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家計支出は生活防衛型に、物価上昇を警戒

2023年08月10日 14時30分19秒 | 経済
昨日、総務省から2023年6月度の家計調査(家計収支編)が発表になりました。
マスコミでは「消費支出は前年同月比4.2%減」といった家計の厳しい状況の指摘が見られます。

勿論これは物価上昇分を差し引いた実質値で、名目値がこんなに減ったら大変ですが、実は名目値も、この4月から前年を下回っているのです。
6月の二人以上世帯の消費支出は、名目値でマイナス0.5%、実質値でマイナス4.2%なのです。勿論この差が物価の上昇3.7%になるわけです。

下にグラフを出していますが、このブログでは、昨年来、勤労者所帯の平均消費性向が上がって来て、家計の消費意欲が日本経済を支える状態になってきたと分析していたのですが、今年に入って家計が生活防衛的になってきたように感じられます。

勿論、理由は、物価の上昇が予想外に酷く、食料、飲料、日用品などの生活必需品の価格は10%前後の上昇になっているからでしょう。
それに、春闘賃上げも、マスコミを賑わす大手企業はともかく、全体的には意外に低いように思われます。

家計が防衛的になっているのは、食料への支出が平均価格上昇8.1%に対し、名目支出が4.2%増にとどまり、実質消費は3.9%減少していること、家具・家事用品については支出10.5%減らし、価格上昇分を差し引けば、実質購入量は 17.6%減少していること、子供の習い事などが入る教育の名目支出額は、それらの皺寄せでしょうか8.4%の節約になっているといった状態です。

消費支出の活発化が見られるのは教養・娯楽で、これはコロナ明けで伸びている旅行(特に海外)外食(飲み会・パーティーなど)ぐらいです。

世帯の収入も調査している「2人以上勤労者世帯」について見ますと、対前年6月で世帯主収入は4.1%の減、で6月ですから賞与など(内数)も2.9%の減になっています。
毎月勤労統計の6月は、現金給与総額+2%、賞与等+3%で、この差の原因はサンプルや定義の違いはありますが、特定できません。

家計調査の数字では非消費支出(税・社会保険料など)が4%減で、可処分所得は1.4%減、消費支出は0.7%減少と、上記の2人以上総世帯の0.5%減少より更に防衛的です。

      平均消費性向の推移(二人以上勤労者世帯、単位:%)

                 資料:総務省統計局「家計調査」

可処分所得が減った分までは財布の紐は閉められず、結果的に毎月観測を続けている「平均消費性向」は41.1%と昨年6月の40.8%よりわずかに高くなっています。

数字上の平均消費性向の上昇はギリギリ確保されましたが、これはこのブログが期待している、家計の消費意欲の回復という前向きのものではないようです。

昨年来の消費意欲の回復を、生活必需品中心の10%前後という、些か行き過ぎた値上げの動きが水を差すという、日本経済全体か見れば、望ましくない形になっているようです。

政府や日銀は、こうした状態を一体どう見ているのでしょうか。「今後も注意深く見守る」だけでいいのでしょうか。