tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

長期不況:米戦略の成果か日本の自責失点か?

2019年05月29日 23時37分14秒 | 国際関係
長期不況:米戦略の成果か日本の自責失点か?
 真面目で勤勉に働く国民を持ち、国民も政府もその健全な活動とそれによって得られた成果(経済成長・社会の安定)に自信を持っていた国が、突如として30年近い期間、殆ど成長しない国に成り下がってしまったと言う事が現実に起こっています。

そして、何故そんな事になってしまったのか、政府もその道の碩学たちもどうも良く解らないようで、国民に納得のいくような説明が出来ず、適切な政策がとれないので、国民の方も、何をしたら以前の元気を取り戻せるのかわからず、右往左往するばかりで、トンネルの先にはまだ微かな明かりさえも見えないといった状態です。

とうにお気づきでしょうが、これが今の日本の状態ではないでしょうか。

1980年代の前半まで、「ジャパンアズナンバーワン」とエズラ・ボーゲルが書いた時代までの日本は何だったのか、あの日本はどこへ行ってしまったのか、よく考えてみると、やっぱり不思議な現象が起きていた、という事ではないでしょうか。

 安倍さんはゴルフ場から護衛艦の艦上まで、日米同盟の強化を喧伝してきましたが、上の問題(日本の長期不況)と日米関係におけるアメリカの影響力とは「関係ない」のでしょうか。それとも、日本は、ものの見事にアメリカの戦略に乗せられたのでしょうか。

 「そんな事は無いでしょう」「アメリカはそんなに人の悪い国ではありませんよ」ということになりますと、それでは日本が勝手に自分で転んで、起きられないでいるのだという事になりそうです。

 確かに、日本がバブルをやって自分で転んだのが原因という見方もあるかもしれませんが、昨日の「かが」の艦上での、戦闘機の発着ができるように改装予定ですとか、F35Bを105基も買ってくれてありがとうとか、これには30何機載せられる、とか言った(今まであまりはっきり聞いたことがなかった)唐突で驚くような発言がどんどん出てくるのを聞いていますと、やっぱりアメリカの影響力(牽引力)はすごいと感ぜざるを得ないというのが実感ではないでしょか。

 余計なことを付け加えますが、今、アメリカは日米関係よりも、米中関係、イランとの関係など深刻な問題を持っています。そんな中で、同盟国日本はどんな役割を果たすことになるのでしょうか。
 安倍さんも宿題をもらったようです。日本自身も世界からその真意(真価)を問われることになるような気がしますがどうなのでしょうか。何か心配です。

「仲良きことは美しき哉」

2019年05月28日 00時08分42秒 | 国際関係
「仲良きことは美しき哉」
 トランプ大統領と安倍総理の出演(?)する次から次へのニュースに、この2,3日振り回されていました。

 冒頭の言葉は、武者小路実篤が書いた色紙に出てくる言葉で、ありふれた果物とか野菜を並べ、この言葉を添えています。
 素朴でそんなに巧くない絵、癖のある字、しかし、解りやすくて暖かい絵、確かにそうだと誰もがうなずく言葉、本物の色紙は高価でしょうが、複製も人気で、多くの人の目に触れています。

 トランプさんも安倍さんも、TVの前で仲の良さをアッピールしながら素晴らしい演技力(?)「インスタ映え」ならぬ「テレビ映え」でしたが、お2人の仲の良さの背後に、「一触即発」の貿易交渉の影を感じ、何かハラハラしていた人も多かったのではないでしょうか。

 お2人とも選挙を控えています。日米関係も真剣に考えれば極めて微妙です。選挙という危険なものが、ダモクレスの剣のように頭の上にぶら下がっているのですから、間違っても選挙へのマイナス要因になることは避ける、すべては得票につながる様にと意識していると考えてしまいます。

 その意味では「日米貿易交渉の結果は8月にきっと良い答えが出る」というトランプさんの発言は、安倍政権にはどんな意味を持つのでしょうか。
 まずは、アメリカによい答えという意味でしょう。安倍政権にとっては、参院選の邪魔はしないという意思表示でしょう。トランプさんにも忖度していいただいたということかもしれませんが、日本にとってどんな「良い結果」かは解りません。
 
 安倍さんにとっては、トランプさんと仲の良いことをみんなに見てもらったことが最大のメリットだったのかもしれませんが、トランプさんのディールの中身は厳しいという見方は、相変わらず強いようです。

 そうした中で、やはり一番心に残ったのは、宮中晩餐会における天皇陛下の「日米両国の国民が絆を深め、世界の平和と繁栄に貢献することを切に願っている」という極めて明確なお言葉でした。
 トランプさんはこれをどんな風に受け取ったのでしょうか。明日は一見まさに空母の、護衛艦「かが」を見に行かれるとのことです。(5/27記)

令和最初の月例経済報告、「減速」とは言えないので・・

2019年05月25日 15時25分30秒 | 経済
令和最初の月例経済報告、「減速」とは言えないので・・
 昨日、5月の「月例経済報告」が出ました。
 消費税増税、それに絡んで同日選はどうなるといった政治的思惑も含めて注目されていましたが、まさに「当たり障りのない優等生の作文」になったようです。

