tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

嵐の前の静けさ?

2018年09月30日 18時24分54秒 | 国際経済
嵐の前の静けさ?
 地球環境の変化の結果でしょう。今年の台風は規模も大きく、数も多いですね。今回の24号も、すでに沖縄、奄美は深刻な破壊を受け、9月30日の夕刻現在、西日本がその影響を受け始めています。

 当初は東シナ海に抜けるかと見ていましたが、結局は日本列島を真っ向から縦断という最悪のコースを辿るようです。
 これから明朝までの間、どうにも気が休まりそうもありまあせん。

 天気もそうですが、国際情勢、国際経済情勢も何か似たような展開になるのではないかと危惧しています。
 地球環境の変化と同じように、国際関係の雰囲気も全地球的に何か良くない方向に変化してるような気がします。

 具体的に見ますと、覇権国、基軸通貨国のアメリカが、力の保有は誇示しながら、経済的には被害者意識の塊のようになり、世界への貢献などはどこかへ放擲、自国優先の「アメリカ・ファースト」国連の場でも恥ずかしげもなく宣言するような状態です。
 大国の矜持、ノブレス・オブリージェ、NGR,などといった概念は消滅してしまったようです。
 
 さらに、戦後70余年の世界の建設の中で、地域協力などの形で国々が協力し統合化して発展をと考えて来た統合型の国際関係への動きが、なぜか分裂の傾向を、あちこちで見せています。

 また、共産圏も含めて、経済社会が色合いの違いはあっても民主的運営を目指してきた一貫した動きが、なぜかこの所、権力集中に動く様相が見えて来ています。

 地球環境としての国際関係が統合から分裂、民主化から権力集中という変化の様相が見えるというのは、地球環境になぞらえて言えば、国際関係という地球人類の環境が変化(悪化か劣化か?)して来ているように感じられるのですが如何でしょうか。

 こうした国際関係の変化が見られる中ですが、世界経済は、何とかリーマン・ショックの克服に成功、成長路線を取り戻すプロセスにある段階ですが、国際関係・政治状況といった地球環境の変化が、何時なんどき、具体的な形で経済にも打撃を与えることになりかねないという心配があるのではないでしょうか。

 今夜の台風24号の襲来を前にして、まさに「嵐の前の静けさ」の中で、ふと、そんな事を考えてしまった次第です。

「毎月勤労統計」のご利用には当分ご注意を!

2018年09月29日 11時30分56秒 | 労働
「毎月勤労統計」のご利用には当分ご注意を!
 この春5月9日のこのブログで「賃金上昇率の動きに変化?」を書きました。
 今年に入って賃金上昇率がハッキリと高くなっているという事を「毎月勤労統計」のデータをグラフにして説明したものです。

 私自身、この統計には 多少不安で、一時的なものかもしれないので、今後さらに見ていかないとと本当の所は解らないと書いていますが、今朝、新聞記事の中で、「毎月勤労統計」のサンプルの取り方が変わったので、過去との比較が正確に出来ないのではという解説記事があり、私の疑問は取り敢えず氷解しました。

 疑問氷解はいいのですが、賃金、労働時間その他我が国の「勤労」に関わる分野の統計としては基幹中の基幹統計である、いわゆる「毎月勤労統計」の今回の改定の結果の数字にはは些か疑問を感じているところです。

 統計には、一定の期間を定め、サンプルの再設計は当然必要ですが、今回の改定でサンプルのつなぎ方が大きく変わっていました。

 サンプルを取る母集団を「経済センサス(旧事業所統計調査)」から「事業所母集団データベース」にしたとのことですが、この違い(改善点)の説明は十分ではないように感じます。多分精度を高めるとかアップデートが適切になるという事でしょうか。

 もう1つはサンプルの入れ替え方法です。これまで一定期間同じサンプル事業所で調査し、一定期間後、サンプルの総入れ替えをし、その際発生する誤差については新旧サンプルの並行調査期間(1年?)を設けてリンク指数を作成して補足という形だったと記憶しますが、今年からはサンプルを毎年3分の1ずつ入れ替えるというローテーション方式にしたそうです。(入れ替えについての誤差については簡易な補助資料があるようです)
 
 いずれも合理的な改定という事で、行われたのでしょうが、結果、出てきた統計数値は前述のように、何か違和感を感じるものです。
 新聞の解説では、サンプルに大企業傘下の事業所が多く含まれるようになった、などとありましたが、新旧接続時点での、利用者への配慮はどうだったのでしょうか。

 日本の統計の精度は世界に冠たるものと私は信じていますが、 GDPの増加の多くの部分がGDPの定義の変更によるもの(それを断らずに安倍総理が成長率の説明に利用)だったり、裁量労働では 業務統計を正式なサンプル設計による統計の様に使ってみたりすることもあったので、何か統計の使い方も含めていい加減になっているように感じて残念です。
 正確な統計を作り、正確な使い方をしましょう。

