tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

賃上げに関わる統計指標などの整理と理解

2022年01月30日 13時51分25秒 | 労働問題
1 労働生産性
労働生産性は賃金決定に関わる統計指標として最も重要なものでしょう。
理由は、労働生産性(労働者1人当たり付加価値生産額)が賃金の源泉だからです。日本経済でいえば付加価値はGDP ですから就業者1人当たりのGDPが増えれば、1人当たりの賃金は増やすことが出来ます。企業でも賃上げの最重要の基準は労働生産性でしょう。
因みに、労働生産性以上に賃金を上げると、オーバーした分は「賃金インフレ」になって、結局物価上昇で取り返されてしまいます。

2 物価上昇
物価が上昇すれば、その分賃金は目減りします。それを補填するめに賃金を引き上げるべきだという考え方はかなり一般的で、労働組合などでは賃上げ要求は「生産性向上分プラス物価上昇分プラス定期昇給分」といった要求方式はよくあります。賃上げを要求する側から見れば、その通りかもしれませんが、下の各項のような精査が必要です。

3 定期昇給分
これは企業の賃金制度で決まっている分ですから、黙っていても上がるのが当然(査定分の±はあっても)ですが、賃金体系の整備されていない会社もあるので、連合や個別組合などでは「定昇相当分」として要求のような形にするものです。

4 輸入インフレ分
原油のように、国際価格が上がってその分国内の物価も上がるといった場合のあるべき対応は、その分は、そのまま価格転嫁して国民全体が負担するのがベストです。
国際価格が上がった分だけ産油国などは得をし、消費国は損するのですから、国内で取り返す方法はありません。世界中同じように石油価格が上がります。
価格転嫁しなければ、しない会社の負担になり、今回のガソリンのように政府が補助金を出せば政府の負担(結局は国民負担)となり何の効果もありません。
その代わり輸入価格が下がった場合には、その分きちんと価格を下げましょう。

5 円安になって輸入価格が上がった分
この分は、当該国だけの問題で、対応の方法はその国の経済状態や経済政策によって変わります。
日本の場合、日銀は、円安になって多少輸入物価が上がっても、円高になるより日本経済への影響はプラス面が大きいから、その分は価格転嫁して物価上昇を認めた方がいい、というもののようです。
ただ円高になった時には日本は一生所懸命賃金を下げて国際競争力の回復をやったのですからその逆の円安の場合には、多少賃上げをして、諸外国並みに物価を上げていく方が適切ではないかという考え方もあり得ます。
為替レートは常に上下しますから、下がりっぱなしなのか、また上がるのか、見定める必要があります。

6 インフレは避けるべきか? これは結構難しい問題
日本の場合は、基本的にインフレを嫌う国なので、長期的には円高を誘発する恐れが大きいのですが、今後、日本はインフレをどう考えるかは結構難しい問題だと思います。

1~5までで述べた原則は、それを守らないで、賃上げで解決しようとすれば、必ず「労働生産性上昇以上の賃上げ」になって、賃金インフレにつながり、そのインフレをまた賃上げで取り返そうとすると、次第にインフレがひどくなって「賃上げと物価上昇のスパイラル」に巻き込まれ、為替レートの切り下げかスタグフレーションかのいずれかに追い込まれ、(1980年前後の欧米諸国、最近のトルコなど)経済不振・破綻に至る可能性に近づくことになります。

また、1~5の原則をしっかり守って、インフレを起こさず、長期に物価安定を維持する国があると、諸外国は殆どインフレなので、「貴国は物価が安すぎ、競争力が異常に強い。多くの国は困っている。通貨切り上げを認めては如何か」といった要請を受けるか、あるいは、国際投機資本がそうした意向を忖度し、マーケットが通貨高を実現してしまうといったことが起こり得るようです。

日本でいれば、これは「プラザ合意]と「リーマンショック」に当たります。
変動相場制ですから、経済政策も、賃金決定も、当然ですが「春闘」も、いろいろ難しいことになってきます。今年の春闘は実験場でしょう。

そんな中ですので、何か判断の材料にでもなればと思っています。

春闘の賃上げ理論を整理する

2022年01月29日 14時07分29秒 | 労働問題

労使の春闘のキャンペーンも始まるようです。

今年は、連合の例年の賃上げ要求に対して、経団連も賃上げの必要性は認めるという立場ですから、それに岸田総理の3%賃上げ発言のおまけもついて、みんなが賃上げに前向きですから、賃金水準も少しは上がるでしょう。

ところで、何故そんな雰囲気になったかですが、一番大きいのは経済の閉塞感でしょう。企業にしても売上が伸びなければどうにもなりませんし、コロナ禍で消費不振が経済の沈滞を齎すことは企業としても実感したところでしょう。

それともう一つは、ガソリン値上げに刺激されたのか、製品値上げを発表する企業が急に多くなり、インフレが来るという雰囲気が強くなり、賃上げをしなければというのが、広く世論のようになって来ていることでしょう。

こうした雰囲気というのは確かに経済実態を反映しているものだと思いますし、近年外国は結構インフレ傾向の国が多く、日本の物価は随分割安という感覚も一般化しているようです。

そういう意味では、今年の春闘では、多少の賃上げ実現という可能性が大ですが、心配なのは、労使ともに、何故賃上げが望ましいのか、何を基準に賃上げの幅を決めるかといった点についての整理がきちんとできていない事です。