 一言で纏めれば、「いろいろ問題はあるけれども、ゆるやかに回復している」ということに尽きます。
  
 緩やかに回復していると言わしめているのは、雇用情勢が相変わらず逼迫基調であること、生鮮食品を除く消費者物価がかすかな上昇基調にあること程度でしょう。
 雇用情勢(有効求人倍率)などは、企業の意識が変わればがっくり下がることもありますし、消費者物価のじり高は、低迷する個人消費にマイナスの影響を与える可能性が大きい危険信号です。

 景気は基本的に投資と消費に支えられているのですが、米中摩擦の心配から設備投資は明らかに減速、企業の態度は様子見になっています。
 消費は改善といっていますが、低迷する平均消費性向には一言も触れていません。

 「緩やかな回復基調」といい続け「られる」背景には、現状の日本経済の中で、企業も家計(消費者)も、何とかもっと経済は良くなるはずだ、こんなに一生懸命働いているのだから、と思い続けているという国民全体の意識があるからではないでしょうか。

 そしてそれが現実にならない原因としては、労働生産性が上がらないから人手不足感ばかりが強まり、空回りする「働き方改革」の実体もあるでしょう。

さらに、政府主導分野も含め、重点分野の産業政策の成果が上がらない。結果的に先端分野で中国や韓国に先行されるようになってしまった。といった事例(エネルギー、半導体、ディスプレーなど)も気になるところです。

また政府は常に消費支出は底堅いとか改善とか言っていますが、所得が多少増えても、平均消費性向が長期の低迷状態から全く回復してきていないという現実が日本経済の足を引っ張っていることは明らかで、その背後には、高齢化の進展という背景の中で、格差社会化の進展、貧困層の拡大という現実があることを見落としてはならないでしょう。

月例経済報告は、政府が現状を客観的に描写すればそれでいいのでしょうか。経済がどうなっていくかの責任の多くは政府自体にあるのです。
 おざなりのパッチワークの羅列ではなく、問題の本質に迫るような、政策態度の表明が欲しいと思いながら今回も読んでいます。

豊かな日本、格差社会化が問題発生の源

2019年05月24日 23時20分42秒 | 経済
豊かな日本、格差社会化が問題発生の源
 前回、金融庁から、高齢化対策で「自助努力を宜しく」というレポート(案)が出たことを書きました。
 確かに自助努力も大切ですが、社会の枠組みが歪んでいる中で、自助努力を言うのにはいささか納得しかねるところもあります。

 まず、日本のGDPは2018年で549兆円となっていますが、20年前の1997年には534兆円です。
 そして増えた分の多くは、GDPの計算上、研究開発費が経費から付加価値に格上げされたという計算方式の変更の結果ですから、このところ日本経済はほとんど成長しないというのが実態です。

 ゼロサム経済の中で、お金を自助努力で自分のところに持ってくると、その分他人が貧しくなります。これが自助努力の問題点を明示してくれています。
 当然、個人に任せるよりも前に、国がマクロの政策としてGDP(正確には国民所得)の配分の基本ルール、すなわち、税制、社会保障制度、金融政策などを、しっかり設計しておくことが大事でしょう。それなしの自助努力奨励は、国民所得の分捕り合戦、格差社会化の助長になります。

 マクロの枠組みとしては、まず税制の問題があるでしょう。高所得者有利に変えてきた所得税制、海外比較を気にして軽減してきた法人税、選挙との関連で増税できない消費税、税と社会保障(格差社会化の阻止要因)の一体改革はどうなっているのかが大問題です。

 世界トップクラスの高齢化最先進国としての税制と社会保障制度の在り方は、高齢化後進国と同じではだめでしょう。
 社会保障。就中年金を支えるべき経済成長も、計算システムの変更でGDPが増えたと胸を張っても、それは税収増なるわけではなく、税収の租税弾性値が下がるだけです。
 
 経済成長が巧くいかないからと、GPIF などで年金原資を株売買のキャピタルゲインで増やそうというのも、国の自助努力かもしれませんが、中々巧くはいきません。
 まして、素人の国民に、株で資産形成をといっても、本気にする庶民はいないでしょう。

 本来、年金制度がそれなりに成立するのは、国がそれなりの豊かさで、その中から適切な部分が年金の振り向けられるようなシステムが設計できる場合でしょう。日本の場合はそれなりの豊かさはありますが、高齢化の進展を甘く見てシステムの在り方については「マクロ経済スライド」で済ませるようなことしかしていないからでしょう。

 更に最悪なのは、ゼロ金利をいつまでも続けていることです。年金数理というものは、適切な金利水準があって初めて成立するものです。金利が付かないから確定拠出年金などと尤もらしい名前でいくら貰えるか解らない年金制度などという変なものを作ったり(確定給付こそが年金の本来の姿でしょう)、投資でなく投機で年金原資を創ろうとして失敗するといったことが起きるのでしょう。

