tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

金利の機能する経済に向かって

2024年09月21日 13時55分33秒 | 経済

日本は長い間のゼロ金利で、貯金するのは減らさないためという意識が一般的になっています。

実はインフレ分だけ目減りしているのですが、下手に株や投信に手を出すと大きく減ってしまう可能性が大きいと恐れる人が多いようです。

そうした意識の結果は日銀の資金循環表に出ています。マスコミも家計の貯蓄2200兆円と言い。政府は株や投信への投資を推奨しますが、この2200兆円のうち、1100兆円は現金・預金(タンス預金含む)です。証券投資は4.6兆円です。

ところで、この1100兆円にやっと利息が付き始めました。

日銀の目標は差し当たって短期金利0.25%ですが、金融機関の中では定期預金0.5%、中には0.75%、1%をキャンペーン利息などとするところも出てきました。

銀行の場合は元本保証、確定金利です絶対安全です。

もう少し利息が高くならないかなと思う人も多いと思いますが、日銀は、急がないけれども、そうして行こうという考えを明確にしています。

これが金融正常化の方向です。もともと資本主義というのは金利の概念が一般化したから発展したのです。倹約して貯蓄をすれば、その金は、カネがないが仕事(ベンチャー)をやりたい人が借りて仕事をして経済が成長するという循環が生れたからです。

この循環をうまく回るようにしたのが銀行だったのです。

昭和恐慌の時代には乱立した銀行がバタバタ潰れて大変でしたが、銀行は潰れない、たとえ潰れても預金は保護されるというシステムが出来て、日本の戦後の高度成長は可能になったようです。

さらに資本主義が発展すると、景気が過熱すると金利を引き上げ、不況になると金利を下げるといった経済政策も一般的になり、銀行というシステムは大変重要なものになりました。

ところが、日本ではアベノミクス以来「ゼロ金利」ですから、金利を上げて景気を冷やすことはできますが、金利を下げて景気を良くすることは出来ません。正常な金融政策が取れないのです。

金利を下げる事が出来ませんから、景気テコ入れのためには政府が財政支出を増やすしかないので、結局、政府が日銀から金を借りてバラマキをやることになります。

銀行は経済活動を活発にする目的で資金を提供しますが、政府は選挙の票田に肥料(国家予算)を撒くのが主な目的ですから、経済効果は全く違います。これも、日本経済が成長しない理由です。

ということで、金利の正常化は極めて大事ですが、更に大きな利点もあります。

家計の貯金1100兆円に3%の利息が付けば3.3兆円の利息が貯蓄をしている家計に支払われます。これが消費支出に回れば、家計最終消費支出は300兆円ですから消費支出が1.1%増えます。一時的ではなく恒久的ですから、消費不振脱出の大きな力になります。因みに今年度の政府経済見通しの消費支出の伸びは1.2%です。

年金が心配だと2000万円貯蓄していれば、金利3%なら年に60万円の利息が付きますから、税金を取られも、月5万円近い安定収入があるのです。

日銀には「ゆっくり、確り」金利のある経済への復帰を進めてもらいたいものです。


8月消費者物価指数、基調は安定へ

2024年09月20日 14時51分19秒 | 経済

今朝、総務省統計局から2024年8月の消費者物価指数が発表になりました。

結論から言うと、現状、日本の消費者物価指数は安定基調で、それを乱しているのが政府の場当たり的な補助金政策と地球温暖化による異常気象だということです。

アメリカでは、雇用統計と消費者物価指数がFRBの金融政策を左右する主要な統計ということになっているようですが、それはこの2つの統計が、アメリカの実体経済の現状を反映すると、関係者みんなが理解しているから成り立つのです。

アメリカが立派ということではありませんが、経済関係の統計などはなるべく本来の経済の動きを示してくれた方が経済状態を理解するためには好都合でしょう。

ということで、発表になりました8月の消費者物価指数を見てみましょう。

マスコミは前年比2.8%の上昇としているものが多いようです。これはこの所、政府が消費者物価指数の「総合」の数値ではなく「生鮮食品を除く総合」の数字をメインの数字として使っているからのようで、「総合」は3.0%です。

   消費者物価指数対前年上昇率(%)

このところ天候不順などで生鮮食品や生鮮魚介や鶏卵の価格が上がっていたので、低い方にしたのでしょう。

政府は数字が低い方がいいと考えるのでしょう。政府が補助金を出して物価をさげたりします。エネルギーの価格が上がったとき石油元売りなどに補助金を出して、ガソリン、電気料金、ガス料金を下げました。  

上のグラフで見ても2023年の2月から2024年1月にかけて、青と赤の線が大きく凹んでいるのが解ります。その時説明しましたように、政府の補助金で電気・ガス料金が下げられたけっかです。

緑の線は上に膨らんでいます。青・赤の線はエネルギー料金が入っていますから下がっていますが、緑の線は「生鮮とエネを除く」ですから補助金の影響はなく、本来は緑の線の上に青・赤の線が来ているはずなのです。1年たつと対前年上昇率は本来の位置に戻り、また上昇を始めます。政策で統計が歪んでいます。

緑の線は、エネルギーと生鮮食品を除いていますから国内の正常な経済活動による物価の動きということで「コアコア指数」などといわれますが、これはこのところ下げてきて2%になりました。日本経済自体によるインフレは2%程度になったということでしょう。

8月の物価上昇は、補助金の期限切れ、電気代26%、ガス代11%、それに生鮮の野菜・果物の12%と0%の上昇によるものです。うるち米の30%の上昇は緑の線に含まれていますから、農政の不具合によるコメの値上がりがなければ緑の線も0.1ポイントほど下がっていたでしょう。

