tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

難民問題、もう一つの視点

2015年08月31日 09時51分50秒 | 国際政治
難民問題、もう一つの視点
 最近のヨーロッパを目指す難民の報道には、心が痛みます。誰しも生れ故郷を捨てようというのは、まさに究極の決断でしょう。それを利用して暴利をむさぼる闇の手配師、輸送手段は最悪の無責任レベル。船の沈没も含め、考えられないような多様な形で、多くの犠牲者が出ています。

 受け入れる方もまた大変です。日本の難民認定の厳しさは世界に知れ渡っているようですが、ヨーロッパ諸国は比較的寛容といわれ、特にドイツを目指す人が多いようです。
 しかし現実には地理的に最も近いイタリアやギリシャが先ず対応に音を上げ、ドイツももう限度といった様相です。

 こうした難民問題については、論じられるのは常に受入れの問題ばかりですが、難民発生の原因についての本格的な論議をすることが、矢張り人類社会としては必要なのではないでしょうか。

 難民が大量に発生する時というのは、大抵、国そのものが崩壊に瀕している場合のように思われます。そうした状態になるまでには、それこそいろいろな事情があるのでしょう。
 しかし、今日では、政争にしても紛争にしても、ある程度以上成熟した豊かな国では、殆どそういう例はないのではないでしょうか。

 すべてが経済的なものということは勿論出来ないでしょう。しかし中国には「倉廩満ちて礼節を知る」と言う諺もあり、日本では「金持ちケンカせず」と言います。
 少なくとも、国民が共に、ある程度の豊かさを享受しているとか、将来豊かになっていくという期待を感じられるときには「国家の崩壊」を齎すようなことは起きにくいのではないでしょうか。

 かつてアンクタッドなどの活動が活発で、フランスのイニシアティブで先進国は途上国にGNPの1パーセントを援助しようと提唱し、日本でも池田首相が積極的に賛成したような活動が本格的に継続されていれば、状況は少し違っていたのではないかなどと考えてしまいます。

 地球人類が平和裡に共存・共生していけるようにするためには、矢張り人類全体を1つの単位として考えた全地球的なガバナンスが必要なのでしょう。国連は本来そのために作られたものでしょうが、肝心の常任理事会はその役を果せていないようです。

 理由の一つには、常任理事国の多くは経常赤字国(借金国)という問題もあるのでしょう。経済問題はすべてではありませんが、 NGRの問題でも述べましたように、重要な基本的要因の一つです。
 難民問題でも、当面の対症療法はもちろん重要です。しかし同時に、長期的な視点で根本解決を考える取組を地球レベルで進めることが更に重要なのではないでしょうか。

増加傾向のアメリカの経常赤字

2015年08月28日 12時48分30秒 | 国際経済
増加傾向のアメリカの経常赤字
 中國経済への不信感の増大とアメリカの金利引上げへの思惑などで暴落を演じた世界の株価も、このところ急回復で、ホッとしている方も多いのではないかと思います。

 一部にはこの乱高下で、巨額なキャピタルゲインを得た投機家もおられるのでしょう。そして、こうした所得は実体経済の動きには関係のない、富の単なる移転で、富の偏在を促進する、格差社会化の一因ということになるのでしょうか。

 それはともかく、中国経済の内実は変わらないわけですが、上海市場の安定が「好感」されたことと、アメリカの今年第2四半期の経済成長率が前回の速報値より大幅に改善(2.3%→3.7%)したという2つの情報が、この急速な株価回復に貢献しているようです。
 
 世界の株価が回復することは、経済を回り易くするという意味では結構なことでしょう。特に、世界一の経済大国アメリカの経済が順調に回復しているのであれば、それは世界中にとっても大変結構なことだということになるでしょう。

 それに水を差すようなことは余り言いたくないのですが、最近順調と言われるアメリカの経済回復過程の背後で、アメリカの赤字が、相変わらず拡大傾向という点にも、矢張り注意しておかなければならないでしょう。

 アメリカの国際収支はまだ第1四半期までしか出ていません。第2四半期の数字は9月発表ということですが、第1四半期の数字を見てみますと、アメリカの経常赤字は1133億ドルで、前期の1031億ドルから100億ドルほどの増加です(いずれも季節調整済み、3か月分)。