 政府と日銀がタッグを組んで、ゼロ金利を続けながらインフレ率2%を政策目標にするなど常識が認めないことがまかり通るはずは本来ないのです。

 今の日本の制度設計は、税制を含め、以前に比べて格差社会化を進めるような形に変わってきてしまいました。年金原資を、ポートフォリオという美名のもとに、投機を自助努力の真ん中に据えようなどというのは、格差社会化を年金の世界に積極的の持ち込むことですし、格差社会化を阻止する重要な手段であるべき消費増税を、景気が悪くなったらやらないなどはまさに意図不明(選挙目当て?)の政策選択でしょう。

 さらに最後に付け加えるとすれば、格差社会こそが経済の健全な発展を阻害する悪役であることは、これまでの歴史の証明するところだという事でしょう。
 そして、経済が健全に成長し、年金原資が(確定利付きなどのシステムを通じて)その中から生まれてくるというのが最も望ましい姿ではないでしょうか。

老後生活:年金では無理、自助努力を宜しく(金融庁)

2019年05月23日 18時38分35秒 | 経済
老後生活:年金では無理、自助努力を宜しく(金融庁)
 昨日、金郵庁から、「高齢化社会にける資産形成・管理」という金融審議会の報告書案が発表されました。40ページ足らずのもので、要領よく纏められています。

趣旨は、高齢化がますます進んで、その上認知症の比率も増えるので、老後資産の形成と管理には、誰もが金融についての知識を確り持ち(金融リテラシー)、若い時から十分に計画的にやっていかなければならない時代になりました、という事です。

 政府もいろいろ良い制度を考えていますが、自助努力の方も何分よろしく、と言われているような感じを受けました。
 今年はG20で日本が議長国なので、議論をリードするために作ったと書いていりますが、高齢化先進国の日本がやるべきことだと言いながら、これを機に日本国民に政府の本音を周知したいという事のようにも感じられます。

 客観情勢(高齢化の進展・単身者の増加、認知症問題)など)が大変だという事を前提に、現状、経済環境のために、退職金なども減ってきて、年齢階層別の貯蓄(得意貯蓄マイナス負債の純貯蓄)の格差も大きくなっているので、若い時から将来の生活設計をしっかりしましょうと心構えを説いています。

 そのためには、資産のポートフォリオ管理を、金融知識を磨いてやらなければなりませんし、金融機関のサービスの在り方も重要ですと国民の心構えを説きます。。
 政府も、積み立てNISAや確定拠出年金などの制度に力を入れていますし、高齢顧客のアドバイザーの充実や保護政策についても重視しています、現行制度の活用を進めるためにも金融リテラシーを磨いてください、という事のようです。

 月5000円の少額貯蓄でも2%の利回りで回せば、30年で、246万円になるといった試算なども示されています。

 漠然と、「今のままだったら、そんなことになりそうだな」とは思っていたが、素直に言われてみると、やっぱり年金は当てにならず、自助努力が大事という事なのかと納得するよりしょうがない」と自覚するようなレポートになっていというところです。

しかし、確かに自助努力は大事ですが、よく考えてみれば、どうにも納得がいかないところもいろいろ山あるように思う方々も沢山おられるのではないでしょうか。
恐らく現状を規定している前提条件が、そのままうのみにされているので、どうもその前提条件の中にいろいろと問題があるように感じます。

「解りました。それなら頑張ります」と素直に言えないという方も多いのではないかと考えるtnlaboも、そのあたりを少しよく見てみたいと思います。

2019年1~3月GDP速報

2019年05月21日 15時12分51秒 | 経済
2019年1~3月GDP速報
 昨日、標記速報が発表になり、茂木経済再生相が記者会見し、マスコミは前期比0.5%成長、年率換算で2.1%成長と報じています。
 輸入が減ったせいで成長率が高まったという解説もあり、日本経済の状況はあまりよくないようですが、いつも通り、少し長めの動きを見てみても、あまり芳しくはありません。

  四半期GDP(対前年同期比)の推移


 上図は昨年の1~3月期からの四半期GDP(実質)の対前年同期伸び率です。
 一番左の青い柱が実質GDPで、その次の茶色の柱が国内需要です。この差は「純輸出」、つまり輸出マイナス輸入、貿易黒字で稼いだ分ということになります。

 次の緑色の柱が個人消費(家計最終消費支出)で、いつも見ていますように、これが伸びないのが今の日本経済の一番の問題点とされるところです。

 一番右の紫色の柱は企業の設備投資で、これまで日本経済を引っ張って来たのは、何といっても企業の設備投資の活発さだったからと言われています。これが昨年の7~9月、それにこの1~3月落ち込んでいます。
 当然米中摩擦の関連を気にするところです(特にこれからは心配)。

 対前期比という短期的の見方ですと1~3月期は実質0.5%(年率2.1%)の上昇で前期の0.4%に続いて2期連続のプラスという事ですが、対前年同期比で昨年7~9月は設備投資で盛り上がりましたが、1~3月期はいよいよ米中関係などが影を落とし始め、企業も設備投資にあまり積極的でなくなり、従来から不振の家計の消費支出ととともに、消費・投資とともに低迷という事で、GDP成長率はじり貧という様相が見えてくるのではないかと心配です。