下のグラフは原指数の動きですが、次第に、もう少し緩やかな上がり方になるように思います。

   消費者物価指数の推移


8月消費者物価指数、基調は安定へ

2024年09月20日 14時49分03秒 | 経済

今朝、総務省統計局から2024年8月の消費者物価指数が発表になりました。

結論から言うと、現状、日本の消費者物価指数は安定基調で、それを乱しているのが政府の場当たり的な補助金政策と地球温暖化による異常気象だということです。

アメリカでは、雇用統計と消費者物価指数がFRBの金融政策を左右する主要な統計ということになっているようですが、それはこの2つの統計が、アメリカの実体経済の現状を反映すると、関係者みんなが理解しているから成り立つのです。

アメリカが立派ということではありませんが、経済関係の統計などはなるべく本来の経済の動きを示してくれた方が経済状態を理解するためには好都合でしょう。

ということで、発表になりました8月の消費者物価指数を見てみましょう。

マスコミは前年比2.8%の上昇としているものが多いようです。これはこの所、政府が消費者物価指数の「総合」の数値ではなく「生鮮食品を除く総合」の数字をメインの数字として使っているからのようで、「総合」は3.0%です。

 

 

このところ天候不順などで生鮮食品や生鮮魚介や鶏卵の価格が上がっていたので、低い方にしたのでしょう。

政府は数字が低い方がいいと考えるのでしょう。政府が補助金を出して物価をさげたりします。エネルギーの価格が上がったとき石油元売りなどに補助金を出して、ガソリン、電気料金、ガス料金を下げました。  

上のグラフで見ても2023年の2月から2024年1月にかけて、青と赤の線が大きく凹んでいるのが解ります。その時説明しましたように、政府の補助金で電気・ガス料金が下げられたけっかです。

緑の線は上に膨らんでいます。青・赤の線はエネルギー料金が入っていますから下がっていますが、緑の線は「生鮮とエネを除く」ですから補助金の影響はなく、本来は緑の線の上に青・赤の線が来ているはずなのです。1年たつと対前年上昇率は本来の位置に戻り、また上昇を始めます。政策で統計が歪んでいます。

緑の線は、エネルギーと生鮮食品を除いていますから国内の正常な経済活動による物価の動きということで「コアコア指数」などといわれますが、これはこのところ下げてきて2%になりました。日本経済自体によるインフレは2%程度になったということでしょう。

8月の物価上昇は、補助金の期限切れ、電気代26%、ガス代11%、それに生鮮の野菜・果物の12%と0%の上昇によるものです。うるち米の30%の上昇は緑の線に含まれていますから、農政の不具合によるコメの値上がりがなければ緑の線も0.1ポイントほど下がっていたでしょう。

下のグラフは原指数の動きですが、次第に、もう少し緩やかな上がり方になるように思います。


見えて来たアメリカの金利政策の方向

2024年09月19日 14時26分52秒 | 経済

アメリカの中央銀行FRBの9月の金融政策決定会合(FOMC)が終わり、政策金利の下げ幅は0.5%と決まって、思惑で揺れた金融市場も当面落ち着くことになりそうです。

基軸通貨国であるアメリカの政策金利の動向は、世界中の為替レートに影響を与えることになります。特に経済関係が多様に入り組んでいる日本の場合は、いろいろな面で大きな影響を受けることになりますから、目が放せません。

勿論、実体経済への影響が大事ですが、アメリカの政策金利が、即座に影響する為替レート、その影響を受けるマネーマーケットなども大変でしょう。その関係者は発表前から、情報を集めシミュレーションし、勝ち筋を狙うのでしょう。

今回のFOMCの政策金利の引き下げは0.25%か、0.5%かに絞られていましたが、0.5%に決まったことは、FRBは、アメリカ経済の活発化、雇用の安定といった積極面に対する強い意識の表れでしょう。

ただ、パウエルFGB議長は、今回の大幅引き下げは、今後についても大幅引き下げを示唆するものではない、11月のFOMCは今後の雇用指標、物価指標といったデータ次第で0.5%もありうるし0.25%もありうるといった 微妙な発言で FRBの現実的な態度を示すとともに、無用な憶測や思惑排除にも対応しているようです。

しかし、今回の思い切った政策金利の引き下げで、アメリカ経済の対する積極的な態度を明確にしたことで、基本的な政策方針は、アメリカ経済の順調な成長という視点にあることは理解されてのではないでしょうか。

もともとアメリカは経済活動が活発な国で、インフレ率は高めというのが体質のようです。そしてその方が雇用にとっても望ましいので、インフレ含みの経済成長という選択はあったのではないかと思うところです。 

アメリカの目指す2%インフレというのは、その理想形という理解なのだといった気もします。その意味では、イエレン財務長官が指摘していたように、すでにアメリカはインフレ抑制に成功して、軟着陸を果たしたとみてもいいのではないでしょうか。

そういう事であれば、今後のFRBの金利政策は、物価と雇用といった経済指標に即してキメ細かく運用していけばいいので、パウエルさんの言われるようにデータ次第ということになるのではないでしょうか。

翻って日本を見たとき、日本は,長年の異常なゼロ金利政策から、金利の正常化を進めなければならないという、経済と金利のアンバランス是正の要請の中で、意図的に政策金利の上昇を続けなければならないという困った状況の中にあります。

既に、8月の誘導金利の引き上げ(0.1%→0.25%)では雇用市場の株式の乱高下がありました。日銀は、マネーマーケットの混乱がないようにと繊細は注意を払いながら政策発表をしたようですが、マネーマーケットは過激な反応を示しました。

9月にはアメリカが金利を引き下げるという思惑と考え併せての神経質な反応になった面もあるでしょう。

そのアメリカの政策金利の動きが少しは解り易くなったということでしょうから、今後の日銀の政策決定は少しはやり易くなるのかもしれません。

実体経済に資し、マネーマーケットを混乱させない巧みな舵取りを望むところです。


国民の経済活動、日米の違いを考察すれば

2024年09月13日 22時53分11秒 | 経済

アメリカのインフレが収まってきてアメリカの消費者物価指数の観測をやめていましたが、久しぶりに昨日のブログでアメリカの消費者物価指数の動きを見ました。

日本の消費者物価指数の動きは、ずっと追い続けています。

アメリカの消費者物価指数の動きを久しぶりで見たのは、FRBが雇用の統計と消費者物価指数の統計に極めて敏感で、それによって政策金利の下げ幅を決めようとしているからです。