FRBは金利正常化の仕上げへ

2018年09月28日 15時01分44秒 | 経済
FRBは金利正常化の仕上げへ
 日米貿易交渉では、昨日のトランプ・安倍両首脳の発言では見られなかった「本当は大変ですよ」「何が起きるか解りませんよ」という解説が今日は軒並み出されているようです。
 TGAと言っても実質はFTAと変わらないことになるから、日本は二国間交渉の土俵に引きずり込まれた、結局日本は譲歩した、先行き大変ではといった解説です。

 これからの展開はトランプさん次第で皆目解りませんが、東京市場の方の反応は何か逆みたいで、昨日は結構な下げ、今日は大幅上げという状況です。

 これは日米交渉の結果を楽観しているのでしょうかというと、それにはまだまだ情報が足りないと思われます。 
 日経平均の上昇の要因は、解説によれば、アメリカの金利の動向、FRBが如何なる方針をもって金融正常化の仕上げに動いているかが、一昨日のパウエルFRB議長の記者会見から読み取られ、その反映でしょうか円レートが予想外の$1=¥130円を超える円安に展開していることが大きいのではないでしょうか。

 過日、トランプさんは111円が望ましいというような発言をしたように記憶しますが、今回のFRBの利上げについてはトランプさんは大いに不満のようです。
 円安になるのと同時に、人民元安にもつながるでしょうから、中國製品に関税をかけても、人民元安になった分は相殺されてしまうので、関税の効果も薄らぐでしょう。

 イエレン議長の時もそうでした。トランプさんのホワイトハウスとFRBの確執が見られましたが、FRBは金融政策は政治とは関係ないとその独立性を明確にしています。
 我々市井の傍観者から見れば、国連総会の演説で満場の失笑を買うトランプさんはポピュリズム堕し劣化したアメリカの姿、FRBの重責を担い金融政策の専門家として生涯を貫くバーナンキ、イエレン、パウエルといった人たちの学殖、識見の方を、アメリカの本来の姿と考えてしまいます。

 アメリカが金融政策の方向を世界に明示したことで、世界各国の金融・経済政策にそれなりの見通しができ、国によるプラス・マイナスは別として、取るべき政策の方向が理解され、世界経済の不安定性を和らげる効果が出てきているのではないでしょうか。
 
 経済や社会を不安定にするのは、先行きがどうなるのか解らないという状態でしょう。その意味で、FRBの意向表明は、基軸通貨国として、取るべき行動を確りと取ったという事ではないでしょうか。(ちょっと褒め過ぎかな?)
 
 さて、日本の中央銀行は、日本の企業や家計の安定感(安心感)促進のためにどう反応を示しどんな政策をとるすのでしょうか。

日米首脳会談の結果はどうなるのか?

2018年09月27日 11時44分47秒 | 国際関係
日米首脳会談の結果はどうなるのか?
 日米首脳会談が終わり、記者会見もあって、TAGなどという聞きなれない言葉も出て来て、ニュースで知る所では結局はあまり問題ないのではないかといった感じですが、どうでしょうか。

 TAGというのは 「日米物品貿易協定」と訳されていますからtrade agreement on goods でしょうか。サービス収支はアメリカが黒字ですから「別」なのかなどと勘繰ります。

 会談の結果、TAG交渉の開始で一致、交渉の間は、自動車の関税引き上げについては言わない、農産物で日本の輸入品目については過去の貿易連携協定で決めたものに限定、関税はTPP交渉で決まったものを越えないという事のようです。 それなら、これで済めば大変結構という感じです。
 しかし、何故か、日経平均はあまり反応しないようです(何かあるのかな・・・?)。、

 日本はそれでいいのかもしれませんが、トランプさんはどうでしょうか。国連総会で誇示(失笑の対象だったようですが)したような中身はないように感じられますが、何かトランプさんにとっては国内向けに誇示できることがあるのでしょうか。今後の展開を見なければ、まだまだ解らないように思えます。

 北朝鮮問題については、安倍首相も多少前向きに姿勢に切り替えたようで、金正恩さんとの直接対話の用意があるとの意向を示しています。いよいよ他人に頼む段階を終えて、本人が乗り出すというと格好いいのですが、北朝鮮の方は日本に対して嫌がらせばかりを言っています。

 北朝鮮の事情から言えば、先ずは金王朝の存続(体制維持)そして、如何に外国からより多額のカネを引き出すかでしょう。日本はそのためには格好の相手でしょうから、今からその前哨戦を仕掛けているといった様相です。

 トランプさんは、その辺りの負担は「日本に任せる」といった類の発言が、これまでもみられてきていますから、この辺りで辻褄が合うのかなどと考えたりします。

 とはいえ、TAGの中身がどうなるのかも予断を許さないと思います。すべては、どう言えば(すれば)中間選挙に良い影響が出るがどうかでトランプさんが判断するのでしょう。
 独裁政権とポピュリズム民主主義双方の思惑の狭間で、日本は右往左往することになるんでしょうか。

 米朝も米中も、平穏であることが世界にとっても良いことでしょう。日本がそのあるべき主体性、世界の平和をあくまで希求するという理念を明確にしながら、こうしたトラブルメーカー達の狭間にあっても、確りとその役割を果たしていけるのかどうか、これから日本外交が問われていくのではないかと感じるところです。