日本の労使は戦後、種々の経験、特に石油危機の経験、更には円高の苦渋から、健全な経済を維持するために必要な賃上げと、経済発展を阻害する賃上げとを確り見分けて、状況に適応した適切で健全な賃上げについての議論を重ねてきました。

所が長期不況で春闘が賃上げにその役割を果たすことが出来なかった期間が長すぎ、当時の議論は、労使双方の中にも、政府官僚の中にも、多分アカデミアの中にもあまり残っていないのではないでしょうか。

しかし、真面目で頭もよく勘もいい日本の労使です、環境が変わっても諸外国に多く見られるような無理や失敗は多分やらないだろうと思っているところです。

そんな意味で、今年の春闘の結果が、日本経済の長い低迷からの脱出の何らかのキッカケになればと期待しつつ春闘の経過を見守っていきたいと思っています。

諸外国の賃金交渉は、日本の様な年中行事ではなく、複数年の協約が切れたときとか、経済に変動があった時(多くはインフレ)とかに行われ、産業別などの交渉が多いのですが、日本の場合は違います。

毎年春に行われ、春闘は俳句の季語にもなっていて、労使交渉は、殆どが個別の企業内でその企業の労使によって行われます。交渉の舞台(主体)は日本中の個別企業です。

交渉の結果は、連合や経団連に組織化された企業の集計という形で発表され、最終的には厚労省の調査によって、正式な数字が出されます。

という事は、それぞれの個別企業の労使が何を基準にして賃上げが為されるべきかを理解していないと結果は誤ったものになりかねないのです。

その意味で、連合、経団連のいわゆる「春闘白書」は教科書であり、春闘の賃上げのリーダー企業の労使の議論は重要で、多くの企業はそこから学び、自社の実態を勘案して最終的な妥結に至るという事になるのです。

このブログでも、何かのお役になるようにと、なるべく早く、賃上げの基準になるもの、ならないものを纏めて整理しておきたいと思っています。

ファイザーとモデルナ、小さなことですが

2022年01月28日 21時22分29秒 | 文化社会
年齢のせいで、順番が早く回ってきたいのでしょう。今日、第3回のワクチン接種を終えました。

3回目接種は、前倒しと言いながら、出足が遅いようですが、未だにワクチンはすべて外国頼みですから、いろいろ不都合があるのかなどと気になります。

報道ではモデルナの方が確保の確約が出来たような記事もありましたが、どちらがいいのか気になる人も結構いるようです。

偶々私は3回ともファイザーでしたが、調査の結果は種々で、効果のほどは有意の差があるのかどうか解らないのが現状だろうと思っています。

家内の方は数日後に案内が来て、真面目に案内をきちんと読んでいましたが、「モデルナの方がいいって書いてありますよ」と言います。

「そんなこと書いてあるはずがないだろう」と言って、改めて読んでみますと、こんな事が書いてありました。

「2社のワクチンの1・2回目接種の効果を約半年間比較した観察研究では、モデルナ社製のワクチンの方が、感染予防、発症予防、重症化予防の効果が高かったと報告されています」

これは国分寺市からの「新型コロナワクチン3回目接種のお知らせ、」の中の文章ですが、データの出所の注記はありません。
意図的にモデルナを良しとしたのか、偶々そうした数字を見たのか解りませんが、誤解を生む可能性もあるでしょう。

他の自治体の「お知らせ」を集めたわけではありませんが、懇切丁寧なお知らせで、おそらくどこかでモデルか雛形が作られて、それに準拠したものではないかと思われます。
関連して気になったのは、「そういえば、安倍総理菅総理も、出所不明な統計を平気で口にしていたな」ということです。

統計については、最近不祥事も発覚し、昔の日本と違って、統計の信頼性が揺らぎ、また統計を使う側の政治家なども安易に信頼性のない数字を口にすることが多くなっている事もあって「統計の軽視は国を滅ぼす」などとの厳しい意見もあるこの頃です。

重箱の隅をつつくような話ですが、こうした風潮が蔓延することも、コロナと同じように危険なことだと気になり、つい、書いてしまいました。

日本水仙咲きはじめる

2022年01月26日 15時08分37秒 | 環境
都下国分寺の昨日の朝はマイナス2℃でしたが、今朝はプラス3度と急に暖かでした。





先日からアケボノツツジの下で日本水仙の蕾が膨らんできていたのですが、昨日は、矢張り寒いからか開きませんでした。

今朝は思いのほか暖かかったので、もしかしたらと思って、朝、雨戸を開けた時見ましたら開花寸前、開きはじめの様子です。

昼近くなって少し陽が当たるようになり、それに元気づけられたように、昼過ぎにみると綺麗に咲いていました。

咲いたら写真を撮ろうと思ていたので、早速スマホをもって庭に出て、アケボノツツジの下にもぐって何とか咲きたての花を撮ることが出来ました。

歳のせいか腰を屈めて低い位置から写真を撮るのは、結構きついなあと思いながら、何枚かとった中の二枚をトリミングしたのが上の写真です。

昔から「 小寒の氷、大寒に融ける」などと言いますが、それもそのはず、大寒が終われば立春です。

リュウキンカ(立金花)の葉も伸びて、艶のある緑になってきました。そろそろ蕾も出そうです。

コロナの世になって3回目の春ですが、そろそろ何とかなってほしいものです。

国民の力による経済回復を考える

2022年01月25日 17時40分36秒 | 政治経済

国会が始まりました予算委員会の質疑が毎日、予算をどう編成しどう使えば日本経済が良くなるか議論をしているのでしょう。

このブログでも、前々回「日本の経済回復を本音で考えよう」、前回「消費より貯蓄の心理学」という事で、国会の空中戦と違って、国民の意識と力で日本経済を成長経済に持っていく方法を検討しています。