 年率にすると4000億ドルを超え、18兆円ほどのアメリカのGDPの2パーセント台の数字になります。
 シェールオイルが出る前の4~5パーセントからは大分減りましたが、またこれが、景気回復に伴い次第に増えていくようですとアメリカ経済のアキレスになること必至です。

 9月発表の第2四半期の数字が待たれますし、GDPの数字発表なども、もう少し幅広い見地からの検討や解説が欲しいように思います。

文化遺産破壊、余りにもみじめな人類の統治能力

2015年08月26日 11時24分35秒 | 政治
文化遺産破壊、余りにもみじめな人類の統治能力
 ISがパルミラ遺跡を破壊する写真が新聞に掲載されていました。こうした活動はタリバンがバーミヤンの大仏を破壊したのが始まりでしょうか。
 人類が、その歴史の中で築き上げてきた文化遺産を、無残にも破壊するような行為が流行するような国際情勢に対し、今日の人類は、何が出来るのでしょうか。

 片方で、国連の機関であるユネスコは、文化遺産の認定を行い、それを人類の宝として大事にしようという活動をし、多くの国や人々が、それに賛同して積極的な活動をしています。しかし他方では、その破壊活動が平然と併存するのが今日の人類社会です

 誰しもが、今日の人類社会は、どこかで狂ってしまっていると思いつつも、手の打ち様がないということでしょうか。
 通常の状態であれば、文化遺産の破壊は犯罪として、当然取締りの対象となります。つまり、今の人類社会は、それだけの統治能力がないということに外なりません。

 勿論ユネスコは声を上げて、ISを強く非難していますし、国連も安全保障理事会での討議を考えているとのことです。
 どんな会議になるのか、結果が待たれますが、今日の人類が考えた最も正当性のある国連がいかなる統治能力示せるか。国連は、将来の人類に対して責任を負っているはずです。

 誰しもが解っているのでしょうが、こうした問題は、長く、深い根を持っているものです。
 何故、人類の歴史、文化遺産を軽視し、その破壊活動を平然と行うような人々が今日の人類社会の中に生まれてきたのか、その根源にさかのぼっての検討が必要と思われます。

 単なる対症療法を越えた、今日の人類社会の病巣に達するような討議が行われ、今の人類が、将来の人類に対して責任を果せるような国連の活動に発展していくことを願うばかりです。

経済波乱はマネーか実体経済か

2015年08月24日 15時53分00秒 | 国際経済
経済波乱はマネーか実体経済か
 週末から週明けにかけて、世界同時株安が深刻化しています。最も大幅なのは中国でしょうか。中国政府が如何に抵抗しても、世界の投機筋を相手にしたのでは、なかなか思うようにはいかないのでしょうか。

 中国相手の仕事の多いアメリカの株価も下げ、ついでのこの間まで利上げ憶測で上昇していたドルも下げ、週明けのトップを切った東京市場も株価は暴落、2日で1000円以上下げる一方、円レートは急騰という状況です。この円高も株安の原因になっているのでしょう。

 実体経済の動きを思惑で先取りするマネー市場ですから、状況が良く解らなければ不安で下げと言うのは当然でしょう。

 確かに中国経済の内実は良く解りません。経済活動の一致指標といわれる電力消費量が、かなり減っているようだといった報道もあり、中国政府が経済運営に苦労しているのではないかといった状況も感じ取れますが、経済的は、ある意味では未だ閉じた国ですからアメリカのサブプライム・リーマンショックのような世界経済に大穴を開けるようなことにはならないでしょう。

 アメリカも経常赤字というアキレス腱は持ちながら、実体経済は上向いているというのが現状です。
 日本は、安定成長路線を着実に歩み始めていますし、ヨーロッパ、アジアでも、実体経済は、問題はいろいろありますが、決してひどい状態ではありません。

 マネー経済は基本的には、実体経済の付属物ですから、ここは慌てずに、実体経済の健全化にきちんと努力することでしょう。
 日本の場合は、改めて、増加する経常黒字を、いかに内需拡大に活用するか、みんなで知恵を絞ることでしょう。GDPの2パーセント近い大幅なものですから、巧く活用できれば、日本経済も様変わりになるでしょう。

世界経済一波乱か、問題は米・中

2015年08月21日 11時10分36秒 | 国際経済
世界経済一波乱か、問題は米・中
 アメリカの利上げ時期の思惑、中国の株価下落、巨大事故など、矢張り世界経済に波乱を起こすのは世界の二大大国、アメリカと中国のようです。

