tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

三題噺:インフレ、円安、経済政策

2023年08月31日 14時57分30秒 | 経済
<インフレ>
去年、原油の値段が上がってアメリカやヨーロッパも8%とか10%のインフレになりました。その後下がって来て、アメリカでは3%台に落ち着いています。

しかしFRB議長のパウエルさんは、インフレについて大変心配性のようで、インフレマインドが消えない内は、金利を引き上げると牽制して、徹底的以インフレを抑えようという事のようです。

アメリカやヨーロッパでインフレが激しくなるのは、物価が上がると賃上げ要求が激しくなって、賃金が上がり、それでまた物価が上がるという悪循環になるからで、日本の日銀に当たるFRBが金利を引き上げて、経済活動の過熱を抑え、賃金も物価も安定させるという政策を取ることになります。

パウエルさんはインフレに厳しいので、まだインフレ再発の懸念があるから金利を引き上げるという気構えをなかなか変えません。

一昨日ですか、アメリカでは雇用統計が発表になって、雇用が増えないようだから賃金も上がらずインフレ懸念も薄らいだという見方が出て、パウエルさんもすこし安心したと伝えられ、金利引き上げがなさそうだという事でNYダウも日経平均も 上げています。

<円安>
お陰で147円まで行った円安も145円台に戻していますが、本来なら110円~120円とみられる円レートが150円近くまで円安になったのは、日本はゼロ金利、アメリカではドンドン金利が上がるという事で、利息の付かない円を売って利息の高いドルを買う人が増えるからです。

アメリカのインフレを抑えるというFRBの政策が、そのトバッチリで日本では円安が進行し、原油が値上がりしているのに加えて、円が安くなるのですから輸入原油の円価格はますます高くなります。

円安になった分だけ原油もLNGも、大豆や小麦、トウモロコシなどもみんな値上がりするのですから、アメリカはそれでいいのかもしれませんが、日本はたまりません。

忽ちガソリン価格はリッター185円になり、運送会社も自家用車族も大変です。加工食品や調味料の値段も10%近く上がるものもあって、今度は日本がインフレです。

<経済政策>
アメリカの都合で、日本がインフレになっても、アメリカは全く気にしません。アメリカから買う防衛装備品の値段も円安で随分上がるでしょう。アメリカはドルの値段は同じですというでしょう。

もともとインフレでない日本では日銀は金利引き上げなどしませんから日本の経済はアメリカの都合次第という事になります。

大体、原油値上がりで賃上げをし過ぎてインフレになって、それを金利引き上げだけ(金融政策だけ)で抑え込もうというのが経済政策としては良くないのです。

原油値上がりが忽ち賃上げに繋がるのは、国民が慌て者だからで、政府が合理的な説明をして、国民が慌てないようにし、インフレを未然に防止して、外国に迷惑をかける金融政策に依存するようなことを最小限にすべきでしょう。

変動相場制の中でも為替の変動を最小限にするような行動をアメリカのような基軸通貨国は取るべきなのです。これはG7やOECDの課題ですね。

そんなことは、日本は1973年の第一次石油危機の経験に学んで、きちんとやっているのです。
アメリカにも、もう少しお行儀のいい国になって欲しいところです。

2023年度版の経済財政白書が発表になります

2023年08月30日 14時56分40秒 | 経済
今年は日本経済がなんとか動き出した年ですので、政府がどんなふうに見ているかと思い、ネットで内閣府の「説明資料」を見てみました。(「白書」は予約受け付中)

副題が「動き始めた物価と賃金」ですから、今年にぴったりです。
3章からなり第1章「マクロ経済の動向と課題」、第2章「家計の所得向上と少子化傾向の反転に向けた課題」、第3章「企業の収益性向上に向けた課題」です。

第1章は概観で、2022年度までがベースですから「個人消費、設備投資が持ち直し、緩やかな回復との見方です。
コロナ明けで対面サービスも回復、インバウンドも増えて、23年1-3月期までの直近のGDPの順調な伸びが図示されています。

昨年から始まった消費者物価の上昇については、価格改定の頻度が上昇していること、労務費との関連が薄いなど的確な指摘がありますが、これを長く続いたデフレマインドの払拭に繋げることが重要との指摘は、もう明らかにインフレなので些か違和感です。

第2章では賃金上昇については、生産性の上昇が前提として、そのためには労働力の適材適所配置が重要で、労働移動の活発化、リスキリングで賃金上昇と「働き方改革」路線推奨が歴然で、これは些か問題でしょう。(これは有能な人材中心の話)
日本では、それを企業内で出来るのが一番の得意技という実体の理解不足でしょう。

女性の正規社員が増えると賃金水準が上がるといった面白い指摘もありますが、賃金カーブがフラット化しているので資産所得を増やそうという指摘は、NISAの宣伝にも聞こえます。(貯蓄も出来ない家計も多いのです)

少子化の原因については、未婚率の上昇が指摘され、それはその通りですが、なぜ結婚しないかが問題で、これは日本をそうした社会にした歴代政権の責任でしょう。

第3章では、先ずバブル崩壊以降の生産性の伸びの低さが指摘され革新的な開発力やブランド形成力不足などが指摘されていますが、調査期間があの円高不況の時期に当たり、企業はコストカット、政府は赤字でも財政性支援に大わらわという時代を考えれば無理は自明です。

その中でも基礎研究は、辛うじて何とか続けて来ている日本ですから、これからは、政府自身が、防衛予算の捻出ばかりでなく、的確な経済政策をきちんととやることを願いたいと思います。

