tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

国立科学博物館の窮状、一事が万事か?

2023年08月09日 14時51分28秒 | 政治
国立科学博物館が1億円を目標に「クラウドファンディング」を発表し、即日1億円の目標を達成したばかりでなく、今日現在、すでに5億円近い支援総額になっているという事が報道されています。

我家でも、家内が「うちもやりましょう」と早速反応を示しましたが、このニュースは、良いニュース、嬉しいニュースだなという感覚とともに、ずっしりと思いモノを多くの人の心に押し付けたのではないでしょうか。

国立科学博物館は上野の本館のほか、港区白金台、筑波にも分館がありますが、子供のころ親に連れられて行ったり、学生時代自分の興味で行ったり、親になって子供を連れて行ったりと、いろいろな機会に行かれた方は、恐らくその収蔵品の凄さに圧倒された経験をお持ちではないでしょうか。

特に子供のころのそうした経験は、時に人の生涯を決めるような経験となることも少なくないでしょう。
主要国は何処もこうした博物館を整備し、その収蔵品を国の誇りにしているのではないでしょうか。しかし、その維持管理収集にはそれなりのコストが掛るのは当然です。

こうした一国の科学文化の原点のような貴重な施設が、日本においては維持管理が不可能になるような厳しい財政状態に置かれている事が、「1億円」という金額のクラウドファンディングという形で、日本中、多分世界中に知れ渡った事でしょう。

日本は、国立博物館の維持管理の予算もままならないような国になってしまったのか、といぶかる外国人もいるでしょう。

しかし多くの日本人は、恐らくそうは思わないでしょう、コロナになれば、政権の人気取りのために巨額なバラマキ予算を組み、アメリカに言われれば、使うか使わないか解らない防衛装備品(使ったら国の破綻を来たす)を購入し、財政では膨大な予備費を組み、巨額な使い残しを計上するといった、一体何のため、何を目指して国の財政を組んでいるのかと思われるような政策の金額は、総て兆円単位のもののようです。

「兆円」というのは「億円」の「1万倍」の金額です。
科学立国などとも時に口にする現政権ですが、国民の科学の心を育む原点ともいうべき「国立科学博物館」の維持管理が、コロナなどによる入場料の減少で、不可能になるような状態に対し適切な対応を取られないというのが現実なのでしょう。

こうした現政権の政策態度の基底には、現政権が「科学技術」という人類の文化発展の原動力に対して、それを尊重し重視するという態度の欠落があるように思われます。

現政権にとって重要なのは、政権維持に今すぐ役立つことなのでしょう。
それ以外の事には関心は薄く、科学技術のように基礎的で、時には近視眼的な政権に批判的だったりするものは排除するとう浮薄な考え方や行動をとることになり、その象徴的なものが日本学術会議との対立といった形で現れるようです。

科学技術のような基礎的なものは、今日の得票には関係ないように見えても、最近発表された科学技術の引用論文数の国際ランキングが13位とこれまでの最低を記録するといった状況を齎し、日本の科学文化、ひいては経済社会の発展の停滞を齎すのです。

今回の国立科学博物館のクラウドファンディングの成功は、国民のそうした現政権への批判の意識の裏返しであることを、素直に洞察するような的確な思考力を、現政権に期待したいと思うのですが、無理な話でしょうか。