 今年の5月に「アメリカの危うさ、中国の危うさ」と書かせて頂きましたが、趣旨は、両国ともに、経済的な無理をしつつ覇権争いをする構図が見えるということです。

 アメリカでは、早期の利上げを望むグループ、慎重を期すグループがあるようです。利上げ、ドル高で世界からカネが集まるのか、はたまた輸出不振で経済成長力が弱まってしまうのか、TPPも思うようにはまとまらない状態です。

 一方利上げを延ばせば、本当にアメリカ経済は強くなるのかというと、金融緩和による消費の拡大、雇用の増加はあるかもしれませんが、覇権の維持のコストも大きく、双子の赤字を解消し、黒字国に転換するような展望は開けません。

 何かを大きく変えなければ、経常赤字の拡大を抱えながら、基軸通貨国アメリカの迷走が続くという様相で、それでは、世界経済は安定しないでしょう。

 中国も新常態というネーミングは良かったのですが、内実に多様な問題を抱えながら、政府は巨大資金を海外で覇権獲得に向けて支出するという政策がどこまで続けられるのか、内外の多くの目が、政治的にも、経済的にも不安を感じているのは否めない所でしょう。
 
 不動産バブルの処理、かつての高速鉄道の事故やその始末の在り方、今回の天津の事故に見るような未成熟な技術や情報処理・管理の中での急速な発展、その内包する多様な不安が感じられます。
 累卵の危うき、修身斉家治国平天下などという中国から学んだ様々な諺が、脳裏をよぎります。
 
 当面、残念ながら、国際経済は波乱含みとなるのでしょうか。
  EUも日本を含む東南アジアの国々も健全な経済建設に一生懸命努力しています。 世界の二大国が覇権を争い、世界経済に波乱を齎すようなことは願い下げにしたいとものです。大国であればあるほど、かつて書きました NGRを大事にしてほしいと思います。

もう少し頑張りたい、4~6月GDP速報

2015年08月19日 10時28分01秒 | 経済
もう少し頑張りたい、4~6月GDP速報
 昨8月17日、内閣府から今年4~6月のGDP速報が発表になりました。実質成長率は前期比マイナス0.4パーセント。年率換算マイナス1.6パーセントということで、これだけ見ると足踏みというより半歩後退といった感じですが、政府や日銀もシンクタンクなども、これまでの経済見通しは基本的には変えていない様です。

 この統計は季節調整済みですが、四半期別のデータは、その時の短期的な事情で、変化することもありますから、出来れば、短期変動より、長期的な趨勢を見て判断するのがいい様に思います。

 趨勢を見る最も一般的なのは、対前年同期比の数字です。去年の同じ時期に比べて上がっているのか下がっていうのかという数字です。
 この4~6月の名目GDPの対前年同期比較は2.2パーセント増で、昨年の4~6月の対前年同期比1.8パーセント増より少し良くなっています。実質値は0.7パーセントで前年4~6月の-0.4より大幅改善です。消費増税の影響が消えたからです。

 ということで、まあまあ順調と言えないことはないのですが、残念な点が幾つかあります。(以下の数字はすべて対前年同期比の名目値です)

 まず、国内需要が0.6パーセントしか増えていないことです。しかもそのうちの民間需要は0.4パーセント、さらに民間消費支出は0.0、家計最終消費は-0.0(マイナスで四捨五入でゼロ)パーセントです。

 民間企業設備が3.9%増と健闘していますが、民間住宅投資の減などが足を引っ張り民間需要は結局、上記の0.4パーセントしか増えていません。

 成長率(GDP増加)を押し上げているのは、公的需要1.4パーセントと純輸出(財・サービスの輸出入の差、)の6.6パーセントの増です。 
 国内総生産の前年同期比2.2パーセント増はまあまあですが、その2.2を寄与度でみると、民間消費はゼロ、民間投資が0.2、政府支出が0.4、純輸出が1.6で合計2.2、民間消費の不振が目立ちます。

 だから賃上げが必要という意見もあるでしょう。しかし、いつも書きますように、キリギリス型のアメリカに対し、アリ型の日本人です。将来不安があると消費を切り詰め貯蓄に回してしまいます。
 日本の家計は国際的に見ても、カネが無いわけではありません。国民の不安をなくす政府の政策づくり、企業の魅力ある商品・サービス創造、そしてより快適な未来を目指す国民生活の積極化で、もう少しエネルギッシュな日本経済にしたいものです。