最後にマークアップ率についても取り上げています。これは「自分で価格を決められる力」で、高い利益率の源泉ですから、余程いい商品を持っていないとできません。

日本の場合は、輸入原材料の価格が上がっても、なかなか値上げが出来ず、利益を減らして我慢といったことで利益率が低いという指摘です。しかし「言い値で売れるような商品を持ちましょう」という気概は解るとしても、いろいろ難しいですね。

せめて、輸入価格が上がった時の価格転嫁をスムーズにというのが今の日本でしょうか。
ガソリンなど、は政府が補助金を出して値段を上げさせないとのことですが、それとこれとはどんな関係になるのでしょうか。 

一方で、惣菜や、加工食品、調味料、飲料などは国内でも、年率10%前後の上昇率になっています。こういうのが望ましいという事ではないと思いますが、今の日本経済はいわば、プラザ合意、リーマンショック、アベノミクス、それにコロナ禍で30年もゼロ成長という大病の病み上がりですから、大分歪んでいます。これからの経済・財政政策の王道を、本気で確りやって頂きたいと思うところです。

そろそろ秋の気配、夏の終わり

2023年08月29日 11時59分55秒 | 環境
そろそろ秋の気配、夏の終わり
年々暑さの厳しくなる夏ですが、殊更暑かった今年の夏も、「もうそろそろ終わりですよ」というように狭い庭のススキが穂を出してきました。



そういえば、「暑い、暑い」と言いながら、この所少しは違うのかなと、ススキの出穂に少し敬意を表しても良いかなとも感じられるようにも思います。

8月も明後日まで、もう今年も3分の2は過ぎるのです。何か1年が益々早く過ぎていくようです。子供のころは1年は随分長かったと思うのですが。

やっぱり、割り算して「自分の年齢分の1年」の値が小さくなるのだから、歳を取るほど1年が短く感じられるのは仕方ないのかな、といわれて納得するしかないようです。

我家では、家内も私もススキの穂の風に揺れるのを見るのが好きで、狭い庭に家内がススキを植えました。
ススキの穂は毎年8月下旬から11月初旬ぐらいまで、穂を風に揺らせ、季節の変化を映してくれます。勿論中秋の名月には欠かせません。

今年は8月に2日と31日、2回満月の夜があって、二回目の満月は明後日、スーパームーンだそうです。
中秋の名月かと思いましたら、「今年の十五夜は9月29日です」と書いてありました。
その頃にはススキの穂ももう少し賑やかになっている事でしょう。

ところで、なかなか終わらない暑い夏の我が家の代表はノウゼンカズラです。
例年6月から7月で終わるのですが、去年、今年は異常な暑さが続いているせいか、花芽が次々に出て来て、未だに賑やかです。



しかし、写真を撮っておこうとよく見ますと、矢張り「夏の終わり」の気配が見えます。9月に入れば花は終わるのでしょう。

世の中多事多端ですが、酷暑の終わりに、エアコンをつけながらも、狭い庭の自然の様子に夏から秋への気配を感じているところです。

「円安と経済政策:忘れられた賃金」雑感

2023年08月28日 14時16分29秒 | 経済
前3回の上の表題のテーマで、為替レートと物価と賃金の問題は、日本においては、政府や日銀も、アカデミアも余り的確に整理されていないのではないかという感じを強くしていました。

最初は、古い話ですが、プラザ合意による円高の際、日銀は、円高は良い事と評価していた事に疑問を持ちました。しかし円高はデフレを招き日本経済を長期不況にしました。
これは、白川総裁の末期までつづき、白川総裁は2012年ごろ気が付かれ『1%インフレ』を提起しています。

その間には、2008年のリーマンショックがありました。そしてバーナンキさんが「世界恐慌は金融緩和で救える」との信念のもとにゼロ金利政策を取りました。
世界恐慌にはつながりませんでしたが。ドルは大幅安になり、日本は円レート75円の円高で、日本経済は経済は再起不能になりました。

アメリカは「金利政策は、為替政策ではない」という意見のようですが、現実は最強の為替政策になっています。

白川さんから替わった黒田日銀総裁は、アメリカに倣ってゼロ金利を導入、円安を実現して日本経済を再生させる事を安倍さんに託されたのでしょう。

黒田バズーカと言われる異次元金融緩和で$1=120円の円安が実現します。政府も日銀も、円安になればすぐにインフレになると考えていたようで、2%インフレターゲットは2年ぐらいで達成と考えていたようです。

所がインフレにはならずアベノミクスは前提条件が崩れ、財政偏重で世界一の借金財政で支えても日本経済はゼロ成長を続け、今に至っています。

そうした中で、昨年から国際資源価格などの高騰で、世界的にインフレが加速します。主要国では10%前後に達する状態になりました。

その中で日本は3%台のインフレと低インフレですが、日銀はこのインフレは、2%のインフレターゲットとは違うとゼロ金利を変えていません。

一方、主要国は、アメリカ主導で、インフレを抑えようと軒並み金利を引き上げ、おかげで日本は円安が急激に進行、インフレが収まりません。

賃上げと円安の関係の把握が不十分の日本は実質賃金の上昇が長期に亘ってマイナスですが、政府、日銀も「先行きを注視」するだけです。

ここ3回で、何故こんなことになったか、どうすべきだったのか、これからどうすべきかのヒントを拾ってきたつもりですが、少しは役に立つのではないかと思っているところです。

「円安と経済政策:忘れられた賃金」雑感

2023年08月28日 14時16分29秒 | 経済
前3回の上の表題のテーマで、為替レートと物価と賃金の問題は、日本においては、政府や日銀も、アカデミアも余り的確に整理されていないのではないかという感じを強くしていました。