というのは、今の岸田政権は財政再建も考えているようですが、自民党の中にも、もちろん野党の中でも、政府が赤字財政など気にせず国債をどんどん発行し景気テコ入れをする事こそ景気振興策という意見が強いのです。

政府がカネを使うと言っても、それは国民が貯蓄している2000兆円近い貯蓄(前回参照)を当てにしてわけで、国民が無駄遣いしないで貯蓄しているお金を政府が借りていろいろ無駄遣いしているという事になっているようです。

政府が国民の貯蓄をみんな借りてしまったら、後は外国から借金するしかないのですが、外国からの借金は利息も高いし、もし利払いや返済が滞ったら、たちどころに円も日本国債も暴落、MMTなんて嘘理論という事になるのでしょう。

ここで問題にするべきは、現状では政府が借りようとしている国民の貯蓄を「国が借りて使うのがいいのか」、それとも、「国民が自分で取り崩して使った方がいいのか」という問題です。

まず、政府が使うのと、国民が使うのとどちらが経済効果が大きいかの問題です。
これは政府が予算を何に使うかによります。現実は国債残高が増えるばかりで、経済は殆ど成長していません。結局、役に立つ使い方をしていないという事でしょう。

それならこの辺りで選手交代で、国民が自分でカネを使う、つまり国民の力で個人消費を増やしてみるのはどうでしょうか。

政府は当てにならない、ならばコロナ後を目指して、今から専門の学界も経済界も、企業労使も、一般国民も、本気で、国民の力でやる経済回復策のブレーンストーミングをやったらどうでしょうか。

今のコロナ、オミクロン株の猖獗の状況の中では具体策の試行や実行は無理でも、コロナの終息とともに現実の問題になるのですから、今からその準備です。

今やるべきことは、コロナ対策に最大限の投資を行う事でしょう。ワクチン、治療薬の国産化、これにはかなりのカネがかかるでしょう、しかしそれは今こそやるべき事です。経済回復への「条件整備」ですから。

このブログでは随分以前から「10万円消費拡大運動」とか、カネでなく「頭を使った経済政策」とか、「国民のやるケインズ政策」とか、消費拡大策の提言をしてきています。

大事なことは、前回も指摘しましたが、日本人の心理状態を、かつての日本のように「将来は明るい」に変えていく事が必須と考えられますし、それには国民が納得してやる気になり、実行し、そしてその成果を実感することが必要でしょう。

国民が意識を変えることが最も大事ですが、そのためには、もちろん政府の役割もあります。
政府の役割は、国民がそうした意識改革や行動をやる気になるようなルール作りや環境整備を地道に適切にやることです。

政府は自分がプレーヤーでなく、国民こそがプレーヤーだという事をしっかり理解することが、今は一番大事なことのようです。

「消費より貯蓄」の心理学

2022年01月24日 14時42分23秒 | 文化社会
日本人は縄文時代の昔から、自然に対して強い畏敬の念を持っていたようです。

地学的、気候的などの諸条件から、日本列島の自然はそこに住む人たちに豊かな自然の恵みをもたらしてくれるのと同時に、台風や地震といった人間生活に壊滅的にな破壊をもたらすこともあると理解し、それに対応する生活の在り方を創ってきたのでしょう。

その中で、日本人が学んで来たことは、豊かな自然によってもたらされる収穫物を、予期の出来ない自然災害に備えて備蓄することの重要性の認識だったのでしょう。

そして豊穣に感謝すると同時に、自然が穏やかであってくれることを願って自然を神とあがめ、自然への感謝と願いとを「祭り」で表して来ていたのではないでしょうか。

一万有余年の縄文の文化は、今の言葉でいえば、家族や集落の「SDGs」をいかに確実にするかという意味で、備蓄(貯蓄)の重要性を日本人に植え付けたのでしょう。

ところで、江戸時代には「江戸っ子は宵越しのカネは持たねえ」(つまり貯蓄ゼロ)などという言葉が流行ったようです。
気風(きっぷ)の良さを自慢したもので、「カネは腕に仕込んである」などと職人の技能の自慢に使われたのでしょう。

確かに「火事と喧嘩は江戸の花」だったそうですから、腕の良い職人はいつでも仕事には事欠かなかったのかもしれません。

しかし、これにはしっかり反論もあって「大工殺すにゃ 刃物は要らぬ 雨の三日も 降ればよい」と、これは都々逸です。

こんな日本の伝統文化の片鱗からも、日本人が、「今の生活」と「将来の生活」のバランスを伝統的に確り考えて来たことが知られるように思われます。

ところで話は現代に飛びますが、この所、日本経済は消費不振で悩んでいます。
老いも若きも、「宵越しの金は持たない」どころか、出来るだけカネは使わずに、将来のために貯蓄しましょうという事のようです。