ホタル飼育とDNA論議

2015年08月17日 10時29分19秒 | 環境
ホタル飼育とDNA論議
 このブログでも時々書いていますが、我が家(都下国分寺市の野川のほとり)では蛍の飼育を試みています。「ホタルよもう一度」という会もあり、私も入れてもらいました。

 国分寺で育った人に聞きますと、昭和30年代前半までは、野川周辺や玉川上水から引いた何本もの用水(最終的には国分寺崖線を下って野川に落ちます)には多くの蛍がいて、米糠を撒いたようにいるので「糠ボタル」などといわれていたようです。

 水道の普及で用水が不要になり、他方、下水道の未整備で野川も用水も家庭廃水用の下水路と化した昭和40年代、国分寺のホタルは絶滅しました。
 今は下水道の完備で野川は綺麗になりましたが、三方コンクリートの「水路」では蛍は育ちません。

 私は昭和38年、国分寺に移り住んで以来ホタルの復活を楽しみにしていましたが、偶々雨水の貯水タンクを備えれば、ホタルが人工飼育できそうだという知識を得、この数年、成功や失敗を繰り返しているという訳です。

 以上が前置きですが、ホタル飼育の知識を得ようとネットの情報を見ていると、ゲンジボタルもヘイケボタルも、地域によってDNAが異なり、それを無視して、どこからでも種蛍を仕入れて飼育するなどは生体系の破壊で怪しからぬことだ、という意見が沢山出ています。

 魚や亀と違って蛍は飛びますから、自宅内管理など不可能です。残念だが悪いことならやめなければならないかと思ったのですが、いや待てよと考えました。

 皇居の吹上御苑でホタルが見られないかという昭和天皇のご希望で、日本中から献上蛍があり、今、関西系のホタルが定着しているということです。
 本栖湖でクニマスが発見されて、大きな話題になりました。人間の手で田沢湖から持ち込んだものですが、みんなが喜んだ報道でした。

 国分寺のホタルは絶滅しました。このままでは国分寺にホタルの飛ぶことはないでしょう。ならば、どこのホタルでもいいから、それが次第に定着し、初夏の用水や野川に蛍が舞う風景を見られた方がよほどいいのではないかと私は考えます。

 もし将来ホタルが定着するのであれば、それはこの地域の自然に適応したDNAの蛍でしょう。一度絶滅した蛍です、飼育の努力は生態系の破壊ではなく、生態系の新生です。

 DNAも大事でしょう。しかしDNA研究が大事なのは、人間の生活・社会に役立つからです。大事なのは、DNAではなく、人間の生活なのです。DNA論議も、あまり視野狭窄にならないようにしてほしいと思うのですが、専門家の意見はどうなのでしょう。

多様性の「共生」を認め合う社会を

2015年08月15日 07時53分21秒 | 社会
多様性の「共生」を認め合う社会を

 今年も8月15日が来ました。戦後70年です。日本中が晴れて暑かったあの日を思い出します。国民学校の6年生の夏休みでした。住んでいた甲府市は7月6日夜の空襲で焼け野原、先生も生徒も散り散りになり、そのまま夏休みに入っていました。

 突然に住む所を失い、親の実家、現在の笛吹市に疎開、生活の再建に親子4人で取り組んでいる最中でした。雑音混じりの玉音放送の中の辛うじて聞き取れた個所から、戦争が終わった、日本は負けたと理解し、これからどうなるのかと思ったことを覚えています。

 今年も8月15日を前に、連日TVで戦争の悲惨さ、戦争の不条理さが報道されていますが、古来、人間は、どうして、こうも懲りずに戦争を繰りかえすのでしょうか。
 ユネスコ憲章の前文にあるように「戦争は人の心の中で始まるものであるから、平和の砦は人の心の中に築かなければならない」と解っていながら戦争を繰り返すのです。

 そうした中で、戦後70年、日本は戦争をしませんでした。これは貴重だという意見が聞かれ、その通りだと思う方も多いでしょう。
 さらに言えば、日本列島では、縄文時代の1万年以上の間、戦争がなかったと考えられています。征服、被征服が無く、奴隷制もなかったというのが研究結果のようです。