最初は、古い話ですが、プラザ合意による円高の際、日銀は、円高は良い事と評価していた事に疑問を持ちました。しかし円高はデフレを招き日本経済を長期不況にしました。
これは、白川総裁の末期までつづき、白川総裁は2012年ごろ気が付かれ『1%インフレ』を提起しています。

その間には、2008年のリーマンショックがありました。そしてバーナンキさんが「世界恐慌は金融緩和で救える」との信念のもとにゼロ金利政策を取りました。
世界恐慌にはつながりませんでしたが。ドルは大幅安になり、日本は円レート75円の円高で、日本経済は経済は再起不能になりました。

アメリカは「金利政策は、為替政策ではない」という意見のようですが、現実は最強の為替政策になっています。

白川さんから替わった黒田日銀総裁は、アメリカに倣ってゼロ金利を導入、円安を実現して日本経済を再生させる事を安倍さんに託されたのでしょう。

黒田バズーカと言われる異次元金融緩和で$1=120円の円安が実現します。政府も日銀も、円安になればすぐにインフレになると考えていたようで、2%インフレターゲットは2年ぐらいで達成と考えていたようです。

所がインフレにはならずアベノミクスは前提条件が崩れ、財政偏重で世界一の借金財政で支えても日本経済はゼロ成長を続け、今に至っています。

そうした中で、昨年から国際資源価格などの高騰で、世界的にインフレが加速します。主要国では10%前後に達する状態になりました。

その中で日本は3%台のインフレと低インフレですが、日銀はこのインフレは、2%のインフレターゲットとは違うとゼロ金利を変えていません。

一方、主要国は、アメリカ主導で、インフレを抑えようと軒並み金利を引き上げ、おかげで日本は円安が急激に進行、インフレが収まりません。

賃上げと円安の関係の把握が不十分の日本は実質賃金の上昇が長期に亘ってマイナスですが、政府、日銀も「先行きを注視」するだけです。

ここ3回で、何故こんなことになったか、どうすべきだったのか、これからどうすべきかのヒントを拾ってきたつもりですが、少しは役に立つのではないかと思っているところです。

円安と経済政策:忘れられた賃金 3、賃金と消費需要

2023年08月27日 15時17分46秒 | 労働問題
前回は、円安になった時の問題として、輸入部門は差損が出、輸出部門は差益が出るという、いわば自動的な所得分配の不公平が起きるという問題を先ず指摘しました。

その上で、サプライチェーン全体で輸入部門の差損を均等に負担する事の必要性に政府も気づき、輸入品価格の上昇を国内価格に適切に価格転嫁すべきという事になったようです。

この価格転嫁はまだスムーズに行われているとは言えませんが、この所、食料、飲料、日用品などの価格がかなり上がっていますからある程度進んでいるのでしょう。

ここで新しい問題が起きます。輸入品の価格上昇を国内価格に転嫁すれば、国内物価が上がります。それを買う消費者に、その皺寄せが来ます。そうならないためには、賃金についても円安に応じた上昇(所得配分の是正)が起きなければならないのです。

今迄の議論の中では、はっきり言って、差損・差益という企業収益の面の議論だけで、国民所得の7割を占める賃金への転嫁(配分)の議論が「忘れられてきていた」というのが現実です。

その結果起きたことが、円高になると国際競争力がなくなって日本は大変だが、円安になると国際競争力が強化されて、日本経済に有利、という常識だったのです。

賃金(雇用者報酬)は国民所得の7割を占めています。10%の円安が起きますとドル換算の日本の賃金は10%下がります。輸入部門でも、輸出部門でも賃金は下がります。

輸入物価の国内価格転嫁が100%完全に行われれば、為替差益と為替差損は相殺されます。そして国内物価は10%上がります。

その場合、賃金水準も10%上がれば、円安で、国際競争力が強化されることはありません。
賃金が5%しか上がらなければ、残りの5%分は日本の賃金コストが安くなって、国際競争力が強くなるのです。

逆に円高の場合を考え見れば、解り易いと思いますが、「プラザ合意」で2倍の円高になりました。賃金を半分にしなければ国際競争力は回復しません。そんなことは出来ませんから20年かけて(失われた20年)漸く下げたのですが、その方法が、正規従業員を非正規で置き換えるという事で、未だにいろいろな後遺症に苦しんでいます。

円安、円高は、多く外国の都合で起きますが、日本の賃金改定は年に一回の春闘です。円安の時には、物価が上がって、賃金が上がらないという現象が起きます。

アベノミクスの初期段階では円レートは80円から120円に50%分の円安になりました。賃金が5割上がって元々ですが、日本は賃金を殆ど上げませんでした。(このブログでは、賃上げよりも非正規の正規化に円安の余裕をつぎ込めと指摘しました)

上記の50%の円安で生じた円建ての余裕を、例えば、半分を人件費(雇用者報酬)増額に、半分を国際競争力の強化に使ってもよかったのではないでしょうか。

全てを国際競争力の強化(ドル建て人件費の抑制)に使ったため、国内経済は不況期と同じ消費不振によるゼロ成長を続けたという事でしょう。

今の円安についても同じことが言えるようです。この程度の賃上げで済まそうとすれば、現状の実質賃金マイナスが続き、消費不振からアベノミクスの二の舞になる恐れが大きいように思います。

前述のように、外国の都合で円高になったり円安になったりする日本経済ですが、円レートが大きく長期に変化した場合、如何なる賃金政策を取るか、この際、政労使に日銀も加え、衆知を集めて「日本ならこんな事も出来る」というような素晴らしい知恵を出して欲しいと思っているところです。