先日書きましたようにこの2~3年で日本の個人貯蓄は200兆円(日本のGDPは550兆円)ぐらい増えたようですが、個人消費は落ち込むばかりです。

この異常な貯蓄志向を上述の話から分析しますと、もともと「今苦労しても、将来が良ければ」という性格が強い日本人が「将来が今より良くなることはなさそうだ」という環境に置かれた場合の行動パターン」ということがはっきり見えてくるのではないでしょうか
例えば今は、若い人達でも「雇用の安定に不安」「雇用があっても賃金が増えない不安」「退職後の社会保障や年金が不安」・・・と不安がいっぱいです。

多くの人が、日本経済の将来について「期待できない」という意識を持ち、「それならばどうするか」と考え、結論は「自助努力で何とかしよう」「将来不安、老後のために貯蓄」という心理状態になっているのでしょう。

「個人貯蓄は著増、個人消費支出は低迷」という日本経済の現状の背後にある多くの日本人の心理状態を、かつての日本のように「将来は明るい」に変えていくのには何が必要か。
これが今の日本のリーダーたちに与えられた最大の課題でしょう。

日本の 経済回復を本音で考えよう

2022年01月22日 18時01分06秒 | 経済

日本(世界も)当面する最大の問題はコロナでしょう。オミクロンの次に何が出てくるか誰にも分かりません。ギリシャ文字もまだオメガまで残っています。

しかし経済は経済で、日本の場合は今までの経済政策ではだめという事は解っています。それならば「何が」が必要なのですが、「新しい・・」だけでは誰にも解りません。
政府も、学者も、国民もみんなで一緒になって、自分のことですから真剣に考ええなければなりません。

このブログでも「少し賃上げをした方が」と言う示唆をしました。しかしそれは必要条件の1つで、十分条件ではありません。

国会の議論を聞いていると、政府が赤字でもどんどんカネを出せば景気は良くなるという意見が殆どで「200兆円出せばいい」などという意見もあります。多分経済とはなにかを全く知らない人なのでしょう。 

今迄も、政府は一律10万円給付をはじめとして、色々な名目でずいぶんおカネを出しました。しかし景気は少しも良くなりませんでした。
コロナでみんな動けないのだからカネを使わないのは当然という事もあります。しかし日本人は、実は、コロナの前から金を使っていないのです。

カネが動いているのはマネーゲームなどで、一律10万円給付も多分7~8割は銀行預金になって、その行く先は金融市場のようで、お陰で日銀の資金循環表によれば、日本の個人貯蓄は2000兆円になりそうだそうです。

日本人は大変なお金持ちなのです。コロナの前も1800兆円と言われていました。世界トップクラスの個人金融資産を保有する国なのです。

それなのに、日本人はカネを使いません。カネを持っている人がカネを使わないと経済というものは動かないのです。これは当たり前のことです。

みんながケチで、おカネを使わなかったら何も売れません、売れなければ作りません。有り余ったおカネは金融市場で空中戦、実物経済はそっちのけで、銀行や証券の口座の残高が増えるのが最大の楽しみ・・・。これでは増えるのは金融資産だけです。

何故こんな事になってしまったのでしょうか。
原因は大きく2つあるように思います。
一つは、今の日本人にとっては、老人にも若者にもかなり一般的なことですが、少子高齢化が進んでだんだん公的年金等があまり宛てに出来なくなるので、若いうちから自力で貯蓄して老後に備えるという考え方が広く一般化していることです。
結果的に消費が伸びないので、消費不振で経済が停滞するという現象が顕著です。

もう一つは、所得税制のフラット化に加えて、30年に亘る長期不況で、就職氷河期などもあり、非正規労働の増加などの結果、日本社会全体が所得格差や資産格差の大きい格差社会になって来た事です。
結果的に金持ちは投資や投機で資産を増やすことに熱心になり、所得の少ない人が100%消費しても、大した額にはならないという、矢張り消費不振で経済が停滞という現象です。

現実にはそれにコロナが追い打ちをかけ消費が伸びないのですが、コロナによる分は、コロナが収まれば忽ち回復するでしょうが、最大の問題は上記の2つの消費不振です。

ハッキリ言えることはこの2つを解決しない限り、日本経済の活性化は至難という事でしょう。

賃金→物価→為替レートの関係(前回の補遺)

2022年01月21日 17時04分18秒 | 経済
前回は日本の物価はあまりに上がらないので、インフレに悩む国からは、「お前だけ物価が上がらず競争力が強くなうのは困る、何とかしろ」と言われるようなことになるのは、日本としてもまた大変困るという事を書きました。

具体的には「プラザ合意」のように、競争力の強い分だけ「円高にする」のはどうかと言うような事になる場合がこれから多くなるのでないかという気がします。

かつて、中国が対米輸出の首位を独走した時のような事も考えられます。
あの時は、アメリカが、中国に人民元の切り上げを要求し、中国が「人民元の価値は中国が決める」 といって反発したこともありました。

トランプ政権になって、それは「世界の国々がアメリカに物を売って儲けている」「アメリカは損ばかりだ」「中国を始めそういう国からの輸入には高い関税をかけろ」という関税戦争に発展しています。 