付加価値の分配についての2つの考え方

2018年09月26日 20時56分06秒 | 経営
付加価値の分配についての2つの考え方
 前回、国際収支の中の「第一次資本収支」について、労使の分配論争になる可能性も有りそうだ、という点について指摘しました。
 その点について、もう少し考えていってみましょう。

 問題は、海外からの利子配当収入が中心の「第一次資本収支」の大部分は海外の企業への出資や融資への対価、また海外の子会社などから日本国内にある親会社などへの資金提供への対価としての金利や配当の支払いです。

 つまり日本国内の企業が、海外の企業に資金を提供して生産をするのですが、働くのは海外の労働力で、賃金はその人たちに支払われます。「労働への分配」は海外の労働力への賃金として支払われ、日本国内の企業は「資本への分配の中から、金利や配当」
を受け取るわけです。

 ならば、第一次資本収支は利益の中での分配で、その中から更に労働への分配は必要ないという理屈も成り立つという見方もできます。
 今、多くの日本企業は内部留保を沢山積み上げているから、もっと賃上げに回せるではないかという意見は強いようですが、「それは筋が違う」という事になります。

 さて、これはどう考えたらいいのでしょうか。

 この問題を考えていきますと、付加価値の分配には2種類の考え方があるという所に行き当たります。
 1つは伝統的な考え方で、「付加価値は労働と資本の貢献度に応じて支払うのが正しい」というものです。
 もう1つは「将来が最もよくなるように分配するのが正しい」という考え方です。

 成果を上げた従業員に大きな昇給やボーナスで応えようとか、ファンドがもっと配当をよこせというのは前者の考え方です。
一方、親が一生懸命稼いで、自分は少ない小遣いで我慢し、子供の教育につぎ込むというのは後者の考え方です。
 さて、どちらが正しいのでしょうか。

 これはどうも、「正しい」とか「間違っている」とかいった問題ではなく、人や企業が、いかなる理念で生きているか、また企業を経営しているかという事でしょうし、国であれば、為政者がいかなる国づくりをしようとしているかにかかわる問題です。

 貢献度方式もある程度は必要でしょう。例えば、従業員は同じで、新鋭機械を入れて、付加価値が5割増えたら、その分はすべて増えた減価償却、資金を提供したファンドへの配当に充てるべきなのでしょうか。従業員の賃上げもし、企業の利益も増やし、皆が喜んで更なる企業の発展に力を尽くすようにしようと考えるのが良い経営と言われる方も多いでしょう。

 多分、企業というものはそうあるべきだ、それで社会全体も良くなると考えて、経営者が資本家に取って代わり、賃金は労使で決定するという労使関係が一般的になり、企業の安定発展を「労使が共に望む」という日本的経営が出来上がったのでしょう。

 矢張り最終的には、貢献度方式はほどほどにし、企業の将来、つまり長期的な安定・発展が大事だと多くに人は考えているのではないでしょうか。

日本の国際収支の構造変化:発生する諸問題とは?

2018年09月25日 11時56分19秒 | 経済
日本の国際収支の構造変化:発生する諸問題とは?
 加工貿易、輸出立国を旗印にした日本が変わりつつあります。世界の工場と言われてきた中国も対米輸出でトランプの壁に突き当たっています。
 一国の国際収支構造は、その国の発展とともに変わることになるようです。

 変わってゆく行く先は何処でしょか。1つの典型はアメリカでしょう。国内の主要産業地帯は「ラストベルト」と化しても、海外へ進出した米系企業の工場からの安価な製品の輸入で豊かな暮らしをすることを狙ったのでしょう。
 しかし、付加価値の多くの部分は進出先の国のGDPとなり、第一次資本収支(海外からの利子配当所得)やサービス収支の黒字は増えても、増大する貿易収支の赤字を埋めきれなくなり赤字国に転落しています。

 その対策として、先ず相手国にアメリカの国債を買わせる、さらに、金融資本主義、金融工学を発展させ、マネーゲームのキャピタルゲインで赤字解消を狙いましたが、サブプライム・リーマンショックで挫折、頼みのアメリカ証券(高格付け)の信用は失墜、残された手段はトランプ流「関税戦略」というのが現在の姿です。

 こうした流れの基本線を見ますと、「コストの安い地域への工場進出」「安価な製品の輸入」「第一次所得収支の増大」の組み合わせの問題点が見えてきます。

 人間は付加価値(GDP)で生活しているのですが、付加価値の大部分は製造過程で生じます。その配分は人件費7割、資本費3割(労働分配率70%)辺りが一般的でしょうか。
 資本費の一部を利子配当で受け取っても付加価値の大部分は進出先の国のGDPに人件費として計上されるのですから、次第に貿易赤字は資本収支黒字を上回り、遂には赤字国になるのでしょう。

 対策は、製造部門の適切な規模を、国内に残しておくことでしょう。
 例えば、トヨタは国内生産300万台は死守したいと言っています。キャノンやダイキンなどは国内工場を自動化・無人化して、海外生産を国内に引き戻すこともしています。
 日本企業のアプローチは「出来るだけコスト安の海外生産に」というアメリカ企業とは些か違うようです。