雇用の増加が大きければ、求人難から賃金上昇の可能性が高い、賃金が上昇すれば、それは物価を押し上げる圧力になり、賃金・物価のスパイラルの可能性が出てくる。

賃金インフレの激化は絶対に避けなければならないということで、金利引き上げを続けて来て、やっとインフレが収まって来たと見ているのに、ここでまたインフレでは困るというのはFRBにとっては当然でしょう。

インフレが上手く収まれば、0.5ポイント政策金利の引き下げで景気を刺激、未だインフレの兆候があれば0.25ポイントにするかといった具合に、景気は悪くしたくないが、インフレになるのも困るというのが悩みでしょう。

その決定会議であるFOMCの関係者の中にも0.5ポイント支持と0.25ポイント支持がいるようで、それぞれの発言をするもですから、どちらに賭けるかという国際投機筋の動きもあって、世界中が右往左往です。

というわけで、アメリカの消費者物価指数の動きを見ますと昨日のブログのように物の値段は下がりサービス料金は上がっていますから、物価上昇は人件費つまり賃金の上昇が主因ということが解ります。

多分FRBは賃金の上昇が消費者物価指数を2%以上押し上げるようなら、政策金利の引き下げ幅は小さくし、賃金上昇がぶり返さないようならば、インフレはひどくならないから少し大幅に金利を下げて景気のテコ入れをと考えているのでしょう。

ところで日本の場合はどうでしょうか、日本では賃上げは春闘方式ですから、今年の分はもう決まっていて、変化するのはボーナスと残業ですから、消費者物価指数への影響はもうほぼ決まっているのです。’ボーナス・残業は変動費のような部分ですから消費者物価指数にはあまり影響はないでしょう)

春闘の結果は多少高めでしたがそれが賃金インフレを起こすようなものでないことはほぼ読めていて、実質賃金の対前年同月マイナスが消えるかどうかぐらいでしょう。

アメリカならインフレの心配はないから金利大幅下げでもいいかなという状況ですが、日本の問題はアメリカとは全く違って、ゼロ金利で人手が不足でも賃金が上がらないという病気ですからFRBのような金利政策の打ちようがありません。

代わりに金融正常化という経済学の基本問題が日銀の課題ですが、雇用情勢と賃金の関係が経済学の法則通り動かないという病気が治らないと、金融政策は半分しか意味を持たないのです。

人手不足になれば、賃金が上がって、インフレになり、インフレ抑制が必要になって金利を上げる、金利を上げれば不況になって、人手不足が解消するから賃金が上がらなくなりインフレは収まる。そこで金利を下げれば企業活動は活発になって、人手不足になって賃金が上昇しインフレになる、そこでインフレをおさえ・・・、という循環の山と谷を出来るだけ平準化するという金利政策の役割が回らないのです。

これを直すためには何が必要かですが、必要なことはもうお判りでしょう、人手不足になったら、企業は賃金を引き上げて、物価も上げることです。

アメリカでは,労働運動が賃上げをやりますが日本では労働運動がやらないので、企業がやらなければなりません。

そうすれば副産物として、家計の消費支出が増えて、今一番困っている「消費支出の伸び悩み」も解決し、少しインフレになって、日本経済の順調に回るようになるでしょう。


アメリカの消費者物価と日本の株価

2024年09月12日 16時55分18秒 | 経済

アメリカの消費者物価指数と日本の株価に直接の関係があるわけではありませんが、間接的には大変な関係があることもあります。

今日の日本の株式市場は大変堅調で、日経平均は一時1200円を超える上昇です。このところずっとアメリカの中央銀行であるFRBが来週には政策金利を引き下げることが確定的とみられていて、そうなると日本株は下がらざるを得ないということで、元気だった日本の株式市場も、下げ続ける状況になっています。

ところが昨日アメリカの8月分の消費者物価指数が発表になったことをきっかけに、今日の日経平均は大幅の上昇になったわけです。

先日は、アメリカの雇用の増減が日本の株価に影響するという点にも触れましたが、今度はアメリカの消費者物価指数です。

ことほどさように、アメリカ経済の一挙手一投足が日本の株式市場に影響するということですから、アメリカの消費者物価はどんなことになっているのか改めて見てみようということで、その動きと主な内訳も見てみました。

(グラフが見にくくて済みません 資料:アメリカ労働省

日本の7月の消費者物価指数の対前年上昇率は2.8%で、その中で日本経済固有の原因によって動くコアコア指数の上昇率は1.9%と政府、日銀の目標とする2%インフレを漸く割り込んできました。 

アメリカの8月の消費者物価指数の対前年上昇率は2.5%で日本より低いのですが、2か月連続で前月比0.2ポイントの上昇が続いて沈静化の動きがないということのようです。

中身をみますと、はっきりしているのは今のアメリかはモノの価格は上がらないが、それに引き換えサービスの値段は上がっているという事実です。

家内食は安上がり、外食は高い。燃料やガソリン価格が下がっても電力やガス料金は上がっている。全体的に商品は下がっているが、サ-ビス料金は上がっているということで、消費者物価指数上昇の原因は人件費ということになるのでしょう。

結果的に、アメリカのコアコア指数、「食料とエネルギーを除く総合」は前年比3.2%の上昇で、前月比では0.3ポイントの上昇で前月より0.1%の加速ということです。つまりこれは賃金インフレの再燃の恐れを示唆するという判断につながるのでしょう。

賃金インフレ加速の恐れがあれば、金融をあまり緩めるわけにはいかない、18日に決まる政策金利の引き下げは小幅なものにすべきだろうということになりそうというのです。

元々生先金利を0.5ポイント下げるか0.25ポイントにするかで議論になっていて、インフレマインドを止めるためにも0.5%という予想が一般的だったのですが、昨日の消費者物価指数の発表で風向きが急変です。