中国は、人民元高にしたら日本の円高と同じになるとよく勉強していて、その分は自分達で使った方が良いと考え、一時最低賃金を大幅に上げたりしました。

中国の真似をするわけではありませんが、円高を強いられて、デフレ不況で苦しむより、賃金を上げて自分たちの所得を増やし、その結果競争力が多少弱くなる方がよほど楽で得だということになるという発想は「変動相場制」の中ではだんだん常識になるのではないでしょうか。

その場合重要なのは,①賃上げすればインフレになるのか、②インフレにするタイミングと程度はどうとるか、の2つではないでしょうか。

① の賃上げでインフレになるかの答えは出ています,インフレの8割ぐらいは賃金インフレと言えるでしょう。(2割は輸入インフレなど)
② のインフレにするタイミングと程度ですが、他国より早くインフレにしないことと程度は他国の程度に近くしかし超えないとするということでしょう。
  (このバランスは、短期ではなく中・長期で考えるのがよいでしょう)

そうすれば、国際競争力はそれなりに維持ができますし、国際競争上の有利さは自国経済の繁栄と成長に使えるわけです。

変動相場制の下では、為替レートは為替取引の売買のバランスで決まります。
以前は実体経済を反映する部分が大きかったのですが、今は金融工学に象徴されますように,世界中の大小・無数の投機資本・投機家の思惑の絡み合いの中で決まりますから「何かあれば円」などとレッテルを張られるのは危険です。

半分冗談めかしましたが、 長い目で見れば、経済も賃金決定も労使関係もそうした関係の中に住むことになってしまったというのが現実でしょう。

勤倹貯蓄で賃上げは常に控えめ、インフレを起こさない様にすれば発展する国になれるというのは「固定相場制」の時代の事だった、というのが今の世界経済なのではないでしょうか。

変動相場制の中で、巧みに良い位置を占め、経済運営に成功することは、固定相場制の時よりもずっと難しいという事ではないでしょうか。

今春闘:為替レートと賃金水準の関係に十分な配慮を

2022年01月20日 21時54分57秒 | 労働問題
前回は、プラザ合意で大幅円高になって10年余にわたって賃金水準の引き下げを強いられた日本の経験を教訓に、為替レートと賃金水準の関係を春闘の労使交渉の場でも考慮すべきではないかとの問題を提起しました。
今回はそれに関連した留意点などを見ていきたいと思います。

という事で、プラザ合意の様な事がなぜ起きたかを考えてみますと、あの時は欧米主要国が軒並み不況下(原因は石油危機)の過大な賃上げで、スタグフレーションに陥り、日本だけが賃上げを正常化し健全な経済を維持しました。

その割に、為替レートの変化は少なかったので、結果的に円安になり、日本経済は競争力を増し、ジャパンアズナンバーワンと言われる状態でした。

日本人は真面目で、労使交渉も合理的で、健全な経済運営に労使ともに努力しますから、過度なインフレやスタグフレーションにはならなかったのです。

プラザ合意は、その日本に、経済運営に失敗した欧米主要国が突き付けた要求です。競争力に自信を持っていた日本は鷹揚に「円高、受け入れましょう」といった結果、欧米の思う壺で、30年に亘る円高不況を経験することになったのです。
  
ところで今は日米の金融政策の相違から円安状態になっています。コロナがなければ、安い日本に世界中から観光と買い物の客が押し寄せているでしょう。

貿易収支は原油高で最近は赤字のこともありますが、基調は常に黒字、経常収支は大幅黒字が常態です。

一方、主要国の最近10年間の消費者物価の上昇率(2010年=100)を見ますと、2020年の数字は以下の通りです。
  日本     100.2
  アメリカ   118.7
  イギリス   120.9
  フランス   112.1
  ドイツ    114.2
という事で、日本のインフレ率の極小です。当然競争力は強くなります。(為替レートは通常この動きには追い付いていないので)

これだけ物価が安定していますと、国際競争力は増し、国際収支は常に黒字ですから、円は安定通貨として「何かあると円買い」という事で、基調的には常に円高という事になり、円高にしないために、日銀は異次元金融緩和を続けなければなりません。

偶々今は、アメリカが自国の事情で金利の引き上げを計画し円安になっていますが、更に日本と欧米諸国のインフレ格差が累積しますと、欧米から円は安過ぎるといわれる状態になりかねません。
インフレ嫌いと真面目さのゆえに、欧米から「円高にすべきだ」という声が出て、マーケット(国債投機資本など)がそれに過剰反応する前に、適時に、その芽を摘んでおくことが重要になるのではないでしょうか。

その対策として、最も適切な手段が賃金水準の引き上げでしょう。それもベースアップという形の全産業横断的、出来るだけ均等な賃金引上げという事になるのではないでしょうか。当然それはある程度の物価上昇を呼ぶことになります。

今春闘での、労使双方から、せっかくの円安への動きを十分活用し、また円高に戻ってしまわないような、国際的にも上手くアッピールできるような賃金交渉をお願いしたいと思うところです。

今年は2~3%ベースアップをした方が良い?