 この違いはどこから来るのでしょうか。恐らく、今現在の利益極大を考えるアメリカ企業と、長期の存続と発展を考える日本企業の違いでしょう。
 付け加えれば、日本企業は、国と企業の利益相反についても、本能的に読み切った行動をしているのではないでしょうか。

 しかし日本企業も変わります。アメリカ流に憧れる新時代の経営者もいらっしゃるようです。
 今は万年経常黒字国と言われる日本ですが、前々回、前回お示ししたグラフの行く先はどうなるのか、(トランプさんの圧力もあり)注視する必要もありそうです。

 ついでにもう一つ、今の日本で起きている問題を付け加えておきましょう。
 第一次資本収支の太宗は海外子会社からの利子・配当として親会社、つまり企業に入るわけです。
 企業として考えますと、これは海外の従業員に人件費を支払った残りの部分なのです。つまり人件費への配分はもう済んでいるわけで、そう考えてきますと、これで利益や内部留保が積みあがっても、日本の従業員に分配するべき性質のものではない(日本の従業員への賃金支払の原資として考える必要はない)という理屈もなり立ちます。

 最近の内部留保論争の根っこは、企業の(多分)無意識の思考回路の中にあるここうした認識に関係しているのではないかという推論も成り立つのではないでしょうか。

 企業の国際展開には、国や社会の状況との いろいろな関連を見ていく必要がありそうです。

日本の国際収支の構造変化:第一次所得収支・サービス収支

2018年09月24日 11時51分44秒 | 経済
日本の国際収支の構造変化:第一次所得収支・サービス収支
 前回、日本の貿易黒字は次第に縮小してきていることを見て来ました。これは生産大国から投資大国へのプロセスで起きるようです。
 国内で作って輸出するより、コストの安い国に工場進出して作る、あるいは輸出先の国で作れば輸出のコストが省け、相手国も喜ぶといった理由が言われます。
 トランプさんが、特に自動車について「日本企業はもっとアメリカで作れ」というような要求をすれば、この傾向はさらに強まります。

 アメリカはこれが行き過ぎて、 アップルの最新製品も殆ど中国で作って輸入するので、貿易赤字が大きくなっているのは当然でしょう。
 それでは日本はどうなのかと言いますと前回指摘の貿易黒字の縮小傾向という事になるわけですが、その反面で、海外に進出した企業が利益を上げ、配当や利子を沢山日本国内の親会社に送ってきます。

 この、海外からの利子・配当収入は国際収支統計の項目としては「第一次所得収支」という項目に集計されています。
 では日本の第一次所得収支の動きはどうなっているかと言いますと下の図です。

日本の第一次所得収支とサ-ビス収支(財務省:国際収支統計 単位億円)


 リーマンショックの後の(平成20年~24年)という低迷期はありますが($1=¥120が円高で80円になりますと、1ドルの配当をもらっても、それまで120円だったのに80円にしかならないという事もあったのでしょう)、ほぼ一貫して増えています。現状では年間約20兆円、500兆円のGDPの4%近くになります。
 ただこれは、国内で生産された経済価値(付加価値)ではありませんので、国内総生産(GDP)には入ってきません。( GNI:国民総所得には入ってきます。もちろん日本として使う事の出来るおカネです)

 上の図では、サービス収支も(見にくいですが)青い線で入っています。これは特許料とか映画やソフト・アプリの利用料などで、日本は技術導入や外国映画などでずっと赤字でしたが、最近は日本からの輸出も増えてそろそろ黒字転換でしょうか。

 こうして、日本の国際収支は、貿易黒字は減りましたが、企業の海外進出や技術、ソフトウエアなどの輸出がそれを補って余りあるほどになり、万年経常黒字国になっているのです。

 では、アメリカはどうなっているかですが、勿論、第一次所得収支もさらにサービス収支はずっと黒字です。しかし貿易収支の赤字が大きすぎて、万年赤字国になっているのです。つまり、企業がコストの安い海外出て稼いだ方が有利という事で、国内生産はそっちのけで海外に出て行ったという事でしょう。 
 企業は自分の利益だけを考え、国の経済構造などには関心が無かったという事になりそうです。国と企業の利益相反の悪い例の典型でしょう。

 この問題に関してはまだ検討すべき問題点がありますが、長くなるので今回は第一次所得収支の問題に絞りました。

日本の国際収支の構造変化:貿易収支

2018年09月23日 11時42分52秒 | 経済
日本の国際収支の構造変化:貿易収支
 安倍さんは日米首脳会談に向けて出発しました。さて、トランプさんは、対日貿易赤字についてどんなことを言うのでしょうか。
 昨2017年のアメリカの貿易赤字は7962億ドル(約86兆8千億円)で、半分は中国、2位はメキシコ、3位が日本で、対日貿易赤字は前年比横ばいの688億ドル(7.7兆円)でした。

 この辺りの帰趨は首脳会談の結果を待つとして、ここでの課題は、輸出立国と言われて日本の貿易収支は、長い目で見るとどんな状況かという事です。

 結論から先に言ってしまいますと、日本の貿易収支は大幅黒字の時期から、収支均衡程度の段階にだんだん近づいているようです。
 グラフで見てみますと、こんな状況です。
貿易収支の長期推移(財務省「国際収支統計」:単位億円)