円安と経済政策:忘れられた賃金 2、企業収益重視

2023年08月26日 13時51分41秒 | 経済
前回は、今の消費者物価の上昇がなかなか止まらないという現実を見、その主要な原因が円安にある現状を指摘しました。

日本経済に相応しい円レートは、多分110円から120円でしょう。その辺りでもインバウンドは増えるでしょうし、主要輸出産業は適切な利益確保は可能でしょう。

現在の146円は円安に過ぎます。これがいつまで続くかはアメリカ次第でしょうが、それが消費者物価上昇の原因になって、現状のような実質賃金水準が下がりっぱなしといった問題が起きれば、それは消費需要の不振から経済成長にマイナスとなります。
という事で、経済政策としてはこれをどうすべきかという事になるわけです。

同時に指摘しなければならないのは、円安になった時の経済政策の中で、通常説明されているのは、輸入企業は購入価格高騰で損が出て、輸出企業は為替差益で利益が出るので、この企業努力と関係ない不公平をどうするかが中心ですが、それだけで良いのかという問題です。

政府が今やっているのは、原油が上ったら、ガソリン価格があまり上がらないように石油元売り企業に補助金を出し、その分ガソリン価格を安くといったバラマキ政策です。

輸出企業は為替差益が出ますから、今期は大幅増益になりますと発表し、証券業界がそれを囃して株価が上るという結果になって、それは良かったでいいのでしょうか。 

矢張りこれだけではまずいという事で、最近は、輸入企業は輸入価格上昇分を国内価格に適切に上乗せし、サプライチェーン全体で負担すべきという事になって、原材料価格、部品価格も上がって、完成品の価格も上がっています。

理論的にいえば、輸出入のバランスがほぼ取れている日本経済全体では、為替差損と為替差益の金額はほぼ同じで、正確に価格機構が働けば両者は相殺されて、損得は起きない筈で、円建てでは物価は円安分だけ上がり、ドル建てでは日本経済の価値(GDP)は変わらないという事になるのでしょう。

ところが、現実はかなり違っています。
円安になれば日本経済はコストが下がり国際競争力が高まって、輸出関連企業中心に業績が上がり日本経済は元気になって経済成長率も高まるから、円安は歓迎です。

逆に円高になると、プラザ合意やリーマンショックの様に、日本経済はコスト高になって、国際競争力を失い、コストダウンのための賃金引き下げとなり、日本経済は瀕死の重傷といった状態になるのです。

こういうことは広く知られていましたから、アベノミクスの第1の矢、日銀の異次元金融緩和で、円レートが80円から120円になった時、これで日本経済は回復と多くの人は考えたのです。

政府・日銀も、早晩インフレ率は2%になり、アベノミクス万歳となると思っていたのでしょう。安倍さんも「賃上げ」を言いました。
これも、本当に賃上げが必要というより、人気取り、支持率引き上げのためだった程度のように思われます。

結局、この期待は絵に描いた餅となり、物価も上がらず賃金も上がらず、企業の利益だけは増えましたが、日本経済はゼロ成長を続けることになってしまったのです。

何故、そんな事になって仕舞ったのかについては、ここまでの経緯の中にヒントがあります。
一口で言えば、円安円高の検討の際、論じられたのは企業収益が中心で、賃金問題が「忘れられていた」事でしょう。
(長くなってしまいましたので、次回確り論じたいと思います)

円安と経済政策:忘れられた賃金 1、物価動向

2023年08月25日 13時57分35秒 | 経済
今日総務省から8月分の消費者物価・東京都区部の速報が発表になりました。
今、経済問題で、国民の最大関心事は消費者物価のようですから、このブログでも毎月その動向を追っています。

特にこの所は、生活必需品中心に10%前後の年率上昇をしているものが多く、春闘賃上げがあっても実質賃金はマイナスといった状況が続いています。

昨年の消費者物価上昇は、長らく輸入物価上昇でも、消費不振が深刻で価格転嫁が出来なかった反動の上昇という思いが強かったようですが、今年に入っての上昇率の加速は円安による輸入原材料価格上昇の国内価格への転嫁という理由が強くなっています。

典型的にはガソリン価格で、昨日近所のスタンドで給油しましたが、会員は2円引きで177円/Lでした。これでも安い方かもしれません。
政府は「元売りに補助金」をという話ばかりですがそれでいいのでしょうか。

一方、日銀はこの物価上昇は一時的なもので、年末までには下がると見ているようですが、10月から値上予定が食料、飲料など6305品目(NHK「サクサク経済」)などというニュースを見ますと、それでいいのでしょうか。

春闘での政労使の議論以来、輸入価格上昇分は国内価格に転嫁すべしという事にもなったようで、円安で輸入価格は上がっています。

昨日のアメリカのジャクソンホール会議ではFRBのパウエル議長がインフレ圧力を指摘、米金利引き上げ懸念から円安に振れる一方、今日の日経平均は600円を超える下落です。

パウエルさんのインフレ懸念のしつこさから金利引き上げ懸念で円安傾向は続き、日本のインフレは収まらないという事になっているようです。
上述の、8月の都区部の消費者物価の動きは下図です。

    東京都区部8月消費者物価速報(対前年同月比:%)

                 資料:総務省「消費者物価指数」

という事で、消費者物価の上昇をこのまま「注視する」というだけで、政府・日銀としては良いのでしょうか、見ているだけでは駄目、という事になりそうです。
図中の緑の線は、アメリカでパウエルさんが気にしている消費者物価のコアコア指数に対応するもので、日本でもこれだけは上昇傾向が続いています。

輸入物価上昇分は、出来るだけスムーズに国内価格に転嫁しなさいと言っていると、円安が続く限りインフレは収まりません。
結果的に実質賃金はこれからもマイナス続きといった事にもなりかねません。

問題は2つあるようです。
1つは、円安をどうすするかです。アメリカの金利政策次第でいいのでしょうか。
2つは、円安による輸入価格の国内価格への転嫁という問題をもっと確り考えて、的確な政策を打たないと、実質賃金マイナス続きで、消費不振の片肺経済という事になりそうです。この対応策は如何にという問題です。

次回この2つを考えてみましょう。

「濡れぬ先こそ露をも厭え」ですがその後は?