2022年01月19日 15時57分57秒 | 労働問題
報道によりますと、今年は経団連も企業が賃上げに積極的になった方は良いという態度を取っているようです。

戦後ずっと賃上げ抑制の主張ばかりしてきていた経営者側から、賃上げに積極的な意見というのは理解できないという感じも強いかと思いますが、どうも、賃金は抑えれば良いと言うだけのものではないようです。

このブログでは先日「為替レートと賃金決定(試論)」を書いていますが、賃金というものは、もともと経済情勢や経営状態に応じて判断すべきもので、単純に「上げればいい」とか「抑えればいい」といったものではないはずです。

また、このブログでは「人件費支払能力」についての真面目な分析も取り上げて来ていますが、視点は、経済や企業の成長発展に整合した賃上げの在り方を検討するものです。

こうした賃金決定に関する具体的な理論は、個別の企業の実態に即したものから一国経済の人件費支払能力まで考えられるわけですが、先に「試論」で検討してのは為替レートの変動と賃金決定という新しい視点です。

端的に我々の経験した具体例から見れば、日本は1985年にプラザ合意(G5)の経済政策協議の場で円高を容認してしまい、その結果その後2年で為替レートが2倍になるという経験をしています。

その結果はと言いますと、日本のすべての賃金と物価が、国際的には、つまり「ドル建てでは」2倍になるという事態になリ、日本は世界一賃金も物価も高い国になりました。

これでは日本経済はやっていけませんから、その後十数年かけて、賃金と物価を下げるという長期のデフレ不況に苦しみました。

やっと、物価も賃金も、国際的にみてそれほど高くなくなったかなという頃、2008年にリーマンショックが来て、また5割ほどの円高になり、日本経済と国民生活は不況のどん底に低迷しました。

この時は日本はもう気力も体力の尽き果て、非正規労働を増やして平均賃金を下げ、研究開発や人的資源への投資もやめジリ貧を放置するだけになったようです。

アメリカもとうとう見かねて、円安にすることを認め2013~14年、日銀が異次元金融緩和をやって円レートを漸く1ドル120円に戻し、長期の円高不況から脱出しました。

この経験で学んだことは、正常な為替レートより円高になれば、日本はその分コストと物価を下げなければならなくなり不況になるという事です。

それならば、気付くことは、「円安になったら賃金も物価も上げてもいいのではないか」あるいは「上げなければいけないのではないか」という、丁度逆のケースでの考え方があってしかるべきではないかという事です。

もしあるとすれば、この問題を、労使間の賃金交渉場で考慮すべき要素として取り入れなければならないという事になります。
とという事で、今年は為替の動きから見ても少し賃上げをした方がいいという事になります。

この考え方に合理性があるか、合理性があるならば必要性のあるはずですので、そのあたりの理論立てなどについて、少し検討してみたいと思っています。

岸田総理「新しい資本主義」の具体化へ

2022年01月18日 14時58分11秒 | 政治
岸田総理の初めての施政方針演説の中で「新しい資本主義」の中身が次第にはっきりしてきたように思います。

総理が強調された点を見ますと、格差が拡大し、かつて幅広かった中間層が次第に薄くなっているような社会は発展性がない。これを何とかしなければならないと読み取れるようです。

「新しい資本主義」では格差の縮小、中間層の大幅な増加を目指し、中間層が経済社会を支え、経済を発展させるような状態を作っていかなければならないというのが基本的視点ではないかといった気がします。

確かに、この所、世界的に、新自由主義あるいは自由主義の原理主義化といった傾向が強く、日本の政権もかなりの影響を受け、その結果、かつては北欧諸国と並んでいた格差の無い社会から、急速に格差社会へ、同時に、経済的にも社会的にも停滞する社会に退化してきてしまっています。

こうした状況は、経済社会の中で、本来持つべき人間的なものが失われる結果を生むようで、伝統的な日本社会の温かみも失われつつあるように感じられるところです。

岸田総理の「新しい資本主義」は、恐らく総理の頭の中では「人間のための資本主義」といったイメージを持ったものはないかと思われます。

資本主義であっても、それは「資本のための資本主義」ではなく「人間のための資本主義」、「人間のより豊かで快適な生活実現のために『人間が資本を巧く活用する』資本主義」という事ではないかと思っています。

こう考えれば、総理の言う
「 新自由主義的な考え方が生んだ、様々な弊害を乗り越え、持続可能な経済社会の実現に向けた、歴史的スケールでの「経済社会変革」の動きが始まっています。」
というフレーズはそのまま素直に理解できるように思います。

岸田総理は、こうした社会をデジタル化といった技術革新、さらに分配と成長の適切なバランスによって構築していこうという具体的な力点を指摘していますが、デジタル化や先端技術の開発には膨大な資本が必要です。

この膨大な資本は経済成長によって生み出していかなければなりません。それを支えるのが分配と成長の適切なバランスでしょう。

そのためには春闘における賃金決定も重要で、政策としての賃上げ減税など、また中小企業での賃上げを可能にする為にも、中小企業の大企業に対する価格転嫁を容易にする環境整備、そして最低賃金の見直し、さらに人的資本への投資の促進、職業訓練制度の再検討といった一連の具体策の指摘も、上記の道筋の中で考えれば整合的に理解され、政策や政労使の話し合いの中で動かしうるものではないかと考えるところです。