 平成19年度(2007年度)まではコンスタントに大幅黒字を維持していますが、2008年のリーマンショックで状況は大きく変わったようです。世界金融危機かという事で世界経済は委縮し、日本の輸出入とも大幅に減りました。しかし何とか黒字です。ところが23年度(2011年度)からは一転して赤字になります。

 赤字の理由は皆様疾うにご承知と思いますが、$1=¥120→¥80という円高です。これでは輸出競争力喪失の産業が多くなり、輸出不振と同時に、工場の海外移転が急速に進められた結果です。コストがドル換算で5割増しになった日本で生産して輸出してもペイしないという状況変化の結果です。

 この状況は平成27年度(2015年度)まで続きます。その後はご存知の日銀の政策転換、2発の黒田バズーカで$1=¥120に戻り、黒字を回復します。
 しかし見て頂くとお解りの様に、黒字幅はぐっと小さくなっています。リーマン・ショックの円高で、製造業の海外移転が大きく進んだ結果が明瞭に出ているという事でしょう。

 今も、日本企業の海外企業の買収、向上の海外建設が盛んです。機械受注統計でも現状 内需と外需は拮抗しており、商社経由などを勘案すれば、外需の方が増えている可能性は否定出来ません。

 これは何を意味するのでしょうか。つまり、日本の製造現場の海外移転が進んでいることの反映です。
 海外移転が進めば、日本の貿易黒字は漸減することになります。このプロセスがリーマンショック後の円高を通じて一段階進んだと理解できましょう。懸念を込めて言えば、今のアメリカの貿易赤字体質の方向に次第に進んでいく可能性もあるという事です。

 しかし、日本の経常収支は年間20兆円もの大幅黒字ではないかというのも事実です。
 この問題は、第一次資本収支、つまり海外から受け取る配当金や利息収入の増加によるところが大きいわけで、次回、その点の具体的な数字を追ってみたいと思います。

日本の国際収支の構造変化

2018年09月22日 23時41分58秒 | 経済
日本の国際収支の構造変化
 このブログでは、アメリカは万年赤字国、日本は万年黒字国という対照的な関係を指摘し、それが為替レートに影響して日本は随分苦労してきたといった見方をしています。

 戦後、黒字大国だったアメリカが、次第に赤字国に転落し、1970年代以降は、ずっと国際収支は赤字続きという状況が嵩じて、今のトランプさんの関税騒動につながっているわけで、それが世界経済の不安定をもたらしていることは明らかです。

 そんなことから、今日、まだ日本の国際収支構造が健全なうちに、国際収支構造のこれまでの変化、そして今後留意しなければならないことなど、出来ればきちんと見ておいた方がいいように思い、多少整理してみることにしました。

 次回から、トランプさんの言う対日赤字(日本から見れば対米黒字)も含めて、我が国の貿易収支、経常収支、などを中心に具体的な数字の変化を見ていきたいと思います。

 今日はちょっと遅くなってしまったので、明日から始めます。何卒宜しく。

安倍3選と財政再建問題

2018年09月21日 15時07分26秒 | 経済
安倍3選と財政再建問題
 3選はないというルールを変えてまで3選を果たしたかった安倍自民党総裁が望み通り3選を果たしました。三年後までの総理大臣は一応決まったわけで、安倍さんは「改憲がメインの仕事」と言っています。

 権力は長期化すると必ず腐敗します。3選なしはそのためのルールでした。
 安倍さんは「強力なリーダーシップを発揮せよと力強く背中を押していただいた」と言っているようですが、得票を見ると、縛りの強かったといわれる議員票でこそ大勝でしたが、党員票では、あまり人気が出そうでなかった石破さん半分近くとりました

 何れにしても自民党員の中の選挙ですから、「自民党員に背中を押してもらった」という事でしょう。ところで、自民党総裁は、即総理大臣ですから、「国民に」に背中を押してもらったのと勘違いしないようにお願いしたいと思います。
 
 3選で最も心配になるのは、「やります、やります」と言いながら、今迄やらなかった財政再建です。これは「税と社会保障の一体改革」と重なる問題で、今の景気の足を引張っている消費不振とも密接に関係する問題です。

 多くの世論調査を見ましても、社会保障問題(年金、医療、介護、子育てなど)、景気対策、物価対策、などが上位に並んでいて、「防衛・安全保障」というのはその後の後ぐらいに出てきますが、「改憲」というのは通常見当たりません。

 国民は総理には、国民がやって欲しいことに注力してもらいたいと思うのですが、「改憲」はリストにありません。どうも一人よがり(腐敗の源)が嵩じてきているようです。
 来年の消費税増税に絡んで、財政再建の質問が出ますと、「やります」というのですが、今までやってきたことを見て来ますと、先延ばしばかりです。

 しかも、2016年の消費税増税延期の時には2020年のプライマリー・バランス回復には 関係ない旨の発言をし、結局、プライマリ―・バランスの回復は先延ばし、今でも全くメドがつかない状態です。