 マスコミの解説のように、輸入が減ったので(輸入はGDPのマイナス勘定ですから)GDPにプラスになったというのも、数字上はそうですが、輸入が減るという事は当然内需不振だからという事でもあり、日本経済の活力は、国際情勢の不安に加え、もともとの内需不振ともども、何となく元気がなくなってくるのではないかといった見方も出そうです。

 すでに経済情勢分析で何度も触れていますが、この所、日本経済は企業設備投資が引っ張る片肺飛行できました。
 今回はそれに米中摩擦の影が大きくなり、企業が当面の設備投資に二の足を踏むといったことになりますと、片肺飛行のエンジンも不調でさらに減速し、低空飛行になる可能性も否定できません。

 国内事情である内需不振と海外問題である米中摩擦、まさに「内憂外患」とはこのことなのかといった状態ですが、今の安倍政権に、これに対応するような責任感、分析力、洞察力、活動力、実行力がどの位あるのかが問われているのでしょう。
 
 世論調査では「ほかの内閣よりよさそうだから」というのがいつも出ていますが、「ほかの内閣」はともかく「今の内閣より常に良くなる」とう自己研鑽、自己努力も評価されなければならないのではないでしょうか。
当面、5月24日の、政府「月例経済報告」がどんな形になるのでしょうか。

赤字財政は金融で救えるのか:MMTその後

2019年05月20日 13時19分12秒 | 経済
赤字財政は金融で救えるのか:MMTその後
 MMT(新時代の金融理論)については「理論構成も出来ていないご都合主義の金融里論」という見方が一般的になってきているようで、結構なことだと思っていますが。NHKを含めてTV放送などで、学者などがでてきて MMTは合理的と説明しているのを時々見ます。

 その中でよく聞かれるのが、「よい例が日本だ」といって、日本が世界トップクラスの財政赤字残高でも、インフレにもならず、円の価値は何かあれば円買いというほど信用があって、日本の円も国債も紙屑になるような気配は全くない、これこそ「MMTが正しい証拠だ」とか、 リーマン・ショックでアメリカは大変だったというが、「アメリカの金融機関の立ち直りは結構早かった」等という発言があります。

 この所30年も殆ど経済成長していない日本を引き合いに出していいただいても迷惑な話ですが(数字上の成長のほとんどの部分は国民所得統計の方式の変更によるもの)、アメリカと日本の違いなどについても解ってもらわないと困りますので、少し書いておきたいと思います。
 
 基本的には、MMTというのは「財政赤字は金融で救える」という理屈ですが、要は、救える場合と救えない場合があると言う事が第一、第二は、救える場合といっても本当に救えたのではなくて、損した人が「仕方ないね」と諦めることによるという事です。

 もっとはっきり言えば、金の出入り(収入と支出)の関係と、金の貸し借りの関係をごっちゃにして遣り繰りをしようというのがMMTなのです。
 本来的にはそんな事が成立するわけはありませんが、上述のように、「損した人が諦めて呉れれば」成立するという事でしょう。

 日本の借金財政が破綻しない理由は、日本国民が真面目で、国が面倒見てくれない可能性が大きいことを懸念して、自己防衛の意識から貯蓄に精出しているからで、お陰で政府は財政赤字を海外からのマネーで資金繰りをつける必要はありません。
 もし外国から借金していれば、外国の都合で「金返せ」あるいは「もっと利息を払え」と言われれば、忽ちに財政破綻の可能性は大きいでしょう。

 それに日本は、アメリカと違って、国内の生産力をなんとか維持していますから、円安になれば国際競争力が回復して、経済成長の可能性が大きくなるという状態を維持しているからでもあります。国民の真面目さが財政赤字を支えているという所でしょうか。

 アメリカのリーマン・ショックからの回復が早かった、という点については、アメリカの不良債権の大半は、外国の負担で処理されたという事が大きいのではないでしょうか。
 2009年ごろのみずほ総研の分析でも、不良債権の「発生率」はユーロ圏やイギリスの方が大きかったようです。(日本の金融機関も大変でしたね。ユーロ圏の金融業の総資産の規模はアメリカより大きいです)。

 これはまたごく身近な話ですが、当時私の家内がへそくりで買っていた投信が半分ぐらい値下がりして、途方に暮れ、解約した方が良いかと相談してきたので、運用先のリストを見ましたら、ファニーメイやフレディーマックが並んでいたのを思い出します。

 儲けようとして買って損したのですから自業自得ですが、アメリカ政府系の機関の債券に、アメリカの格付け会社がAAAをつけていたのは詐欺罪ものだなどと思いました。

 当時は、金融工学全盛で、ジャンクボンドも集めて上澄みだけ掬えば優良資産などいう金融論がノーベル賞に値するように見られたものでした。
 今の、MMTもいつかはそんなことになるのではないかなどと空想しているのですが、さてどうなるのでしょうか。