引下げが小幅になれば、日米の金利差は予想ほど縮まりません。金利差縮小が小さければ、円高への影響は小さくなり、円高が急には進まないというのでれば、日本の輸出産業のうける痛手は当然軽くなります、というわけで、電機や自動車などの企業の株価は上がるという因果関係の連鎖を読んだ予測で株価は動くようです。

それにしても、日本は、アメリカのお蔭で、いろいろと大変ですね。


アメリカ経済は落ち着いてきたようですが

2024年09月07日 13時59分23秒 | 経済

アメリカでも日本でも投機筋などが特に注目をしていた8月の非農業雇用者数の増加が6日(日本の昨夜)発表になりました。

数字そのものは14.2万人増と結構な数字ですが、マスコミの報道では数字などは書かずに「市場の予想より低かった」とだけ書いているところもありますように、市場の予想に比べて高いか低いかが問題だったようです。

市場の予想はたいていが投機筋の調査機関などによるものです。投機筋は、FRBが9月に利下げをすることを望んでいて、それもパウエル議長が以前言っていた0.25%ではなくて0.5%の方が景気刺激、株価上昇の環境としてはいいわけですから、多少高めの予想をしたくなるでしょう。

失業率の方は4.3%まで行ったのが4.2%に下がってきて、アメリカの雇用情勢が悪化とはいえないようですが、これで一応9月の政策金利の引き下げが大幅(0.5%)になる確率が高くなったということで満足でしょう。

日本にしてみれば、アメリカがより大幅な金利の引き下げの可能性ということで、円高が141円台まで進み、この間までの日経平均40000円越えの騒ぎは当面「過去の話」となりそううで、すべてはアメリカのご都合次第ということです。

アメリカ政府としても、ドル高は都合のいい面もありますが、株価の上昇は大統領選の最中でもありアメリカ経済は順調と言うためにも歓迎でしょう。

前FRB議長で現財務長官のイエレンさんは、雇用の伸びも順調、失業率は低下でアメリカの雇用は健全という見方をしているようです。

それでは日本の方はどうかと言いますと、日経平均40000円で止まらず、50000円もあるなどといった、ついこの間までの論調は何処へやら、円高が140円で止まるのか、アメリカの年内の更に0.5%引き下げもあるなどの論調に対して、日銀も利下げで対抗などという余地もないので、甘んじて投機筋の作る円高を受け入れということになるのでしょう。

思い起こせば、りーマンショックの時も、アメリカのゼロ金利で円レートは80円になり、日本経済に生死の境の数年間を齎しました。アメリカの金利政策は恐ろしいです。

今回は、アメリカが勝手に賃金インフレをやってFRBはその抑制に政策金利の引き上げを重ねた結果投機筋はここぞと円安を演出、日本株を異常に吊り上げ、日本政府も「貯蓄から投資へ」と提灯に火をともして浮かれましたが、後始末をするのは国民です。

アメリカが景気対策で政策金利を動かすと予想されたら、日本は直ちに円レートへの影響、それも投機筋の好む過剰な反応を考慮の上,積極的に対応を考える必要があるというのが、度重なる経験の教えるところでしょう。

今回の場合は、未だ円レートは141~2円ですが、9月19日ですか、FRBの政策決定でどうなるかを読むのは簡単ではないでしょう。

141円というレベルは日銀「短観」で企業は予測しているところですし、今回のごたごたの発生前は110円前後でしたから、日本企業の抵抗力はリーマンショックの時とは大違いでしょう。

折しも日本経済は再生の緒に就いた段階で、これまでの経験を産業労使も適切に生かし、官僚を含む政府全体が誤りのない舵取りに専念する必要があるようです。

アメリカについていく限りは避けられないことですし、アメリカ自体が、日本のように安定した社会構造や労使関係ではありませんから、これは容易ではないでしょう。

アメリカという大船に追走して、その起こす波に揺れ動く日本丸です。近くに寄るほど危険のようです。


平均消費性向にも慣性の法則が?

2024年09月06日 14時29分10秒 | 経済

昨日は厚労省から毎月勤労統計が発表になり、25か月続いた実質賃金の対前年対価が止まりそうな気配ということを報告しましたが、今日は総務省統計局から家計調査の「家計収支編」の7月分が発表になり、賃金と消費、さらにその延長線上にある景気回復への検討資料が集まってきました。

マスコミでは家計の実質消費支出は3か月ぶりの増だが僅か0.1%といった消費不振を指摘していますが、確かに賃上げ率も高く、ボーナスも多かったにも関わらず消費はあまり伸びていないようです。

7月の二人以上の全世帯の実質消費支出は名目値で3.3%増、実質値では0.1%増ということで昨年は殆んど毎月前年比実質減、今年1月が最悪で実質6.3%の減少から4月は0.5%増加になりましたが、5月、6月は減少で、7月ようやく0.1%の増加という低迷状態です。

毎月追跡している二人以上勤労者世帯の平均消費性向も、少しは変化が出ているかなと思って見ましたが、下のグラフのように、対前年同月比大幅低下で期待には全く答えてくれませんでした。(昨年7月59.7%→今年7月55.0%へ5.7ポイントの低下)

ということで、少し中身を見ようと勤労者世界の可処分所得の増加状況と消費支出の伸び具合を並べてグラフにしてみました。

可処分所得というのはいわば「手取り収入」で、家計調査の場合は、世帯主、配偶者、その他家族の実収入の合計から税金や社会保険料などの天引き分を差し引いたもので、平均消費性向を計算する際の分母になるものです。

その分母で家計の消費支出を割って、%表示したものの集計が「平均消費性向」になるわけです。

今年に入っての状況をご覧いただくと下のグラフです。

 

1月から5月までは、何かあまり変化はありません。大企業関連ではでは4月から世帯主の賃金が上昇という世帯もありますが、前年度で世帯主が再雇用転換とか退職という世帯もあるでしょう。平均値の変化は少ないのです。