 こうして結果的に嘘が続いて来ますと、今度もまた嘘だろうとしか考えられなくなってきます。さらに、来年消費増税を実施しても、公明党の要望などで、 軽減税率が入り、税収は目減りして社会保障に回る分は少なくなり、 アメリカから色々なものを買わされて、「増税分は社会保障に充当」などという原則は、恐らく守られないのではないでしょうか。

 すでに、安倍さんは現実的には財政再建は放棄でしょう。これで今後3年のうちに異次元緩和是正が必須となれば、 状況はさらに悪化します。

 あと3年「改憲論議」をしているうちに、財政問題は、「後は野となれ山となれ」で終わって、折角真面目に頑張っている国民の心労や負担をますます大きくするようなことになることが心配されます。

 そうならないことを心から願いながら、やっぱりそうなってしまうのではないかと思ってしまうのですが、さて、3年後どうでしょうか。

金融政策は放置でいいのか

2018年09月20日 13時13分29秒 | 経済
金融政策は放置でいいのか
 日本銀行は、これまでの金融緩和政策を未だ続ける方向のようです。
昨19日の金融政策決定会合の後の記者会見で黒田総裁から、金融緩和政策を続ける旨の発言がありました。

 黒田さんの発言では、7月に長期金利の変動幅をプラス・マイナス0.2%幅に広げたが、余り動きがない、時間をかけてみていく、景気が良くても物価は相変わらず上がらない、日銀は2%上昇を目指しており、それが達成されるまでは、金融緩和を変えるつもりはないとのことです。

 2%インフレ目標は取り下げたかと思ったのですが、また復活してきたようです。日銀にとって出口戦略の言及することはタブーなのでしょうか。
 一方安倍さんは、総裁選の中で、3選されたら次の3年の内に出口戦略に道筋をつけたいといったようですが、借金漬けの政府にとっては金利は安い方がいいのでしょう。
 
 しかし現実問題としては、ゼロ金利の影響はますます深刻になっていて、金融庁の発表によれば、地方銀行の約半数が銀行本来の役割である預貸業務で赤字だそうです。
 金融庁は指導を強化するそうでうですが、もともとゼロ金利で利ザヤがないのですからどんなにしても預貸業務で利益が出るはずはありません。

 本来、地方銀行は、地方経済を支える中核としての役割を果たさなければならないのですが、これではとても役割は果たせないでしょう。
 金融は経済の血流ですから、これが巧く流れなければ、経済活動は健全性を欠いてきます。
 
 景気は好調ですから資金需要はあるのです。銀行から借りなくてもクラウドファンディングでもなんでもあるよという事かもしれませんが、矢張り堅実な企業経営をしようというのであれば、金融機関との安定した関係が大事な事は誰でもわかっているはずです。

 安倍さんは金融問題など素人ですから、3年のうちに道筋をなどと言っていますが、金融の正常化が遅れれば遅れるほど、日本の金融市場の歪み、それによる金融機関の不振、経済の活性化の喪失が進むことになるでしょう。

 消費者、家計のサイドから見ても、一生懸命将来不安に備えて貯蓄をしても、金利がつかないという現状が、家計の消費行動を歪めていることは明らかです。

 ゼロ金利という事は、経済学的にはお金に価値がないという事です。現実にはお金に価値はあります。それを、政府と日銀の勝手で「価値がない」という基準で経済を運営しようというのですから、大変不自然なことで、あちこちに無理が出るのは当然です。

 バーナンキさんが緊急避難としてやったことを、真似したのはいいですが、緊急避難をこんなに景気が回復しても続けようというのでしょうか。真似るなら、形ではなく本質も確り理解して真似てほしいものです。

アップルとアメリカ、日本の企業は?

2018年09月19日 15時28分36秒 | 国際経済
アップルとアメリカ、日本の企業は?
 米中関係が複雑の度を増しています。資源獲得競争、覇権争い・・・、世界第一と第二の経済大国の確執は容易ではありません。そして今度は貿易戦争です。

 トランプさんの目から見れば、中国は、アメリカ市場が寛容に中国製品を買ってやったから経済発展できたのだ、「もうアメリカ相手にそんなうまい商売ばかりさせない」と貿易(関税)戦争を仕掛けたという事でしょう。(日本にも言って来るかも知れませんね)

 しかし、今度新たに実施する2000億ドル規模の関税引き上げで、アップルウォッチやエアポッド、フィットビットなどは対象から除外するという事になるようです。
 これらの製品を作っているアップル社やフィットビット社はアメリカの会社ですから、アメリカの本社からトランプ大統領に頼んだなどといわれています。

 もともとアメリカの会社は、賃金の高いアメリカでモノを作っても儲からないので、低賃金の新興国などへ出て行って、アメリカの技術を生かしてモノを作って世界中に売れば大儲けできるということで中国にも工場進出したわけです。

 アメリカの企業とってみれば、中国進出は利益を出すために重要な選択だったのでしょうが、お蔭で、賃金の高いアメリカの労働者は仕事を失う事になるわけです。
 これは所謂、国と企業の利益相反で、先進国の企業が利益を増やそうと思えば、当然取る行動でしょう。それで、良い製品が安く出来て、それを買うアメリカの消費者も喜ぶという図式だったはずです。