2023年08月24日 15時44分42秒 | 政治
安倍政権の集団的自衛権の閣議決定から、日本の平和憲法は不安定なものとなり、今は、敵基地攻撃能力、武器輸出問題が議論される事になり、南西諸島にミサイルが配備されるようになりました。

将来、日本の政府がどんな状況の中でどんな意思決定をするかは解りませんが、日本が戦争に巻きこまれる可能性が出てきたと国民は感じています。

今日のマスコミの報道では、日本が堅持してきた「武器輸出三原則」もなしくずしに見直され、条件を付けながらも武器輸出を認めようという方針に政府が見直してきている様子が種々報道されています。

日本には「濡れぬ先こそ露をも厭え」と言う諺があります。この諺の解釈な難しい所ですが、本来の解釈は「人間は本来濡れていないのだから、それを大事にして、少しでも濡れないように気を付けよう」という事と思いますが、ここで「濡れる」というのは「悪に染まる」という事でしょう。

では、一度濡れたらどうするかという事は「言わぬが花」で、諺には続きはありませんが、敢えて言えば、一度濡れたら大変ですよ「人間は弱いものですから、容易に立ち直る事が出来ないのです」という教訓を含んでいるのでしょう。

日本国憲法とそれに対する第二次安倍内閣以降の日本政府の態度、行動を見ていますと、いつもこの諺が心の中に浮かんで来てしまいます。

アメリカと仲よくしようとしたせいか、トランプというとんだ大統領をと仲よくしたせいか知りませんが、アメリカと仲良くなるのに比例して、日本国憲法の第九条とは折り合いが悪くなるという事になりました。

政府はそこにいろいろな理屈を付けて辻褄が合うように見せながら、結局は、日本にミサイルや無人機が飛んでくるという可能性がどんどん高まるような政策決定を「閣議決定」という形で決めて、国民はそれを認めなさいという事になっています。

今回の武器輸出問題も、イギリス、イタリアと共同で高性能戦闘機を開発するというプロジェクトへの参加決定が始まりです。

先ず、開発には巨大なカネがいるので、日本独自では無理、共同が合理的という理由でした。何か胡散臭いと感じていましたが、イギリス、イタリアでは、高性能戦闘機が出来たら第三国に輸出したいという事になるようです。

日本で生産した戦闘機は共同開発した3国ならどこで使ってもいいという事になりますが、第三国に輸出されると、何処でどう使われるかわからない、内戦や国際紛争で一般市民の殺傷の可能性が当然あるので、日本の武器輸出三原則に抵触する、「日本どうする?」という事になっているようです。

武器輸出三原則は安倍政権の下で平和貢献に資する場合や日本の安全保障に資する場合には輸出を認めるという条件付きで見直され(防衛装備移転三原則)ていますが、今度は国際法違反の武力や威嚇を受けている国には輸出出来るとしたいようです。

引き合いに出されるのは、ロシアのウクライナ侵攻におけるウクライナ支援のようですが、現状日本は人道支援や復興支援に徹するという事で、ウクライナもそれには理解を示しています。日本の平和憲法の意義を理解しているからでしょう。

聞くところによれば、武器輸出の中で、部品はどうかという質問に対し「部品は武器ではない」などという見解になるようで、こういうのを抜け道というのでしょう。

こんな様子を見ていますと、現政権は「何とかして、日本を戦争の出来る国にしていきたい」と考えているとしか思えません。

民主主義国ならば、それが国民の輿論だという事のはずですが、どう見てもそんなことはないようです。
ならば、安倍・岸田政権というのは一体何なのでしょうか? それとも日本は民主主義国ではなかったのでしょうか?
 (日本国民よ、しっかりせい!という声が聞こえて来そうです)

処理水問題、岸田さんに何が出来るのか

2023年08月23日 11時19分34秒 | 政治
福島第一原子力発電所に溜っている放射能を含んだいわゆる「処理水」が、もうこれ以上貯める所もないという事で海洋放出が決まった事でとんだ騒ぎになっています。

ニュースを聞いていても、何故こんな騒ぎにしなければならないのかとずっと奇妙な感じを受けています。岸田さんに一体何が出来るのか全く解らないからです。

というのは、お忙しい岸田総理が、アメリカでの日米韓首脳の三者会談を終えた翌日には福島に行き、処理水放出についての現場を視察に行っています。

その翌日には東京で全魚連の代表と会って「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と言っていた手前でしょう、安全性の確保や風評対策を徹底して行うことなどを丁寧に説明し、24日には放出を始めるという順序を踏んでいるという事のようです。

「大変ですね」と申し上げなければならないのかもしれませんが、どうしても理解できないのは、岸田総理がこうして飛んで歩いて日程をこなせば何か解決するのかという事です。