ところが6月、7月と状況は様変わりで、青い柱(可処分所得)は、6月は大幅に伸び、7月のも結構伸びています。ボーナスは多くは6月支給ですが、7月支給もあるからです。

これは例年のことですが、今年のボーナスはかなり高かったということです。

それ自体は大変結構なことですが、赤い柱の消費支出の方は、そんなことには全く関係ないようにそれ以前と変わらにペースを維持したままというのです。

まさに「これが今の日本の家計の有り方か!」という感じです。所得が増えても消費は容易に伸ばさない。長年の不況の中で、いかに生活を守るかと身構えた姿勢のようです。

国民の消費生活にも「慣性の法則」があって、これまでのような日本の政治・経済ではまず大事なのは生活防衛」といった意識は、簡単には変わらないようです。如何にして、この堅固な家計防衛の意識をもっと前向きの姿にするかを真剣に考える必要があるようです。

いずれにしても、消費が延びないと日本経済は元気にならないというのがいまの状況です。

「ボーナスや一時金じゃダメ」やはり、月例給が増えるのが必要という声もあります。さらに考えれば、「これからは生活が良くなる時代」という期待を国民が持てれば解決するでしょうという声も聞かれます。

さしあたって、経営者の考え方、そして、国民に安心感を与えるような政府をつくることが必要なようです。


実質賃金前年比低下からの脱出達成か?

2024年09月05日 12時42分15秒 | 経済

今朝、厚労省から2024年7月分の「毎月勤労統計」が発表になりました。

賃金動向に関心の深い皆様は、先月から、さて7月はどうなると心待ちにしていた結果が出ました。

ご承知のように毎月勤労統計で明らかになる平均賃金水準の指数の推移と、消費者物価指数で明らかになる物価動向で、両方の対前年同月変化率(通常は伸び率)を比較して、消費者物価指数の上昇率の方が高ければ、実質賃金は前年同月より下がっているといいう事になります。

経済が成長していれば、賃金指数も、物価指数も上がっていて、賃金指数の上り幅の方が大きいから、その分生活が良くなっているというのが結果ですが、日本の場合は、2022年の4月から2024年の5月まで、25か月連続で実質賃金が前年より下がるという異常状態が続いてきました。

それが今年の6月は企業の収益が順調で、ボーナスが良かったことものあり。やっとプラス6.2%に転じました。

賃上げ率も高かったから7月以降もプラスになるという楽観論もありますが、毎月勤労統計の結果がでないとわかりません。

その結果が今日出たわけで、さてどうだったのかと言いますと、微妙なところです。

今年の7月の対前年7月上昇率の数字を並べてみるとこうなります。

<賃金指数の動き>

賃金給与総額・・・・・・・・3.6%(残業ボーナス含む)

(内特別に支払われた給与・・6.2%)

決まって支給する給与・・・・2.5%(残業含む)

<消費者物価指数の動き>

消費者物価指数:総合・・・・2.8%

(注)消費者物価指数には「持ち家の帰属家賃を除く総合」というのもあって、これは3.2%です。(自宅に住んでいる人も相応の家賃を払っていると仮定しない場合)

さて、これをどう読むかです。7月ボーナスという企業もありますから、現金給与総額は3.6%の伸び率で、消費者物価指数の伸び率の「注」の数字より高く実質賃金上昇という結果です。

ボーナスがないと賃金指数の伸びは2.5%ですから、2.8%引いて、実質賃金は0.3%の低下です。

政府が使ってきた「持ち家の帰属家賃を除く総合」では実質賃金低下幅が0.7%になります。

このブログでは上のグラフのように、「現金給与総額」と「消費者物価指数:総合」を使っていますから6月も7月の実質賃金はプラスです。

このブログでは更なる物価の鎮静を読んで、プラスが続くと見ていますが。新米の高値が当面気になるところです。


戦争をしない方が豊かになれる

2024年08月31日 16時57分32秒 | 経済

8月には、何か戦争に関することばかり書いてきたような気がしますが、今日で8月も終わり。戦争に関わる事から、本来の経済に関わる事への転換をしたいと思います。

人類は戦争を嫌いながら戦争をしてきました。今もしています。戦争の始まった理由は多分、今より豊かな生活をしたいと望んだからでしょう。

そのためには望ましい土地を手に入れなければなりません。それが多くの戦争の始まりだったのでしょう。

長い人類の歴史の中で、そういう時代が随分長かったので、「土地が欲しい」という本能的な欲求が海馬の奥に染みついているのでしょうか、今のロシアもイスラエルも、自分の土地を広げたいということが大きな目的で戦争をしているようです。

ところが時代は変わりました。

今、世界で国民一人当たりのGDPが最も大きい国はルクセンブルグです。金額は13万ドル約1900万円、アジアで最も高い国はシンガポールで約8.5万ドル(約1200万円)(日本は約500万円)です。

ご承知のようにどちらも大変小さい国で、国土面積は、ルクセンブルグが日本の146分の1、シンガポールの国土面積は720㎢(東京都区部は628㎢))です。

今の世界では、豊かさは国の広さとは関係ないことが解ります。

日本もかつては戦争をして支配地域を広げれば豊かになれると考えて太平洋戦争をしたのでしょうが、その結果は、蓄積してきた資産は殆んど灰になり、国土面積は小さくなりました。窮乏のどん底から出発しなおして、馬鹿な戦争をしたと思いながら頑張って、世界第二の経済大国になりました。

何故それが出来たのか、そこには2つほど大きな条件がありました。一つは、その間ずっと平和であったこと、これは最も基本です。

もう1つは、広い意味での経済的な条件の変化です。2つあります。

  • 豊かさは技術革新で実現出来る時代に入ったこと、
  • 国際化、特に貿易の自由化が進んだこと、

勿論平和でないと、こういった条件も進まないわけです。今は、どんな小国でも条件さえ満たせば、いくらでも豊かな国になれることが、「既に現実になっている」という時代に入っていると言ってよいのではないでしょうか。