 先進国の企業進出で、後発国の経済成長も早まり、世界経済としてもいいことでしょう。ミャンマーが国を開けば、世界中の先進企業が進出し、ミャンマーの経済発展に貢献、今後もし北朝鮮が国を開けば、韓国、日本をはじめ、高度技術を持った企業が続々進出するでしょう。北朝鮮もそれを期待しているはずです。

 こうして、世界経済の発展にも役立つ先進国企業の後発国進出ですが、それが米中間では今度の様な貿易戦争になり、日本にとってもトランプさんがどんなことを言ってくるか大変気になる所でしょう。
 
 何とかこの問題を、巧く解決する方法はないでしょうかと、国連や、OECD、IMF、WTO等が知恵を絞らなければならないのでしょうが、「問題解決は2国間で」というトランプさんの主張もあり、国際機関は出る幕がないようです。

 はっきり言ってしまえば、アメリカ企業が国内労働者を見捨てて、賃金の安い後発国へ出ていくことばかり考え、企業はMulti-nationalsとして立派になりましたが、それがアメリカ経済に悪影響を及ぼすという結果を無視してきたこと、つまり、企業と国家の利益が相反することについての国内の認識が不十分で、国と企業の適切なコミュニケーションもなく、「国としてどう考えるか(するか)」という重要な問題への関心やアプローチが無かったという失敗がもたらしたものという事でしょう。

 トランプさんにしてみれば、今は結果だけ見て被害者意識のかたまりでから、「解決の手段は貿易戦争」という事なのでしょうが、それでは世界中が迷惑するばかりです。
 
 トランプさんを説得することは容易ではないでしょうが、G7とかG20などで、この問題をしっかり議論することが本当は必要なのでしょう。

 日本にとってもこの問題は重要でしょう。何時かアメリカの様にならないように準備は出来ているのでしょうか。

2018年7月、平均消費性向は微妙な動き

2018年09月18日 13時07分33秒 | 経済
2018年7月、平均消費性向は微妙な動き
 いろいろな事があったので、毎月動きを見ています勤労者所帯の「平均消費性向」の動きの報告が遅れました。

 7月の家計調査報告は9月7日に総務省から発表されました。
家計調査報告は全所帯(単身所帯を含む)、2人以上の所帯、勤労者所帯について集計されていて、全所帯、2人以上の所帯については消費の内訳のみ、勤労者所帯については収入と支出が集計されています。(これは勤労者所帯以外は収入が正確に把握できないことによります)

 そんなわけで「平均消費性向」(可処分所得=手取り収入に占める消費支出の割合)は勤労者所帯についてしか集計されていません。
 しかし現実には勤労者所帯が圧倒的に多いわけですし、支出も賃金との関係で論じられることが多いので、一般的には「勤労者所帯」の平均消費性向が十分代表性がると考えられています。

 2018年7月の勤労者所帯の実収入は605,745円で昨年の7月に比べて名目で-0.5%、実質で-1.6%と減少を見ています。これは、今年は夏のボーナスが好調で、6月支給が多く7月支給が前年より減った結果とみられます。

 可処分所得は485,326円で前年同月比―0.9%、消費支出は310,031円0.4%の増加で、平均消費性向は63.9%です。昨年の7月の平均消費性向が64.2%ですから、昨年より0.3ポイントの低下になります。

 これは実数値の動きで、相変わらずの消費低迷です。しかし、結果表の<備考>によりますと、「季節調整値でみると69.9%で、前年比3.8ポイントの上昇」と記されています。
 3.8ポイントの上昇は大幅ですから、こちらが実態に近ければ結構なことですが、2018年から集計形式が変わったこともあり、今一つ実感がわきません。

 残念ながら、これからも毎月の調査結果を見ながら、判断を固めていくよりしょうがないかなと思っているところです。

日本にとってリーマンショックとは何だったのか

2018年09月16日 14時40分57秒 | 経済
日本にとってリーマンショックとは何だったのか
 このままでは日本経済はつぶれるなどといわれ、日本経済だけでなく、日本の雇用や社会の在り方にも大きな爪痕を残したリーマンショックから10年がたち、あちこちで「リーマンショック10年」という特集が組まれています。

 それらを拝見していいて、何となく感じてしまうのが、何かすっきりしない違和感です。
 リーマンショックは、アメリカの住宅バブルに乗ったサブプライムローンの盛況、そしてそれを梃子にしてアメリカの経常赤字の資金繰りをつけようとしたアメリカ政府を含めた「サブプライムローンの証券化」、そして危険度の高いその証券にトリプルAの格付けをし、世界中に売ったというアメリカぐるみの資金調達策の破綻の結果と言えるでしょう。

 世界中がアメリカ、格付け会社を信用して証券を購入した結果、格付けが剥げ落ち、証券価格は暴落、販売した金額が巨大だっただけに、 世界の金融機関のB/Sなどに大穴が空き、世界金融恐慌になりかけたわけです。