なかなか下げ止まらない平均消費性向

2019年05月17日 23時04分47秒 | 経済
なかなか下げ止まらない平均消費性向
 遅くなりましたが、今月10日に3月分の「家計調査」が発表になり3月の平均消費性向(2人以上、勤労者所帯)が発表になっていましたので、取り上げます。
 先月、2月の家計調査で、何となく平均消費性向が下げ止まりの様子が見えるように感じ、このブログにも書きましたが、今月も下げ止まらず、対前年同月比で、0.8%ポイントの低下となりました。

 消費税増税が予定通りであれば今年の10月からですが、何やらまだ不透明な要素もあるようで、「駆け込み需要」云々といった雰囲気は、未だとてもないようです。

 3月というのは年度末で、家庭によっては「もう少し引き締めないと」などといった話も出たりするのかもしれませんが、ここ3年ほどの3月の平均消費性向を並べてみますと。
 2017年92.9%、2018年89.4%、2019年88.9%と言うことで、なかなか下げ止まってきていません。

 平均消費性向については、今後も継続して毎月報告するつもりですが、そろそろ下げ止まってほしいものです。
 希望を言えば、そのためには国民の将来不安を少なくするような政府の施策が必要なのでしょうが、残念ながら、その期待はうまく持てそうにありません。

 政府がだめなら、国民自身、労使団体、企業の労使といったところから、平均消費性向向上で、消費と投資のバランスの取れた日本経済をつくるための検討作業などはいかがでしょうか。

 先年、春闘の際の労使の白書がともに、「高齢化を逆手にとって日本経済を元気にしよう」という趣旨の提言をしていたことを思い出します。
 歴史を見れば、日本は労使が本気になって問題に取り組むとき、結果が出るといったことが「高度成長期」や「二回の石油危機の克服」の際などにみられます。
 改めて労使団体や企業労使が本気になって、知恵を出し合ったらどうでしょうか。

消費税増税まで半年を切る:与野党は?

2019年05月15日 17時19分55秒 | 政治経済
消費税増税まで半年を切る:与野党は?
 副総理兼財務相の麻生さんは、先日、消費税増税はきちんとやらなければいけないという趣旨の発言をしておられました。
 財務大臣という立場ですから当然といえば当然ですが、政府自民党としてその方針が決まっているのかというと、我々には何とも解りません。

 政府与党としては、リーマン級の経済問題が起きない限り増税は実施ということになっていたと思うのですが、総理腹心といわれる萩生田官房副長官は、経済情勢は不安だとして、何かあいまいな発言を繰り返しています。

 この発言は、経済不振で消費税増税をやらないとなれば国民に信を問う必要があるということで、参議院と衆議院の「同日選」に主眼があるとの見方もあり、二階幹事長は総理の意向に従う(同日選について)といっています。

 過日も書きましたように、萩生田発言は総理の指示と受け取られているようですから、選挙の勝敗と消費税増税はセットになっているといいうことでしょうか。
 政府与党にとっては、恐らく財政再建より衆議院で安定多数を得る方が大事でしょうから、消費税増税の行方は皆目わからないということにもなりそうです。

 国民にとっては、社会保障の健全化を目指す消費税増税の方がどちらかといえばより重要な問題と思われます。
しかし、政府与党にとっては野党がこぞって「消費税増税反対」を言っていることは多分大変気になっているのでしょう。

 野党が一致して消費増税反対といっているのもよく解りません。
 消費税を増税して社会保障の充実を図るというのは、福祉国家のビジョンを大事にしていると思われる野党にとっては、本来望ましいはずです。
 反対するなら、消費税を社会保障以外に流用することに反対してほしいと思うところです。

 政府与党が、消費税増税をやらないといえば、与野党の主要な対立点が消えることになりますから、与党には魅力的なのかもしれません。

 結局、消費税増税は、選挙の道具にされているというのが見えるような気がしてくるのが現状ではないでしょうか。
本気で財政の再建、健全化を図り、社会保障の充実をベースに、日本経済のサステイナブルな安定発展を目指すという消費税増税の本来の理念はどこかに行ってしまっているように思われてなりません。

 日本がついて行こうとしているアメリカも、何か、国際関係も、経済政策も、金融政策もすべて来年の大統領選挙でトランプさんの再選を目指したものに収斂しているような印象を受けますが、どうしてこんなことになってしまったのでしょうか。

 選挙も政策も、すべて国民のためのより良い国づくりのための装置という長期的視点を見失っては本来のその意義が失われるように思うのですが、何か違ってきているように感じられるこの頃です。

3月の景気動向指数、下降局面濃厚

2019年05月13日 23時27分36秒 | 経済
3月の景気動向指数、下降局面濃厚
 今日、2019年3月の景気動向指数が発表になりました。1月の数字が下降局面を示したので、その時点(3月7日)で このブログで取り上げ 
ました。
 2月はほぼ横ばいだったので、ちょっと様子見でしたが、3月の数字が大きく下げたので、景気動向指数の読み方としては悪化といわざるを得ない状態になりました。