 日本人は、世界でも最も多様なDNAを含むというのが定説で、北からも南からも西からも、いろいろな人々が来て極東の日本列島に吹き溜まったようです。
 そしてその人たちは、一万年以上の長い時間をかけて狭い列島の中で、均質といわれる日本人を形成し、争いを好まない文化を作り上げて行ったのでしょう。
 これはある意味では、人類の歴史の中で、多様性の平和共存という生き方の典型の一つではないでしょうか。

 こうした日本人、日本文化の源流の認識に立てば、ここ70年の戦わない日本は、今後何万年かの戦わない日本の新たな出発点なのかもしれません。
 
 その日本人も、弥生時代、明治以降、外来文化を積極的に取り入れ、それを進歩・発展の原動力にする中で、優れた先進文化とともに、戦争も取り入れてしまいました。
 
 これからの日本は、外国から戦争という悪い文化を取り入れるのをやめ、逆に、多様性の平和共存・共生という日本伝統の文化、人間の生き方を輸出することに尽力すべきではないでしょうか。
         ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(併せてご覧ください:「日本人と平和のルーツ」 同じ趣旨で6年前に書いたものです。

人民元相場、世界市場をかく乱

2015年08月13日 14時05分16秒 | 国際経済
人民元相場、世界市場をかく乱
 人民元は従来、ほぼ対ドルリンクの状態で来ていましたが、ここに来て中国の方針は変わりました。今日で3日連続人民元の基準値は対ドルで切り下げられ、累計で4パーセント以上の切り下げです。影響で世界中での株価が暴落したりしています。

 アメリカでは利上げの思惑が交錯する中で、ドル高基調が予想され、それにリンクして人民元高では中国経済はやれないということでしょう。
 前日のレートの終値を勘案して基準値を決めるというのは、それなりの考え方で、投機筋の思惑次第で動くのよりはまだいいのかもしれません。

 少なくとも、中国政府の意思が示されているわけですから、国としての理論も政策もその中では見えていると理解すべきでしょう。 
 IMFなどは、市場を尊重するという意味では歓迎、などという意見もあるようですが、これも「市場は正しい」という前提があっての問題でしょう。

 先日、人民元の1元硬貨が、市中から消えたことを書きましたが、かつて、最低賃金を連年大幅に引き上げたこともこれあり、中国経済の実態は、かなりのインフレだと私は見ています。

 賃金は上がっても、高付加価値経済にすればやっていけるというのが、中国の政策だったのかもしれませんが、高付加価値経済にするのは、そんなに簡単なことではありません。
 特に中国経済は、先進国の企業進出頼み、資本と技術が入ってくれば、大量の低賃金労働者の単純作業の熟練で世界の工場になれたのです。

 コスト高になれば、加えて、金利上昇によるアメリカのマネー引き上げなどがあれば、そこから自力で脱出するのには、長期の血のにじむ技術開発、生産性向上の努力が必要でしょう。

 結局、最も簡単な対応策は、人民元安ということになってしまうのも致し方ないことなのでしょう。
 海外進出を図るには人民元高の方がいいのでしょうが、そちらを多少犠牲にしても、中国本体の経済を立て直すことの方が先決でしょう。

 通貨安による経済立て直しは、ニクソンショック以来、先進諸国の常套手段になってきているのですから、正面切っての文句も多分ないでしょう。
 中国がどこまでの切り下げを考えているのか。その辺りから、中国経済の問題の深刻さが解るのかもしれません。

アメリカの利上げは現実に?

2015年08月10日 21時02分44秒 | 経済
アメリカの利上げは現実に?
 アメリカの雇用統計が順調な動きを示しているので、年内の利上げの可能性が見えてきたということでしょう、円レートが125円台を付けたりしています。

 推測の根拠は、経済成長も第2四半期は前期比+2.3パーセントと回復し、雇用の増加が比較的順調に推移しているということのようですが、速報値はかなり修正される可能性があるといったことは別にしても、内容は、いろいろと問題点も含んでいて、FRBがいかなる見方をするか、大変興味あるところです。

 連邦公開市場委員会(FOMC)委員の1人で、アトランタ連銀総裁のロックハート氏の発言などあって、早期利上げの思惑を呼んでいるのでしょうか。
 しかし、アメリカ経済が順調といっても、問題はいろいろあるように思われます。

 経済成長の中身も相変わらずの消費中心で、設備投資の方はあまり動きがないようですし、貿易収支は、シェールオイルなどのお蔭で改善したはずですが、原油価格の低下、製造業の競争力が、ドル高で阻害されるなど、利上げとの関係などは極めて微妙のようです。