現生人類(ホモサピエンス)はその発生以来、生きていることの安全確保から始まって、飢えないための採集活動から農業、漁業に進歩し産業革命を経て、技術革新の時代に入って今に至っているのです。

そして第二次大戦以降は、国際的な経済活動の自由化を進め、技術革新で成果を上げれば、そこで稼ぎ出すGDPで、食料でも資源でも買える時代になったのです。

資源のある国は、高度技術を持つ国に資源を輸出することでより豊かになり、それぞれの国が、最適な方法でGDPを創出し、それを自由な市場を活用して取引し、互いに裨益するというシステムに向かって世界経済は発展してきています。

人間の知恵によって進歩してきた世界の経済システムが、人間の望む豊かで快適な社会への進歩に向かう条件の整備に成功して来たということでしょう。

この人類共通の努力を、周回遅れの知識と欲望の保有者が混乱に陥れるのが戦争です。戦争をしないことが豊かで快適な社会への王道なのです。

戦争をしないことが、平和であることが、人類社会をより豊かで快適なものにする近道だと、戦争をする人に教えてあげるのが一番大事なことのようです。


現実に見る「為替介入vs.金利政策」

2024年08月27日 14時33分31秒 | 経済

今日は、日経平均は、下げて始まりましたが、午後になって少し上げているようです。

いずれにしても日経平均40000円などというのは、当面、夢になったようです。

7月10日前後には40000円を越えていました。これはバブルだ、いやまだバブルではない、といった論争もあったようです。

考えてみればあの時も、いずれ、早晩アメリカは政策金利の引き下げをするでしょうし、日本は引き上げをするでしょうという事は、みんな知っていたのでしょう。

でも、それが何時になるか解らないから,その間日本の1ドルが160円近い円安、を利用して、キャピタルゲインを稼ごうという国際投機資本が、40000円以上の日経平均を作っていたのでしょう。

実体経済を担当する企業の経営者たちは、今年度下期の円レートは141円(日銀短観)と回答(平均値)していましたから,いずれ円高になるし、輸出企業の大幅増益もなくなり、日経平均も上がり続けないだろうと見ていたでしょう。

そうした中では、余程の目利きでないと先を誤るようで、これは財務省なども同じのようです。

あの頃の財務省の心配は、このまま円安が続けば、輸入物価が上がり、安定してきた消費者物価も上がって、2%インフレ目標の達成も危ない、実質賃金低下で政府の評判も悪い、円安を止めないとまずいと判断し為替介入に踏み切ります。

タイミングの検討、アメリの理解も必要、など万般を考慮し、数兆円を使って、ドル売り、円買いの介入を成功させます。 

しかし効果は限られていて、現実の結果は数円の円安程度で、時には2~3日でまた戻ってしまうようですが、確かに、国際投機資本を驚かす効果はあるのです。

介入の効果というのは、国際投機資本が自分でもやり過ぎと思いながら相場を作っているような場合には、効果を持つでしょうが、安全なマネーゲームをしていると思っている時は大きな効果は期待できないでしょう。

ところがその直後、日銀が、短期金利の0.25%への利上げに踏み切りました。日銀総裁は、マネー市場にできるだけショックを与えないような範囲で微調整というニュアンスの発表の仕方のようでした。

しかしマネー市場の受けたショックは激甚だったようです。これはマネーゲームの枠の変更ですから、枠をはみ出した取引は成り立たなくなります。それにさらに引き上げもありそうという思惑が働き円レートは今の144円辺り、日経平均は、戻っても38000円台という状態です。

今回の経験は、為替レートを決定的に変えるのは政策金利水準の動き(具体的には日米の金利差)だという事を明示的に教えてくれました。

そして、為替レートの変化は企業収益に影響し、株価(日経平均)を動かすという関連の具体例も見せてくれました。

明らかになったことは、中央銀行の決定する政策金利は、その国の経済の安定した成長の実現のためのものですが、しかしそれは為替レートへ確実に影響するという事です。

金利政策は、為替介入より的確な、為替レート変更の手段なのです。 

ということで、残る疑問は、日本の場合、円安が行き過ぎて困ったとき、財務省は、アメリカに相談したとのことですが、日銀との相談はどうだったのでしょうか。そういうことは秘守事項で、公に出来ないのでしょうか。


FRB金利引き下げへ、日銀は? 円レートは?

2024年08月24日 15時17分03秒 | 経済

米カンザスシティーで恒例のジャクソンホール会議が開かれ、FRBのパウエル議長が、懸案のアメリカの政策金利引き下げにつて、いよいよ9月にはアメリカも金利の引き下げに動く意向を示したようです。

8月には日銀が、マネーマーケットが予期しなかった金利の引き上げを行い、マネーの世界は一時混乱して、一部のマスコミには日銀の責任のように言われたりしました。

ずっと以前から、日本の金利引き上げ、アメリカの金利引き下げは、金融の世界では必然のことと理解されていて、投機筋の思惑が外れただけの話ですが、金融政策担当者にはご苦労なことです。

今度のFRBのパウエル議長の発言でも、即座に円レートは144円と1円以上円高になったりしています。

マネーの世界は9月のFRBの利下げは織り込み済みということのようで、それが0.25%か0.5%かが今後の注目点という事のようです。

勿論。FRBの金利引き下げは、マネーマーケットのためにするのではなくアメリカの景気を安定した健全なものに維持するためです。

インフレ抑制のために金利を引き上げた結果、物価が下がりきらないうちに雇用不振が深刻化しそうで、金利を下げて経済活動を活発にし、雇用を増やそうという事です。

アメリカの住宅業界などは、もうだいぶ前から金利低下を織り込んで新設住宅の販売をし、この夏には新設住宅の需要が伸びて来ているとのことです。

金利政策の本来の目的は、その国の実体経済の安定した発展を目指すものですが、今日のように、経済の国際化が進み、変動相場制で、しかも、金利水準、それに影響されて動く為替レート、そしてその動きを利用してキャピタルゲインを得ようとするマネー経済が巨大な規模という時代では、物事は単純ではありません。