処理水の放出は24日だそうで、放出しないわけにはいかないのです。口癖の「丁寧に説明」と言ってもそれで漁業者が「ああ、そうでしたか」と納得了解することはないでしょう。

海外を見れば、中国は。わざわざ「核汚染水」と呼んで、日本の魚は買わないと言っていますが、自分のところの原発の排水の中身は棚に上げていますから、これは嫌がらせで、放射能の問題ではなく、日中友好努力の欠如の問題でしょう。

今回の事の起こりは岸田さんが「自分の責任で自分が決めます」みたいなん事を言う「癖」のせいのような気がするのです。

人畜に害のない「処理水」か有害な〔汚染水」かというのは、岸田さんには全くわからない事でしょう。自信をもって安心できると言っているのは、IAEAが検査の結果「問題ありません」と言ってくれている事の伝言でしかないのです。

地球表面には、人類の生存に害がない程度の自然放射能が常に存在します。IAEAの判断の最大の基準は自然放射能よりどの程度低いかが基本でしょう。

処理水に含まれる多様な放射能について調査し、結論を出すことは、総理にも内閣にも不可能ですから、IAEAに頼るしか方法はないのです。
やはり世界の権威を集めた研究機関のお墨付きを頂くしかありません。

ならば、「お墨付きを頂きました」、そこまでの排水処理の努力を日本はしました。と報告すること以上のことは出来ないのです。「私が決めて・・・」みたいなことを言うので、相手はIAEAではなく岸田総理という事になるのです。

「世界で最も権威あるIAEAに認められていますから、私はそれに従って行動して誤りはないと考えています。以上」で良かったのではないでしょうか。

本当の総理の仕事は、「この事故に学んで、日本の原発政策をどうするか、悪化している中国との友好関係を如何に改善するか」といったものではないでしょうか。

日本は、改めて民主主義を大事にしましょう

2023年08月22日 14時27分59秒 | 政治
78年前、日本は310万人以上と言われる犠牲者を出し、国土の大部分を廃墟にされて太平洋戦争に敗戦するという巨大は犠牲の後にようやく軍部独裁という暗黒の時代を卒業し、民主主義国という、より進歩した文化を持つ社会の仲間入りをしました。

人間が生きる価値への認識が180度変わる体験を日本人はしたのです。当時、国民学校の6年生だった私も、この価値観の大転換から多くのことを学び、選挙権はありませんでしたが,やっぱり人間社会には民主主義が相応しいと理解して来ました。

その思いからでしょうか、選挙権を得てから今日まで、選挙で棄権したことはありません。今でも民主主義の制度としての根幹は選挙にあると考えて、より良い民主主義社会を求めるならば、投票は最も基本的な義務と考えています。

戦後、日本人はこうした意識からでしょう、選挙の重要さを真面目に考えていました。代表的な選挙である衆議院の選挙で見ますと投票率はほぼ70%台で推移しています。

しかし残念ながら、70%台という投票率は平成2年の総選挙で終わりました。その後の投票率は急落、平成8年には60%を切り、平成26年には53%と最低を記録、その後は50%台に定着してしまったようです。

「昭和は遠く」などと言いますが、民主主義、選挙、投票といった、日本の国づくりの基本認識についても、「思い出の時代」になってしっまったのでしょうか。

日本の民主主義は、日本人自身が常に育てていかなければならないものです。手抜きをすれば容易に劣化します。
マスコミでも、飲み会でも、政治批判は絶えません。その責任は政治を批判するマスコミや国民自身にあるのです。

投票率の低下は、象徴的に、日本人の「民主主義こそが大事」という意識の劣化が齎したものなのでしょう。

このブログでは「民主不義の『トリセツ』が必要な時代」を書きました。今年5月には「日本の民主主義はかなり重症?」を書きました。

政治家を批判してみても、考えてみればそれを選んだのは国民であり、棄権者は結局は投票しない事で、そうした政治家の当選を助けるというマイナスの役割を確り果たしているという事なのでしょう。

しかし、時代は昭和ではないのです。「昭和の人は真面目だったんだね」と回顧する令和の時代なのです。

先日、「投票率が高まる名案を考えたら」と言われたので・・・、
「投票率の最低ラインを決めて、そこに達するまでは毎日が投票日とする」
これでどうでしょう。

このままでは景気は腰折れか?

2023年08月21日 11時23分35秒 | 経済
岸田総理は訪米から帰ってすぐに、福島へ。お忙しい事は解りますが、国内の重要課題である景気の先行きに蔭りが出て来ている事にお気づきでしょうか。

政府と日銀の関係がどうなっているのか解りませんが、日銀も消費者物価の上昇には「注視」だけのようですし、政府は、4-6月の四半期GDP速報が年率6%の成長で気を良くしているのでしょうか。

確かに昨年は、コロナ終息の予測の中で、消費の活発化が見られましたが、今年に入っては物価上昇に食われて連続のマイナス化、家計は財布の紐を締め始めたようですが、物価の方は今後、公共料金(電気など)や10月予定の一斉値上げの予告など、生活必需品を中心に値上がりが続きそうです。

春闘賃上げがこれまでより多少高かったのも、最低賃金の4%上昇と物価上昇の深刻化で、霞んでしまったような感じです。

更に加えて円安が異常な進み方で、これが物価上昇圧力になる可能性が高く、日銀は円安を放置、輸出関連企業は為替差益で増益かも知れませんが、それがすぐ賃金に還元されるわけではありません。

円安の異常進行を一時的と見るか基調変化の部分もあると見るか、日銀は無言ですが、このままいけば、アベノミクスの初期、円安で景気回復と思われましたが、結局消費不振で「幻滅のアベノミクス」だったのと同じことになりそうです。