 もう一つの指標、インフレ率は、目標の2パーセントには遠く及ばず、(日本もそうですが)前年同月比では辛うじてプラスを維持している程度です。これは、資源価格の低下や賃金が上がらないからなどと説明されていますが、イエレンFRB議長はこれをどう判断するでしょうか。

 基本的に言って、アメリカ経済は、異次元金融緩和で、ドルを切り下げ、何とか競争力を維持し、株価上昇で所得を膨らませ(前回は住宅価格の上昇)、景気の維持を図っている様子で、それにシェールオイル・ガスといった追い風が吹いたのですが、一方でマイナス要因も出て来ているのでしょう。

 日本が、アメリカに倣って異次元金融緩和をやり、円安で競争力を格段に強めた(アメリカもこれには文句が言えない)こともこれあり、アメリカの国際競争力強化は中途半端になり、貿易収支も経常収支も赤字が減らず、シェールオイル効果も原油安で相殺され、株価上昇は所得格差を拡大し、一般賃金は上昇せず、低所得層の不満が拡大、矢張り金融緩和だけで実体経済が救えるのかという、根本問題が提起されているように思われます。

 恐らく早めの利上げはアメリカ経済の回復基調を腰折れさせることになるのではないでしょうか。であれば、利上げはまだ遠いということになります。
 実体経済は消費や物価だけでは判断できません。生産力の回復、競争力の向上、それによる雇用の増加、といったプロセスが必要なのでしょう。
 そして本当にそれが実現すれば、貿易収支、経常収支も(その結果として)改善するという形になるはずです。

 アメリカ経済の真の回復は、まだまだ遠いように思われるのですが・・・・・。

猛暑と電力ピークカット

2015年08月08日 13時51分20秒 | 科学技術
猛暑と電力ピークカット
 東京でも猛暑日が8日も続くとは、想像も出来ませんでした。
 年齢もこれあり、適切な水分補給と冷房使用は大切と、TVからのアドバイスをしっかり守って、何とか無事過ごせていますが、これでは電力が大変と思っていたところ、思わざる有難いニュースがありました。

 この暑さでも、今年は電力需要のピークでも結構余裕があった、という報道です。すでに甲子園の高校野球が始まりました。夏の電力需要のピークは、冷房をつけて、テレビで甲子園の高校野球観戦の時間帯というのが定説になっていましたが、ちょっとビックリです

 理由は、太陽光発電の普及ということだそうです。ついでに言えば、テレビの画面は大型化しても、消費電力はどんどん少なくなる技術開発も応援しているのでしょう。

 かつては、再生可能エネルギーなど、いくら増えても全体の2パーセントどまりなどという作られた説もありましたが、技術の進歩と、社会の意識・知識の進歩で、状況は次第に変わって来ているようです。

 好天で日差しが強く、熱い、熱いという時ほど、太陽光発電は順調に発電量を増やしてくれているようです。まさに前述のピークカットのために最適の設備ということのようです。

 高架の中央線電車の北側の窓から沿線の屋根を見ても、増えたとはいえ、まだまだソーラーパネルはそんなに多くありません。しかしこれからも着実に増えるでしょう、いわゆるスマートハウスでは、蓄電池併用も珍しくなくなるようです。これからも、電力供給の世界は、益々変化していくのではないでしょうか。

 今回のニュースは、何か新しい展開の第一便を届けてくれたような気がします。

トヨタの決算発表と今後の日本経済

2015年08月05日 15時48分31秒 | 経済
トヨタの決算発表と今後の日本経済
 昨日、トヨタの本年度第1四半期の決算が(東証の取引終了後)発表されました。営業利益が前年同期比で9.1パーセント増加し、7560億円の過去最高になったというもので、年度通期の予想でも最終利益で3パーセント台の増加を見込むなど順調な経営状況を示すものでした。

 一夜明けて、今朝の東証ではトヨタ株は、午前中に200円以上も下げるという展開です。前日のNY市場の下げもあったからとか、もっと大幅な業績アップを期待していた投機筋もあったのかもしれませんが、この辺りにも実体経済と株式市場の意識の違いが見えるように思います。