勿論実態経済で動くお金も、マネー経済で動くお金も同じお金ですから、それぞれの国が国民の生活を良くしようという目的でとる金融政策が、他の国の実体経済に大きな問題を生じることもありますし、マネーの動きだけで莫大な利益を上げる国際投機資本が、金融工学を駆使し、変動を大きくしてキャピタルゲイン獲得に動くこともあるのでしょう。

そしてそうしたマネーの動きが、実体経済に大きく影響するというのが今日の世界経済なのです。

具体的な問題として日米間の今後の経済関係を考えますと、アメリカは9月には政策金利を引き下げるでしょう。日本はこれからも政策金利を引き上げて、経済・金融の正常化を図らなければなりません。

出来れば急ぎたいのですが急ぐと,ドルと円の為替レートの変動、具体的には円高ドル安の動きを加速し、それが多様なマネーゲームを誘発し、実体経済済の動きを混乱、場合には破壊するような事態を生む可能性があります。

日銀も8月の金利引き上げで予期せぬほどの為替・株式市場の混乱が生じ、苦労したようです。

アメリカの場合には、より大きな影響を世界に与える可能性があるでしょうから、あくまでも慎重でしょう。

しかし、日米ともにやらなければならない事は決まっています。いかに余計な混乱を避け、実体経済の安定的な成長発展を損なわないかが大事です。

日本にとっては次第に円高が進むことになるのは必然でしょう。円安も、円高も行き過ぎては実体経済の安定はありません。特に、行き過ぎた円高は、かつての経験の通りです。

これから必要になるのは、金融政策に加えて実体経済を健全なものにする経済政策です。

経済政策は政府と労使の協力で可能になるのです。何卒、失敗しないようにお願いしたいと願う所です。


消費者物価問題はほぼ終結へ

2024年08月23日 14時45分24秒 | 経済

ずいぶん長い間、このブログでは消費者物価指数の動きを追跡してきました。

世界中、物価が上がらないなどといわれた時期がありましたが、コロナの終息とともにアメリカ、ヨーロッパが、ロシアのウクライナ侵攻問題も絡み、原油の値上がりなどが原因で、賃金インフレを起こしました。

日本でも、賃金も上がらないけれど、消費者物価も上がらないから何とかなる国などといっているうちに物価が上がり始め2022年からは、賃金が上がらないこともあって、消費者物価上昇で毎月実質賃金水準が前年割れといった状況になって、それが25か月も続きました。

欧米の賃金も物価も8~10%上昇とは上昇のレベルは違い、日本は賃金が上がらす経済実態は消費不況で、消費者物価指数上昇もせいぜい4%でしたが、日銀はインフレターゲット2%を掲げていましたから政策金利も上げられず、それが大幅円安をよび、それがまたインフレの原因になると大騒ぎになりました。

しびれを切らした日銀は、先月、国際投機資本も予期しない利上げに踏み切り、マネー市場は大混乱のようでしたが、我が国の物価問題は、ようやく終結の時期を迎えているようです。

  消費者物価主要3指数の推移(原数値)

           資料:総務省「消費者物価指数」

 

上のグラフでは、7月の消費者物価指数はまだ上昇ですが、その主因は、政府の電気・ガス料金への補助終了と生鮮食品値上がりのせいで、緑の線の日本経済自体の物価上昇傾向は、多少長かった波状一斉値上げ上げといった動きはなくなり、2%インフレ目標に沿ったものになりつつあるようです

心配された今春闘賃上げの価格転嫁促進政策の物価への影響も、消費者物価指数レベルではあまり大きくないようです。

同じ消費者物価指数の動きを、対前年上昇率で見たのが、次の図です。

   消費者物価主要3指数対前年変化率(%)

                資料:上に同じ

これで特徴的なのはやはり緑の線の動きで、物価上昇が問題になった時期、大きく上に膨らんでいることが解ります。

長い目で見ますと、これはコロナ時代に消費不振で値下げさえもあった日常生活関連商品群がワンサイクル遅れて、値上げに動いた結果とみられるところです。

これが終わったところで、今後の日本の消費者物価指数は国内要因による上昇は賃金上昇の影響が中心となるでしょうから、多分沈静化でしょう。

緑の線が大きく下がって2%を切ってきたことが、国内インフレの終息を示唆するものとみていいのではないでしょうか。

今後を予想すれば、余程の大幅賃上げでもない限り、国内インフレは起きないでしょうし、外部からの上昇要因は、原油、LNG、輸入穀物などの上昇基調の可能性はありますが、海外物価上昇は世界共通ですから日本だけが困るわけではありません。

さらに、円レートは、これからはどちらかと言えば、円高基調という事でしょうから海外物価の影響はその分相殺されるでしょう。

ということで、2年余にわたって政府、日銀、国民を悩ませた消費者物価の上昇という問題は何とか終わりを告げたように感じるところです。

このブログでは、実質賃金がプラス化するかという問題もあり、もう少し消費者物価指数の動きを追うつもりですが、物価問題は、一応終結としておきたいと思います。


米個人金融所得年率540兆円増加

2024年08月22日 17時20分13秒 | 経済

アメリカでは個人の金融所得は商務省が調査しているようですが、日経新聞によりますと、今年の4-6月期の伸びを年率換算すると3.7兆ドル、日本円にして540兆円($1=146円)になったという事です。

円安だからとはいえ、540兆円というのは日本のGDPに匹敵する金額です。日本人が汗水たらして、地道に働いて、稼ぎ出す「国内総生産」を、株や投信、銀行預金だけで、それも個人所得だけで稼いでいるというのですからびっくりです。