 この波が日本も襲ったので日本経済も深刻な不況に沈んだという説明が多いのですが、ここはもう少し、正確に説明する必要があるようです。

 確かにアメリカ、ヨーロッパの金融は 大打撃をけたようでしたが、日本の金融業界は1990年初頭のバブル崩壊後の惨状を経験して経営は慎重でしたから、打撃のひどさはまだいくらかましだったようです。

 例えば、野村證券は、倒産したリーマンブラザーズのアジア・ヨーロッパの業務を買い取っています。三菱UFJは窮地にあったモルガンスタンレーに巨額の融資をしています。
 欧米並みの打撃を受けていれば、こんなことは不可能だったでしょう。

 その日本が、震源地のアメリカや大きな打撃を受けたヨーロッパよりも長期にわたる不況、GDPの縮小の憂き目を見なければならなかった主因は、アメリカ証券の価格崩落によるキャピタル・ロスよりも、「アメリカの超金融緩和によって進んだ円高($1=¥120→¥80)だったのです。

 懸念された世界金融恐慌は、かつての世界恐慌を十分勉強したといわれるバーナンキFRB議長の超金融緩和政策で、曲がりなりにも何とか避けられましたが、その中で、円高を放置した日本は日銀が政策を変更するまで、つまり2012~13年まであの円高不況に苦しんだわけです。

 というわけで、いつも気になっているのは、リーマンショックが日本経済に与えた打撃の本質は、アメリカ証券の値下がりによるキャピタル・ロスではなくて、世界金融恐慌を防ぐために取った アメリカの超金融緩策によって引き起こされた円高だという事を確り指摘した説明が殆ど見られないという事です。

 その証拠には、日銀がアメリカに倣って採った異次元金融緩和、具体的には2発の黒田バズーカで、$1=¥120になった途端、 あの円高不況は消えてしまいました

 昔、「アメリカがクシャミをすれば日本は風邪をひく」などと言われたことがありましたが、経済問題の解説は、的確な分析を前提にしないとキチンとして理解を得られないのではないかとの危惧からついついこんなことを書いてしまいまいた。
 この辺りは、政府・日銀をはじめ、政策に種々の見方はあると思いますが、リーマンショック10年、日本はなぜあんなに長期に苦しんだかを振り返って、残念に感じるところです。

アメリカはどこまで堕ちるのか:文明退歩の恐ろしさ

2018年09月14日 23時44分02秒 | 社会
アメリカはどこまで堕ちるのか:文明退歩の恐ろしさ
 戦後の日本はGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の統治下におかれましたが、連合国軍最高司令官のマッカーサー(私たち子どもは「マツカサ=松かさ」などと綽名していました)は、もともとの軍人でしたが、それなりに立派な統治をやってくれたように思っています。

 考えてみればあの頃のアメリカは新しい世界の構築に向けて本気で頑張っていたように思います。
 ヨーロッパにはマーシャル・プランで復興を援助し、日本もガリオア、エロア資金で助けてもらいました。

 日本の大学に来て教鞭をとられた方々も、日本を民主主義で平和を愛し、将来、国際貢献をするような国にしようと一生懸命だったような気がします。
教育担当の軍属で来日、その後、年金が出るまで日本にいた方と長いお付き合いもありましたが、日本が平和を愛する民主主義国家になったことを誇りにしていました。

戦後の時期に、フルブライト奨学金でアメリカに留学された先輩の方々も当時のアメリカから大きな影響を受けておられるとしばしば感じたところです。

 ところで、戦後我々の手本であったアメリカの「今」はどうでしょうか。トランプさんのホワイトハウスの内幕暴露本が大売れのようですが、世界を困らせるトランプさんへの批判が出ることは当然として、本当の問題は、その背後にある、アメリカ自体の問題、トランプさんを大統領に選んだ今日のアメリカそのものにあるのでしょう。

 かつての豊かさの上に胡坐をかいたアメリカ経済が次第に力を失うのとともに、その志も地に堕ちて来たという事でしょうか。今では被害者意識も強く、失われつつある権力を振り回し、自らの経済力の回復を目指すのではなく高関税で脆弱な国内産業を保護することに執心するようなことになってしまっています。

 トランプ政権がどうなるのかはアメリカ人次第ですが、民主主義というシステムは立派でも多数が誤った行動(投票)をすれば、それなりのリーダーが選ばれ、国家社会が更に堕ちてゆく事になるのが現実です。
 11月の中間選挙では、今のアメリカを何とか浮上の方向にもっていけるか、このまま堕ち続けるかが、アメリカ国民が問われているのでしょう。

 世界一の超大国、覇権国、基軸通貨国のアメリカが、こうした変化をするという事は、まさに他山の石として、確りと学んでおくべきではないでしょうか。

 日本は今も上り坂にあると思っていますが、国会で「モリ・カケ問題」がうやむやになって以来、あちこちで権力の強弁が見られるようになったような気がします。
 幸い、関係者の中に真面目は人がいたり、第3者委員会などで社会が納得するような結論が出たりすることが多いようですが、日本人が、その本来の姿である「謙虚で生真面目」という特性を忘れてしまうことがないように願うばかりです。