 一昨年、昨年と、主要な日本企業の多くで、急速な業績改善が見られました。この原動力は言わすと知れた黒田日銀の金融政策による、$1=¥80から$1=¥120の円安です。
 いつも書いていることですが、円安は、輸出企業に差益を齎すだけではありません。日本の国内コスト(物価も)が「120から80円に」下がったわけですから(勿論ドル建て)、その恩恵はすべての国内企業に及びます。(観光客も爆買いも増えます)

 プラザ合意以来、長期の円高で苦労した日本経済ですが、為替レートの正常化で息を吹き返すことになったわけで、円安が進むプロセスでは「予期せざる業績改善」が起こります。

 ところでどうでしょうか、これ以上の円安を予想する向きもないではないですが、そのほとんどは投機筋です。実体経済を見れば、今の為替レートを安定させることが適切と考えるのが正常な感覚でしょう。

 ということになると、今後は、過去2年のような「予期せざる業績改善」は消えていくでしょう。日本企業、日本経済は、安定した為替レートの下で「地道な」経営・経済活動をすることになるでしょうし、政策当局もそれを心掛けるべきでしょう。

 中国流の表現を借りれば、今後の姿が日本の「ニュー・ノーマル」という事ではないでしょうか。

 これもいつも書いていますように、何時も真面目に頑張る日本企業です。国内は勿論、世界での多様なビジネスチャンスを見出し、それぞれの社会に役立つような技術開発で先行し、それぞれの社会が貧困を克服し、より快適な生活が可能になるような貢献をしていけば、安定成長路線は十分達成可能でしょう。

 丁度今が、経済の変わり目でしょう。例えて言えば、「円安の進行というお祭りは終わった。堅実な成長路線を如何に模索するか」がこれからの課題でしょう。日本人、日本企業の真価が問われる時代に入るようです。

TPP 何を目指す?

2015年08月02日 10時49分43秒 | 国際経済
TPP 何を目指す? 
 かつて 「TPPの胡散臭さ」と書かせて頂きました。
 そのTPPがいよいよ決着の時期を迎えて、多様な意見の相違に喘いでいます。発展段階の違いや経済特性の違いを無視して、何でも同じようにすればいいという理屈は、最先進国には有利かもしれませんが、みんなの幸せには繋がらないものなのでしょう。

 日本もここまで来たらというのでしょうか、乗りかかった船というのでしょうか、何とかまとめたいと日米協力の姿勢ですが、全てはアメリカの意向で進んでいることで、決着の時期もアメリカの大統領選にリンクしているのです。

 日本は経済力があるから、多少の犠牲を払ってもTPPを進めたいと思っているのかもしれませんが、日本の経済力はもっと違った途上国の援助・育成といった施策に活用した方がいいのではないでしょうか。

 アメリカのもともとの発想は、発展するアジア市場を何とかアメリカの産業発展の舞台にしたいということなのでしょうが、アメリカ自体の産業が、自力で頑張るより、ロビー政策で何とかしようということでは結局は駄目でしょう。
 アメリカの万年赤字が、TPPがまとまれば解消するなどということは考えられません。であってみれば、次は更なる「何か」を考えることになるのでしょうか。

 アメリカが言い出したのか日本なのか解りませんが、TPPはアジアへの強力な進出を図る中国を、何とかして共通の経済圏に入れようとの意図もなどといわれます。TPPも進化するのかもしれませんが、そうしたアプローチには、恐らく別の方法論が必要でしょう。
 参加した国の中でもまとまらないものに、中国を巻き込もうとしても、一層まとまらなくなるだけではないでしょうか。

 アメリカはアメリカのメンツをかけて纏める努力をするでしょう。日本は、日本なりの協力の姿勢を取るでしょう。
 しかし、TPPが将来、世界に大きく評価されるようなものになる可能性があるでしょうか。二国間協議を多少広げた様なレベルで、何とか譲歩を引き出そうと細かい交渉をギリギリやっても、基本理念も曖昧、各国の損か得かのやり取りばかりのように見えます。
 
 TPPがまとまれば、アメリカ経済が健全になるというのなら結構な話でもありますが、そんな可能性は極小でしょう。

 もう少し各国の多様性を認め、自主性を認め、その中で、発展段階の違った国でも、それぞれに自力で頑張って、世界経済をより良いものにしていくようなアプローチもあるのではないでしょうか。

 そして、それには、先進国が自身の経済を健全化し、余裕を持って、途上国経済を育成支援していくような基本的哲学が必要なのではないでしょうか。