すでに触れましたように、経団連の新会長の十倉氏も、これに共通した部分を持つ意見をお持ちのようです。

30年余にわたる長期不況と、世界的な過度な自由と権利主張の風潮(一部に新自由主義と言われる)の中で、本来の日本人の人間重視の在り方から些か逸脱したこの 所の日本社会の立て直しに、日本人本来の真面目さで取り組む時期が来たのかなといった気がするところです。

此の施政方針演説を軸に、「初心不可忘」で、進んでいただきたいと思うところです。

建設統計の最も基本的な問題

2022年01月17日 10時30分39秒 | 文化社会
建設受注統計の不正問題についての第三者委員会の報告がでて、この問題が先の毎月勤労統計の場合よりの著しく深刻な問題であるいった指摘もされ、多くの専門家から改善についての意見も出されたこは、大変良かったと思います。

これを機に官庁統計に携わる人たちが、自分たちの仕事が、地味ではあるが如何に重要な仕事であるかを知り、誇りをもって、真剣に統計の充実に精進していただきたいと願うところです。

前のブログでも触れましたし、第三者委員会も指摘していることですが、今回の問題で最も深刻であったのは、統計回答者が記入した原票の記入回答を消しゴムで消したという点でしょう。

毎月勤労統計の問題のように集計方法に手抜きや取り扱い錯誤があった場合でも、原票があれば「復元」は可能です。

しかし原票の記入が消去されていたのでは「真実は永久に不明」ということになるのです。
これは統計にとっては決定的な問題です。

これは統計業務にとって許されないことというだけではなく、統計の役割から言えば、国民のすべてにとって、更に人倫(世間様)にとっても許されない行為ではないでしょうか。

統計調査に関わられる方々には、「原票」の意味をもう一度確りと理解し、把握した上で職務の遂行を願いたいところです。



  

岸田首相と梶田会長の会談を言祝ぐ

2022年01月15日 11時28分22秒 | 政治
1月13日、岸田首相と日本学術会議の梶田会長との会談が実現して、これからは松野官房長官を窓口に対話を進めていくことになったのと事、心から言祝ぎたいと思います。
「言祝ぐ(寿ぐ)」などと何と「大層な」と思われる向きもあるかと思いますが、これはまさに、国民として、大変な喜びなのではないでしょうか。

考えてみれば、国として「政治と学術が対話を持たない」という事が何を意味するかです。

政治家になる人たちも、学術の世界から生まれてきた教育というプロセスの中で成長し、国や広く社会のために何をすべきかを身に着けることが出来たのでしょう。
学術は常に政治家の師として存在して来ていたのです。

そうして育った政治家が、学術の恩恵を忘れて、学術を軽視したり、学術を疎外したり、学術を否定したりすることは、何を意味するか考えてみれば、問題の本質が見えてくるように思います。

政治はその国の命運を直接握っている存在ですからその権限は巨大で責任は重大です。
一方、学術は、宇宙の森羅万象の在り方をその生成の結果生まれた人類の在り方も含めて研究し、人間という存在が、宇宙、自然の原理にどう対応するべきか、更に人間同士の在り方が、宇宙、自然の中でいかにあるべきかを探求し続ける存在でしょう。

こうした関係の中では、人間は、もちろん政治家も含めて常に学術の成果から学んでいかなければならないでしょう。

その範囲は人間生活のすべてに及びます。宇宙、自然との関係から、人間同士の在り方に至るまで、人間は常に学ばなければならないのでしょうし、また、学び、知り、理解することに喜びを感じるのが、人間の性でしょう。

しかし、たまたま政治家として君臨して権力を握るうちに、権力に惑わされ自我を過剰成長させ、自らを学術の上に置き、学術の大切さを見失い、自らが学術の支配者と思い違う人が出てくるようです。

秦の始皇帝の焚書坑儒やカンボジアのポルポト政権の知識人虐殺などの例はよく引かれますが、中国の文化大革命などもその列に入るのかもしれません。

日本でも、安倍・菅政権は、日本学術会議と対立し、対話を拒むという状態を作り出しました。
しかし現実の政治の場では、コロナ問題で菅総理の記者会見に専門家の同席援助を仰ぐなど、学術軽視に至らなかったことは建前と違う内実を示すものだったのでしょう。

しかし、日本の学術の最も重要な組織である日本学術会議との対話を政権が拒み続けるといった状態は、国民としては当然先行きを危ぶむことになるわけで、心配する人は随分多かったのではないかと思っていました。

以上が何故「言祝ぐ」などという大層な言葉を使ったかの理由ですが、いずれにしても今回の岸田、梶田会談は、日本の先行きへの徒な障害を取り除くための一歩として、まさに「言祝ぎ」たいと思うところです。

オミクロン株の猖獗と財政再建

2022年01月14日 20時48分06秒 | 政治
昨日、財政再建に向けての岸田政権の基本方針につて大きな関心を持っていることを書きましたが、その具体的な内容についてはまだ発表されていません。
そこで余計なことですが、オミクロン株と財政再建問題について気になることを書いてみました。

オミクロン株の新規感染者の数の増加は倍々ゲームで予想をはるか超えているようです。(ちなみに、3日で2倍になれば1か月後には1024倍です)