人口は3倍近いし、GDPは約7倍とはいえ、個人の金融所得だけで日本のGDP に近いような数字というのは・・・、という感じです。

日経新聞が540兆円という数字を取り上げたのは、特にこの4-6月の個人金融所得が大きかったという事もあるでしょう。

とはいえ、これを日本に比べれば約40倍という事で、個人金融資産の総額はアメリかは130兆ドルにも達しているようですが日本の場合は2000兆円を越えましたが14兆ドル程度でしょう。

こう比べてみるとこれまた驚くべき数字の差ですが、アメリカの個人金融資産は、日本の10倍弱で、日本の40倍の収益を得ているという事です。

残念ながら、日本の家計は、一生懸命貯蓄するのですが、その割にリターンは極めて少ないという事です。

確かにそうでしょう、大体日本はゼロ金利ですから、貯金をしても利息などほとんどつかないのです。100万円貯金をしたから、いくらか利息も付くだろうと銀行に行って記帳したら、銀行へ行くバス代にもならなかった、などというのは、だいぶ前からの笑い話です。

勿論ゼロ金利というのは原因に遡れば経済成長がないからで、ゼロ成長経済では理論的には金利はゼロという事になります。

今後は、日銀が政策金利を引き上げましたから、いくらか金利も付くでしょうと喜んでいたら、株が暴落して、やっぱり銀行預金で損がなくてよかった、などというのが日本です。

日本は個人貯蓄の半分強が預金(含現金)で株や投資信託はせいぜい2割程度です

ところが、アメリカは半分強が株式や投資信託で、預金は15%に満たないようです。

あとは日米ともに保険や年金(25%前後)ですが、預金と株式・投資信託のシェアの逆転は、まさに日本とアメリカで対照的です。

そしてこの違いが、個人金融所得の差を生み出しているのが一般的な解説です。この解説は確かにその通りでしょう。

さらに、日本人は預金重視、アメリカ人は投資(株式・投信)重視というのは、国民性や考え方の違いによるというのが大方の解説です。

政府もその考え方を取り、日本人はもっと資産運用に積極的でえなければならないということで「貯蓄から投資へ」という標語を作りNISAやiDeCoといった投資を免税という有利な条件で推奨しています。

ただ、問題はあります。

1つは、 日本経済が成長していないという点です。もう一つは、日本の投資市場、投資機関が、アメリカのような収益を挙げられるかという点です。

アメリカはマネー資本主義の本拠です。マネーの流れを作る立場です。この辺りを掘り下げないと、本当の結論は出ないように思われます。


<月曜随想>経済思想と実体経済の関係は大切

2024年08月19日 15時32分35秒 | 経済

経済思想というのは。もともと人間がより豊かな生活をしたいと考えることで生まれてきたものでしょう。

農業や漁業中心の時代は、お日様と水が豊かさの源でしたから、そういう土地を持つことが経済思想だったのでしょう。そういう土地を探して移住したり、戦争して手に入れたりという事が経済思想だったのでしょう。商業資本の時代には、地域的な価格差を発見して交易をすることが豊かさを生む手段になりました。大航海時代は東洋と西洋の価格差を利益の元にしたのでしょうし、日本でも紀伊国屋文左衛門のミカン船の伝説があります。

産業革命が起きてからは、技術革新が利益を生むことが解りましたので、産業資本の蓄積が豊かさ源泉となり、資本主義が一般的になりました。

こうした見方だけですと、資本家。企業家はいても、経済の中で生活する一般の人々は出てきません。これでは社会全体の豊かさには繋がらないようです。

元々、資本主義、企業の会計基準というのは利益を算出するために出来上がっているもので、「売上-経費=利益」と「利益」が解ればいいという形です。

経済活動をやるのは、昔は個人、今は企業という事になっていますから、経済思想も、利益が中心という事だったのでしょう。

大航海時代に船を東洋へ出すのは冒険(アドベンチャー)です。成功すれば巨大な利益で、目的は利益です。産業資本になっても、そして今日でも「起業」はベンチャーです。目的は利益です。

一般の人々(労働者)の生活を豊かにする人件費は、原材料費などと一緒で、直接原価の一部です。

こうした経済思想ですと、労働者を搾取の対象、社会は不平等という意識から社会主義や共産主義という社会思想が生まれます。そして、で経済思想と社会思想は一体化され共産主義国(労働者独裁)や福祉国家など労働者重視の思想が生まれます。

こうして経済思想の中で、生産活動の2大要素は「資本と労働」の認識が生まれ、このブログでは産業活動は「人間が資本を使って行う」としています。

第二次大戦関連で、国の経済力を測る方法論として「国民所得の計算」が開発され次第に進化し、「国民経済計算システム」が一般化しました 。

このシステムでは国全体の生産力:GDPを測るのですが、その要素は「人件費と利益」で両者の合計が「付加価値」と名付けられて、これが「国力」だという事になりました。(国民が付加価値を生産し、分配し、消費する「3面等価」)。

経済は人件費と利益でできている。その両方がうまく合成されて、それが国力を担っている。そして、その在り方いかんで、年々生産する付加価値(GDP)は増加する、つまり経済は成長するという事になるのです。

つまり労働と資本、」その組み合わせ、活用の仕方によって、経済は成長する、その国に住む人間はより豊かにになるのです。

この国民経済計算システムが経済思想の骨格となって、今の経済思想は一応の完成を見たのでしょう。

ところがそこにまた新しい経済思想が出てきました。それは「マネー資本主義」です。金融工学というシステムを開発して、マネーを移動させる、つまりマネーの操作によって、購買力を移動させるという活動です。

これは本来豊かさの創造には関係のない机上の活動(ゲーム)ですが、マネーの移動は購買力の移動ですから、机上の活動の結果で、実体経済の購買力が移動することになります。

これは将来的にも経済思想とはならないと思いますが、購買力の移動は富の移動ですから、実体経済の成果を歪めます。

つまり、豊かさの再配分の役割を持ちます。豊かさの再配分は、政府の、税・社会保障制度によるのが近代国家の原則ですが、金融工学による豊かさの再配分を、マネー資本主義と名付けて経済思想の中に不用意に組み込まないようにした方がいいように思っています。