 上記、3月7日のブログで、過去1年間の隔月の動きを追っていますから再掲し、2月と3月の数字を付け加えておきます。

景気動向指数:CIとDIの推移

内閣府:「景気動向指数」
 
 繰り返しますが、CIは数字そのものが景気の高さを表し、DIの方は。数字が50を「下から上」に切るときが景気の谷、50を「上から下」に切るときが景気の山と言うことになっています。

 これを見ますと、景気そのものは昨年10月がピークのようで、その後じりじり下げています。具体的な数字は、
CIの方は、図の最後の1月が99.9、2月が100.7、3月が99.8
DIの方は、図の最後の1月が12.5、2月が18.8、3月が7.1で、直前の12月が50.0で、ここで50を「上から下に」切ったことになります。

 2月の15日の「 黄信号点灯」と書いた、昨年10~1月のGDP速報でも、日本経済の動きは基本的に同じです。
 政府はまだ今日の段階では下降局面とは言いたくないようですが、統計数字は正直でしょう。

 確かに今回の景気下降局面入りはアベノミクスの失敗というよりは、米中貿易交渉のこじれたことによるところが大きいことは明らかで、もし今日にでも、米中が手打ちをして問題がなくなれば、株価は急騰、中国景気も持ち直し、日本企業もほっと一息で景気は快方にということになるかもしれませんが、まあ、そんな事は無いでしょうから、下降局面入りは避けられないのでしょう。

 アベノミクスの失敗は、消費不振を放置したことで、もっともっと前から、元気になるべき日本経済を投資ばかりの「片肺飛行」にしていたことでしょうから、いずれにしても、今回の下降局面入りは避けられなかった「外来不況」でしょう。

 アベノミクスのやるべきことは「景気は緩やかに回復基調」と言い続けることではなく、国民に働きかけ、消費不振を早期に脱出して、内需拡大で、景気の落ち込みを、より浅いものにするという努力でしょう。

 でなければ、トランプさんに、「偉大な経済は高関税ではできませんから、も少し頭を使いましょう」と説得するのはどうでしょう。これができれば良い不況対策になるでしょうから。

世界第1位と第2位の経済大国の経済戦争の行方

2019年05月11日 00時01分28秒 | 国際経済
世界第1位と第2位の経済大国の経済戦争の行方
 日本時間の今日午後1時1分、アメリカは中国に対し、2500億ドルの輸入品の関税を10%から25%に引き上げる決定をしました。

 交渉はもう1日あるわけですが、先を急いで仕掛けていた今日といいう期限を、アメリカは実行し、中国側は冷静に「報復措置をとる」といいつつその内容は言わないというのが現状です。

 相手の対応を期待して用意した切札を切ってしまうことになってしまったということは、アメリカの思惑は(多分)外れて、ファーストラウンドはアメリカの負けでしょか。冷静な中国が余裕を残した感じです。
 さすがは共産党一党独裁の国、当初下落した上海市場も持ち直し、政府系ファンドの介入などと報道されています。

 アメリカは残る3千数百億ドルの輸入についても、関税を25%に引き上げるといって脅しをかけるようですが、関税引き上げで経済力が強くなったといった例はあまりないので、また、この節、保護主義に走るというのは、国際的にみても評判を落とすだけですから、自由主義経済圏としては(アメリカは覇権国ですから)困ったっことだと言うことになります。

 トランプさんは、その優し気な笑顔と、仁王様のような怖い顔を使い分けて、アメリカの主張を通そうというのでしょうが、習近平さんの方が一枚上手で、さすがは春秋戦国の孫子の兵法から、三国志の諸葛孔明の軍略までの歴史を持った中国の方が一枚上手かななどと見る人もいるようです。

 ま、交渉・ディールの使い手か、兵法や軍略か、といったことは話としては面白いかもしれませんが、経済戦争では、長い目で見れば、結局、経済力が強い方が勝ちを収めることが多いので、関税で攻め立てるアメリカ方式では勝つのは難しいのではないでしょうか。

 GMを始め中国で稼いでいるアメリカ企業も多いわけで、アメリカも返り血を浴びる形にもならざるを得ないでしょう。
 というより、世界が巨大なとばっちりを受ける可能性も確実にあるわけで、米中のチキンレースなどともいわれますが、チキンにしては双方が大きすぎて、傍迷惑この上ありません。

 あまりこじれないうちに、双方がなすべき努力は確りやることも含めて、何とか交渉の纏まる事を願うばかりで、かりそめにも、行く所まで行くなどいうことないように願いたいものです。

生産性向上と人手不足:そろそろ意識転換の時期では

2019年05月09日 21時42分19秒 | 労働
生産性向上と人手不足:そろそろ意識転換の時期では
 今年、1月2日のこのブログで「今年は「生産性向上」取り組みの第1年に」と書きました。
理由は安倍政権が「有効求人倍率」の高さを誇るようになって、人手で不足はアベノミクスの成果を示すものだといった意味合いの発言はいつも聞かれますが、それを単純に喜んだり、誇りにしたりしていていいのかという気持ちが強かったからです。