今回はそれに加えて物価も日本としては異常な上昇傾向で、家計はすでに、生活防衛に舵を切り始めているようですから、景気の腰折れは一層早い可能性も出て来ます。
日銀の物価は早晩沈静という予測は、そのままで良いのでしょうか。

円安の時はその分だけ日本の国際競争力が自動的に強くなるわけですから、その分賃金も引き上げないと消費需要不足から景気は良くならないのです。

それに加えて、輸出大企業の収益が、自動的に高まり、企業の財務体質は改善するのですがPBRが低くなって、海外投機資本から文句が出るのは昨年来経験済みの事です。

ついこの間やったのと同じ失敗を繰り返すのは、あまりにも情けないのですが、賃上げは来春闘が来ないと上がりませんし、物価上昇は続きそうな気配です。後は円安がどこまで続くかですが、これは日銀の金利政策(口先介入も含めた)次第でしょう。

日銀は、ここで金利を上げて円安を早期に解消するといった事には、それが景気の腰折れにつながると恐れるかもしれませんが、それは何処まで円高にするかというテクニークの問題でしょう。

若しかしたら、政府も日銀も、アメリカが何というか気にしなければならない立場なのでしょうか。日本は日本独自の都合で、金融政策を取っていいのではないでしょうか。
もともと今回の円安は、アメリカのインフレ抑制から発したもので、アメリカの勝手な都合で、他国に迷惑をかけているのです。

4-6月のGDP速報で見ましたように、日本経済は急速に元気をなくしています。岸田さんは、何かというと補助金を出しますと言って、支持率を継ぎ止めようとしているようですが、何故か基本的な考察がお留守のような気がして、心配です。

人類分断への道か? 共存への道か?

2023年08月19日 15時10分12秒 | 国際政治
アメリカ、韓国、日本の3国のトップが集まるサミットで岸田総理は勇躍ワシントンに出発し、3国の関係を更なる高みに引き上げることで一致したようです。

バイデン大統領のアメリカ主導のアジアの安定の枠組みが今後どう展開するのかは解りません。おそらく、米中会談がその方向を決めるのでしょう。

しかしアメリカとしては、中国の隣国で、民主主義国である韓国と日本の動きが、米中会談にも大きな影響を持つと考えるのが当然でしょう。

今回の3国サミットでは、首脳級会合の定例化、連絡網の強化といった、情報共有システムの基本的な枠組みで一致したのに加えて、高性能ミサイルの共同開発や、北朝鮮のサイバー攻撃に対する対応といった具体的のものもあるようです。

三首脳は、キャンプ・デービッドにあるバイデン大統領の山荘で行われ、その結果については「キャンプ・デービッド原則」や「共同声明」としてまとめるという事ですが、名前の付け方については、アメリカ側も、かなり気を使っているようです。

米国での報道では、サミット事務局によれば、これは3国の軍事同盟や共同防衛へのコミットメント(公約)ではなく、エンゲージメント(約束)と言っていたとのことで、秋に実現を希望している米中首脳会談なども踏まえ、「米中は競争関係」とも言っているバイデン大統領の気遣いの反映かとも思われます。

アメリカとしても、プーチンはどうにもならないが、習近平はまだ、話せば解る可能性もあるだろうし、アメリカの多くの巨大企業が、いかに中国の労働力を利用しているかもわかっているはずです。

また中国にしても、アメリカは最大の輸出相手国であるし、アメリカと種々トラブルを起こしながらも、アメリカと付き合う事で得るものは沢山あるという現実は認識しているでしょう。

どう考えても、アメリカと中国を分断することは、米中双方にとって、圧倒的にマイナスの方が大きい事は解っているのではないでしょうか。

同じことは日中関係についてもいえることでしょう。中国はその歴史に見るように権謀術策の国ですから、競争の中では、優位に立つような多様な術策を使うでしょう。
しかし決定的にマイナスになることは避けるという認識はあるでしょう。もし、そうした認識から外れるとすれば、それは習近平の年齢による焦り ではないでしょうか。

台湾併合という(プーチンにも共通な)旧領土への郷愁が、独裁者の地位が長くなるともに強くなり、逆に残された時間は限られてくることで、常軌を逸する判断と行動の可能性が出て来る事は有り得るかもしれません。

常識は「共存」を判断し、年齢と独裁者という地位が「分裂」をあえてする、という情景が、ロシアにおいては明確になり、中国についても心配され始める、というのが「習近平3選」以来の今日ではないでしょうか。

「家康どうする」ではありませんが「習近平どうする」、「バイデンどうする」そして「岸田どうする」で、脚本を書くのは、独裁国では「独裁者」、民主主義国では「国民」という筈ですが、さて日本はどうでしょうか。

7月消費者物価、インフレ心理収まらず?

