怪人20面相。富める者から奪い貧しき者に施しを行ない、義賊とされている。
 サーカスの曲芸師、遠藤平吉は謎の男にはめられて、20面相として、名探偵明智小五郎に逮捕される。脱走した平吉は、明智、軍警(警察)の追跡をかわしつつ、本物の怪人20面相を追う。その20面相が狙うのは、無線で電気を送電する画期的な装置。20面相に拉致されそうになった華族の令嬢葉子を平吉は救う。
 20の顔を持つ怪人。追う名探偵明智小五郎。マッドサイエンティストが発明した恐るべき新発明。悪人や軍の手に渡れば人殺しの兵器に転用される。世間知らずの金持ちの令嬢が、貧しい子供たちのスラムで現実の世界を見て、自分のやるべきことに気がつく。
 レトロな風景をバックに繰り広げられるアクション。謎が謎を呼ぶ。怪人20面相の正体やいかに。サーカスで鍛えた体術で20面相と対決する平吉。おてんばで勝気なお嬢様葉子はジャイロコプターを駆って平吉を助ける。平吉にアドバイスを贈り、さまざまは仕掛けを平吉に提供する、からくり師の源治。巨大な装置を起動させる鍵を取り合って、ビルの上で挌闘する20面相と平吉。
 じつに真っ直ぐなエンタティメント。ど真ん中ストレートの冒険活劇。日本で、この手の娯楽活劇映画をつくると、どうしても「ためらい」がある。てらいがあり、変化球を投げたがる。だから、余計な愁嘆場を作ったり、色恋ざたを絡めたりして失敗する。成功したのは黒沢の「隠し砦の三悪人」と岡本喜八の諸作品ぐらいしか思いつかない。
 この映画によって日本映画は、初めてスピルバーグ、ルーカスとまともに勝負できるようになった。というか、「インディー・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」には完全に勝っている。スピルバーグなにするものぞ。
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