 ご承知のように、人手不足というのは、仕事は沢山あるけれども、仕事そしてくれる人間が足りないと言うことです。そんなことは昔から何度もありました。
 同時に、人手が余ってしまって、就職が困難だといった時期も何度もありました。恐らくこれからの日本の経済社会でも、人手不足の時もありましょうし、人余りの時もあるでしょう。

 それならどうすればいいのでしょうかといえば、人手不足の時には「生産性向上」に励み、人余りの時には「賃金・仕事を分け合う」(ワーク&ウェイジ・シェアリング)をするというのが基本でしょう。

 人手が足りなければ外国から連れてくる、余ったら帰ってもらう、というのも往々とられる手段ですが、これは必ず困難な問題をお起こすことが経験上明らかです。できるだけ自分たちでやって他国にまで迷惑をかけないというがベストでしょう。

 もし外国からの働き手を受け入れるとすれば、それは日本の「よりレベルの高い働き方」を学んでもらうという教育訓練の場を提供しましょうという意味でお招きします、というのが従来の日本の基本的な考え方(技能実習制度)でした。

 これは素晴らしく筋の通った考え方だと思うのですが、このところ、人手が足りなければ外国から入れるという考え方に変わってきたようです。人手が余ったらどうするのですかという懸念は当然ありますが、そちらの具体的な考えは見えていません。

 何故こんなことになるのかという理由を考えてみますと、人手不足はアベノミクスの成果という誇示はあっても、「人手不足は生産性が上がらないから」という反省がほとんど言われない、という思考のアンバランスに原因があるからのようです。

 GDPがほとんど増えていないのに、人手不足がひどくなるというのですから、現在の1.6倍という有効求人倍率を満たす人を採用したら、日本の生産性は大幅に下がることになります。(注:労働生産性=GDP/就業者数)

 政権はなぜ、有効求人倍率ばかり言って、生産性向上についてはほとんど言わないのでしょうか?
 日本の生産性はアメリカの6割(日本生産性本部)だそうですから、アメリカ並みの生産性を上げれば、4割人が余るという単純計算も可能なわけです。
 
 一方で、AIを使えば「人間が要らなくなる」といった心配をしている人たちも沢山いるようです。
 AIの進歩は著しいので、そうした可能性も近い将来あるのでしょう。

 最近は、こんな極端な主張ばかりで、生産性向上についての地道な研究がなかなか見られませんが、振り返ってみれば、日本の経済社会の発展の歴史は、生産性向上の歴史でもあったのです。 高度成長は、生産性の急速な発展によって可能になったことは当然です。

 そろそろ、人手不足をかこつよりも、生産性向上により大きな努力を注ぎ込むことに意識の中心を持っていくという本来の方針を打ち出す時期に来ているように思うのですが・・・。

国際経済情勢は混乱の度を強めるか

2019年05月07日 21時22分33秒 | 政治経済
国際経済情勢は混乱の度を強めるか
 令和元年のビジネス・ダイアリーは今日から本格始動です。
社会のインフレを担う方々は、「とんでもない、我々は5月1日からだよ」とおっしゃるでしょう。まさに「休まない人が支える10連休」ですね。

 ところで、株式市場は今日からです。
 連休中に日経CFDなどを見て、連休明けには21,500円に挑戦か、などと読んでいた方も多かったのではないと思いますが、世の中はままならぬモノ、トランプさんの「2000億ドルの輸入に関税25%」という対中強硬発言が出て、楽観的予想は消し飛んだようです。現実は厳しいですね、今日の日経平均は335円の下げになりました。

 まさかトランプさんは長く休んだ東京市場の開くのを狙ってツイートしたたわけではないでしょうが、突然のツイートで世界を混乱させて世界の注目を集めようというのも困ったものです。

 中国の方が冷静な対応をしているようにさえ見えますが、トランプさんが「早く点数を稼ぎたい」と急げば、中国も我慢も限界と先延ばしに出るかもしれません。
 いずれにしても思惑の駆け引きですから、合理的な判断などは役に立たない世の中になってきたようです。

 この先の展開がどうなるかは、トランプさんと習近平さんの頭の中にあるだけで、我々凡人には皆目見当もつきませんが、世界の二大経済大国がこうした状態にあるということは、経済学者の理論的思考や統計分析で、読むような経済社会の経験的法則性で、ある程度の予測も不可能ではないといった「まともな」状態ではないことになってきそうです。

 たとえて言えば、地震の予測のようなもので、アメリカの赤字、中国の黒字の動きを見ていれば、「いずれ何か起きる」とは予測されても、それがいつ起こるのか、明日なのか、3か月後なのか、はたまた、手打ちがうまくいって起きないのか、なんとも解らないということの似てくるようです。

 このようなことは、今後進められる日米交渉でも当然予測されるでしょう。アメリカのやることは、一生懸命やったTPPでも最後の最後で「ちゃぶ台返し」だったような、想定外が当たり前といったことになるのではないでしょうか。

 相手を(世の中を)不安にするのは、自分の発言や行動を相手に予測できなものにすることが往々効果的な戦術でしょうが、それは信頼関係とは全く相容れない異質なもので、信頼による絆を避けて、不安による支配を選択することでしょう。