2023年08月18日 12時16分33秒 | 経済
今朝、総務省統計局から2023年7月度の消費者物価指数が発表になりました。
このブログでは毎月の動きを見ていますが、今年に入って一層高まってきた生活必需品関係のインフレマインドは収まる気配がないようです。

マスコミの報道では対前年上昇率3.1%とし、昨年8月以来3%を超えたままといった上昇を強調するものと、6月の3.3%から0.2ポイント下がったと指摘するものとあります。

3.1%という数字は「生鮮食品を除く総合」で、「総合」は3.3%の上昇で6月とかわらず、「生鮮食品とエネルギーを除く総合」は4.3%の上昇です。
7月は、生鮮食品が高値で、電気・ガスなどのネルギーが下がったことを反映しているとの説明ですが、昨年来の3指数の動きは下図の通りです。

「生鮮を除く総合」(赤)と「総合」(青)お天気や漁獲量、鶏卵などの価格の動きで差がでるわけですが、通常は大体並行しています。6月は同じ3.3%の上昇でした。

    消費者物価3指数の対前年上昇率(%)

                     資料:総理府「消費者物価指数」

問題は、「生鮮とエネルギーを除く総合」(緑)の動きで、この所、青と赤はほぼ横ばいですが、緑はなかなか上昇が止まらない事です。
緑の線は、輸入エネルギー価格の変動や、気象状況による生鮮食品の市況の影響も受けない、国内の一般的事業活動による物価の変動とみることが出来ます。

アメリカでも、食品とエネルギーを除く総合」という指数が発表されていて、これは消費者物価の核心という意味で「コアコア」と呼ばれています。
アメリカのコアコア指数は一時7%近くまで上がって、FRBがインフレを抑えるべく金利を大幅に引き上げたことはご承知の通りです。

7月のアメリカのコアコア指数は4.7%に下がっていますが、FRBは、まだインフレ心理は収まっていないと金利引き上げの姿勢を維持、お蔭で異常な円安になり、日銀も困っているようですが、日本のコアコア指数が4.3%になっても日銀はインフレと言いません。

多分、日銀は、日本の場合は一時的なもので早晩自然に収まるという見方のようですが、もう日本の消費者物価が上昇を始めて、1年半以上になって、日本のコアコア指数は上昇傾向を維持しています。10月には、また日用品の一斉値上げがあるようです。

消費者物価の3指数全体の長期の動きは下図の通りです。

       消費者物価3指数の推移(2020年=100)

                     資料:上に同じ

 上がるのが少し遅れた分、緑の線は上がり続けるのかもしれません。それにしても、そろそろ安定方向に転じるはずと思っていますが、コアコアの中でも生活必需品は10%前後の上げ幅を続けているのを見ますと、一部にインフレマインドが生れている可能性なしとしません。(円安定着ならインフレ・賃上げ容認という政策もあるわけですから)


このままでは、賃金が多少上がっても、物価上昇に食われてしまう状態ですので、政府の公共料金政策も、日銀の金利政策も、的確な対応を早期に国民に周知する必要がるように感じるところです。

今年の8月15日、今年は2つの問題点が

2023年08月17日 12時30分09秒 | 国際関係
今年の8月15日、今年は2つの問題点が
終戦の日を2日過ぎました。今年も8月15日を中心に、「戦争」についての沢山の記事、解説、意見などが報道だれました。

既に1年半になるウクライナへのロシア侵攻による悲惨な現実を背景に、戦後78年、平和憲法のお陰もあって、戦闘行動は行わず、平和を享受出来た日本でも、新たに2つの問題への指摘が多く見られたような気がします。

1つは、「戦後」という常用語に加えて、「戦前」という言葉が混じって来た事です。
しかも、最近の「戦前」は太平洋戦争前の「戦前」ではなく、今日現在が「戦前」だという意味なのです。

典型的、象徴的には麻生太郎氏の「戦争の覚悟」が必要という発言に見られるような、新たな戦争を予感させる「新し戦争の前の時期」という意味です。

つい昨年までは誰もそんな事を考えなかったのではないでしょうか。それが、日米の集団的自衛権という盟約が、台湾有事という「現実的可能性」と結びついた時、急速に広く意識されるようになったのです。

そして日本政府は、沖縄の南西諸島のミサイル基地化を進め、大量の防衛装備をアメリカから購入することを決めています。
これが、戦争を抑止する効果を持つのか、戦争を招き寄せる効果を持つのか、日本人すべてが、その判断をしなければならない立場に立たされているのです。

もう一つは、戦争の中での必然である「殺戮」についての被害者だけでなく、加害者の意識、精神状態、その経験と人間性の問題などについての報道や意見です。

今迄はこの忌まわしい問題を正面から取り上げることは何か控えられていたところもあったようですが、今年は、この問題に正面から取り組む報道が、かなり多かったような気がします。

戦争は殺戮を伴います。それは個々、具体的な現実としては殺人です。通常の人類社会では決して認められる事のないその行為を戦争は常に容認するものなのです。

しかし、戦争の中とはいえ、人間がそうした行為をした時、それが、人間の心・精神にいかなるトラウマを齎すかといった問題も含めて、真剣な記事や論調が多くみられました。

ロシアの核による脅し、ウクライナでの悲惨な現実に触発された面も大きいと思われますし、ミサイルや無人機といった、人間が直接手を下さない遠隔殺人の問題も意識した、人間の本源的な意識の表出のようにも感じられます。

これは世界人類共通の大きな課題ですが、過去の戦争の結果に学び、平和憲法を掲げこの78年間戦闘行為を行っていない日本人にとっては 、特別に重要な問題でなければならないのではないでしょうか。

21世紀の今日、戦争というのは、ごく少数の異常な精神構造を持った人が、偶々一国のリーダーになったというケースしか起こりえないような人類社会になりつつあるのではないでしょうか。

国連を始め人類の組織も個人も、こうした極く少数な危険な事態を、あくまで平和的な手段によって解決に近づけるような知恵と努力を、協力して作り上げなければならないのでしょう。

特に平和憲法を掲げる日本のリーダー、それを選ぶ日本国民は、戦争の不条理と結果の悲惨さを徹底理解し、かりそめにも「戦争」などという言葉は使わず、平和維持という人類の王道の中で、問題解決に率先努力する選択と行動を心がけるべきではないでしょうか。