我々個人個人に出来ることは、感染の可能性のある事や場所には出来るだけ近づかない事、近づかなければならない時は防御態勢を徹底する事、不織布マスク、アルコールでの手洗いを忘れないこと、うがいの励行、それも出来れば鼻うがいなどなどの自衛手段だけです。

症状が軽いと言っても、医療関係者が感染して手が足りなくなるような感染力ですから、経済活動も、家計の消費も当然落ちるでしょう。
今迄も、景気はコロナ次第でしたが、オミクロンは今まで以上に酷いかもしれません。

政府も都も経済活動は出来るだけ維持したいと言われるようですが、それもかなり難しくなるのではないでしょうか。

そんな状態がいつまで続くのかまだ全く見当が付きません。そこで財政問題が絡んできます。懸念されるのが自民党の中で二派に分かれている財政再建についての立場の違いです。

2025年か26年にはプライマリーバランスを回復しようという岸田総理率いる「財政健全化推進本部」の考え方が自民党の考え方になるのかと思いましたら、高市さんの「財政政策検討本部」も活動していて、2025年までは財政再建論議は棚上げという方針だといいます。

いろいろな意見があるのは良い事かもしれませんが、政権党の自民党で財政政策についての考え方の全く違ったものが並走するといった状態は、どうも大変まずいことになりそうな気がします。

財政再建棚上げという事になりますと、従来の様な、後追い、バラマキの給付金などで大盤振舞いをする方向でしょうし、2026年までにはプライマリーバランス回復という事になりますと、バラマキの給付金などは極力抑えて、経済活動による歳入確保を重点という事になるのではないでしょうか。

民主主義の原則から言えば、多数を得た方の政策が実行されて、多数を取れなかった方はそれを見守りつつ次を期すのでしょうが、そのあたりが「民主」を党名に冠している自民党の中で、スムーズに機能するといった状況では必ずしもない様な気もします。

杞憂かもしれませんが、お互いに意地の張り合いといったことはなしにして、知恵を出し合い、相協力してベストの道を探す「建設的な」協力と努力をするという方向を模索してほしいと思うところです。

今はまさに非常時です。非常時には、そこからの脱出のための協力が自然で、動物であろうが人間であろうがコロナ退治に全力を挙げるべきでしょう、

先ず自民党の中がそうでなければなりませんし、もちろん与野党間もそうでなければならないでしょう。

日本は民主主義国家ですから、政府の政策は民主主義の原則にのっとって行われていくのが、国民に大きな安心感を齎すことを理解して民主主義を実践してほしいと思うところです。

政府、基礎的収支の均衡目標設定へ

2022年01月13日 21時52分15秒 | 経済
 昨日と今日付けの報道で、岸田政権が財政のプライマリーバランス(基礎的収支)回復の目標を設定しつつあるという動きが入ってきました。

早ければ明日の経済財政諮問会議に試算を提出するという事のようですが、報道によりますと経済成長率を名目3%、実質2%といった所に置き、経済回復による成長の加速で税収が上振れする事も考慮、2026年とされていたプライマリーバランスの回復・黒字化を2025年にも可能とすることも有り得るといったもののようです。

今迄の、安倍・菅政権の下では、財政再建の目標は決めるが、その達成は殆ど考慮されず、期限が近づくと伸ばすといった状態でした。てぃた

確か、安倍さんの口から「財政再建を諦めたわけではありません」なとという言葉が出たり、菅政権は新自由主義経済やMMTを信奉して財政規律は無視ではないかなどとも言われてきましたから、財政問題に伝統的常識が戻ってきたという感じです。

過日、このブログでも、過日、「自民党内の財政政策に2派?」と書きましたが、岸田総理率いる財政健全化のグループが、改めて構想を打ち出したという事でしょうか。

財政健全化は、日本の経済、財政の基本を「長い目で見れば」大事な必要事項と考えるのがこのブログの立場ですが、(「日本の国債が紙屑になる条件」シリーズ等をご参照ください)新政権の新たな財政構想には深甚の関心を持つものです。

しかし、いずれにしても財政健全化は容易なことではないでしょう。
財政再建に直接関連するのは名目経済成長率で、NHKニュースのように、実質経済成長率2%という数字だけ出して名目成長率に触れない報道は不親切ですが、他の報道では名目成長率も3%と出ていて、判断の参考にはなりました。

過去の財務省の試算では財政債権に必要な成長達成ケ-スは名目成長(実質は表示なし)3.2%でそれ以上のケースはないわけで、財務省自体がそれ以上は現実的でないと考えていると思われますが、岸田政権は「新しい資本主義」で3%を標準とし、更に、景気回復による租税弾性値の上昇を見込んで再建可能としているようです。

そのためには多分「新しい資本主義」の中身「分配と成長」の具体的な内容が見えてこなければならないのですが、この辺りが、政府の手で行われる税制などによる再分配か(消費税増税は考えないようです)、民間労使による労使交渉の結果や、賃金制度、雇用改革(非正規労働者問題)などの効果を見込むのかも重要な関心事項でしょう。

更には、これまで全く論じられていない問題ですが、「家計における分配行動」、つまり「可処分所得の消費と貯蓄への分配」、統計的には平均消費性向についての政策についての岸田政権の新機軸(何かあるだろうと思いますが)の説明がほしい所です。

経済財政諮問会議への提出資料、岸田総理の説明などについての報道が待たれます。