 日本では、令和を良い時代にしたいと誰もが思っているのでしょうが、今日1日の感覚では、令和は、やっぱり難しい時代になりそうだといった感じはないでしょうか。

 国内でも、これから、消費税、同日選等々いろいろなことがあるかと思いますが、やはり令和には、「予断を許さない令和を過ごす新たな覚悟」が必要なようです。
 いささか悲観しすぎでしょうか。

「マルチ咲き」で検索できるようになりました

2019年05月05日 16時31分11秒 | 環境
「マルチ咲き」で検索できるようになりました
 10連休も明日まで。TVの画面では「アッという間だった」といいう方もいらっしゃったり、「休みが長過ぎた」という方もおられたり、まさに人ざまざまです。

 ところで、4月29日にこのブログで、「マルチ咲きチューリップ」で検索したら、何も出てこなかったと書きましたが、その後すぐ「マルチ咲チューリップ」でも検索できるようになりました。

 ネットの対応は早いものだとびっくりしましたが、おかげさまで、「枝咲き」のほかにも「ゆり咲き」という呼び方もあることが解りました。
 確かに百合の花も、枝分かれして沢山咲きますね。

 その後、我が家の枝咲きチューリップは、次第に花弁を開き、今日あたりは満開という所でしょうか。
 八重咲の上に、開いた花弁の先は赤い縁取りになっていて、ずいぶん賑やかです。

 せっかく良く咲いてくれたので、今日は紹介させていただくことにしました。
 これなら、球根1つを鉢植えして、玄関や部屋の装飾に使っても見応えがありそうです。
 球根を大事にして、来年は何とか育ててみたいと思っています。


平和中立が成り立つ条件:憲法記念日に思う

2019年05月03日 12時56分06秒 | 国際関係
平和中立が成り立つ条件:憲法記念日に思う
 202年ぶりという天皇の譲位と新天皇の即位が粛々と執り行われ、平成天皇は上皇になられました。
 国民は気持ちを新しくし、新しい令和の時代をより良い時代にしようと気分を一新し、取り組む気持ちになっているように感じられます。

 しかし、それに関係なく気候変動は相変わらず終末時計の針を進め、1990年代初頭に終わったはずの冷戦も、新しい米・中・ソという3極の形で何かが感じられはじめ、世界のいくつかの国や地域で、戦後の平和な統合や共生から分断や抗争といった形の揺り戻し現象も見えているというのが現在の世界情勢でしょうか。

 日本では、戦のなかった平成を振り返り、さらに戦のない令和を望むと言うことが可能ですが、世界情勢の方は何となく不安定さを増す様相を呈しています。

 覇権国アメリカが、トランプ大統領を選び、自国中心主義を標榜するようになってから、世界中で自国中心、ひいては自分中心のリーダーたちが我が意を得たりという事になったようです。

 こうした情勢の中で、日本は憲法に不戦を掲げ、戦力(自衛力は別と考え)は持たず、世界平和の建設に貢献することを(国連中心主義を含めて)標榜してきている数少ない国の1つです。

 本来なら、中立を掲げるところでしょうが、戦後の冷戦時代の名残でしょうか、アメリカの同盟国として、アメリカの核の傘のもとで平和を希求することになっています。
 集団的自衛権を認めてから、世界の目は、日本はアメリカの同盟国として定着し、不戦への疑問も生まれやすくなっているように思われます。

 しかし安倍総理は、日本が自らは決して戦わず、平和を希求する国であることを常に強調しています。そしてこれは国民の本心でもあるでしょう。
 ならばアメリカとの関係はどうであれ、日本が不戦と平和を掲げ、「ソフトパワー」のみで国際問題を解決する国という事を改めて世界から認められるように行動することがまず重要になるのでしょう。

 そしてそれが成り立ちうる条件というのは、日本ではなく、「外国の意思と行動による」という現実を直視し、いかなる場合にも、日本の目指すところを実現させるような行動を常に心して取ることが必要でしょう。

  問題は、日本のように、世界に対し、いわば「人畜無害」で、常に世界の平和と発展のために貢献することを旨とする国を、武力で破壊したり、占領して自国の一部にしようとする国があるかどうかという問題です。

 つまり、「日本は世界の平和と安定のために必要な役に立つ国」と、世界が認識してくれることが基本になるのでしょうし、これこそが平和憲法を掲げる国の外交力を支える最大の基盤になるはずです。

 戦後日本は、国連中心主義を標榜してきました。日本の国連外交はそうした日本の国際関係に向かっての歩みだったと思われます。
 仮令、トランプ政権が国連を蔑ろにしても、日本は、世界の平和と発展に役立つ国連の活動を目指し、より多くの国が日本の行き方に賛同するような発言と行動を堅持すべきでしょう。

 世界の中の日本です。現在の世界の3極がどう動こうとも、日本の一貫した世界平和と発展への意思が、世界中から一致して認識され、信認されるような行動こそ、日本の健全な存在を保証するものではないでしょうか。
 
 アメリカの行動が世界を混乱させるような可能性もある今日、日本は、ますます、ぶれない日本らしさを明確にする必要があるように思われます。